仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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究極の闇をもたらす者2018 その2

「何あれ……」

「まさに化け物だな……」

「嘘だろ……」

「最悪だな……」

 

 崩壊するティードの城から脱出したジオウたちは、少し離れた場所から最上階を突き破ってアナザーRU(ライジングアルティメット)クウガが誕生するのを半ば呆然と見ていた。

 アナザーAクウガを上回る巨体。それだけでも脅威だというのに更に悪質なのは──

 

『ガアアアアアアアアアアア!』

 

 アナザーRUクウガが空に向けて黒炎を吐き出す。そこに何も無いというのに、執拗に何度も何度も黒炎を火球にして何かを狙っていた。

 

「何してるんだろ?」

「まさか……」

 

 ビルドはその行動に何かを察する。呆れと信じたくないという気持ちを半々に混ぜた声であった。

 

「何か分かったの?」

「あいつが炎を吐く方向を良く見てみろ」

 

 ビルドに言われ、ジオウたちは黒炎が吐かれる先を見る。しかし、そこにはやはり何も無い。あるとすれば空に浮かぶ雲だけ。

 

「何もねぇーぞ。雲しか見えねぇ」

 

 クローズマグマが何気なく言った言葉。その一言に、ビルドが感じたであろう嫌な予感をジオウたちも共有することとなる。

 

「え……本当に雲を狙ってる?」

「恐らくな」

「そんなもんに火吐いてどうすんだよ? 何の意味があんだ?」

「意味なんて無い。きっと目に映る中でプカプカ浮かんでいるのが気に入らないんじゃないのか?」

「ええ……」

 

 クローズマグマもようやくアナザーRUクウガの異常さに気付き、もう一度アナザーRUクウガを見る。今度は空に向かって、その長い手を伸ばしていた。

 

「目に映るものを無条件で攻撃しているって言うの!?」

「──恐ろしいぐらい低下した知能だな」

「恐らく、奴の今の知能は昆虫並だ」

 

 ツクヨミ、アクセルは戦慄。ビルドは比喩抜きでアナザーRUクウガにそのような評価を下す。

 アナザーRUクウガは、何度伸ばしても空の雲に手が届かないことに苛立ったのか、足元へ手を叩き付ける。

 轟音と振動。ジオウたちの足元が揺れ動く。叩き付けられたティードの城はその一撃で真っ二つに粉砕され、衝撃は地面まで伝わり亀裂が生じる。

 足場にしていた城が壊れたことで崩壊に巻き込まれ瓦礫の中へ消えていくアナザーRUクウガ。

 ジオウたちはそれを見ながら、自分たちの側まで伸びた亀裂に視線を下ろす。

 

「とんでもないな……」

 

 一撃で城を破壊してみせたアナザーRUクウガ。知能と引き換えに得た力は、見た目通り異常なもの。

 

『ガアア! ガアアアアアアア!』

 

 山積みになった瓦礫が噴き上げられる様に宙を舞う。その下から無傷のアナザーRUクウガが出て来た。

 背中から半透明の羽を広げ、その風圧によって瓦礫を巻き上げたのだ。凄まじい風を起こすがアナザーRUクウガの巨体は飛ぶことが無い。

 アナザーRUクウガの羽は、体が左右非対称のせいで羽もまた大きさが非対称のアンバランスなものであり、飛べる機能を完全に失っていた。

 体が一瞬だけ浮くも、すぐに顎から地面に落ちる。その衝撃でアナザーRUクウガを中心にして地面が陥没する。

 やること全てが色々な意味で出鱈目なアナザーRUクウガ。原始的な動きに愛らしさなど無く、凶暴な野生動物を間近で見ている様な気分である。

 不意にアナザーRUクウガが顔を上げ、辺りをキョロキョロと見回す。また何か気になるものでも発見したのかと思いきや、視線がある一点で固定された。ジオウたちの姿に。

 距離にすれば百メートル以上は離れているが、アナザーRUクウガの黒目はジオウたちの方を凝視し続けている。

 

「俺たち、見られてる?」

 

 無機質なアナザーRUクウガの視線は離れていても鳥肌が立つ。

 

「──みたいだな」

 

 ジオウの誤解ではなくビルドも、他の者たちも同様に寒気を覚えていた。

 

『アア、アアアア……』

 

 たとえ、理性や知性を失ったとしても、精神の最奥いわゆる魂に刻み込まれたものがある。アナザーRUクウガでありティードだった者の魂に刻まれていたのは、平成ライダー、怒り、屈辱、殺意、敵意。

 湧き立つ。煮え滾る。駆り立てられる。無軌道なアナザーRUクウガの行動に一つの目的が生まれる。

 

『ガアアアアアアアア!』

 

 咆哮。空気が激しく揺さぶられ、近くの建物のガラスが一斉に砕ける。

 アナザーRUクウガが走る。だが、二足歩行では無い。両手を地面に着け、獣もしくは昆虫の様に地は這って迫る。

 その速度は凄まじく、遮蔽物など一切関係無く真っ直ぐ最短距離を行く。

 

「来る!」

「ゲイツ! ツクヨミを安全な場所へ!」

 

 生身であり仮面ライダーではないツクヨミの避難をゲイツに頼む。

 

「分かった! ツクヨミ! 行くぞ!」

 

 仲間を置いて自分だけ逃げることに一瞬迷うツクヨミだったが、ここに居てもジオウたちの足手纏いになるだけだと分かっていたので、すぐに頷く。

 

「分かったわ。負けないでね、ソウゴ」

「大丈夫」

 

 ジオウは安心させる様にツクヨミに向けてサムズアップを見せる。クウガアーマーの影響か無意識のうちに自然と出たものであった。

 ゲイツはツクヨミを連れてすぐにここから離れる。幸い、アナザーRUクウガの目には離れていくゲイツたちは映っていないらしく、標的も進路も変わらない。

 

「デネブ!」

「ああ!」

 

 侑斗の背後にデネブが立つ。侑斗はゼロノスベルトを装着し、ゼロノスカードを装填。

 

「変身!」

『VEGA FORM』

 

 仮面ライダーゼロノスベガフォームに変身し、臨戦態勢となる。

 各々が武器を構え、這い寄ってくるアナザーRUクウガを迎え撃とうとする。その時、這っていたアナザーRUクウガが地面から消えた。

 その動きに戸惑うも即座に気付く。

 

「上だ!」

 

 視線を上げれば宙に居るアナザーRUクウガ。そこらに並ぶ建物よりも高く跳ぶ。

 

「跳ねたっ!?」

 

 空中のアナザーRUクウガは、右腕を大きく振り上げながらジオウたちに向かって落下していく。

 武器を構えていたジオウたちも、巨大な質量が落ちてくるのを見てその場から離れざるを得なかった。

 アナザーRUクウガは着地と共に右手を地面に叩き付ける。地面は大きく割れ、広がる亀裂と揺れのせいで建物が傾き、中には倒れるものもあった。

 

『ガアア……』

 

 地形を変える程の一撃を放ったアナザーRUクウガだが、不満を感じさせる唸り声を上げる。叩き付けた掌の下には何も無い。ライダーたちを逃してしまった。

 

『アメイジングマイティ!』

『ギリギリスラッシュ!』

 

 耳に入ってくる音声。アナザーRUクウガは、本能的にそれを警戒する。それが自分を害為す力を持っているのが分かったからである。

 急いで上を見上げると、半壊した建物から飛び降りるジオウ。

 

「たああああああああ!」

 

 見上げた状態のアナザーRUクウガの眉間にジカンギレードを突き立てる。浮かび上がるクウガの紋章。しかし──

 

「刺さってない!?」

 

 ジカンギレードの切っ先は、甲殻を突き破ることが出来ず、僅かに凹ませただけで眉間で止められていた。クウガの力は当然流し込むことが出来ず、浮かび上がった紋章が砕け散る。

 

『ガアアアアアアアア!』

 

 アナザーRUクウガの右腕がジオウへと伸ばされる。鉤爪の様な手がジオウを挟み込もうとする。

 

「させるかぁ!」

「はあああ!」

 

 アクセルとゼロノスが飛び出し、アナザーRUクウガの右脛を二人で斬り付ける。甲殻に浅い傷を付けられた程度だが衝撃までは殺せず、アナザーRUクウガはバランスを崩す。

 

『ボルテックブレイク!』

 

 ラビットタンクフォームに戻ったビルドが、アナザーRUクウガの懐に飛び込みつつドリルクラッシャーにラビットフルボトルを挿し込み、自慢の跳躍力で跳ぶと、高速回転させることで発生する赤いエネルギーの刃をアナザーRUクウガの顎下に叩き込む。

 

『ボルケニックナックル!』

 

 クローズマグマナックルを握ったクローズマグマの拳もまたアナザーRUクウガの顎を突き上げた。

 人体の弱点でもある顎を強打され、アナザーRUクウガは倒れ──無い。

 

『ガアアアア!』

「うあっ!」

 

 伸縮自在の右腕がジオウを殴り飛ばす。ジオウは半壊の建物へ突っ込んでいく。続いて足元にいたアクセルとゼロノスを薙ぎ払う様にして蹴り払った。二人は壁面に叩き付けられる。

 

「ぐあっ!」

「うっ!」

 

 そして、攻撃直後のビルドとクローズマグマを左の複腕が捕らえる。

 

「くっ!」

「離せぇ、この野郎……!」

 

 二人の胴体を掴む手がぎりぎりと締め上げていく。外装がその圧力に負け、内臓がどんどんと圧迫されていく。

 ドリルクラッシャーやクローズマグマナックルを打ち付けるが全く力が緩まない。

 意識が遠のき始め、抵抗する力も弱まっていく。

 

『アクセル!』

『スレスレシューティング!』

 

 半壊した建物から飛び出す無数のAの字型のエネルギー弾が、アナザーRUクウガの複眼に着弾した。

 流石に眼の硬さは甲殻よりも劣っており、着弾と共に炎上する眼を押さえてアナザーRUクウガは絶叫を上げる。それによりビルドたちを締め付ける力も弱まった。

 渾身の力で手を解き、抜け出したビルドとクローズマグマは地面に降り立つ。

 

『ガアアアア!』

 

 目を攻撃されたアナザーRUクウガは怒り狂い、ジオウが居る建物に拳を叩き付けようとする。

 割れた窓から飛び出すジオウ。その直後にアナザーRUクウガの拳が建物に打ち込まれ、崩壊させてしまう。

 ジオウも地面に着地するが、膝から力が抜ける。アナザーRUクウガの攻撃は重く、一撃受けただけで体を満足に動かせなくなる。

 アナザーRUクウガは眼を押さえていた手を離す。煙が昇っているが機能は失われていない。

 すると、アナザーRUクウガは顔を空に向けた。口を開き、そこから放つは黒炎ではなく黒煙。

 大量の黒煙が空に昇っていき、最高点まで達すると四散して何処かへ飛んでいってしまう。それが何度も繰り返されていき、その内、黒煙の塊の一つがジオウたちの近くに落ちてきた。

 黒煙は地面に触れると形を変え、それぞれ種類の異なる怪人たちと化す。

 

「これって!」

「不味い!」

 

 大量の怪人たちがアナザーRUクウガの能力によって生成されることに、ジオウたちは焦りを覚える。

 自分たちのことを心配し、焦っているのではない。逃げている人々が更なる危機に陥ることを意味しているのだ。アナザーRUクウガに苦戦しているジオウたちは助けに行くことも出来ない。仮に行けたとしても黒煙を撒き散らした範囲が広すぎてジオウたちでは数が足りない。

 黒煙から生み出された怪人たちが、ジオウたちの存在に気付き襲い掛かろうとする。だが、上から踏み下ろされたアナザーRUクウガの足が全員踏み潰してしまった。

 

「成程、仲間って訳じゃないのか」

 

 ビルドは軽い口調ながらもその区別の無さに戦慄する。

 平成ライダーも敵だが、目に映る動くものは全て敵。自分以外の全てを滅ぼすことしか考えない最悪の生物兵器がそこに居た。

 アナザーRUクウガが大口を開ける。黒い炎が溢れ出す。ダメージを受けた直後のジオウたちはすぐに動くことが出来ず、このままでは全員が炎の餌食となる。

 黒炎がジオウたちに吐かれる直前──

 

『スクラップフィニッシュ!』

『クラックアップフィニッシュ!』

 

 アナザーRUクウガの側頭部を蹴り飛ばすグリスとローグ。二人のキックを受けたことでアナザーRUクウガの頭が傾き、狙いが外れて黒炎がジオウたちの近くのビルを貫いて塵へと変える。

 

「カズミン! 幻さん!」

 

 不意打ちで蹴られたことでバランスを崩し、自らの炎の勢いを支えることが出来なくなりアナザーRUクウガは、隣にあった建物を巻き込んで転倒する。

 

「大丈夫か!?」

「何だあの化物は……」

 

 急いでビルドたちの下に駆け寄るグリスとローグ。ここに来られたのは偶然であった。人々を襲う怪人たちを次々に撃破していく内に空に向かって昇る大量の黒煙を発見。嫌な予感を覚えて黒煙の下へ向かうとアナザーRUクウガとそれに襲われているビルドたちを発見したのだ。

 

「話は──危ない!」

 

 ビルドがグリスとローグを突き飛ばす。そこに飛来する大きな瓦礫。見れば倒壊した建物から上半身を起こしているアナザーRUクウガ。その四本の手には大小の瓦礫が握られていた。

 

「来るぞ!」

 

 投擲。単純でありながらも強力な攻撃手段である。それも人の大きさを上回る瓦礫や、それよりも小さいが鉄筋などで補強された瓦礫が、常識を遥かに超えた速度で投げ放たれれば、それは脅威としか呼べない。

 アナザーRUクウガが握り砕いた瓦礫に黒炎を吐きかけて燃やし、それを音速に近い速度で投擲。砕けているせいで散弾の様に広範囲に散らばり、ジオウたちの全身を打ち付ける。

 

「うあああああ!」

 

 激しいダメージを与えられるジオウたち。

 アナザーRUクウガは瓦礫を吹き飛ばしながら跳ぶ。その口に黒い灯りを点しながら。

 

「避け──」

 

 誰かが避けろと言おうとしたが間に合わず、ジオウたちに向けて黒炎が吐かれる。

 地面に達すると同時に黒炎は大爆発を起こし、その爆炎にジオウたちは呑み込まれた。

 

 

 ◇

 

 

「おいおいおい! どうなってんだこりゃあ!?」

 

 フータロスはシンゴを庇う為に背後へ移動させる。フータロスたちの周囲は無数の怪人たちで埋め尽くされていた。

 突然黒い煙が昇ったかと思えば、それが雲になり、そこから黒い塊が降って来たかと思えば怪人たちに変化した。

 ゼロライナーで逃げようとしたが、運悪くゼロライナーの屋根に黒い塊が落ち、怪人たちとなって入口を塞いでしまう。

 フータロスもそこらの怪人たちよりも実力は上だが、数の不利を覆す程強くは無い。

 沈静化したかと思った怪人たちの大量発生。あちこちで再び一般人たちの悲鳴が聞こえてくる。

 

「くそっ! ティードの仕業かっ! あいつらやられちまったのかよ!?」

 

 最悪の展開を思い浮かべるフータロス。だが、すぐに頭を振ってその展開を振り払う。付き合いは長くは無いが、短い時間でもジオウたちの強さを見てきた。その強さを疑う様な真似はしたくは無い。

 

「──ったく」

 

 フータロスは仕方ないといった態度で言葉を洩らす。

 

「シンゴ。今から俺はどうにかなっちまうかもしれねぇ」

「え?」

「何せ何回も繰り返してきた中で初めてやることだからよぉ。どんな結果になるかは俺でも分からねぇ」

 

 フータロスの言葉には重い覚悟があった。だが、決して暗い覚悟では無い。困難によって閉ざされた道を切り拓こうとする前向きな覚悟であった。それは、繰り返す時間の中で何度も見てきた仮面ライダーたちが決死で挑む覚悟に似ていた。

 

「アタルっ! お前の願い! もう一度叶えてやるぜぇぇぇぇ!」

 

 フータロスの全身が輝き始める。

 

 

 ◇

 

 

 怪人たちに追われ、子供たちは逃げる、逃げる。当てもなく無く逃げ続ける。逃げ延びる為に細い道を、狭い道を通って逃げ続けた結果、四方を壁で囲まれ逃げ道を失った。

 逃げてきた道には怪人たち。壁に追い込まれた子供たちの恐怖を煽る様にゆっくりと詰めていく。

 恐怖で怯える子供たちは強く願った。助けてくれるヒーロー。

 怪人たちの魔の手が子供たちに伸びようとしたとき、上空から現れる何もかが怪人の一人を蹴り飛ばし、滲み出てきた様に突然現れたもう一人は、重力など無い様な不可思議な動きで怪人の懐に飛び込んで殴り飛ばす。

 その姿に子供たちは叫ぶ。何故なら彼らは子供たちが良く知るヒーロー。

 

 ゲームの力で戦う、ドクターライダー。

「エグゼイド!」

 

 偉人の力! パーカーを着た、お化けのライダー。

「ゴースト!」

 

 

 ◇

 

 怪人たちに追い込まれた人々。しかし二色の仮面ライダーが現れ、怪人たちを瞬く間に蹴散らしていく。

 その姿に人々は感極まった様に叫ぶ。

 

 メモリの力で戦う、2人で1人の探偵ライダー。

『ダブル!』

 

 

 ◇

 

 

 誰かが叫んだ。仮面ライダーが来てくれたと。それが逃げ惑う人々の中へ伝わっていき、誰もが願った。仮面ライダー、助けてくれと。

 歓声が上がり、人々が道を開ける。その道を通っていくのは──

 

 ウェイクアップ! 受け継がれる力、ヴァンパイアのライダー。

『キバァァァ!』

 

 ロックシードの力で戦う、フルーツ武者ライダー。

『鎧武っ!』

 

 

 ◇

 

 

 絶望に覆われていた人々の心に希望の光が灯り始める。怪人たちに襲われこの状況を打破する存在が現れたのだ。だからこそ人々はその名を叫ぶ。

 

 目覚める魂、大地の力! 進化し続けるライダー。

『アギト!』

 

 鏡の世界でライダーバトル! 赤いドラゴンライダー。

『龍騎!』

 

 魔法の指輪でショータイム! 宝石のライダー。

『ウィザード!』

 

 

 ◇

 

 

 遠くから眺める人々。その眼にはさっきまであった絶望の色は無い。あるのは羨望と憧憬、そして童心であった。

 

 変身コードは5・5・5! 携帯電話で変身するライダー。

『ファイズ!』

 

 カードに封印した、アンデッドの力で戦うライダー。

『ブレイド!』

 

 鬼の力! 音の力! 太鼓で戦うライダー。

『響鬼!』

 

 

 ◇

 

 

 人々は興奮に満ちた様子でその名を叫ぶ。テレビの中という触れるには遠過ぎる筈の存在が、自分たちのすぐ近くを通っていくこの現実に興奮を抑えることが出来ず。

 

 キャストオフして超加速! ビートルのライダー。

『カブト!』

 

 カメンライド! 様々な仮面ライダーに変身するライダー。

『ディケイド!』

 

 宇宙キター! スイッチの力で戦うライダー。

『フォーゼ!』

 

 

 ◇

 

 

 声が枯れるまで人々は声援を送る。自分たちの為に現れてくれたヒーローたちに、少しでも報いる為に。

 

 メダルのコンボでタカ・トラ・バッタ! 動物パワーのライダー。

『オーズ!』

 

 シフトカーの力で戦う、赤い車の警察ライダー。

『ドライブ!』

 

 

 ◇

 

 

 逃げ惑う人々の波。それに逆らう様にして前へ前へと進む一人の青年が居た。

 彼が進む先には大量の怪人たち。だが、それは彼の足を止める理由にはならない。

 

「行くよ、モモタロス」

 

 青年──野上良太郎は、デンオウベルトを腹部に巻き付けると、四色あるボタンの内赤のボタンを押す。警笛の様な音がベルトから鳴り響く。

 

「変身」

 

 ベルト中央にライダーパスを通過させる。

 

『SWORD FORM』

 

 良太郎の体を黒のアーマーで包み込むと周囲に赤の装甲が形成される。胸部、肩に装着されると顔面中央にあるレールに桃型の装甲が走り、定位置に着くと左右に割れて仮面と化す。

 

「俺、参上!」

 

 響き渡る程の声量。その声に逃げ惑っていた人々は足を止め、彼を見た。

 同じくそれを見ているのはデンライナーへ避難しているアタル。アタルは、誰にもその役目は譲りたくない為に真っ先に叫んでいた。

 

 時の列車に乗って、イマジンと戦うライダー。

「電王ぉぉぉぉぉ!」

 

 

 ◇

 

 

 輝きを発していたフータロス。しかし、その輝きは薄れていき、最後には消えてしまった。消えると同時にフータロスは崩れ落ちる。

 

「しっかりして!?」

 

 フータロスに声を掛けるシンゴ。

 

「シンゴ……逃げろ……」

 

 応じるフータロスの声は弱々しく生気が無い。

 

「俺が……何とかすれば……お前一人ぐらい……」

「そんなの、出来ない……」

 

 フータロスを犠牲にして逃げるなど、シンゴには無理であった。

 

「ああ、くそ……誰か助けてやってくれよ……シンゴを……」

 

 最後まで願うのは自分が助かる為のものではなく、シンゴを助ける為の願い。

 

「聞こえたよ、君の声」

 

 フータロスとシンゴの後ろ。いつの間に誰かがそこに居た。シンゴが振り返る。

 立っていたのは青年。初めて出会う筈なのに、シンゴには何故か既視感があった。

 青年はシンゴに笑顔を向ける。人を安堵させる様な優しい笑顔であった。

 

「君が大切だと思うモノを、俺に守らせてくれないかい?」

「へっ……こう言うしかねぇだろう……助けてくれ、仮面ライダー」

 

 青年は両手を腹部に当てる。浮き出てくるベルト──その名はアークル。

 斜め前に右手を突き出し、それを正面に移動させながらアークルに添えた左手を沿わせてアークル左側面に持っていき叫ぶ。

 

「変身っ!」

 

 右手をアークル左側面に運び、両手を左右に広げると、青年の体は変化する。

 黒の体。赤い装甲。金の三本角と赤の複眼。

 ティードはシンゴに平成ライダーを知らないと言っていたが、彼は一人だけ知っていた。どんな仮面ライダーで、どの様な性格かまでは知らない。ただ、その仮面ライダーを見ることを心待ちにしていた。

 

 古代のベルトで超変身! 笑顔を守るライダー。

「クウガだっ!」

 

 




単純な戦闘力ならアナザーUクウガよりアナザーRUクウガの方が強いですが、アナザーRUクウガの方は頭の中が空っぽなので総合的に見たら両者は互角という設定です。

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ

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