仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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長かった劇場版もこれでお終いです。次回からは本編のお話です。
落差が酷いことになりそう……。


HEISEI RIDERS FOREVER

 大きな爆発が消え、後には何も残らない。つい先ほどまでそこにいたアナザーRUクウガの痕跡は何一つ無く、存在そのものが幻であったかと思わせる。

 

「終わった……」

「はぁー……疲れたー」

 

 並び立つ平成ライダーたち。その中でジオウとクローズビルドは疲労が籠った息を吐く。ティードとの長い戦いが終わったことで一気に疲労感が押し寄せてくる。だが、同時に達成感も感じていた。

 

「これで全て終わったんだな」

「この世界は元に戻るってことでいいんだよな?」

 

 ジオウとクローズビルドの側に、アクセルブースターとゼロノスZが寄って来た。

 

「俺も詳しく知りたいな。あのアナザーライダーを倒したら、全部元通りになるのかよ?」

「そこんとこどうなんだ?」

「それは──あれ、今は龍我の声、しなかった?」

 

 ジオウはここには居ない万丈の声が聞こえ、彼の姿を探す。

 

「ここだよ、ここ」

 

 クローズビルドが自分を指差す。

 

「え? でも、戦兎の声もしたけど……?」

「詳細は省くが、今俺と万丈は合体した状態にある」

「ええ!? 何それー!?」

 

 戦兎と万丈が融合したクローズビルドを驚いた様子でまじまじと見るジオウ。一方でアクセルブースターとゼロノスZは特に反応を示さない。

 

「何か二人ともリアクションが薄いね」

「同じ様な変身をする知り合いがいる」

「俺も似た様なものを知っているからな」

「ええ……そうなの? 世界って広っ」

「それについて詳しく教えてくれないか?」

「おい、興味持ってんじゃねぇよ! つーかさっきの質問の答えはどうなんだよ? これで全部元通りになるのか?」

 

 脱線し始めた話を強引に戻す。

 ジオウはクウガライドウォッチを取り出し、皆に見せる。

 

「このライドウォッチにもクウガの力が宿っているんだ。ティードは倒したけど、この力を返さないと仮面ライダーは虚構の存在って歴史は変わらないと思う……」

 

 アナザークウガは倒した。本来ならば元の歴史に戻るが、ライドウォッチにクウガの力があることで2000年の遺跡のミイラにクウガの力が戻らず、歴史は変わらない。

 

「じゃあ、それを元の場所に戻したら今度こそ全部解決って訳なのか?」

「うん」

 

 指摘された通り、タイムマジーンを使って遺跡のミイラにクウガライドウォッチを使えば、虚構の存在である仮面ライダーは実在の存在となる。

 

「それは、君が持っていた方が良いと思うよ」

 

 それを止めたのは、クウガ本人であった。

 

「でも……」

「こっちの事情は、俺も大体知ってる。不思議な気分だよね、俺たちがテレビの中のヒーローだなんて」

 

 戸惑っている様子は無い。そういう存在であることを受け入れているのか落ち着いた声であった。

 

「だけど、それでいいと思う。辛いこととか、哀しいこととかが全部話の中だけで起こったことなら、本当に泣いている人は居ないってことだし。やっぱりさ、泣いているよりも笑顔でいて欲しいし」

 

 仮面ライダーとして戦ってきた者たちならば知っている。ジオウはアナザーライダーとの戦いで傷付く人たちを見た。ビルドは世界が分断され、争う人たちを見た。アクセルは力に溺れて自分を見失う人たちを見た。ゼロノスは、過去を変えられ消えていく人たちを見た。

 戦いの中で起こる悲劇や惨劇を。もし、仮に全てを元に戻したら、この世界の人々はそれを知ることとなる。

 それを見過ごせるか、否か。答えは一つしかない。

 

「──うん。俺もそう思う」

 

 ジオウの選択に誰も異を唱えない。彼らはこの世界で、フィクションであることを選んだ。

 クウガはジオウの選択に頷く。仮面であったも、ジオウには彼が笑っている様に見えた。

 

「その力で誰かの笑顔を守ってあげてね。俺も頑張るからさ!」

 

 クウガからジオウへと送られるサムズアップ。すると、クウガの姿が薄れていく。

 この世界に留まれる限界が来た様子。他の平成ライダーたちの姿もまた薄れ始めていた。

 残された時間、それぞれのライダーたちが最後の言葉を交わしていく。

 アクセルブースターはスカルの下へ行く。その最中に変身を解除する。

 

「……俺は娘の下に帰ってやることは出来なかった」

 

 照井が来ると、スカルは目深に帽子を被り直し、ポツリと呟く。

 

「お前はちゃんと帰ってやれ」

 

 約束を果たせなかったスカル。だからこそ、彼はこの世界に現れた。義息子を娘の下へ帰す為に。

 

「──娘さんは俺が必ず幸せにします」

 

 義理の父への誓い。順序が逆になってしまったが、言えることが出来た。

 

「そうか」

 

 スカルの返答は、短くも満足そうであった。

 

「左に何か伝えることはありますか?」

「──無い。俺の教えたことは、全部あいつの中で生きているからな」

 

 伝えることが無い。それこそが師から弟子への全幅の信頼と言えた。

 スカルの姿が薄れ、光の粒へと変わっていく。

 

「ああ、そうだ」

 

 スカルは何かを思い出し、帽子を少し上げて照井の方を見る。

 

「偶には亜樹子と呼んでやれ」

 

 スカルの姿に鳴海荘吉の姿が重なる。その顔は穏やかな表情をしている。去り際の言葉に不意打ちを受け、固まっている照井の様子に苦笑しながら鳴海荘吉は消えていった。

 去ってしまった鳴海荘吉に向け、感謝の念を込めて照井は深々と頭を下げる。

 薄れいくビルド。その後ろには既に変身を解いた戦兎たちが並んでいた。

 

「中々興味深い体験だったよ。別世界に行くのは初めてじゃないけど、この世界での体験も新鮮だった」

 

 ビルドは振り返ることはせず感想を述べる。

 

「──ありがとな。助けてくれて」

 

 真っ先にビルドへ礼を言ったのは万丈であった。その礼の言葉に驚いたのか、ビルドは首だけ後ろに向ける。

 

「驚いたな。僕のことを嫌っていたと思っていたよ、万丈龍我」

「別に今でも好きじゃねぇよ。でも、だからって助けてもらって礼を言わない程腐っちゃいねぇよ」

 

 不貞腐れた顔をする万丈。その顔を見てビルドは小さく肩を揺らす。笑っている様子であった。

 

「俺も礼を言うぞ、葛城」

「俺もな。結構、ビルドが様になってたぜ」

 

 幻徳と一海もまた助けられたことを感謝する。

 

「そんなに感謝される様なことはしていないさ」

 

 それに対し、ビルドの態度は素っ気無い。

 

「……最後に訊いていいか?」

「何だい?」

 

 戦兎は問う。

 

「どうして俺たちを助ける気になったんだ?」

 

 科学を信奉し、他人と一線を引いていた葛城巧がビルドとして自分たちを助け、共に戦った理由を戦兎は知りたかった。

 

「……気紛れだよ。少しだけなってみたくなっただけさ」

 

 ビルドの姿に葛城巧の姿が重なり合う。

 

「愛と平和の仮面ライダーってやつにさ」

 

 葛城巧は、少しだけ照れ臭そうに笑うと光となって消えてしまう。戦兎の中へ帰っていったのとも言える。

 葛城巧の返答に、皆は少し驚いた表情をするが、すぐに納得して笑う。

 

「何だよ、出来るじゃねぇか、仮面ライダー」

 

 

 ◇

 

 

「桜井さん!」

 

 変身を解いた良太郎は、急いでゼロノスAの下へ走り寄っていた。彼の姿もまた他のライダーと同様に消え始めている。だが、他の仮面ライダーとゼロノスAでは事情が違う。既に彼は存在しない事となっている。もし、この機会を逃せばもう二度と会えない気がしたのだ。

 しかし、ゼロノスAは手を突き出して良太郎を制止する。近付いてはならないと無言で告げていた。

 

「何で……」

 

 ゼロノスAは突き出した手で指差す。その先にはゼロノスZ。桜井侑斗は彼であり、今の自分が桜井侑斗だった者と暗に告げていた。

 存在しない者に存在する者が関わってはいけない。ゼロノスAはその現実を厳しく教える。

 ゼロノスAのやることを納得は出来ない。納得出来ないが、良太郎はそれを涙を堪えて見送られるだけの心の強さを持っていた。

 

「桜井さんと、もう一度会えて……嬉しかったです」

 

 ただ、再会出来た喜びだけ告げることは止めることは出来なかった。

 ゼロノスAの姿が薄れ、そこに未来の桜井侑斗の姿が重なる。相変わらずコートと帽子を二重に被っていたが、消える間際徐に帽子を取る。

 その際、ゼロノスZは目を逸らしていた。何をするか未来の自分だからこそ分かった為の行動である。それにここから先は彼らの為だけの時間だからだ。

 未来の桜井侑斗は口だけを動かし、良太郎へ何かを告げる。受け取った良太郎は涙を押さえ込んだ声で──

 

「……はい! いつか、未来で……!」

 

 未来の桜井侑斗が消えたのが、ゼロノスZにも伝わって来た。きっと最後に見せた彼の顔は笑っていただろう、ゼロノスZには見なくとも分かっていた。

 

 

 ◇

 

 

 クウガを含めた平成ライダーたちが消えていく。残されたのはソウゴたちのみ。だが、ソウゴたちの姿もまた消え始めていた。

 

「そろそろ俺たちもお別れみたいだね」

「だな」

 

 今生の別れかもしれないというのに、彼らは穏やかであった。

 

「どうなるかと思ったが、思い返せば悪い出会いじゃなかった」

「そうだね。俺も、戦兎たちや照井刑事、侑斗と会えて良かった」

 

 皆が戦いを振り返り、それぞれの感想を洩らす。そんな中で何故かゼロノスZだけは皆から一歩離れた場所に立ち、変身を解除せずにいた。

 

「侑斗、どうかした?」

「いや……別に」

 

 いつも通り素っ気無い態度の侑斗。心なしか声に力が無い気がした。

 

「全部元通りになったら、シンゴも今日のことを忘れちゃうのかな……?」

「まあな。でも、現実にいるとかいないとかよりも誰か一人の記憶の中に少しでも残るなら、それでいいさ」

 

 この世界中から自分たちの記憶が無くなったとしても、共に戦った者たちの中に少しでも残っていればいい。戦兎は達観した様に語る。

 

「ふうん。なら、俺もそんな王様になろうっかな? ああ、そうだ。あの話覚えておいてよ?」

 

 戦兎たちを自分の王国にスカウトした話を出す。

 

「ふっ。記憶に残しておこう」

 

 ソウゴたちの姿が足元から消え始める。

 

「新世界に戻ったら、また他人かなカズミン、幻さん?」

「あん? どういう意味だ?」

「何を言っている桐生戦兎?」

「向こうでまた会おうぜ! 二人とも!」

 

 戦兎たちがこの世界から消える。

 

「妻や友に話ことが出来たな。──また会える日を願っている」

「じゃあね、照井刑事」

 

 続いて照井の姿も消えて無くなる。

 

「侑斗! シンゴのこと任せていい?」

「ああ。ちゃんと過去に送っておく」

「でも、最後くらい会っておけば良かったかな? 折角、平成ライダーも揃ってたし」

「十数年分のネタバレなんて御免だ」

「ははは、かもね」

 

 ソウゴの体も胸まで消えかける。

 

「侑斗! またね!」

「──ああ」

 

 ゼロノスZはベルトからゆっくりとゼロノスカードを引き抜く。カードは朽ち果てる様にボロボロに崩れて消失する。

 

()()()()()

「え?」

 

 ソウゴの姿が消え、侑斗と良太郎を残してこの世界から仮面ライダーが消える。

 

「侑斗……」

「折角、友達になれたのに……」

「はっ、何情けない顔してんだよ、野上、デネブ」

 

 心配して声を掛けるデネブと良太郎に対し、侑斗は空元気の様に笑う。

 

「こんな事、どうってことも無い」

 

 ゼロノスカードにはリスクが伴う。緑のゼロノスカードは未来の桜井侑斗の存在を代償として、そして、赤のゼロノスカードは現在の桜井侑斗を代償とする。赤のゼロノスカードが消滅することは、即ち現在の桜井侑斗の記憶がソウゴたちの中から消滅したことを意味した。

 

「でも……!」

「いいんだよ、これで」

 

 ゼロノスの変身を最後まで解かなかったのは、侑斗の未練の表れであった。肩を並べて共に戦った者たちである。それに対し何の感傷も抱かない程侑斗は薄情では無い。

 

「これでいいんだ」

 

 ソウゴたちの記憶から消え去ったという事実に耐えられない程侑斗は弱くない。気持ちを切り替えて、最後にソウゴから頼まれたことを全うしようとする。

 

 

 不意に、世界がグニャリと歪んだ。

 

 

「──は?」

 

 気付けば草木の無い荒野へ立っていた侑斗。デネブも良太郎も居ない。

 誰か居ないか視線を動かした時、ソレは居た。

 黄金の装飾が施されたジオウ──だが、発する威圧感は別物。

 一目で気付いた。ソレが話に聞いたオーマジオウであることに。

 

「──お前がオーマジオウか?」

「そうだ」

 

 低く威厳のある声。ソウゴの声を知っているせいで尚更違和感がある。

 

「最低最悪の魔王の?」

「否、私こそが最高最善の魔王だ」

 

 聞いていた肩書を否定し、真逆の言葉で自らを称するオーマジオウ。

 侑斗は歩き出し、オーマジオウの目の前に臆する事無く立つ。

 

「最高最善の魔王ってのは、こんな景色がお好みなのか?」

 

 人気の無く、緑も無い、生命を感じさせない荒野が広がる光景を指して皮肉を言う。

 

「それでも私こそが最高最善の魔王──だが、どんなに言葉を並べたとしてもお前には届くことは無いだろう。故に見極めるがいい。私がどんな存在であるのかを」

「何だと?」

 

 侑斗は聞いていたイメージと、目の前のオーマジオウとの違いを感じ始めていた。もっと高慢な存在と思っていたが、威圧感はあるものの妙に話が通じている。

 

「俺に、お前がどんなものか調べろっていうのか?」

「百聞は一見に如かず。その眼で見極めることが最良と思ったまでのこと」

 

 侑斗は睨みつける様にオーマジオウを見る。

 

「お前が未来をこんな風にした原因なら、俺がお前を倒す」

「そう思ったのならばすれば良い。辿る歴史の中で私が最低最悪の魔王であると判断を下したのであれば、私は素直にそれを受け入れよう」

 

 やはり違和感しかない。世界を滅茶苦茶にする魔王が、こんなにも話が通じる相手なのだろうか。

 

「──分ったよ。お前がどんなものか俺が見極めてやる。……それを言う為だけに俺をここに呼んだのか?」

「それも理由の一つ。だが、本命は──」

 

 オーマジオウがドライバーへ手を伸ばす。思わず構える侑斗であったが、予想に反してオーマジオウは自らドライバーを外した。

 変身が解除されると、そこには初老の男性が立っていた。老いた白髪の男性。先程までのオーマジオウと同一視出来ない、まるで痩せた老木の様な男であった。

 

「お前が、未来の……常盤ソウゴなのか……?」

 

 信じ難い。侑斗の表情はそう言っていた。オーマジオウは現在の常盤ソウゴから五十年後の未来で君臨しているという。歳にすれば六十八才の筈なのだが、それ以上に老いて見えた。

 

「何で変身を解いたんだよ……」

「仮面を付けたままでは無礼と思ったまでのこと」

「そこまでして俺に何をしたいんだよ」

「礼を言う」

「なっ」

 

 思わぬ言葉に侑斗は言葉を詰まらせてしまう。

 

「若き日の私と共に戦ってくれたことに対し、礼を言う」

「……大したことなんかしてねぇよ」

 

 ぶっきらぼうに返す侑斗。まさか、感謝の気持ちを伝えられる為に連れて来られたとは予想外であり、それ以上のことは言えなかった。

 

「大げさでは無い。己の存在を削りながらも未来の為、戦ってくれた戦士を私は決して忘れはしない」

 

 その言葉を聞いて、戦兎が別れる前に言った言葉を思い出す。

 

『現実にいるとかいないとかよりも誰か一人の記憶の中に少しでも残るなら、それでいいさ』

 

 侑斗は小さく笑い、いつも通りの顔つきでオーマジオウを見る。

 

「やっぱり、大げさなんだよ」

 

 

 ◇

 

 

 照井が目を開けるとそこは自宅であり、心配そうに見つめる亜樹子がこちらを覗いている。

 

「どうかしたか?」

「良かったー! 竜君、戻って来たー! 帰ってこなかったらどうしよかと思って翔太郎君にも電話しちゃったよー! 

 

 無事に戻って来た照井に感極まって抱き付く亜樹子。

 

「ああ、大丈夫だ。心配を掛けたな、所……亜樹子」

 

 突然名を呼ばれ、亜樹子は赤面する。

 

「ど、どどど、どうしたの!? いきなり名前で呼んで! いや、嬉しいけど! 夫婦なら当然だけど!」

 

 混乱する亜樹子に、照井は微笑む。

 

「偶には言わないと、と思って」

「竜君……んー」

 

 亜樹子は唇を突き出してキスをねだる。

 

「おい! 亜樹子! 照井がって居るじゃねぇか!」

「おや? 二人は何をしようとしているんだい?」

 

 家の中に慌てて飛び込んでくる左翔太郎と、その相棒であるフィリップ。居なくなったと聞いて急いで駆け付けたというのに、二人がイチャつく姿を見せられて思わず怒鳴る。

 

「きゃっ! 翔太郎君にフィリップ君! 何で!?」

「何でってそっちが呼んだんだろうが!」

 

 ギャーギャーと騒がしくなる照井宅。しかし、照井はそれを微笑ましく見ていた。

 

「丁度良かった。皆に聞いて欲しい話がある」

 

 照井の言葉に喧騒が収まる。

 

「話って何だ?」

「今でも夢みたいな話だと思っている。だけど、本当にあったことだ。あれは──」

 

 

 ◇

 

 

「戻って来たな」

「だな」

 

 戦兎と万丈は、丘の上の公園のベンチから街を見下ろしていた。やはりと言うべきか、向こうの世界で一緒に戦った一海、幻徳から記憶は失われ、新世界での記憶しか残っていなかった。

 寂しいという気持ちが無いと言えば嘘になるが、それでも無事な姿を見て取り敢えず安心は出来た。

 

「これからどうする?」

 

 万丈は先のことをパッと思いつかず、戦兎へ聞く。

 

「取り敢えずはこれだな」

 

 戦兎はボイスレコーダーを万丈に見せた。

 

「あ、それ。またやるのか?」

「今度は番外編だ。あの世界での戦いもきっちり記録しておかないとな」

 

 戦兎はボイスレコーダーのスイッチを押し、録音を始める。

 

「天っ才物理学者桐生戦兎と、そのお供のプロテイン大好き万丈龍我」

「プロテインを馬鹿にすんな! 筋肉にはすっげー大事なんだぞ!」

「ある日、突然異なる世界へ飛ばされてしまう」

「本当に唐突だったよな」

「そこで出会ったのは法則も姿も全くことなる仮面ライダーたち」

「人のこと言えねぇけど、変わったもんで変身する奴らだったなー」

「その仮面ライダーたちと出会った戦兎たちはどうなるのか? さあ? どうなる番外編!」

 

 

 ◇

 

 

 2018年。某所。とある兄弟が雑談をしながら歩いていた。

 

「っていうか本当に兄さんは二号ライダーが好きだよね?」

「いや、確かにアクセルとゼロノス、クローズは好きだよ。でも、ちゃんとジオウもビルドも好きだって。ああ、あとゲイツ、グリス、ローグも」

「うーん。ジオウはまだ始まったばかりだから好きだって言い切れないなー」

「最後にはきっと好きになってるよ」

 

 二人の兄弟──シンゴとアタルは仲睦まじい様子。

 シンゴは侑斗たちによって無事に過去へ戻ることが出来た。そして、その日から十八が経つ。

 今日は、シンゴが攫われた未来と同じ日。やはり、何か起こることは無かった。仮面ライダーはテレビの中の存在。それは今日も変わらない。

 でも、シンゴだけは知っている。仮面ライダーは実在し、今日もどこかで誰かの為に人知れず戦っていることを。

 

「──忘れないよ」

「何か言った? 兄さん」

「何も」

 

 誤魔化す様に笑うシンゴ。

 

「あーあ。ヒーローショーとかじゃなくて本物の仮面ライダーに会えたらなー」

「もしかしたら会えるかもな」

「何? 子供っぽいってバカにしてる?」

「そんなことは無いよ」

 

 二人は笑い合いながら去っていく。その様子を影から眺めていたのは──

 

「お前の願い、もう叶えてやんねぇぞ」

 

 

 ──フータロスは平穏な毎日を送る兄弟を満足そうに見た後、その場から去っていく。

 

「おい」

 

 そんな彼を呼び止める声。

 

「連れて来たのはいいが、この後どうするんだ?」

 

 侑斗がゼロライナーからフータロスを見ている。

 

「どうすっかなー。特にやることもねぇし」

「ならちょっと手伝え」

「俺が?」

「また手を貸せって言ってんだ」

「フータロス、侑斗はこんな風に言っているが、本当はフータロスを放っておけないんだ!」

「デーネーブ!」

 

 顔を出したデネブの頭をガンガンと殴る。

 

「くくくく、いいぜぇ。暇だしな」

 

 フータロスの側にゼロライナーが停車し、フータロスが中に乗り込む。

 

「で? 何をするんだ?」

「調べ事だ。オーマジオウがどんな奴なのかをな」

 

 

 ◇

 

 

「それで? 思い出したのか? ジオウ」

 

 クウガライドウォッチ、Wライドウォッチと見つめ合っているソウゴへゲイツが尋ねる。

 

「ぜんぜん」

 

 首を横に振って全く思い出せないこと教える。

 仮面ライダーがテレビの中だけに存在する世界へ行って、そこで戦兎たちと照井と共にタイムジャッカーのティードと戦った。完璧に思い出している筈なのだが、それでも忘れている様なことがある。ソウゴはそれが気になってしょうがなかった。

 

「忘れているなら最初から大したことじゃないんだろう」

「そんなこと無いって。絶体大事な事だった筈だって」

「忘れているのにか?」

「それを言われると……」

「もう、ゲイツ。あんまりソウゴを責めないの。ソウゴも少し気分転換でもしたら?」

 

 ツクヨミが間に入ってゲイツを宥める。

 

「うーん……よし、決めた!」

「何を決めたの?」

「取り敢えず、このことは一旦置いとく!」

 

 自信満々に宣言するソウゴをツクヨミとゲイツは呆れた目となる。

 

「何だったんだ、今までの時間は……」

「思い出すのを止めるってこと?」

「それはちょっと違う。思い出せないっていうのは、きっと今がそういう時じゃないってことなんだ。だから、これ以上考えるのは止め」

 

 変な理屈を言うソウゴ。だが、自信有り気に言うせいで妙な説得力が生まれる。

 

「それに何となく分かるんだ……俺が忘れていること、きっと思い出せる気がするって!」

 

 忘却の彼方に消えた最後の戦友。それとの再会を、ソウゴは何の根拠も無いが、自らの感覚を信じて言い切ってみせた。

 

「かくして我が魔王は、クウガライドウォッチとWライドウォッチを得た」

 

 全ての光が消え、ウォズのみが照らされる。

 

「王への道を更に一歩近付いた。しかし、気になることもある。あの世界に現れたスーパータイムジャッカーのティード。彼の正体は一体何だったのか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けちゃったね、彼」

 

 薄暗い空間の中で響く優男の声。

 

「アナザークウガ……俺が倒す! 筈だった」

 

 太めの体系の男が鼻息を荒くする。

 

「折角、タイムジャッカー以上の力を与えて造ってやったというのに、まさか俺たちを裏切る真似をするとはな……」

 

 二人に挟まれ、荘厳な椅子に座る傲慢さと威圧を兼ね合わせた男が嘲りを含めた声を出す。

 

「平成ライダーの力如きに魅せられて、俺から玉座を奪えると思い上がれるとは思いもしなかったな」

「平成ライダーたちを全部綺麗に片付けられると思ったのに、結局元の予定で行く羽目になっちゃたね」

「問題無い……俺が全て潰す!」

「まあ、暫くの間は連中の不細工なお遊戯を見ているとしよう」

 

 玉座に座っていた男は立ち上がり、目の前に浮かぶ十二のライドウォッチへ歩いていく。

 

「ティード。俺たちを裏切ったことは万死に値するが、一応は褒めておこう。もう一つの目的は果たせていたからな」

 

 男は浮かぶライドウォッチの内、二つを掴み取る。

 

「せいぜい踊っていろ、平成ライダー共。お前たちの平成は俺が終わらせ、創り変える。新たな平成の創造──『創成』の時までな」

 

 男は高らかに笑いながら二つのライドウォッチを起動させる。

 

『BLACK RX!』

『シャドームーン!』

 

 




アナザーライジングアルティメットクウガ
身長:不明
体重:不明
特色/能力:再生能力/怪人の生成

アナザーゼロノス
身長:192.0cm
体重:89.0kg
特色/能力:ボウガンと剣を操る/記憶の消却

アナザーアクセル/アナザートライアル
身長:197.0cm/197.0cm
体重:93.0kg/82.0kg
特色/能力:バイクへの変形/高速移動

アナザーグリス
身長:203.0cm
体重:118.3kg
特色/能力:機械油を操る

アナザーローグ
身長:194.0cm
体重:110.8kg
特色/能力:頑丈な装甲

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