『覇王斬り!』
降り注ぐ光球の群に対し、ジオウⅡはサイキョーギレードから七色の光刃を放った。
威力はほぼ互角。だが、一つ相殺してもまだ残りは大量に残っている。
「はあああああ!」
全力でサイキョーギレードを振り、何回も繰り返し放たれる『覇王斬り』。その甲斐あって光球の数はみるみる減っていくが──
「私の存在を忘れているのか?」
ギンガがいつの間にかジオウⅡの前に移動している。光球を迎撃することに意識を割きすぎて、ギンガの動向から目を離してしまった。
「愚行の代償は自らの滅びと知れ」
円を描き、光球を生み出すとそれをジオウⅡに叩き付ける。光球は爆発せず、ジオウⅡを包み込む光の膜と化す。
「あ、か……!」
全身に圧し掛かる加重。立っていることがやっとであった。
棒立ちとなっているジオウⅡの前で、ギンガはドライバーに触れる。
『ギガンティックギンガ!』
ギンガの右足に、三色の光が収束していく。
「ふん!」
ジオウⅡに向けて放たれるギンガの横蹴り。それを胸部へと受けた瞬間、膜の内側で爆発が起こった。衝撃も爆風も膜の内に留められ、外へ一切影響を与えない。
「ジオウ!」
爆発に呑み込まれたジオウⅡの姿を見て、ゲイツは叫んでいた。
光の膜が消え、全身から煙を上げているジオウⅡが出てくる。変身はまだ解除されていない。ジオウⅡの防御力によって辛うじて耐えていた。もし、ジオウの姿だったら変身解除どころか命まで落としていたかもしれない。
「うう……」
ジオウⅡが呻き声を出す。意識も有る。だが、爆発の衝撃ですぐには動けなくなっている様であった。
ゲイツは自由に動かせる片手を用いて、ゲイツリバイブライドウォッチをジクウドライバーへ挿し、ゲイツリバイブへ再変身する。
『リ・バ・イ・ブ! 剛烈! 剛烈!』
「おおおおおおおお!」
ゲイツリバイブ剛烈と成ると、持ち前の怪力でギンガによって重くさせられたジカンザックスを持ち上げる様と試みる。
地面にめり込む程重くなっていたジカンザックスが、ゲイツリバイブの力によって持ち上がり、それによって出来た隙間から押し潰されていた手を引き抜く。
すぐにその手を二、三回程開いて閉じる。痛みは生じるが、骨折にまではなっていない。それが分かると、ゲイツリバイブはジカンジャックローを召喚する。
『パワードのこ!』
ゲイツリバイブへの変身。そして、武器を構えたことでギンガの標的がジオウⅡからゲイツリバイブに移る。
「愚かな。たとえ姿を変えようとも絶対的真理は変わることは無い。即ち、宇宙の前では全てのものが無に等しくなる」
「試してみるか?」
絶対的自信に満ちたギンガの発言に対し、ゲイツリバイブは挑発の意味を込めてジカンジャックローの丸鋸を唸らせる。
「はあ!」
ギンガへジカンジャックローを打ち込む。
「無駄だ」
ギンガの掌──そこに発生する力場が難なくそれを止めてしまう。丸鋸の刃は力場の中で空回りし続ける。
「おおおお!」
『のこ切斬!』
ジカンジャックローのトリガーを引き、力を解放させる。丸鋸から光輪が現れ、より激しく回転する。そこに剛烈の腕力を加え、力場を力尽くで押し通そうとする。
「ふぅん!」
ギンガも手の甲のもう片方の掌を当て、力場を二重に発生させジカンジャックローの進行を止める。
第三者から見れば、ゲイツリバイブの攻撃が防がれた絶望的な状況。しかし、ゲイツリバイブ当人は違う。
今までの攻撃は全て片手で捌いていた。だが、今の攻撃には両手を使って防いでいる。ギンガが『のこ切斬』を片手では防げない察した証。つまり、これ以上の力を加えればこの力場を破れることを意味している。
『フィニッシュタァァイム! リバイブ!』
なら更なる力を流し込む手段を取るだけ。
『一撃! タイムバースト!』
ゲイツリバイブライドウォッチの力がゲイツリバイブの右腕とジカンジャックローへ注ぎ込まれる。その力で腕力が増し、丸鋸の回転も猛烈となる。
「むう……」
ギンガが初めて呻きに似た声を出したかと思えば、両掌を下斜めへと移動させる。直線的な力に横からの力を与えられたせいでゲイツリバイブの攻撃も下斜めへ向かって放たれたしまった。
大きな隙が生じる。だが、ギンガからの追撃は来ない。何故なら、ギンガはゲイツリバイブの攻撃を逸らすと同時に後退していたのだ。ゲイツリバイブの攻撃を僅かでも危険と判断しての行動であった。
初めは得体の知れない不気味且つ圧倒的な力を持つ存在に思えたが、退くということは倒せる可能性があることに繋がる。その事実にゲイツリバイブの闘志は燃え上がる。
下がったギンガを追おうと、ゲイツリバイブライドウォッチに触れながら一歩踏み出した時──全てのものが静止する。
「一体何なのよ……どいつもこいつも!」
不機嫌な表情と共にオーラは不満を吐き捨てる。
アナザーイクサに制裁を与えようとしたら、いきなり訳の分からない仮面ライダーが現れ、周りを勝手に倒し始めた。そして、自分は蚊帳の外。我の強いオーラからすれば状況に振り回され過ぎて面白くも無い。
だからといってこんな意味不明な戦いに巻き込まれるつもりは無く、時間停止の間にこの場から離れようとする。
だが、その足を不気味な視線が止める。
背筋が粟立つのを感じ、視線を方へ目を向ける。こちらを向くギンガ。しかし、ピクリとも動かない。
「気持ち悪い……」
ギンガの無機質な目をそう評し、オーラはすぐに離れようとするがまた足を止める。
おかしい。オーラの記憶が確かならギンガはゲイツリバイブの方を向いていた筈。オーラの今居る位置は、ゲイツリバイブと反対側の位置である。
「時は──」
停止した中で響き渡るギンガの声。
「──宇宙があるからこそ生まれる。時が宇宙を支配することは絶対に無い」
その言葉を証明するかの様に停止した時間の中でギンガが動き出す。両手を動かし、エネルギーを溜めながら。
すぐに逃げなければと思ったが、ギンガの動きの方が早い。
「滅せよ」
オーラへ放たれる宇宙の力。だが、それがオーラに直撃することは無かった。側面から二つの別の力が衝突し、宇宙の力の軌道を変えてしまう。
軌道がずれた宇宙の力は、水面に着弾。噴き上がる水柱。時間停止中なので消える前に固定される。
「大丈夫か?」
「……スウォルツ」
いつの間にかオーラの側にスウォルツとウールが立っていた。スウォルツはオーラを見下ろしながら笑みを見せていたが、とても仲間に向ける様な友好的なものではなく、相手のプライドを大きく傷付ける嘲りを含ませたものであった。
「幾ら数が増えようとも星の数には遠く及ばない」
大袈裟な比較をしながら、新たに現れたスウォルツたちに光球を撃とうと構えを取るギンガ。
「ふっ」
スウォルツはそれを鼻で笑うと、二人を連れて一瞬で数十メートル先まで移動する。
「時間を動かせ、オーラ」
「何で──」
「意見は求めん」
オーラは舌打ちをしながら時間停止を解除する。
『スピードターイム!』
ゲイツリバイブがゲイツリバイブライドウォッチを百八十度回転。砂時計を思わせる粒子が落ち切り、青いゲイツリバイブの顔がライドウォッチ内に現れる。
『リバイ・リバイ・リバイ! リバイ・リバイ・リバイ! リバ・イ・ブ! 疾風! 疾風!』
厚みある重装甲は左右に展開して両翼となり、左手に持ち替えたジカンジャックローの丸鋸が収納され、代わりに一対の爪が上下に展開する。
『スピードクロー!』
ゲイツリバイブ疾風が一歩踏み込み宙へ飛び出すとそこから最高速度へ瞬時に達する。スウォルツたちに気を取られていたギンガは一手以上遅れてしまい、ゲイツリバイブの存在へ意識を向けた時、通り抜け様に脇腹へジカンジャックローの一撃を受けていた。
「ぬう……」
ダメージらしいダメージをようやく与えられたゲイツリバイブ。すぐに反転して高速の二撃目を繰り出す。
ギンガの背面からジカンジャックローを振り下ろす。
「ふん!」
しかし、二回目の攻撃にギンガは即座に反応。ジカンジャックローへ掌を翳し、生み出した力場によって攻撃を逸らす。
「ちぃ!」
あっさりと対応されたゲイツリバイブ。だが、そこで止まることなくギンガの頭上へ飛翔し、ジカンジャックローのトリガーを引く。
『つめ連斬!』
ギンガへ爪型の光弾を雨の様に降らす。
ギンガは両手を突き上げ、力場によって爪型の光弾を次々と逸らせていく。その間にゲイツリバイブは地上へ移動しており、無防備となっているギンガへ斬り掛かる。
「──あ?」
気付いたらギンガに体当たりをしていた。ジカンジャックローへ斬り、すぐに離脱する予定だった筈なのに。
(目測を誤っただと……!?)
同じ速度で仕掛けたゲイツリバイブ。それなのにここでおかしな失敗をしてしまう。
「言った筈だ」
ゲイツリバイブの体当たりを受けてもビクともしないギンガは、ゲイツリバイブの両肩を掴んで逃げられなくする。
「所詮貴様は地球の重力に身も心も縛られた者だと」
ギンガの両足が地面から離れ、掴まれていたゲイツリバイブも浮き上がる。初めて経験する浮遊感。ゲイツリバイブはこの浮遊感が無重力によるものだと悟った。同時に何故目測を誤ったのかも悟る。
あの時、ギンガは周囲の重力を通常よりも弱めていた。その重力に弱まった空間内に突っ込んでしまったことでゲイツリバイブは知らない内に感覚を大きく乱され、斬り掛かる前にギンガへ衝突してしまったのだ。
ギンガから逃れようと体を揺さぶって抵抗するが、ギンガの手はゲイツリバイブから離れず、高速移動を使えない。
急に浮遊感がゲイツリバイブを襲う。今までの上昇によるものではなく、落下による浮遊感。
飛行する暇も無く地面に落ちたゲイツリバイブ。起き上がろうとするが、体全てが鋼鉄と化した様に重く、思い通りに動かない。
「こ、れは……!」
ジカンザックスにされたことを全身にやられたゲイツリバイブ。重過ぎる体。そのせいで疾風の特色であるスピードが大幅に制限されてしまった。
ギンガが地面に降り立つ音が聞こえる。このままでは無抵抗のまま倒されると思ったゲイツリバイブは、ライドウォッチをまた百八十度回した。
『パワードターイム!』
剛烈へ戻ったゲイツリバイブ。上手く動かなかった体を起こすことが出来る。
「よし! これなら、動ける……!」
錘そのものと化した体を剛力で動かそうとするゲイツリバイブ。ギンガは徐に歩きながらドライバーに触れる。
『ダイナマイト──』
ギンガから発生する音声。ゲイツリバイブが身構え様とした時、既にギンガは目の前に立っていた。その右手は灼熱の光球によって覆われており、光球の表面ではプロミネンスが起こっている。
『サンシャイン!』
ゲイツリバイブの絶対防御と呼べる装甲へ打ち込まれるギンガの右拳。技の名に相応しく、打ち込んだ瞬間に太陽光が如く閃光が発せられ、直後に大爆発が起こった。
爆炎の中を突き破ってゲイツリバイブが地面を抉りながら滑る様に後退する。
「か、くっ……!」
ギンガの拳を受けた胸部装甲に手を当てながら膝を折る。最も装甲が厚い筈の胸部装甲が拳型に凹み、その周囲が一部融解して煙が上がっていた。高熱と爆発による二重の衝撃はゲイツリバイブに大きなダメージを与える。
間近で同じ衝撃を受けた筈のギンガは無傷であり、ゲイツリバイブに止めを刺すべく接近していく。
「ゲイツ……逃げて……!」
動けないジオウⅡがゲイツだけでも逃げる様に必死な声を飛ばす。
しかし、そこへ思いも寄らない助けが入る。
「グルアアアア!」
青い影──ガルルがギンガに飛び掛かる。
「はあ!」
ギンガは掌打をガルルの腹部に打ち込み、返り討ちにすると反対側の手を突き出す。無数の水弾が掌の力場によって軌道を変えられ、地面に命中。
バッシャーの水弾を目を向けずに対処するギンガ。その背後では拳を振り上げたドッガの姿。
「遅い」
ギンガの後ろ蹴りがドッガの巨体を蹴り飛ばす。
そこに振り下ろされる十字架の大剣。ギンガの掌がそれを防ぐ。
「貴様、女王である私を無視して何様のつもりだ?」
アナザーイクサが至近距離でギンガを睨む。
「女王である私こそがこの世を統べる唯一の法律!」
「私は宇宙の者。この世界の法律は通用しない」
傲慢に豪語するアナザーイクサを自らの理屈で一蹴すると、掌を突き出して大剣を弾き、がら空きになった胴体へ掌打を放つ。
数メートルも飛ばされるアナザーイクサ。しかし、倒れることはせず僕たちを動かし、ギンガを攻撃させる。
アナザーイクサによって偶然助けられる形となったジオウⅡとゲイツリバイブ。これによって稼がれた時間が次なる希望を繋ぐ。
「我が魔王!」
「一体どうなっている……」
「ソウゴ! ゲイツ!」
別行動していた名護たちがこの現場へ駆け付けた。空から落下するギンガを見て急いで来た結果、そこには予想外の混戦が行われていた。
「ウォズ君。ツクヨミ君。ソウゴ君とゲイツ君のことは任せた。私は彼らの援護を──」
名護の目には、ギンガと戦うガルルたちの姿が映っている。
「何故? 敵ではないのかい?」
「彼らはキバの仲間だ。今はアナザーイクサによって洗脳されている」
「そんな……」
「こんな戦いで彼らの命を散らせる訳にはいかない!」
名護はそう言った後。走り出す。その途中でイクサベルトを巻き、左掌へイクサナックルを押し当てた。
「変身!」
『F・I・S・T・O・N』
イクサと化した名護は、ギンガとの戦いに乱入する。
「またお前か!」
「いい加減彼らを解放しなさい!」
「自ら滅びの運命へと飛び込むか」
三つ巴の戦いが起こる中、ウォズたちはジオウⅡたちを助け起こす。
「ウォズ、ツクヨミ……」
「我が魔王。どうやら無事の様だ……」
「ここから、離れろ……奴は危険だ……!」
「一体何なのあのライダーは……!?」
見たところアナザーライダーでは無い。
「奴は……宇宙から来た……らしい」
「宇宙!? 嘘でしょ!?」
「宇宙……まさか、時空の歪みからこの世界に迷い込んだのか……?」
少ない情報からギンガの正体を推測するウォズ。
「はあ……はあ……」
「くっ……!」
ウォズたちが見ている前でジオウⅡらが立ち上がる。逃げる為では無い。ギンガへ挑む為に。
「そんな体で無茶よ! 二人とも!」
「名護さんが……戦っているのに……何もしない訳にはいかない……!」
「仕方なくとはいえ……師と弟子だ……師が戦っているのを黙って見ている弟子はいない……!」
まだ戦えると言う二人。ツクヨミはどうにか説得出来ないかウォズを見る。ウォズは溜息を吐きながらジオウⅡの前に立つ。
「戦うならトリニティの力を使うといい。それなら二人が負傷した分を私が背負える」
「ウォズ!」
ジオウⅡはウォズに言われた通りジオウトリニティライドウォッチを出し、ジクウドライバーにセット。その力を解き放つ。
『ジオウトリニティ!』
トリニティライドウォッチを回し、次々と仮面ライダーの顔が現れる。
『ジオウ! ゲイツ! ウォズ!』
光の柱に包まれるゲイツリバイブとウォズ。
『ライダーターイム!』
ゲイツリバイブは仮面ライダーゲイツの姿に戻り、ウォズは仮面ライダーウォズへ変身。
『トリニティターイム!』
ジオウⅡも仮面ライダージオウの姿へ戻る。
『三つの力! 仮面ライダージオウ! ゲイツ! ウォズ! トーリーニーティー! トリニティ!』
ゲイツとウォズが肩装甲のパーツとなったジオウへ装着され、ジオウの顔の『ライダー』の文字も三色の文字へと変化した。
ジオウトリニティとなった直後、ギンガが周囲を吹き飛ばし、イクサが近くに飛んで来る。
「これ程とは……!」
「名護さん、大丈夫?」
「ああ、私は──何だその姿は!?」
初めて見るジオウトリニティの姿にイクサが衝撃を受ける。
「まあ、ちょっと合体を……」
「合体? どういう意味だ? 説明しなさい!」
「後で! 後で話しますから! 今はあのギンガを!」
「ギンガ……それが奴の名か……」
イクサの脳裏にキバライドウォッチを渡された時のガルルの言葉が蘇る。
「あれが言っていた星なのか……?」
周囲を蹴散らしたギンガは両手をゆっくりと回す。
「全ては滅び、無へ帰す。仮面ライダーギンガの名の下に」
円を描いていた両手がドライバーに触れる。
すると、惑星を模した九つのエネルギーがギンガの周囲に発生する。この場に居る全員を一気に倒すつもりらしい。
ギンガの体が浮き上がる。それに合わせて周囲を飛んでいた惑星がジオウトリニティたちに向けて一直線に並んだ。
『ストライク・ザ・プラネットナイン!』
直列した惑星を通過し、そのエネルギーを突き出した右足へ集束させていく。
「ゲイツ! ウォズ! 行くよ!」
ジオウトリニティは、ライドウォッチの起動スイッチを三度押す。
『フィニッシュタァァイム! ジオウ! ゲイツ! ウォズ!』
ジオウトリニティもまた直列する惑星目掛けて跳び上がる。
『トリニティ! タイムブレーク! バースト! エクスプロージョン!』
ジオウ、ゲイツ、ウォズの幻影がジオウトリニティと重なり、右足から放つ輝きを強める。
「ふん!」
『はあああああああああ!』
ギンガとジオウトリニティ。宇宙と三位一体の力が衝突した結果、巨大な爆発が起こる。周囲のものは全て吹き飛ばされ、地形が変わる。
爆発が消え、大きなクレーターの中心でギンガが一人佇む。
「逃れたか」
ジオウトリニティたち、アナザーイクサたちが爆発に乗じて何処かへ逃げてしまった。様子を見ていたタイムジャッカーたちも居ない
「無駄だ。滅びの運命から逃れることは出来ない」
ギンガは動き出す。自らに課せられた使命を全うする為、この星を滅び尽くす。
「むっ……」
その時、ギンガが空を見上げる。分厚い雲が空を覆い始め、日航の光が遮り始めていた。それを見たギンガは、空に向かって飛び上がる。
目指すは雲の向こう。
◇
何とかギンガから逃れたソウゴたち。その先でタイムジャッカーたちと出会う。
スウォルツはギンガの正体を純粋な力の集まりが、仮面ライダーの姿になったものだと推察し、その力で地球を滅ぼそうとしていると語る。
ギンガの存在はソウゴたちにとってもタイムジャッカーたちにとっても好ましくないもの故にスウォルツは共闘を持ち掛けた。
ギンガの力を体感したソウゴたちにとって、その話は一蹴出来ないものであり、仕方なくスウォルツの提案を受けることとした。
同時にアナザーイクサへも共闘を持ち掛ける話となる。今は少しでも戦力が欲しい。アナザーイクサの力は無視できない。
その為、アナザーイクサこと祐子の下へ向かうのだが──
「跪け!」
共闘を受け入れる条件として祐子が出したのは、全員が自分の前で跪くこと。
スウォルツやソウゴたちはあっさりと膝を突くが、オーラ、ゲイツ、名護は全身から拒否の気を放っていた。
そこはスウォルツ、ソウゴたちが強引に跪かせることで何とか形にしようとする。
「離せ! 俺は君の師だぞ!」
余程屈辱的なのか全身の力で跳ね除け様とする名護。感情が昂り過ぎて一人称が『私』から『俺』になっている。そんな彼をソウゴ、ツクヨミ、ウォズが無理矢理押さえて取り敢えず全員が跪く形となった。
それを見て満足する祐子。だが、次の瞬間に信じ難い言葉が飛び出す。
「じゃあな」
ここまでして共闘を拒否。流石スウォルツも状況を分かっていない祐子に怒りを見せるが、『お前の意見は求めていない』とあっさり聞き流してしまう。
ギンガの存在についても無かったことにする。つまりは見て見ぬふりの現実逃避。その行動には、全員啞然としてしまった。
啞然とする皆を置いて、祐子は去ろうとする。その時、ソウゴは去り行く祐子を追い、彼女に尋ねた。自分のことを覚えていないか、と。
祐子は思案する様に黙った後、何かを思い出した顔でソウゴに言う。
「ああ、思い出した。お前か」
それは、ソウゴにとっての初恋の女性が祐子であることを意味する答えであった。
◇
結局祐子との共闘の約束は叶わなかったが、ソウゴは上機嫌であった。初恋の人──セーラさんと再会出来たのだから。
セーラさんとは、名前も知らない初恋の人にソウゴが付けた仮の名である。セーラー服を着ていたからという理由でセーラさんである。
だとするとやはり疑問が一つ。北島祐子は本当に冤罪なのか。
「名護さんはどう思います?」
名護は眉間に皺を寄せていた。
「私の方でも北島祐子の調査を進めている。当時の裁判記録やどんな人物だったのか、資料を集めて貰っている最中だ」
しかし、名護の胸中には、祐子本人を見てある仮説が生まれつつあった。
「なら俺が過去に──」
「うん? 過去?」
「い、いえ! 何でも無いです!」
タイムマジーンの存在が知られると色々と厄介と思ったのか、名護には内緒にし、ツクヨミはゲイツを引っ張って部屋の隅に連れて行く。
「名護さんにタイムマジーンのこととか知られると何かトラブルが起きそうだし、ゲイツはなるべく気付かれない様に過去へ跳んで」
「──確かに。分かった」
ゲイツは密かに過去へ跳び、事件の真相を調べることとなる。
◇
曇り空に覆われたこの町に一人の青年が現れる。
「ここか……」
青のジーンズに白のシャツ。シャツの上に白のジャケットを羽織った整った容姿の青年であった。
「成程。得体の知れない力を感じるぞ……」
青年の周囲を飛び回るのは、黒と赤の楕円形の体に黄色い大きな目のデフォルメされた蝙蝠。無機物な見た目だというのに生物の様に自由に空を飛んでいる。
「渡に行ってくれと頼まれた時は、どうかと思ったが納得だ」
左手に触れる。左手は黒の革手袋が填められており、それの端を掴んで気持ちと共に正す。
青年は蝙蝠を連れて町へ向かって行く。
新たな助っ人参戦となります。
ゲイツマジェスティが劇場公開されましたね。早くDVDにならないかなー。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ