仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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アナザーイクサ編は次でラストとなります。


アナザーイクサ2019 その4

 どんよりとした曇り空。それを見上げるカップルや家族連れ。折角出来た時間を使い、ある者は恋人と共に、ある者は妻や子供たちと楽しい時を過ごすつもりであった。

 雨は降ってはいないが、日光が陰るだけで目に映るもの全てが色褪せる。楽しい時間を過ごすならば、少しでも晴れやかな気分でいたいのが人の心というもの。

 そんな晴れを願う人々の心が天に届いたのか、分厚い雲が動き出し、隠れていた日の光が地面へ届き始める。

 色褪せた世界が、日が差すことで見る見るうちに鮮やかなものへ変わっていく。

 色鮮やかな世界。最愛の人と過ごす時。正に幸福と呼べる。

 しかし、彼らは知る由も無かった。曇り空の下で過ごしていた方が遥かにましであったことを。遮られていた日の光と共に災厄すらも降りてきたことを。

 トン、という足音。決して大きくない音であったが、何故か周囲の人々は、その音に足を止め、音のした方を見てしまう。

 

「……え?」

「何だあれ……?」

「何かのショー?」

 

 人々の間に困惑が広がっていく。

 マントを靡かせ佇むのは仮面ライダーギンガ。すると、ギンガは両手で力を一点に集中させる。集まった力は光となり、それが渦巻きながら点滅。

 それを何の警告も無く突然近くの建物に向けて放った。

 皆の目が飛んでいく光を追い、建物に命中するのを目撃。それと同時に起こる大爆発と建物の破壊。

 彼らは何故自分たちが足を止めたのかを理解する。本能的な恐怖。いたずらに動けば死ぬ、という野生動物と遭遇した時の様な無意識の自己防衛。だが、ギンガの凶行を目の当たりにして恐怖が上回り、パニックが起こる。

 

「うああああああ!」

「逃げろ!」

「助けて! 誰かー!」

 

 阿鼻叫喚となる場。そんな声など意に介さず、ギンガは進み始める。歩きながら両手を動かして力を溜め、それを放ち、次々と建物を無差別に破壊していく。

 何の意図を以て行っているのか全く理解出来ない行為。これは、ギンガの中だけにある彼にしか理解出来ないルールの下破壊を行っている。

 幸か不幸か、逃げ惑う人々をギンガは狙わないし襲わない。力無き一般人たちは、ギンガの視点から見れば路傍の石ころ、もしくは地を這いずる虫程度の認識でしか無かった。だが、言い換えれば人々が破壊に巻き込まれようと構うことは無い。身を寄せ合って逃げる家族も、恋人同士互いに守ろうとする姿も、泣き叫ぶ幼子もそれらがどうなろうとギンガにとっては全て無意味且つ無価値。

 彼が個を認識するとすれば、特殊な力を持っている者か仮面ライダーか。

 ギンガによって繰り返される無慈悲な破壊。しかし、この行為が思わぬ所に影響を及ぼす。

 

 

 ◇

 

 

 ギンガが現れる少し前。スポーツウェアの中年男性がジョギングに精を出していた。

 いつものコースをいつものペースで走り、何事も無く決められた距離数を走り切る──かと思っていた。

 

「判事の及川だな」

 

 男を呼び止めるのは祐子。名を呼ばれ、及川は足を止めて祐子を見る。まるで心当たりが無いかの様な顔。判事として数々の仕事を熟してきた及川にしてみれば、祐子など数ある容疑者の内の一人にしか過ぎない。

 しかし、その及川の表情が祐子の逆鱗に触れる。

 

「まるで、初対面と言わんばかりの顔だな。私はお前の顔を良く覚えているぞ? 私を冤罪にした男の顔をしっかりと」

 

 冤罪と言われ、及川はますます混乱する。彼の記憶の中にその様な事件など無いからだ。

 

「今度は私がお前に判決を下す──有罪!」

 

 及川を指差し、罪を宣言すると、祐子の体は黒い力によって覆われ、アナザーイクサと化す。

 

『イクサァ』

 

 変身に合わせて笛の音が響き、ガルル、バッシャー、ドッガが及川を囲む様にして出現する。

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃ!」

 

 突然現れた怪物たちに及川は腰を抜かす。震えながら悲鳴を上げる及川に、アナザーイクサは十字架の大剣を抜き、罪人に相応しくギロチンの刃の如く高々と振り上げ──次の瞬間、頭上で大きな爆発が起こる。

 

「何っ!?」

 

 原因不明の爆発。アナザーイクサにはそう見えたかもしれない。まさか、ギンガが無差別に放った攻撃が原因などと露程も思っていないだろう。

 爆発は崩壊を起こし、それによる瓦礫の落下。運悪く無数の瓦礫がアナザーイクサへ降ってくる。

 アナザーイクサは舌打ちをして及川に振り下ろす筈であった大剣を、瓦礫を打ち砕く為に振るう。結果としてアナザーイクサだけでなく側にいた及川も救う形となってしまった。

 

「う、うああああああ!」

 

 及川がこの機に乗じて逃げ出した。瓦礫を打ち払っていたアナザーイクサは、急いで追おうとする。

 

「きゃああああああ!」

「うあああああああ!」

「いやああああああ!」

 

 及川へ重なる偶然という名の幸運。ギンガから逃れようとしている人々の集団に及川は巻き込まれ、そのまま紛れてしまい姿を隠されてしまう。

 

「この女王の罰から逃げようとは……!」

 

 ギンガの影響のせいで裁くべき者を裁けず、アナザーイクサは怒りで体を震わせ、今にも感情を爆発させようとする。が、数秒後その怒りが嘘の様に収まる。

 

「──いや、逃げられた訳じゃ無い。敢えて逃がした。──そう、そうだった。最初からそのつもりだった」

 

 ブツブツと独り言を言い、一人で納得する。

 星雲の様に輝く円形の力が、再びアナザーイクサの頭上に着弾。破壊された建造物の瓦礫が落ちてくる。

 アナザーイクサは、今度は大剣を振るうことは無かった。代わりに、悪魔の横顔の様なドライバーを押し込む。

 ガルルはガルルセイバー、バッシャーはバッシャーマグナム、ドッガはドッガハンマーと姿を変え、バッシャーマグナムの水弾が瓦礫を撃ち抜き、空中を旋回するガルルセイバーとドッガハンマーが脆くなった瓦礫を斬り、砕く。ガルルたちによってアナザーイクサへ落ちる筈だった瓦礫は全て粉砕された。

 

「女王たる私に埃を被せる様な真似をするとは……!」

 

 アナザーイクサの言うと負い、粉砕された瓦礫の粉がアナザーイクサの体を汚す。

 

「それ相応の罰が下す必要があるな!」

 

 何処かに居るギンガを標的にし、アナザーイクサはガルルたちを率いていく。

 

 

 ◇

 

 

 目に付いた建物などを片っ端から破壊していくギンガ。不意に振り返りながら手を突き出す。

 球形の力に阻まれる銀色の光弾。それを放ったのは、ガンモードのイクサカリバーを構えるイクサ。

 

「そこまでだ! 大人しくしなさい!」

 

 数メートル先の位置に立つイクサ。ギンガはその手に破壊の力を宿しイクサに放つ──のではなく、下に向けて突き出した。

 その直後に、ギンガの影から飛び出す鎌の刃。ギンガの掌が鎌を容易く受け止め、その状態から鎌を引っ張り上げる。

 

「まさか、気付くとはね」

 

 鎌と一緒に影の中から仮面ライダーウォズが現れた。フューチャーリングシノビの力によってイクサの攻撃に合わせ影の中に潜み、奇襲を狙っていたがギンガには通用せず。

 ギンガは鎌を押さえたまま、もう一方の手に同じ様に力を溜めていくが、それを背後に向ける。

 ギンガへ放たれる無色の力。僅かな空間の歪みだけが認識出来る。それを放ったのは、建物の上からギンガを見下ろしているスウォルツ、オーラ、ウールたち。

 ギンガの力があっさりとタイムジャッカーたちの力を防ぎ、消し飛ばす。

 ギンガは手首を回し、手で円を描く。描かれた円は橙色に輝く灼熱の光球へと変わる。

 

『ダイナマイトサンシャイン!』

 

 ギンガからタイムジャッカーたちへの反撃。スウォルツたちは不可視の壁を作り出す。その壁に衝突するギンガの技。灼熱の炎は防いだが、衝撃まで完全に殺せずオーラとウールは吹き飛ばされる。スウォルツのみがその場で不動、怪我も無い。他の二人との格の違いを見せつける。

 ウォズとタイムジャッカーたちによる二重の奇襲作戦であったが、ギンガには通用しなかった。ここから先は正面から戦うしかない。

 

『クイズ!』

 

 ウォズはシノビミライドウォッチからクイズミライドウォッチへ交換。

 

『ファッション! パッション! クエスチョン!』

 

 普通の戦いが通じない為、変則的に攻めることにする。

 

『フューチャーリングクイズ! クイズ!』

 

 仮面ライダークイズの力を得たウォズは、早速その能力を行使する。

 

「問題。銀河を意味するギャラクシーという英語は、ギリシア語のミルクという言葉から派生したものである。〇か×か?」

「何故クイズを……」

 

 突然クイズを始めたウォズに、ギンガではなくイクサの方が戸惑ってしまう。

 

「どうでもいい。宇宙の言葉で話せ」

 

 ウォズのクイズに対し、最早意味不明な言葉で応じるギンガ。だが、ウォズにとってはそれで良かった。解答しなくてもフューチャーリングクイズの能力は発動する。

 

「正解は〇だ」

 

 ギンガの頭上に黒雲が発生する。クイズに正解出来なかった者、答えなかった者に対する罰の雷を落とす。

 すると、ギンガは両手を頭上に掲げた。

 

『ギガンティックギンガ!』

「何っ!?」

 

 掌から放たれる無数の光球が黒雲を吹き飛ばしてしまい、フューチャーリングクイズの能力を力だけで捻じ伏せてしまった。

 能力に対抗されてしまったせいか、クイズミライドウォッチに火花の様な電流が起き、ドライバーから外れてしまう。ウォズのフューチャーリングクイズも解除され、仮面ライダーウォズの姿へ戻った。

 

「宇宙は謎に満ちている。真の答えなど無い」

「……何でもかんでも宇宙と言えば許されると思っているのかい?」

 

 ウォズとイクサに、ギンガの光球が飛び、二人は吹き飛ばされる。

 

「ギンガ……!」

 

 その爆発を聞き付け、ジオウもこちらへやって来た。ツクヨミと一緒に逃げる人々の避難をさせていた為、合流するのに遅れてしまった。

 ジオウはそのまま走り、ギンガへジカンギレードで斬り掛かる。

 ギンガは一歩踏み込み、ジオウの懐へ入ると掌打を打ち込む。反発を引き起こす力を腹部に受け、ジオウの体がくの字に曲がった。

 

「我が魔王!」

 

 ウォズはすぐに立ち上がり、ジオウを援護する。

 剣と槍。異なる武器がギンガへ振るわれるが、ギンガの攻防一体の力は難なくそれを防ぎ、隙が出来れば力を打ち込む。

 

「二人とも少しだけ時間を稼いでくれ!」

 

 イクサが二人に叫ぶ。二対一でも押されている状況であった。一秒でも早く戦力が欲しい。

 

「分かった!」

「なるべく急いでくれ!」

 

 ジオウたちはイクサの指示に従う。何かあることを信じて。

 ガルルたちがいる中では殺めてしまう可能性がある為使用することが出来なかったが、今なら使うことが出来る。

 

「イクサの本当の力を見せよう!」

 

 イクサは、口部に触れる。装甲が外れ、下から金色のシャッター型のマスクが露わになる。外れた口部装甲を展開。二つ折りの携帯電話と似た機械──イクサライザーであった。

 数字が振り分けられたボタンを押す。押した番号は『193』。

 

『R・I・S・I・N・G』

 

 胸部も紋章が強く輝き、白い装甲が浮き上がり、パージされる。白の外装の下にはメタリックブルーの装甲。

 顔面の四分割された十字架も変形。下二つは顔の側面へ移動。上二つは向きを変えながら移動し、額で三本角、或いは王冠を思わせるヘッドパーツとなる。

 最後にイクサライザー背面にあるグリップを展開し、そこに専用の青いフエッスルを挿し込むことでイクサライザーはガンモードとなる。

 

「ほお……」

 

 上から戦いを見下ろしていたスウォルツは、イクサの再変身した姿に僅かな関心を滲ませた声を出す。

 出力を百パーセントまで引き出すことが出来る形態──ライジングイクサがここに爆現した。

 

「はあ!」

 

 ガンモードのイクサカリバーとイクサライザーの二丁拳銃。区切り無く吐かれる弾の嵐。

 

「むっ!」

 

 それに気付き、ギンガも両掌で防ごうとする。しかし、弾の数は多く、敢えて弾が散らばる様にしていて、防御し辛くしている。

 

「くっ」

 

 顔面や上半身への銃撃は防げるものの胴体や下半身までは防御し切れず、銃弾の何発かがギンガの横腹や脚を掠めていった。

 そして、ギンガが相手にするのはライジングイクサだけではない。

 

「たあ!」

「はっ!」

 

 ジオウとウォズが銃撃の合間にギンガを攻撃する。

 ジカンギレードを防ぎ、ジカンデスピアの穂先を肩に受け、穂先を弾くとライジングイクサの銃撃が腹部に命中、それを防御するとジカンギレードの刃がギンガの背を削る。

 大きなダメージは与えられていないが、確実にギンガの体力を削っていっている。

 

「ふん……」

 

 その光景を眺めているのはアナザーイクサ。ギンガを倒すつもりで来たが、三対一で押されつつあるギンガの姿を見て、すぐに興味を無くした。

 罰を与える為に来たが、わざわざ手を下す必要も無いと分かり、変身まで解除し、ガルルたちを引き上げさせた。

 そのまま背を向け、この場を離れようとする。

 不自然なまでにギンガの首が動き、無機質な両眼が祐子へと向けられた。通常の人間はギンガには認識出来ない。だが、アナザーライダーの力を宿した者は別。

 攻撃を受けている最中だというのに、ギンガの手が祐子へと伸ばされる。最も戦闘力の低い者から潰す且つ無防備という合理的──というよりも機械的な判断故の行動であった。

 不自然に動いた手の先をジオウが見る。そこに祐子の姿を発見してしまった。

 

「危ない!」

 

 ギンガの手から放たれる力の波動。その射線状にジオウが入り、自らを盾にしてそれを受ける。

 

「うああああああああ!」

 

 攻撃の直撃。ジオウが飛ばされ、姿が見えなくなる。

 

「ソウゴ君!」

「我が魔王!」

 

 追い掛け様とするがギンガがそれを阻む。二対一になってしまったせいで、逆に押し返されてしまう。

 掌が武器や攻撃を弾き、蹴りや掌打がライジングイクサとウォズを打つ。

 

「強い……!」

 

 攻撃を受け、吹き飛ばされた二人。ウォズは立ち上がりながら改めてギンガの強さを実感する。

 

「──だが強いだけだ」

 

 ライジングイクサは立ち上がり、両手を広げながらギンガへ近付いていく。

 

「何を……!」

 

 あまりに無防備な構え。

 

「滅びを悟り、自ら受け入れるか」

 

 ギンガもその構えを見て、力を溜め始める。

 集束していく光を見ても、ライジングイクサは足を止めない。

 ギンガの掌に集まった力が、ライジングイクサに放たれる──直前、ライジングイクサはいきなりギンガへ背を向ける。

 その唐突な行動にギンガの動きが一瞬停まる。更にライジングイクサは、その状態から両手に持っていた武器を空中へ放り投げた。

 高々と舞うイクサカリバーとイクサライザー。ギンガの目は武器を追っていた。ライジングイクサの意味不明な行動に、地球へ来て初めての戸惑いを覚える。

 

「理解不能。何の意味が──」

『I・X・A・K・N・U・C・K・L・E・R・I・S・E・U・P』

 

 ギンガの視線がライジングイクサへ向けられた時、既にライジングイクサはギンガの懐に居た。ベルトから外したイクサナックルを当て。

 

「お前が油断する」

 

 瞬間、イクサナックルが高電圧、高電流を放ちギンガの全身に流れ込む。

 

「ギ、ギギギ、ギ!」

 

 激しい痙攣を起こすギンガ。ライジングイクサは落ちてきた武器をキャッチし、刃を出したイクサカリバーでギンガを斬り付けた。

 

「ガッ!」

 

 ライジングイクサの袈裟切りが、ギンガの体に大きな傷と付ける。そして、同時に大きな隙も生じる。

 

「今だ!」

 

 ライジングイクサの声が飛び、ウォズはジカンデスピアのタッチパネルを押し、すかさずスクラッチする。

 

『ヤリスギ! フィニッシュタイム!』

 

 ライジングイクサはイクサライザーからフエッスルを抜き、ベルトに挿し、イクサナックルを押し込む。

 内蔵エンジンが最大限まで出力を出し、そのライジングイクサを伝わってイクサライザーへ流れていく。

 

『爆裂DEランス!』

 

 穂先に似た光弾がジカンデスピアから放たれ、いつの間にかウォズの隣に立っていたスウォルツも不可視の力を放つ。

 ライジングイクサは高々と跳び上がる。地上に立つギンガにウォズとスウォルツの攻撃が命中。そこに追い打ちでライジングイクサの最大火力を撃ち出す。

 イクサライザーから撃たれるエネルギー波。人を呑み込める程の巨大なエネルギーがギンガを貫いた。

 三つの力を受けたギンガ。体の至る所が罅割れ、溶け、体の一部は砕け落ちている。しかし、まだ動けていた。

 

「まだ、まだ……ギン、ギン……ギラ、ギラ……ギャラクシー……」

 

 損傷が激しいせいか意味不明な言葉を喋り出すギンガ。

 着地したライジングイクサは、そんなギンガに言い放った。

 

「お前は強い──が、『遊び心』が足りなかったな」

「遊び、心……? 理解、不能だ……」

 

 ギンガは空に向けて両手を突き出す。すると、そこ一点に光が集中し、その光の中でギンガの体が再生していく。

 

「何っ!?」

 

 全員が驚く中で、ギンガの体はほぼ完全に元に戻る。──その時、厚い雲が太陽を隠し、ギンガへの光を遮断してしまう。

 ギンガは体中から蒸気の様な煙を出し、全身を鉱石の様な膜で覆った。

 

「どう、なっているんだ……?」

「倒したのか……?」

「──成程。奴の力の源は太陽か!」

 

 動かなくなったギンガ。再生から停止までの流れを見て、スウォルツはそう推測する。

 

「しかし、これをどうする……?」

 

 正確な解答を出せる者はこの場に居なかった。

 

 

 ◇

 

 

 ギンガの攻撃を受け、気絶したソウゴを介抱したのは祐子であった。

 祐子は自らを守ったことへの対価としてソウゴを介抱したのだ。

 ソウゴは自分もまた王様に成りたいことを祐子に告げた、それを聞いた祐子は馬鹿にすることはせず、素直に感心し、自分と共に世界を支配しないかと誘う。

 

「世界を私とお前の子供で埋め尽くすのも面白いかもしれない」

 

 純情なソウゴには強烈過ぎる言葉。呆然とする程の衝撃を受けるが、すぐに正気に戻り、祐子へ冤罪への復讐を止める様に頼む。

 祐子はソウゴの真摯な言葉に心動かされたのか、その場で復讐を止めることを了承した。

 素直に喜ぶソウゴ。だが、後に彼はこの時のことをひどく後悔することとなる。

 

 

 ◇

 

 

 鉱物化したギンガの前でライジングイクサたちは焦っていた。どれだけ攻撃しても破壊することが出来ず、移動させようにも根の様に地面に張り付き、おまけに異常なまでに重い。一人分とは思えない程の重量で全く微動だにしない。

 いつまでも曇り空が続く筈も無く、早々に対処しなければギンガが陽の光で復活してしまう。

 

「せめてトリニティの力があれば……!」

 

 ウォズは悔し気に言う。今の所、ギンガを破壊出来る可能性があるとしたらトリニティしかない。

 

「ならすぐにソウゴ君とゲイツ君に連絡を──」

「──いや、もう遅い」

 

 空を見上げるスウォルツ。雲が移動し始め、太陽が見え始める。

 鉱物に罅が入り、割れて中からギンガが姿を見せる。

 その姿に全員が驚愕した。

 

 

 ◇

 

 

「何で……」

 

 ソウゴは立ち尽くしてしまった。祐子は復讐を止め、真っ当な道を進む筈だと思っていた。

 だが、現実は違った。ソウゴが少し目を離した隙に、祐子は姿を消してしまった。

 ソウゴが祐子を見つけた時、彼女はその手で人を殺めていた。彼女の復讐の対象者を。

 約束したのにそれを破り、人の命まで奪ってしまった祐子。ソウゴは、彼女の心が理解出来なくなってしまう。

 

「祐子さん……」

「──私はいつもこうだ。どんな言葉を掛けられ様とも思われ様とも、何も変われない。私は──」

「ソウゴ! その女から離れて!」

 

 ファイズフォンXの銃口を突き付けるツクヨミ。その隣にはゲイツ。

 

「冤罪とはその女の嘘だ!」

 

 ゲイツは過去に行き、そこで見た。祐子が女性を撲殺する光景を。祐子という女性は間違いなく正しく裁かれていたのだ。

 

「そんな……」

 

 祐子の言葉を信じていたソウゴはただ驚くことしか出来なかった。どこまでも、どこまでも、祐子の嘘がソウゴを傷付ける。

 しかし、現実はソウゴに感傷に浸る時間すら与えない。

 大きな爆発。その後に飛んで来る三つの影。

 

「ウォズ!」

「名護さん!」

 

 ウォズとライジングイクサ、そしてスウォルツであった。彼らは至る所に怪我を負っている。

 

「やあ、我が魔王……」

「一体何が……」

「少々……いや、かなり厄介なことになった」

 

 スウォルツは、自分が飛んできた方向に目を向ける。全員揃って同じ方向を見た。

 

「何あれ……」

 

 こちらに歩いて来る()()()姿()

 片方は全身を炎に包みながら強い光を放っており、炎を擬人化させたような異形。もう片方は、仮面ライダーギンガにそっくりな頭部と手足を持つが、両腕、両脚、胴体が九つの惑星によって作られている異形。

 

「仮面ライダーギンガ・タイヨウ!」

「仮面ライダーギンガ・ワクセイ!」

 

 ソウゴたちの前で異形が名乗りを上げる。

 

「ギンガって……増えてる!」

「恐らくこちらの力に対抗する為に分裂、いや進化したんだ」

 

 一体でも強いギンガが、二体になり、絶望的な状況となる。

 

「成程。これが元凶ですか、名護さん」

 

 絶望的な状況で響き渡る爽やかな声。清涼な風を思わせるそれは、一瞬だがソウゴたちに焦燥を忘れさせた。

 白のジャケットに、黒い革手袋を左手に填めた青年。その姿にライジングイクサは驚いた。

 

「太牙君! 何故、君がここに!?」

「渡に言われたんです。名護さんを手伝って欲しいと」

 

 ライジングイクサと顔見知りの青年──登太牙は、穏やかであった表情を一変させ、冷徹な目でギンガたちを見る。

 

「キバットバットⅡ世!」

 

 太牙が呼び掛けると、その周囲をデフォルメされた小さな蝙蝠が飛び回る。

 

「有り難く思え。絶滅タイムだ!」

 

 太牙はキバットバットⅡ世の頭部を掴み、口を開かせる。

 

「ガブリッ!」

 

 太牙は左手をキバットバットⅡ世に咬ませる。すると、太牙の両頬にステンドグラスの様な色の牙を模した紋様が浮かび上がる。

 同時に腹部へ幾重にも鎖が巻き付き、それが砕け散ると黒いベルトが装備される。

 

「変身!」

 

 キバットバットⅡ世をぶら下げる様にベルトへ装着。音が鳴り響き、太牙の体が黒緑の光で覆われ、それが砕けた時、闇を統べる者が現れる。

 赤と黒を主とした鎧。胸の中央に縦に並ぶ翡翠色の三つの石。翼を広げる蝙蝠を思わせる翡翠の複眼。頭部の側面にも黒い翼の飾りが付けられていた。

 

「王様……?」

 

 黒いマントを翻す威風堂々とした様は、まさに王の一言に尽きる。

 闇のキバ──ダークキバは、右手に縦笛に似た武器──ジャコーダーを握り、その先端から赤い細剣を伸ばす。

 だが、王の姿はこれで完成では無い。真に完成するにはあと一つ足りない。

 空から降って来た何かがダークキバの目の目に突き刺さる。

 それは一振りの直剣であった。剣身に虹を封じたかの様に七色の輝きを放つ。

 その剣を見た瞬間、その場にいる全員が一歩引いた。本能が剣を恐れ、少しでも離れようと動かしたのだ。

 だが、ダークキバは躊躇う事無くその剣──ザンバットソードを引き抜く。

 

「借りるぞ、渡」

 

 王を目指す王。嘘と虚言の女王の前に闇の王が降臨した。

 




やりたいことを詰め込みました。
ギンガファイナリーにワクセイ、タイヨウがあるならギンガも出来るんじゃないかな? とかダークキバにジャコーダーとザンバットソードの二刀流とか。

先にどちらが見たいですか?

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