「何者だ……」
「得体の知れない……」
ザンバットソードとジャコーダーを構えるダークキバに対し、ギンガタイヨウとギンガワクセイは警戒をしていた。
ギンガの存在は未知のもの。だが、未知だからといって同じ未知なるものに鈍感という訳では無い。
ダークキバの放つ解析出来ないオーラの様なもの。そして、全てを吸い尽す様な貪欲さを秘めたザンバットソードは、彼らに危機感を抱かせるには十分であった。
「ふん。得体の知れない奴らに言われたくない」
ベルトにぶら下がってキバットバットⅡ世が、心外と言わんばかり吐き捨てた。
「あの人は、味方ってことでいいんだよね、名護さん?」
「ああ。安心してくれ。彼は渡君──キバの兄だ」
威圧感と同時に寒気立つ気を放つダークキバ。一先ず味方であると分かり安堵する。
「ジオウ! 今の内に!」
「分かった!」
ゲイツはソウゴの隣に移動すると、ジクウドライバーとゲイツリバイブライドウォッチを取り出す。ジオウもまたジクウドライバーとジオウライドウォッチⅡを出した。
それらをあるべき場所にセットし、ジクウドライバーを回転させる。
『変身!』
ソウゴはジオウⅡに。ゲイツはゲイツリバイブ剛烈へと変身──している最中にギンガタイヨウは両手を二人に向ける。
「太陽に呑まれよ」
変身過程での攻撃。並の攻撃ならば変身の最中に発生するエネルギーが防いでくれるが、ギンガぐらいの力を持つと防ぎ切れる保障が無い。
刹那、ソウゴらの目に赤い線が横切っていくのが映る。赤い線はうねり、ギンガタイヨウの両手を下から弾き上げる。
「むっ」
発射直前にされたせいで途中で止めることが出来ず、ギンガタイヨウは恒星の様な炎の球を上空に放ってしまった。
攻撃を妨害されたギンガタイヨウ。その手に先程赤い線が絡み付き、ギンガタイヨウは引っ張られる。
ギンガタイヨウを引き寄せたのは、ダークキバ。ジャコーダーの細剣が鞭へと変化し、それを使いソウゴたちを助け、ギンガタイヨウを捕らえた。
ダークキバの助けにより、ソウゴとゲイツは無事に変身し終える。
「ありがとう!」
助けてくれたダークキバに礼を言うジオウⅡ。
「こいつは僕が相手をする。そちらは任せた!」
ギンガタイヨウと向かい合いながら、ダークキバが相手を買って出る。ギンガタイヨウは、その挑戦を受けるという言葉の代わりに、動かせる手をダークキバへ翳し、ジオウⅡらを焼き尽くす筈であった火球を撃ち出した。
放った時は拳大程度の火球。しかし、ダークキバに近付くごとに炎の勢いと大きさが増していき、眼前にまで迫った時には直径二メートル程まで巨大化していた。
灰すら残さない太陽の劫火。ダークキバは、ザンバットソードを握り締め、太陽へ一閃。
魔剣による斬撃。それは、ダークキバを焼き尽くす筈であった太陽を真っ二つに両断してしまった。
ダークキバは避ける事無く、太陽の方が左右に割れてダークキバを避けていく。ダークキバはその真ん中で立つだけ。
鋼鉄すら容易に溶かす熱量の炎を斬ってもザンバットソードは無傷。異質な剣であることを改めて認識させる。
「太陽の抱擁を拒むとは……罪深き者だ」
「覚えておけ。
ギンガタイヨウが拳を地面に打ち込む。地面が高熱で沸騰し始め、地面の下に何かが動いているのか、地面が盛り上がり、ダークキバへ幾筋も伸びていく。
盛り上がった地面を突き破って紅炎が噴き上がり、跳ねる様にしてダークキバへ襲い掛かる。
「はっ!」
しなるジャコーダーの鞭。赤く輝くそれは刃と同等の切れ味も有し、紅炎を打ち払っていく。中距離での紅炎はジャコーダーによって掻き消されていくが、鞭の軌跡を掻い潜って迫る紅炎が何本かあった。それはまるで獲物を捕らえようとする赤い蛇を彷彿とさせる。
しかし、それもダークキバがザンバットソードを振り抜くことで消し飛ばされる。大地も溶かす灼熱の蛇たちも、王の一振りの前に為す術も無い。
剣風によって散らされる灼熱。それが風の中に漂うと、周囲の木々や草花が燃え上がる。熱の余韻だけでこれである。実際、その熱源であるギンガタイヨウと向き合っているダークキバも、鎧越しにギンガタイヨウの圧倒的熱量を感じていた。
(何て熱さだ……)
ダークキバという鎧を纏うことで何とかギンガタイヨウと対峙することが出来ていた。
ギンガタイヨウとファンガイアの姿で戦うことは不可能であるとダークキバは確信した。生身で見れば眼球が蒸発し、熱せられたことで高温となった空気を吸い込めば喉と肺が焼け爛れ、数歩近付けば皮膚が溶け、全身が炎上する。ギンガタイヨウは攻撃もさることながら、ただ佇むだけでも生物を死に至らせる。
余裕を見てライジングイクサたちの援護をするつもりであったが、そんな余裕は無く、気を抜けばこちらがやられてしまうのが現状。
ダークキバが見ている前で、ギンガタイヨウは両手で円を描く。炎の軌跡が残り、ギンガタイヨウの前に炎の輪が出来上がる。揺らぐ炎と眩い輝き、それはまさに日輪。
『ダイナマイトサンシャイン!』
ギンガタイヨウは名前の通り太陽を生み出した。本物に比べれば遥かに温度は下がるだろうが、宙を飛んでいくそれが通り過ぎていくだけで下の地面が融解を通り越して気化していく。
ギンガの時よりも上回る威力の『ダイナマイトサンシャイン』。この姿になったことで、技の性能が特化していた。
ダークキバを灰と化そうとする太陽。通常思考なら即座に逃亡を選択する。しかし、ダークキバは逃げることはせず、太陽の真正面に立ちながらジャコーダーを胸の前で縦に掲げる。
儀礼を思わせる構えをとるダークキバ。そんな動きなど知ったことか、と言わんばかりギンガタイヨウの太陽がダークキバに命中し、包み込んだ──直後、太陽を貫いてジャコーダーの鞭がギンガタイヨウへ伸びていく。
赤い輝きで包まれたジャコーダーの鞭。ギンガタイヨウは反射的に手でそれを打ち払おうとする。しかし、その動きを読んでいたかの様に鞭は軌道を変え、ギンガタイヨウの腕に刺さった。
刺された程度の攻撃などギンガタイヨウには効かない。そもそも痛覚が無いのでその程度の攻撃では怯まない。
刺さったジャコーダーの鞭など無視し、燃え盛るダークキバにもう一度炎を浴びせようとした時、有り得ないことにギンガタイヨウは悪寒に近い感覚を覚えた。
刺さった鞭。そこから宇宙には無い未知なる力が注ぎ込まれていく。それが分かった後のギンガタイヨウの行動は迅速であった。
躊躇う事無、手刀によってく肩ごと腕を斬り落とす。
斬り落とされた片腕は、地面に落ちる前に霧散して消えてしまう。体の片側を失ってしまったギンガタイヨウであったが、すぐに断面から炎が噴き出し、それが腕の形を形成して瞬く間に再生してしまう。
一方でギンガタイヨウの太陽に焼かれているダークキバ。灼熱の地獄の中でマントを翻すと太陽は掻き消され、ダークキバが現れる。体から白煙が上がっているが超高温の中でも原型を留めており、ダークキバの熱への高耐久が窺える。
ダークキバとしては敢えて避けないことで相手の攻撃を自分の攻撃の目隠しにした。ダークキバは熱で炙られ、ギンガタイヨウは片腕を失ったが、結果を見ればどちらもほぼ無傷の状態。
互いの攻撃は無意味だった、と思われるかもしれないが、ダークキバとしては得るものはあった。
(斬り離した、ということは少なくともこちらの攻撃は、奴に対して効果があるということか)
ジャコーダーを用いてギンガタイヨウに放った技。あれは大量のエネルギーを相手に流し込み、膨張させ、最終的に粉砕させる技である。こちらのエネルギーは、相手にとって悪影響を及ぼすものと見て間違いは無い。
「なら、もっと強い力で攻めればいいだけだ」
斬り離すことが出来ない程速く、苛烈な力で。
◇
ギンガワクセイとジオウⅡたち。見れば見るほど異形のギンガワクセイ。首、手足は、九つの惑星と見えない力で繋がっているらしく、宙を漂っている。
怪物の様な外見のアナザーライダーたちとは別のベクトルで怪物感が強いギンガワクセイに、ジオウⅡたちも警戒心を強める。
「宇宙に生まれたものは、やがて滅び行く。それは変えることの出来ない唯一無二の法。滅びよ、全てよ」
「何か意味わかんないこと言ってるけど、まだ俺たちは滅びるつもりは無いよ!」
「お前が何なのか知らないが、滅びると言うなら先にお前が滅んでいろ!」
ジオウⅡはサイキョーギレードを握り、ゲイツリバイブ剛烈は鋸モードのジカンジャックローを構え、ギンガワクセイに戦いを挑む。
「止すんだ二人とも!」
「我が魔王! ゲイツ君! そいつに近付いてはダメだ!」
ギンガワクセイと先に戦闘していたウォズとライジングイクサが止めようとするが間に合わない。
「水、金、地、火、木、土、天、海、冥!」
詠唱の様に各惑星の名を出す。そこに振るわれるサイキョーギレードと突き出されるジカンジャックロー。それがギンガワクセイに触れる瞬間、ギンガワクセイの体がばらけた。
「えっ!」
「何っ!」
各惑星が独立して動き出し、ジオウⅡらの周囲を飛び回る。
「どうなって──うあっ!」
衝撃で困惑する声が途切れてしまう。衝撃の正体は、ジオウⅡの背後からぶつかって来た火星。
「ジオウ! こいつ!」
ジオウⅡに体当たりを仕掛けた火星をジカンジャックローで砕こうとするが、その間に水星が入り込み、火星の盾となる。
構うことなく二つとも砕こうとするが──
「なっ!」
ジカンジャックローが水星に叩き付けるが、驚いたのはゲイツリバイブの方であった。水星にジカンジャックローで触れることが出来ず、僅かな隙間を作って空回りしている。
前にも同じ様なことを経験していたゲイツリバイブはすぐにそれが何なのか思い至る。ギンガの掌から発生していたものと同じ力場であった。
ジカンジャックローを急いで離そうとするが、今度は水星の力場に引き寄せられて離すことが出来ない。武器を封じられたゲイツリバイブに、金星、冥王星、天王星、海王星が突撃。
「かはっ!」
力場を纏った惑星が、ゲイツリバイブを左右から押し潰そうとする。頑丈な筈の剛烈の装甲が、四つの惑星が生み出す力場によって装甲ごと中身を歪ませようとする。
「ゲイツ!」
すぐにゲイツリバイブを助けようとするジオウⅡ。それを阻む土星と地球の奇襲。土星の輪が刃の様に回転しながらジオウⅡを襲うが、剣でそれを受けつつジオウⅡも反撃。
『ライダー斬り!』
マゼンタ色のエネルギーが剣身を纏い、土星ごと斬撃を飛ばす。放たれ斬撃を力場で防ぐ土星。そこに地球が並び、二つの力場によってマゼンタ色のエネルギーは防がれてしまった。
もう一度剣を振るおうとした時、視界の外から木星がジオウⅡに衝突。不意を衝かれたせいで、ジオウⅡは吹き飛ばされる。
「うあっ!」
勢いで地面を滑っていくジオウⅡ。その間にも身動きがとれないゲイツリバイブが惑星に締め付けられていた。
このままでは命に関わる、と思われた時、緑の閃光と二色の光弾が惑星に命中。
力場を発生していた為、直撃では無かったが、浮遊するそれらを飛ばすには十分な威力であった。
膝を突くゲイツリバイブを守る様に、ウォズとライジングイクサが並び立つ。
ゲイツリバイブの危機は、ウォズたちによって取り敢えず避けられた。だが、今度はジオウⅡに危機が迫っている。
倒れているジオウⅡに、土星が断頭台の様に落下。その首を胴体から落とそうとする。
ゲイツリバイブを見ていたジオウⅡはそれに気付かない。ウォズたちもまた気付いていない。
この場でそれに気付いていたのは唯一人であった。
祐子は、丁度足元にあったマンホールを踏み付け、蓋を反動で跳ね上げさせるとそれを受け止め、フリスビーの様にして土星目掛けて投げ放つ。
ジオウⅡへ落ちる筈であった土星を横から受けたマンホール蓋のせいで軌道が変わり、ジオウⅡから大分逸れた地面へ輪を突き立てる。
「えっ」
土星が落ちてきたこと。祐子によって助けられたことでジオウⅡは戸惑う。
気付けば側に祐子が立っていた。
「女王様の気紛れだ」
前にジオウに助けられたことへ借りを返す為か、或いは本当にただの気まぐれなのか、真相は彼女にしか分からない。
「ありがとう……」
ジオウⅡは、助けられたことに対し混乱しながらも礼を言う。
『イクサァ』
祐子はアナザーイクサへと変身。そして、下僕であるガルルたちを呼び出す。
ジオウⅡを襲うのではなく、ギンガワクセイに構えるアナザーイクサら。それは共闘の意思を示すものであった。
九つの惑星に対しジオウⅡらの数は九人となる。これで数は互角。惑星に個々で対処出来る様になる。
ジオウⅡの剣が斬り、ゲイツリバイブの鋸が削り、ウォズの槍が突き、ライジングイクサの剣と銃が斬撃銃撃を混ぜ、スウォルツの力が捻じ伏せ、アナザーイクサの大剣は振り抜かれ、ガルルの爪と牙が裂き、バッシャーの水弾が穿ち、ドッガの怪力が打ち抜く。それぞれが九つの惑星に反撃していく。
それを見ているギンガ。焦っている様子は無い。
「ふっ」
ジオウⅡらの抵抗を一笑すると、手を掲げる。すると、ジオウⅡらと戦っていた惑星らが上昇。
ジオウⅡらの真上に移動すると──
「宇宙の裁きを受けよ」
『ストライク・ザ・プラネットナイン!』
惑星らが急降下。地面に接した瞬間、大爆発を起こす。
「うああああああ!」
惑星らの急降下爆撃によって吹き飛ばされるジオウⅡたち。爆撃の後には横たわる彼らの姿があった。
分かれていた九つの惑星がギンガワクセイの下へ集う。再び人型へなると、最も近い位置にいるジオウⅡへ止めを刺す為に近付いていく。
「ソウゴ!」
戦いを見守っていたツクヨミは、思わずファイズフォンXをギンガワクセイに撃っていた。
ギンガワクセイが掌を翳すと呆気無く光弾は弾かれてしまう。
ギンガワクセイの目がツクヨミへ向けられる。その眼は明らかにツクヨミを標的としていた。
「ふん!」
ギンガワクセイから放たれる光球。ツクヨミに逃れる術は──ツクヨミが手を翳す。見えない波動が放たれ、光球の速度を遅くする。
「何……?」
ツクヨミの中にもある時間操作の能力。土壇場であったが、何とか発動することが出来た。しかし──
「無意味だ」
──光球の時間が緩まったのはほんの少しの間だけ。ギンガには時間操作は効かない。ましてや、完全に覚醒していない能力などでは止めることも出来ない。
今度こそツクヨミは逃れる術を失う。ギンガの光球は、ツクヨミに着弾。
「ぐあっ!」
する直前にライジングイクサが身を盾にしてそれを防いだ。
背部から白煙を上がるライジングイクサ。装甲をパージしているせいでイクサの時よりもギンガワクセイの力は通っており、片膝を突いてしまう。
「無事か……?」
「名護さん!」
ツクヨミは急いでライジングイクサを介抱しようとする。しかし、ギンガワクセイはそれを許さない。
「滅びの時だ」
ギンガワクセイの光球が二人目掛けて放たれる。
「させるかぁ!」
ジオウⅡ、ゲイツリバイブ、ウォズの武器がそれを受け止め、三人の力で無理矢理弾き返す。
「ふっ……弟子に助けられるとは……」
ライジングイクサは何処か嬉しそうにその言葉を洩らす。
「名護さん! 大丈夫!?」
「ああ……」
「しかし、一体どうすれば奴は倒せるんだ……?」
「一つだけ方法がある」
「何? どんな方法? ウォズ」
「太陽だ。ギンガの力の源は太陽。それを遮れば奴は弱体化をする」
「太陽だと……」
空を見上げれば燦然と輝く太陽。周囲に雲一つ無い。日が落ちるまでまだ時間はある。日陰など陽の光が当たらない場所まで移動させ、倒すという方法も考えられるが、ギンガワクセイがそこに大人しく付いて来るのは考え辛く、仮にそれで倒せてもまだギンガタイヨウが居る。
どうすれば倒せるのか、と考えていた時、ライジングイクサが何かを思い付いた。
「そう……太陽だ……! 太陽さえ隠せれば……! 太牙君!」
ギンガタイヨウと戦うダークキバに届ける為に傷付いた体で精一杯の大声を出す。
「太牙君! こいつらの力の源は太陽だっ! 夜が、奴らの、弱点だっ!」
ダークキバにその声が届き、ジャコーダーを地面に突き立てる。
「そういうことか」
ダークキバはベルト側面にあるケースからフエッスルを引き抜く。
「何をしようが無駄だ。お前たちに私たちは倒せない」
「そうかな?」
ダークキバは、フエッスルをキバットバットⅡ世に咥えさせ、吹き鳴らさせる。
「ウェイクアップ
ダークキバが腕を交差し、腰を下ろす。すると、
「何を──」
「お前たちの、夜が来る」
赤い霧の様な力が周囲に立ち込めたかと思えば、陽の光は消え、赤い月が照らす真紅の夜がやって来る。
「馬鹿な……! 一体何が……!」
「くっ、あああ……!」
ダークキバによって引き起こされる赤い夜の現象。偽りの夜だが、それでも陽の光を遮られたことによってギンガワクセイとギンガタイヨウは急速に力を失っていく。
彼らが身を保護する為に石化する前に倒さなければならない。
限られた時間。それぞれのライダーたちが全力を放つ。
◇
フエッスルによって解放された力がダークキバの右拳へと伝わり、火力が弱まっているギンガタイヨウに強烈な右ストレートを打ち込む。
石化しかけていたギンガタイヨウの体が砕ける程の威力。それを受けたギンガは殴り飛ばされるが、飛んでいる最中に空中で停まった。
宙に描かれる緑の輝きを発する蝙蝠に似た黒い紋章がギンガタイヨウを磔にしている。
ダークキバが引っ張る様な動きを見せると、ギンガタイヨウは紋章から弾かれてダークキバの方へ飛んでいく。
それを迎撃するダークキバの右拳。飛ばされたギンガタイヨウはまた紋章へ磔にされ、再び弾かれた。
もう一度鳴らされるフエッスルの音。
「ウェイクアップ
戻って来たギンガタイヨウを拳ではなく足で蹴り上げた後、ダークキバも追って跳躍する。
上空へ飛ばされるギンガタイヨウ。そこにも紋章が描かれており、ギンガタイヨウを磔にした後、弾く。
蹴る。蹴る。蹴る。弾く。弾く。弾く。ダークキバの蹴りと紋章の往復を繰り返しながギンガタイヨウとダークキバは空高くまで移動していく。
「はあ!」
ダークキバの揃えられた両足がギンガタイヨウの胸部を蹴り抜き、一際高く蹴り上げる。
「がはっ!」
赤い月が間近に見える。
「太、陽……」
ギンガタイヨウは太陽に向けて手を伸ばすが、求める太陽はそこには無い。
「終わりだ。相応しい最期をくれてやる。有り難く思え」
キバットバットⅡ世が宣告すると、ギンガタイヨウは紋章によって身動きを止められる。
ダークキバはザンバットソードの剣身に指を這わせると、煌いていた剣身が赤く染まる。
ザンバットソードで円を描くと、それに合わせてザンバットソードに似た幻影の剣が輪になって召喚された。
「王の判決を言い渡す──」
召喚された幻影の剣が射出され、次々とギンガタイヨウに突き刺さる。そして、最後の一撃は──
「──死だ」
──ダークキバが振るうザンバットソードの斬撃。ギンガタイヨウを紋章ごと真っ二つに両断。
「太陽が、沈む……」
その言葉を残してギンガタイヨウは爆散。光の柱となって宇宙へ還っていった。
◇
弱体化したギンガワクセイ。しかし、ジオウⅡたちも大きなダメージを受けている。早々に決着を付けなければ負けるのはジオウⅡ側となる。
肩で息をするライジングイクサ。その視線に倒れ伏しているガルルたちの姿が映る。その時、ライジングイクサはあることを思い付く。
「もし、洗脳する力がイクサと同じ原理ならば……」
あるフエッスルを取り出し、イクサベルトにセット。
『G・A・R・U・R・U・F・A・K・E』
鳴り響く音。ガルルの体がビクリと動く。
ライジングイクサは続けてフエッスルを鳴らす。
『B・A・S・S・H・A・A・F・A・K・E』
『D・O・G・G・A・F・A・K・E』
同じ様に体を震わすバッシャーとドッガ。すると、彼らは勢いよく起き上がった。
「ああ……やっと自由だ」
「ほんと、僕たちの扱いが雑だよ、あの女王様」
「俺、大分、疲れた」
イクサとアナザーイクサは同じ力を持っている。故にアナザーイクサの洗脳に対し、イクサが似た様な力をぶつければ相殺し合うのではないかと思い試してみたが、その試みは成功した。
「君たち!」
ライジングイクサが叫ぶとガルルたちはライジングイクサを見る。
「彼らの、ソウゴ君たちの、力に……!」
怪我を押して絞り出す様な声を出すライジングイクサ。
「良い様に扱われて、すぐまた使われるか……まあ、無理矢理よりましか」
「うん。助けてもらったし」
「借りは、返す」
ガルルたちはその身を武器に変え、ジオウⅡらの下へ飛ぶ。
ジオウⅡにはガルルセイバーが。ゲイツリバイブにはドッガハンマーが。ウォズにはバッシャーマグナムが。
自分の意思でやって来たそれを反射的に受け取るジオウⅡら。
「うあっ! え? もしかして使えってこと?」
ジオウⅡに答える様にガルルセイバーが手の中で一瞬震えた。
「成程。なら使わせてもらう」
重量のあるドッガハンマーだが、ゲイツリバイブ剛烈の剛腕なら片手で振り回せる。
「銃か。あまり使わない武器だが、有効に活用させてもらおう」
ウォズはバッシャーマグナムのグリップの感触を確かめる。
赤い月が輝く夜の中で、三人の仮面ライダーが動き出す。
先行するのはジオウⅡ。サイキョーギレードとガルルセイバーの二刀流でギンガワクセイへ迫る。
ガルルセイバーの影響か、その動きは俊敏且つしなやかな動きで、狼を連想させる。
ジオウⅡがギンガワクセイの目の前まで来る。ギンガワクセイは掌打を繰り出すが、突然ジオウⅡの姿が消えた。
ジオウⅡはギンガワクセイの頭上を跳び越えており、背部に回るとその背を二本の剣で斬り付ける。
「がっ!」
思わず仰け反るギンガワクセイ。その無防備な腹部に重い一撃が突き刺さる。ゲイツリバイブが振るうドッガハンマーの一撃である。
仰け反った体が今度は前屈みとなると、顎下にジカンジャックローにアッパーを受け、ダメ押しドッガハンマーによる振り回しの一撃を貰う。
ギンガワクセイの体を構成する惑星に亀裂が生まれ始める。
すぐに体勢を立て直そうとするギンガワクセイ。ピチャ、という水音が足元から聞こえる。いつの間にかギンガワクセイの周囲が水で満たされていた。
水が張られた地面を滑走しながらウォズがバッシャーマグナムで銃撃を行う。無数の水弾を前後左右から撃ち続けられ、ギンガワクセイの体を穿つ。
「う、宇宙が、破壊されるなど──」
ギンガワクセイの動きが止まった。最大の好機が生まれる。
「行くよ!」
『ライダーフィニッシュタァァイム!』
ジオウⅡにゲイツリバイブとウォズも続く。
『フィニッシュタァァイム! リバイブ!』
『ビヨンド・ザ・タイム!』
三方向に立つジオウⅡらが繰り出すライダーキック。
三つの衝撃がギンガワクセイを貫く。
「──有り得なっ」
ジオウⅡたちの力がギンガワクセイを貫き、その身を爆発。光となって空へ伸びていった。
◇
とある結婚式会場。そこでは花婿と花嫁が周囲から祝福されていた。
そこへ響き渡る何かを引き摺る音。
「祐子……!」
哲也のかつての恋人が前の恋人を撲殺したマンホール蓋を引き摺り、真っ赤な赤いドレス姿で現れた。その事実に恐怖で慄く。
「いい女ね……」
祝福の幸福で染め上げられていた教会が一瞬で凍り付く。祐子の放つ狂気がそうさせる。
祐子は許せない。恋人が幸せになることが。その恋人と伴侶となる女が。
だから、祐子は叫ぶ。
「有罪……!」
「止めろ!」
そこに現れたのはソウゴ。祐子は彼を睨み付ける。
「邪魔をするな!」
ソウゴに向けてマンホール蓋が投げ放たれるが、ソウゴの背後から現れた影がそれを弾き飛ばす。
「散々利用してくれた借りを返しに来た」
ガルルが低く唸る。ソウゴの側にはバッシャーとドッガも居た。
「有罪! 有罪! お前たち、全員有罪だ!」
『イクサァ』
アナザーイクサへと変身する祐子。ソウゴもまたドライバーを装備し、そして──キバライドウォッチを強く握り締める。
ここに来る前の名護の言葉を思い出す。
『北島祐子は、自らの嘘を真実だと思い込む心の病を患っている』
『彼女にとって世界とは自分の嘘で塗り固めたものだ』
『ただ嘘を重ねるのなら別にいい。しかし、その過程で人が死ぬのなら話は別だ』
『これが私から君への師としての最後の試験だ』
『このライドウォッチで彼女を止めなさい』
北島祐子を倒す為では無く止める為にライドウォッチの力を使う。これ以上、彼女が嘘を吐かない為に、その嘘の為に人々が犠牲にならない為に。
ジオウライドウォッチをジクウドライバーに装填。更に、ディケイドライドウォッチとキバライドウォッチを組み合わせてセット。
「行くぞ。俺たちも」
「うん!」
「やって、やる」
ソウゴがジクウドライバーを回転させ、叫ぶ。
「変身!」
『ライダーターイム!』
ジオウの姿となるソウゴ。そこに別の力が重なり合う。
『アーマーターイム!』
『カメンライド・ワーオ! ディケーイ! ディケーイド! ディーケーイードー!』
ディケイドアーマーを装着。ディケイドライドウォッチによりキバライドウォッチは秘めていた力が解放される。
『ファイナルフォームターイム!』
『キ、キ、キ、キバ!』
黄金の蝙蝠の群れがジオウに殺到。そこへ、彫像と化したガルルたちも混ざる。
手足には黄金の装甲。右肩にはヒレ状の緑の肩装甲。左肩には鬣型を思わせる鋭利な形の青い肩装甲。胸部には岩から削り出した様な分厚い紫の胸部甲。
ディスプレイ状の仮面には蝙蝠を模した赤い複眼が映し出されていた。
右肩に『キバ』、胸部に『ドガバキエンペラー』と描かれた装甲を張り付け、ガルルたちの力が混ざり合い、真紅のマントを翻して最強のキバアーマーがここに誕生する。
「貴女を止めます……!」
「姿が変わった程度で!」
大剣を振り上げながらジオウへ飛び掛かるアナザーイクサ。
煌く五本の線。気付けば五回の衝撃がアナザーイクサを襲っていた。
「ああっ!」
ジオウが構えるガルルセイバー。衝撃の正体がそれだが、アナザーイクサには振るう姿が全く見えなかった。
距離を取り、十字架から砲弾を放とうとする。しかし、それを妨げるバッシャーマグナムの水弾。
機関銃の如く吐き出される水弾は、アナザーイクサに砲撃する暇を与えない。
不意に銃撃が止む。いつの間にかジオウが目の前に立っていた。
急いで大剣を振ろうとするが、ドッガハンマーの重量ある一撃が十字架を粉砕してしまう。
無手となったアナザーイクサ。その胸部にジオウの蹴りが打ち込まれる。
一発二発では無い。十を超える回数の蹴りが二、三秒の間に一気に叩き込まれた。
「うああああ!」
蹴り飛ばされ宙を飛ぶアナザーイクサに、ジオウは止めの一撃を放つ。
『キ、キ、キ、キバ!』
『ファイナルアタック! タイムブレーク!』
飛翔し、空中で両足を揃える。両脚から真紅の翼が生え、アナザーイクサにキックが命中すると同時にその翼がアナザーイクサを斬り裂く。
「ああああああああ!」
渾身の一撃を受け、アナザーイクサは爆発。地面に倒れ伏した時には祐子の姿に戻り、アナザーウォッチも破壊される。
「祐子さん!」
変身を解き、祐子を助け起こすソウゴ。
「お前は、最後まで、甘いな……その甘さ、いや、優しさは私なんかじゃなく、他の奴に与えてやれ……」
「祐子さん……」
苦笑する祐子。だが、その眼が突如見開かれる。
「……え?」
祐子の胸部に開かれた穴。そこから鮮血が流れ出ていた。
その姿を離れた場所で見るのはオーラ。祐子に受けた傷と侮辱に対する報復を虎視眈々と狙っていた彼女。それが果たされ、爽快な笑みを浮かべながら去っていく。
「祐子さん……? 祐子さん!」
祐子は既に事切れていた。救いたかった。こんな結末など望んでいなかった。
ソウゴは祐子の名を呼びながら叫ぶことしか出来なかった。
◇
密かに戦いから抜けていたスウォルツは、天に向けてウォッチを構えていた。
空に昇った筈のギンガの力がウォッチに吸収され、新たなライドウォッチと化す。
『ギンガ!』
その直後、ストールが伸び、スウォルツの手からそのウォッチを奪っていく。
「何っ!」
「残念だったね。君の思惑ぐらい読めていたよ」
スウォルツがギンガの力を見過ごす筈無いと分かっていたウォズ。スウォルツがいつ動くか監視していたのだ。
ウォズはストールを自らに巻き、姿を消してしまう。
スウォルツは不機嫌そうな表情をしながら、懐に手を伸ばす。
「出来れば二つとも独占しておきたかったが……」
スウォルツが取り出したのはアナザーウォッチ。そこに秘められた力の名は──
『ギンガァ』
◇
ソウゴは一人公園でボーっとしていた。目の前で祐子を死なせてしまったショックがまだ抜けていない様子であった。
それを遠くから見守る四人の影。
「ソウゴ君……」
「あまり心配するな。男は傷付くことで磨かれるもんだ」
「そういうもの?」
「俺は、知らん」
名護と他三名。ガルル、バッシャー、ドッガの人間態である。
「だからといって放っておくわけにはいかない」
「だから連絡を入れたのか? 過保護なことだ」
「でもさ、結局本当にあの女は初恋の相手だったの?」
「顔は、良い。だが、中身は、最悪だった」
「北島祐子はかつてこの近くで住んでいた。年齢も合っている。だが、それだけだ。本当のことは分からない」
「今となっては真実は分からない、か」
すると、名護の携帯電話が鳴る。
「もしもし。ああ、恵か。──分かった。こっちはもう大丈夫だ。ああ、分かっている。太牙君ももう別の仕事に向かっている。近いうちに帰る予定だ」
名護とその妻である女性との会話。
「仲が良いことだな」
「あれ? もしかして、妬いてる?」
「男の、嫉妬は、醜い」
「黙れ」
不機嫌そうな表情となると、名護を置いてさっさと帰ってしまう。その後を二人が追っていく。
置いていかれていることに気付かず、名護と妻との会話は続くのであった。
◇
ぼんやりと眺め続ける光景。意味は無いと分かっているのに力が入らない。
このまま何もせずに時が流れていくかと思った時──音楽が聞こえた。
音の方に目を向けると、そこには茶髪の青年がバイオリンを弾いている。ソウゴの視線に気付いて青年は演奏を止めた。
「あ、ごめん。気に障った?」
「──ううん。逆にもう少し聞きたかったかな」
「それなら」
青年は再びバイオリンを弾き出す。
不思議だった。心の中の悲しみが全部洗い流される様な、そんな気持ちになる旋律であった。
音を聞き、ソウゴは悟る。全ては終わったのだと。自分の初恋も、祐子の命も。後は自分がそれを受け入れるだけのこと。
「さようなら……セーラさん……」
双眸から自然と涙が零れ落ちる。初恋の終わりを癒すかの様にバイオリンは奏で続けられた。
アナザーライジングイクサを出そうかと思いましたが止めました。ドガバキエンペラーアーマーなら勝てる要素しかないので。
そして、ギンガファイナリーは次の話で出します。そっちの方が合っていると思いました。ついでに敵も増やします。
アナザーイクサ
身長:220.0cm
体重:160.0kg
特色/能力:大剣、大砲を操る/アームズモンスターの洗脳
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ