仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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長くなってしまいました。ちなみにテレビと同じクロックアップは高速移動扱いです。色々とややこしくなるので。


アナザーザビー2019

「どうした? 受け取らないのか?」

 

 アナザーウォッチを差し出しながらスウォルツは挑発する様な口調で問う。

 差し出されたそれを凝視したまま動かない相手。その視線には明らかに疑念が含まれている。

 

「何のつもりだ? と言いたそうだな。包み隠さず言わせて貰うなら、お前を利用する為だ。この星を窮地に追い込め。そうすれば俺が知りたいことが知れる。そして、お前もこの力を利用すればいい。まだ多くの仲間を呼び寄せたいのだろ?」

 

 スウォルツが齎す力の誘惑。相手もまたスウォルツの手の中にあるアナザーウォッチに強大な力が秘められていることを感じ取っていた。

 

「意見は求めん。お前はただ受け取ればいい」

 

 傲慢な態度で言い放つスウォルツ。しかし、目の前の力の誘惑に耐え切れず、スウォルツの手の中にあるアナザーウォッチを取ってしまう。

 

「それでいい。今からお前が仮面ライダーギンガだ」

『ギンガァ』

 

 手にした力を自らの手で解放する。それは、この地球に再び宇宙からの危機が訪れることを意味していた。

 現に今まさに地球に向かって炎の尾を引く隕石が降ってきているのだから。

 そして、その波紋は、思わぬ所まで広がっていく。

 

「……ん?」

 

 スーツ姿の男性は、足を止めて周囲を見渡し始める。

 言葉に出来ないが、何かがおかしく、違和感を覚えていた。

 自身に変化が起きた訳では無い。変化があるとすれば周囲である。男性は見るもの全てに首を傾げながら歩を進めていく。

 同じ頃、別の場所でも一人の男が佇んでいた。

 黒革のジャケット。下に着るシャツも履いているズボンも黒一色。首にはシルバーアクセサリーを垂れ下げている。

 男もまた周囲に違和感を覚えていたが、すぐに興味を無くす。

 

「どこでもいい……いっそ地獄の底なら心地良いぐらいだ……だろ? 相棒……」

 

 男の目に生気は無く、底が見えない程暗く濁っている。全身から発せられる無気力感。死人が蘇ったと錯覚してしまいそうになる。

 

「どうせ俺なんか……」

 

 自らを卑下しながら死人は歩く。行く当てなど無い。死に損なった死人、生きた屍に還る場所など在りはしないのだから。

 

 ◇

 

 

 最近、ニュースを騒がしているのほぼ連日で起きている隕石の落下事故であった。幸いというべきか隕石自体がそれほど大きくは無い為、被害は小規模で済んでいるが、それでも連続して起きているせいでクレーターが出来たり、建物が倒壊するなど小さな被害が積もり甚大な被害になりつつあった。

 当然ソウゴたちもそのニュースについては知っていた。今もテレビで女性のレポーターが現場の被害状況を伝えている映像を見ている。

 ソウゴたちは朝食を摂りながらそのニュースから目を離すことは無かった。

 

「最近よく隕石が落ちるわね……」

 

 ツクヨミも自分の言っている台詞をおかしいと思うが、本当にそうとしか言えない程異常現象が日常化していた。

 

「あの仮面ライダーギンガと関係あるのかな……?」

 

 隕石と言うと嫌でもあの仮面ライダーを連想させる。ソウゴたちや協力者たちによって倒したが、それによって何らかの影響が出ていても変では無い。仮面ライダーギンガという存在はそれほど得体が知れないし強力な力を持っていた。

 

「関係が無い──とは言い切れない。我が魔王」

 

 ウォズは難しい表情をしながらあるライドウォッチを皆の前に出す。それはギンガの力を宿したライドウォッチなのだが、一回り大きなライドウォッチに重なって繋がる通常のライドウォッチという異なる形状をしており、仮面ライダーギンガの顔は描かれず『カメン』の文字だけが描かれていた。ギンガの力が異質で強いものであることがライドウォッチにも表れている。

 倒した筈の仮面ライダーギンガにまたも脅威を感じながら全員の目はニュースに向けられる。

 丁度女性レポートが原稿を読み終える。女性レポーターはカメラに向かって場に似合わない笑顔を見せる。すると、女性レポーターの体が突如変化した。

 昆虫の蛹を思わせる生々しくグロテスクな緑の体。それに足を付け、人と同じ五指の左手、人差し指と中指、薬指と小指が大きな鉤爪となった三本指の右手。顔は髑髏の様になっており胸から生えた複腕が眼窩に指を突っ込むという被虐的な見た目をしていた。

 怪物はカメラマンへ襲い掛かる。悲鳴を上げて怪物の手から逃れるようとするカメラマン。その揺れるカメラが野次馬たちに襲っている他の怪物たちの姿を映す。一匹だけではなく何匹も現れている。

 

「どうやら隕石が運んできたのはこいつらのようだ」

「これって……?」

「ワーム。人間に擬態する地球外生命体だ」

「つまり……宇宙人ってこと!」

 

 初めて見る宇宙人。それはテレビや本などにある手足が細く、頭と眼が大きいという想像図とはかけ離れた生理的嫌悪を感じる見た目をしていた。

 

「この本によれば、かつて仮面ライダーカブトと戦っていたという」

 

『逢魔降臨暦』に記された仮面ライダーカブトの情報を断片だが読み上げるウォズ。

 この状況に於いて出てきた仮面ライダーカブトの存在。否が応でも探しているライドウォッチとの繋がりを感じてしまう。

 

「それも大事だけど、これを放ってはおけないだろ!」

 

 テレビではまだ人々がワームに襲われている映像が流れている。

 ソウゴはゲイツを連れて急いで現場に向かう。当然、ツクヨミもそれについていく。

 向かう途中、大きな隕石が頭上を通過していくのが見えた。その隕石もまたワームを運んでいるとしたら? 

 隕石はソウゴたちが向かう筈であった方向とは真逆の方へ落ちていく。

 ソウゴの提案により二手に分かれることとなった。テレビに映っていた場所へはソウゴとツクヨミが。新しい隕石の方にはゲイツとウォズが向かう。

 

「常磐ソウゴが集めなければならないウォッチは、あと3つ。今回、その鍵を握るのは……仮面ライダーガタック──加賀美新。そして、もう一人、仮面ライダ──痛ッ!」

「何を呑気に朝食を食べているんだ! ウォズ! お前と一緒など嫌だがさっさと行くぞ!」

 

 組み分け直後にウォズが居ないことに気付き、クジゴジ堂へ戻ってみるとそこで朝食を前に一人で何かブツブツと言っているウォズを発見し、ゲイツは思わずその頭を叩いてしまった。

 ストールを掴み、ウォズを隕石の落下地点まで引っ張って連れて行こうとする。

 

「やれやれ……朝食は一日の資本なんだがね……」

 

 

 ◇

 

 

 ゲイツとウォズが隕石落下地点に着くと、砕けた隕石の中から卵の殻を破る様に次々とワームたちが出てくる。隕石自体が彼らを運ぶ移動手段であり大気圏突入と着地の為の防壁を兼ねていると推測出来た。

 ワームたちは隕石を見に来た一般市民、そしてゲイツとウォズを認識すると問答無用で攻撃を仕掛けてくる。

 

『変身!』

 

 ゲイツとウォズは仮面ライダーへ変身。地球外生命体たちに地球の礼儀をその身に教える。

 その頃、ソウゴとツクヨミもニュースで放映されていた現場へ着いた。しかし、予想に反して現場ではパニックなど起こっておらず、一般市民は呑気に落下地点を見学し、被害調査班の人々が被害などを見回っている。

 ソウゴは近くにいた調査班の人に尋ねた。

 

「あの……さっきここで怪物が出ませんでした?」

 

 調査班の人々は答えず、何故か一斉に笑顔を浮かべる。意図が分からない満面の笑み。ただ不気味にしか見えない。

 その笑顔のせいでソウゴの中からワームに関する肝心な記憶が抜け落ちてしまう。だが、少し離れていた場所でそれを眺めていたツクヨミはウォズの言葉を思い出す。

 

『ワーム。人間に擬態する地球外生命体だ』

 

 ツクヨミはファイズフォンXを取り出しながら叫ぶ。

 

「ソウゴ、ダメ! そいつらがワームよ!」

「え?」

 

 ソウゴの前で人々が擬態を解き次々とワームと化していく。

 

「え!」

 

 近過ぎるせいで変身している暇も無い。

 

「ソウゴ!」

 

 ツクヨミがファイズフォンXでワームたちを撃つ。しかし、火力が足りず怯ませるに至らない。

 爪を振り上げるワームたち。次の瞬間、炸裂音と爆発と共にワームたちが吹き飛んだ。

 爆風で顔を背けていたソウゴとツクヨミは、すぐに音の方を見る。

 銀と濃い青の装甲、両肩には大きなバルカンを備えている。腹部にはクワガタムシに似たベルト。赤い複眼がワームたちを睨む様に見ていた。

 

「仮面ライダー……」

 

 その姿にツクヨミはその名を呟く。

 突然現れた青い仮面ライダーはワームたちに向かった走り出し、一番近くにいたワームを殴りつけ、すぐさま別のワームに膝を叩き込む。

 ワームたちに拳を打ち付けていく青い仮面ライダー。その動きはソウゴとツクヨミからワームたちを引き離すものであり、正体不明ながらもソウゴには味方の様に思えた。

 

「何か行けそうな気がする!」

 

 青い仮面ライダーのおかげで変身が出来る余裕が生まれ、ソウゴはすぐにジオウライドウォッチⅡで変身する。

 

「変身!」

『仮面ライダー! ライダー! ジオウ! ジオウ! ジオウⅡ!』

 

 ワームとの戦いにジオウⅡも参戦。

 

「むっ!」

 

 青い仮面ライダーはジオウⅡに一瞬だけ驚くが、ワームと戦う姿を見てそれ以上は何も言わず目の前のワームたちとの戦いに集中する。

 

 

 ◇

 

 

 ジオウⅡたちが戦い始めたほぼ同時刻。こちらではゲイツとウォズがワームたちを圧倒していた。数が多かろうがゲイツたちの相手にならず、ワームたちは次から次へ撃破され、緑の炎と共に爆散する。

 ここまでは順調。

 

「こいつら大した強さじゃないな」

「甘く見ない方がいい」

 

 ウォズがゲイツに忠告する。

 

「まず彼らは──」

 

 ワームの内の一体が緑から赤に変色。体から蒸気の様な煙が噴き出すと、蛹の様な体が剥がれ落ち、飛蝗に似た姿の怪人と化す。

 

「──成虫に進化する。そして──」

 

 成虫になったワームの姿が消えた。と同時にゲイツが見えない攻撃を受け、転倒する。

 

「──クロックアップする。高速で動けるんだ」

「それを早く言え!」

 

 大事な情報を後出しで教えるウォズにゲイツは怒鳴った。普通なら視認出来ない速度で動けるという情報を今まで言わなかったことに対し、もっと怒ってもいい。ゲイツがそれ以上怒声一つで終わらせたのは、彼に高速移動に対する手段があったからである。

 

「速さなら負けん!」

「ふふ」

 

 ゲイツリバイブライドウォッチとシノビミライドウォッチを出す二人。同時にドライバーへセットし、ウォッチの力をワームたちへ見せつける。

 

『リバ・イ・ブ! 疾風! 疾風!』

『フューチャーリングシノビ! シノビ!』

 

 ゲイツリバイブ疾風とフューチャーリングシノビと成る二人。成虫ワームの姿が高速の世界に入り、消える。それに合わせ、ゲイツリバイブたちも消えた。

 衝撃が地面、空中、あらゆる場所で音を超えて発生。他のワームたちが音の方を見た時には、既に別の場所で戦いの衝撃が起きていた。

 やがて、衝撃は緑色の爆発となる。高速世界に於いて成虫ワームを撃破した証であった。

 消えていたゲイツリバイブたちが姿を現す。

 

「こんなものか……ちっ」

 

 ワームたちの方を見て、ゲイツは舌打ちをする。緑の蛹が剥がれ、成虫と化そうとしていた。昆虫だけではなく甲殻類などに似た成虫へ進化するワームたち。

 成虫後、クロックアップをしようとし──

 

『忍法! 時間縛りの術!』

 

 ──動きが停まる。

 

「高速移動も事前に止めてしまえば何の問題も無い」

 

 鎌モードにしたジカンデスピアを地面に突き刺したウォズが得意気に言う。鎌の刃を中心にし、薄紫色の光が蜘蛛の巣状に展開。それを踏んでいる成虫ワームたちの時間が停まっていた。

 

「あとは任せたよ、ゲイツ君。なるべく速く頼む」

「ふん。一秒も必要無い」

 

 ゲイツリバイブはジカンジャックローにゲイツリバイブライドウォッチをセット。

 

『疾風! スーパーつめ連斬!』

 

 

 

 ◇

 

 

『ライダー斬り!』

 

 サイキョーギレードから放たれた斬撃と青い仮面ライダーのバルカンから撃たれた光弾がワームたちを一掃する。

 その直後にジオウⅡたちが見えない衝撃を浴びせられる。拳打に似た衝撃。ジオウⅡは戸惑うが、青い仮面ライダーはそれが何なのか知っていた。

 

「影山か!」

 

 青い仮面ライダーはベルトのクワガタの顎を開く。すると、全身に電流に似た光が走り、装甲が浮き上がる。

 

「キャストオフ!」

『CAST OFF』

 

 クワガタの顎を百八十度展開させると装甲が弾け飛ぶ。

 両肩のバルカンは無くなり、代わりに片刃の剣を付け、頭部側面からクワガタの顎に似たパーツが立ち上がる。

 

『CHANGE STAG BEETLE』

 

 別形態へ変わる青い仮面ライダーに、ツクヨミとジオウⅡも驚く。

 すると、高速で動いていた者が姿を現す。

 灰色を主とし、両肩には尖った装甲、右腕にはジャッキの様な機構が付いている。白色の複眼。頭部にも前後と両側面に尖ったヘッドパーツが付いており、ベルトにはその姿のモチーフと思われる茶色のショウリョウバッタが装着されている。

 灰色の仮面ライダーは、姿が変わった青い仮面ライダーを一笑し、再び高速移動をする。

 

「クロックアップ!」

『CLOCK UP』

 

 ベルトの側面を叩くと青い仮面ライダーもまた高速で動き始める。周囲の物が砕け、飛び散り、戦いの余波だけが分かる。

 ジオウⅡもツクヨミはただ姿無き破壊を見るしかない。

 その時、建物の上部が破壊される。よく見れば破壊の中心には青い仮面ライダー。灰色の仮面ライダーに打ち負けたらしい。

 砕けた建物の瓦礫が落下する。ツクヨミは、その下に逃げ遅れた親子が居ることに気が付いた。

 

「危ない!」

 

 手を翳す。そこから放たれる力が落下する瓦礫を停止させた。徐々に制御出来始めた力にツクヨミは戸惑いを覚える。過去の記憶が無いせいで尚更自分の存在に不安を抱いてしまう。

 そんなツクヨミの感傷など無視して灰色の仮面ライダーが矛先をジオウⅡへ向ける。不可視の拳打がジオウⅡに打ち込まれる。

 

「ぐあ!」

 

 相手は凄まじい速度で移動している。それならば対処する方法がある。

 ジオウⅡは額の針を回し、未来を予測すると共にディケイドライドウォッチを起動。

 

『ディ、ディ、ディ、ディケイド!』

 

 ディケイドライドウォッチの力でライドヘイセイバーが召喚される。

 灰色の仮面ライダーの動きを予測しながら、ライドヘイセイバーの時計の針を回す。

 

『ヘイ! カブト!』

 

 予測が終わり、ジオウⅡはライドヘイセイバーを逆手に構える。

 

『デュアルタイムブレーク!』

 

 灰色の仮面ライダーの数秒先の未来の軌道。そして、カブトの力を発するライドヘイセイバー。

 未来の軌道に沿って灰色の仮面ライダーがジオウⅡに拳を繰り出す。その瞬間、ジオウⅡもまたクロックアップの世界へ入り、突き出された拳を身を低くして躱していた。ライドヘイセイバーがジオウⅡに一時的にカブトの力を与える。

 ジオウⅡは体勢を低くしながら前進。灰色の仮面ライダーの胴体をすれ違い様に斬る。

 

「ぐうっ!」

 

 灰色の仮面ライダーのクロックアップが解除され通常の速度へ戻る。そこに復帰した青い仮面ライダーが、両肩に付いていた剣を振り翳す。

 

「終わりだ! 影山!」

 

 交差する斬撃から青白い光の刃が放たれ、灰色の仮面ライダーへ向かって行く。

 灰色の仮面ライダーに命中、閃光の様な光が発生する。それが治まると倒れ伏した灰色の仮面ライダーの姿──ということにはならなかった。

 白く柔軟さが有りそうな全身。装甲の様に張り巡らされた蜂の巣を連想させる六角形。それを固定させる為に至る所に鎖が巻かれている。顔もまた蜂の巣を思わせる六角形が密集しており、黒い穴が虚無を彷彿させる。

 腹部にベルトが巻かれているが、削り取られた痕跡があり辛うじてZとTの文字が読めた。

 

「アナザー……何?」

 

 このアナザーライダーが灰色の仮面ライダーの盾になった。しかし、明らかにアナザーライダーの見た目だが、アナザーライダーであることを示す年数表記と名前が何処にも刻まれていない。

 

「弟に手を出すな……」

 

 覇気の無い気だるげな声。

 

「お前は……!」

 

 青い仮面ライダーはアナザーライダーに面識がある様子で驚く。

 

「加賀美……お前はいいよな……」

 

 妬む様な声を発するアナザーライダー。その肩に灰色の仮面ライダーが手を置く。

 

「兄貴、行こう」

「ああ、お前となら何処だっていい……」

『CLOCK UP』

 

 クロックアップを発動させ、アナザーライダーと共に逃げてしまう。

 ワームは全滅。アナザーライダーと灰色の仮面ライダーも居なくなり、ジオウⅡは変身を解除。すると、青い仮面ライダーも変身を解除する。

 スーツ姿の青年にソウゴは訊く。

 

「あんたは……?」

「──加賀美新だ」

 

 

 ◇

 

 

 加賀美新。あの青い仮面ライダーの名は仮面ライダーガタック。クジゴジ堂内で教えられる。

 加賀美から齎された情報により、あのアナザーライダーの変身者は矢車想という男であり、灰色の仮面ライダー──パンチホッパーの変身者が影山瞬であることを知る。

 彼らは加賀美と同じくZECTと呼ばれる組織に属していたが、今は辞めていた。

 ZECTの名を初めて聞き、それが何かを問うソウゴに、加賀美は怪訝な顔をしながらワームと戦う為の組織であることを教えた。

 ワームの存在をついさっき知ったソウゴからすれば既にそんな組織があったことに驚く。その反応に、加賀美は怪訝を深めた。

 矢車と影山はコンビであり、『地獄兄弟』と呼ばれている。

 

「兄弟なの?」

「違う」

「何で地獄?」

「さあ?」

「誰が地獄兄弟なんて呼び出したの……?」

「知らない」

「ええ……」

「訳が分からないな」

 

 加賀美は影山を追っていた。彼がワームの擬態であることを知っていたのだ。影山が既に故人であることを知っている為。

 死んだ人間すら擬態するワームに戦慄を覚えると共にソウゴは怒りも覚える。死者を弄んでいる気がして。

 擬態影山によって矢車は操られていると考える加賀美は、二人の情報が入ったら連絡を入れる様に頼み、クジゴジ堂から出ようとする。

 去り際、加賀美は不可解な事を言う。

 

「渋谷はいつあんなに復興したんだ?」

 

 加賀美が言うに1999年に隕石が落ち、渋谷は壊滅したと語る。ソウゴは生まれていないので知らないが、今でもそんなことがあったなど知らない。

 認識のずれに加賀美は納得出来ない表情をしながら矢車たちを追う。

 加賀美とソウゴとの認識のずれ。ウォズは顔を険しくしていた。

 

 

 ◇

 

 

 悩むツクヨミ。時を停めた際に、彼女は断片的だが昔の記憶を蘇らせていた。幼い頃の自分と、帽子を被り顔を隠した青年。それがツクヨミの中で思い出された記憶。

 蘇った記憶に不安がるツクヨミを心配し連れ添うゲイツ。

 そこへ現れたのは仮面ライダーディケイド──門矢士であった。彼女が時間停止を発動させる姿を遠くから見ていた士。その場所にはスウォルツも居て、ツクヨミについて何かを知っている様な素振りを見せていた。

 士が言うに今のこの世界は大分時空が歪んでおり、もしかしたらそれにツクヨミが関係しているかもしれないと予想。

 自分の力のルーツを知りたいツクヨミは、士の協力の下彼が出した銀色のオーロラを通り、士と一緒に何処かへ移動してしまった。

 

 

 ◇

 

 

 ゲイツからの連絡でソウゴたちはツクヨミが士と共に何かを探りに行った事を知る。ついでにゲイツにも地獄兄弟についての情報を教えた。

 ツクヨミのことも心配するソウゴたちの前に黒の革ジャケットに赤いシャツ、アクセサリーの様に鎖を下げた顔に傷のある男が現れた。

 事前に顔写真を見せられていたソウゴは彼が影山瞬だと気付く。

 影山曰く、ワームの擬態であるが生前の記憶を持っており、殆ど影山と変わらない彼はアナザーライダーとなった矢車を助けたい、とソウゴたちに懇願する。

 あからさまな罠だと思い、ウォズは忠告するがソウゴはそれを受け、影山に付いて廃工場へと向かった。

 人気の無い廃工場。無防備な背中に手を伸ばす影山。そこへ尾行していた加賀美が間一髪で助ける。

 やはり廃工場に連れて来たのは影山の罠であった。

 罠が失敗すると身を潜めていたアナザーライダー──矢車とワーム、成虫ワームがわらわらと出てくる。

 

 

 ◇

 

 

 加賀美が手を翳す。何処からか飛んできた機械のクワガタムシ──ガタックゼクターがその手に収まる。

 

「変身!」

『HENSHIN』

 

 既に腹部に巻かれていたベルトにガタックゼクターを挿すと、多角形の金属が細胞壁の様に組み合わさながら加賀美を包んでいき、彼を仮面ライダーガタック・マスクドフォームへ変身させる。

 

「キャストオフ!」

『CAST OFF』

 

 すぐさまマスクドフォームからクロックアップが出来るライダーフォームへ姿を変えたガタック。

 

「変身!」

『HENSHIN』

 

 影山もまた跳ねてきたホッパーゼクターをベルトに挿し込む。

 

『CHANGE PUNCH HOPPER』

 

 パンチホッパーへ変身した影山は即座にクロックアップ。同じくクロックアップした成虫ワームたちを率いてソウゴを襲う。

 

『ギンガ!』

 

 高速移動をしていた筈のパンチホッパーたちが地面に叩き付けられ、そのまま動けなくなる。まるで見えざる手に押し潰されている様であった。

 

「なん、だ、これは……!」

「やれやれ。流石は我が魔王。敵の罠さえも利用するとは」

 

 ギンガミライドウォッチを構えながらウォズが歩いて来る。既にビヨンドライバーを装着していた。

 

「利用って……俺はただ矢車想の所に連れていって貰いたかっただけだよ」

 

 薄々罠であることは知っていた。しかし、影山が矢車を救いたいという言葉も信じていた。結果として裏切られてしまったが、この様な状況になってしまったのなら全員倒すしかない。

 

「ではお披露目しよう。我が新しい力を」

『アクション!』

 

 ギンガミライドウォッチをビヨンドライバーに填め込まれる。

 

「変身」

『投影! ファイナリータイム!』

 

 押し倒されたウォッチがドライバー中央にセットされる。

 二重の時計を模したエネルギー。その内の片方が開き、『ギンガ』という文字と九つの惑星が飛び出す。

 ウォズの前に星雲が発生し、ウォズを仮面ライダーへと変える。そこに飛び出した惑星が融合していく。

 

『ギンギンギラギラギャラクシー! 宇宙の彼方のファンタジー! ウォズギンガファイナリー! ファイナリー!』

 

 両肩上に円盤型の装甲。胸部に太陽、両肩、腹部に掛けて各惑星が描かれている。最後に『ギンガ』の文字が顔へ填まると最強のウォズが誕生する。

 

「僭越ながら自ら祝わせて貰おう。祝え! 全ての星々・銀河を統べ、時の魔王を守護せし宇宙最強の預言者! その名も仮面ライダーウォズギンガファイナリー!」

「自分でやるんだ……」

 

 既にジオウⅡへ変身していたソウゴは、絶対にウォズの祝福に対する執念に感心と呆れを半分混ぜた感想を洩らす。

 

「では、ワームたちは私が一掃するとしよう。ふん!」

 

 ウォズが手を上げると、地面に張り付いていたパンチホッパーやワームたちが一斉に浮き上がる。そして、そのまま宙でもがいていた。

 

「どうやら地球外生命体でも宇宙遊泳は苦手の様だ」

 

 ワームたちへ皮肉を言うと、ビヨンドライバーのハンドルを素早く開閉する。

 

『ファイナリー! ビヨンド・ザ・タイム!』

 

 空間が様変わりし、惑星が浮かび、遠くで星々が煌く宇宙と化す。

 

「うわ! 何これ!」

 

 突然宇宙と化す廃工場内に、ガタックやアナザーライダー、ワームたちは驚くが、ジオウⅡの方はどちらかと言えば喜びに近い驚きであった。

 

『超ギンガエクスプロージョン!』

 

 宇宙を疾走するギンガ。

 

「はああ!」

 

 右足を突き出す体勢となると、その右足に青や紫、赤、白、緑などの輝きが宿る。

 

「であああああああ!」

 

 ワームたちを突き抜けていくウォズのキック。通り過ぎていった跡に多色の光を残すそれは彗星の如く。

 直撃だけでなくその光の尾に触れたワームすら爆散し、大量のワームが一気に数を減らしていく。

 

「くっ!」

 

 迫るキックにパンチホッパーは身を捩る。直撃せずに腕を掠めていくウォズのキック。パンチホッパーの装甲もあって辛うじて致命傷は裂けられた。

 言葉通りワームたちを一掃したウォズが着地すると、宇宙空間は元の廃工場へ戻る。

 

「う、ぐ……!」

 

 パンチホッパーが腕を押さえながら立ち上がろうとする。手がベルト横に伸ばされるのを見た。クロックアップして逃亡する考えが見える。

 させまいとジオウⅡが斬り掛かろうとするが、そこにアナザーライダーが割って入りその身でサイキョーギレードを受ける。

 

「逃げろ……! 相棒……!」

「ありがとう、兄貴!」

『CLOCK UP』

 

 その隙にパンチホッパーは逃げてしまった。

 ワームたちも全滅し、残されたのはアナザーライダー一人。

 

「矢車! 抵抗するのは止せ!」

 

 ガタックが矢車に降伏するよう促す。

 

「影山は……弟は……俺が護る……!」

「ふー……頑固なことだ」

 

 ウォズの溜息。しかし、アナザーライダーはそれを別のものに捉えた。

 

「今、俺を嗤ったか……?」

 

 アナザーライダーの雰囲気が変わる。肩口に刃を食い込ませているサイキョーギレードを掴むアナザーライダー。ミシミシと音が鳴り始めた。

 

「我が魔王! 何か危険だ! 離れるんだ!」

「分か──」

「キャストオフ……」

 

 瞬間、アナザーライダーが弾けた。周囲に撒き散らされるアナザーライダーの破片。間近で受けたジオウⅡは当たって吹き飛ばされ、ウォズは掌でそれを弾き、ガタックは剣で斬り落とす。

 立ち上がったジオウⅡは見た。その姿を。

 

「姿が変わった……」

 

 白から黒と黄を主としたスズメバチの外骨格に似た体。左腕には巨大なスズメバチが腹の先端から針を出して留まっている。よく見れば逃げない様にスズメバチに何本もピンが刺さり標本の様に固定されている。

 左右に開閉される大顎。その奥に人と同じ歯が並んでいた。眼部はスズメバチと同じ黒い複眼──に見えたが、実際は揃えられた五指の様な形をしており後ろから目隠しをされている様に見える。

 しかし、キャストオフ前と同じでやはり名と時代表記が見当たらない。

 

『ザビィ……』

 

 アナザーライダーことアナザーザビーは左拳を突き出す。すると腕のスズメバチが針を連続して飛ばす。それを躱すジオウⅡたち。視線がアナザーザビーから外れると、アナザーザビーは即座にベルト横を叩きクロックアップを発動。

 クロックアップの中でジオウⅡに拳を浴びせ、怯ませる。

 殴られながらガタックは叫ぶ。

 

「あれはワームの擬態だ!」

 

 すると、アナザーザビーのクロックアップが解除される。

 

「それがどうした……? どうせ俺なんかワームぐらいしか相手にされない……」

 

 影山が擬態していると知って尚協力する矢車。言動が卑屈そのものである。

 

「俺は、今度こそ弟を……護る……!」

「今度こそ?」

 

 アナザーザビーは背部から薄羽を展開。そこに左右の羽に『THEBEE』と『2019』の文字。

 アナザーザビーは飛び立ち、そして──

 

「クロックアップ……!」

 

 飛翔状態からクロックアップを発動。足元を掬う様にして三人を殴打し、地面から足を離させるとあらゆる角度から攻撃を浴びせる。

 

「ぐあ!」

「うあっ!」

「くっ!」

 

 ウォズが再び重力を発動させるが、発動前にアナザーザビーは射程外へ移動してしまう。ワームたちを足止めした際に間合いも把握していたと思われる。覇気が無いが矢車自体かなり優秀な観察力と身体能力であることが分かる。

 

 地面に落下したジオウⅡたち。すぐに立ち上がり体勢を立て直す。

 

「──そこを動かないでくれ」

 

 ウォズが何故か二人を制止。ギンガミライドウォッチを操作。ミライドウォッチに描かれた顔が変わる。

 

『ワクセイ!』

 

 ビヨンドライバーを再セットする。

 

『投影! ファイナリータイム!』

 

 ウォズを中心にして回る惑星たち。

 

『水金地火木土天海! 宇宙にゃこんなにあるんかい! ワクワク! ワクセイ! ギンガワクセイ!』

 

『ギンガ』の文字が『ワクセイ』へ置き換わる。ウォズギンガワクセイフォームとなったウォズは、ビヨンドライバーのハンドルを前に倒す。

 

『ファイナリー! ビヨンド・ザ・タイム!』

 

 ウォズを中心に星雲が地面に生まれて輝くと、そのハンドルを元の位置に引いて戻す。

 

『水金地火木土天海エクスプロージョン!』

 

 星雲から生まれた星々が、花火の様に打ち上げられ、それらが何故かアナザーザビーではなく廃工場の天井へ飛んでいく。

 すると、天井を突き破り燃え盛る隕石が落ちてきた。

 

「ええ!?」

「何だっ!?」

 

 ジオウⅡたちが見上げる中で隕石とウォズの星々が衝突。隕石は破壊されていくが、その衝撃で廃工場の上部が全て消し飛んでしまう。

 

「どうもギンガミライドウォッチには宇宙を感じる力があるらしい……とっくに気付いているよ。そこに居るのは」

 

 ウォズの声を聞き、廃工場の中に入り込んで来たのは異形であった。

 鉱石を人の形に削り出したかの様な見た目。バイザーも様に突き出た頭部の下には目らしき窪み。胸や腕、腹部には赤や青などの輝く球体が埋め込まれている。

 

「どうやらアレが隕石を落下させている元凶みたいだ」

 

 胸部に『GINGA』と『XXXX』という文字が交差する様に彫り込まれていた。

 

「アナザー……ギンガ!」

 

 




アナザーザビーという矢車への酷い嫌がらせ。まあ、アナザーカブトも嫌がらせみたいなもんでしたね。
ウォズギンガファイナリーの口上は、ヴィランモハイさんのアイディアを頂きました。ありがとうございます。

先にどちらが見たいですか?

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