地上には並び立つアナザーザビーとアナザーギンガ。天上には今にも落ちて来そうな超巨大隕石。上にも下にも避けては通れない厄介な困難がある。
しかし、それでも戦うゲイツとウォズ。互いに反目し合っているが、同じものを信じているが故に肩を並べて戦う。
彼ら自身は決して認めないだろうが、その姿はまさに戦友と呼べた。
『ゲイツリバイブ! 疾風!』
『シノビ!』
ゲイツリバイブライドウォッチとシノビミライドウォッチが同時に起動し、ドライバーへ装填。叫ぶ言葉も同じタイミングであった。
『変身!』
ゲイツはドライバーを回転させ、ウォズは戻していたハンドルを前に倒す。
『リバイ・リバイ・リバイ! リバイ・リバイ・リバイ! リバ・イ・ブ! 疾風! 疾風!』
『誰じゃ? 俺じゃ! 忍者!? フューチャーリングシノビ! シノビ!』
ゲイツリバイブ疾風とフューチャーリングシノビへ姿を変えた二人。
「いいよなぁ、お前らは。賑やかで」
「嫌味か? それは」
ウォッチの音声に対し妬みの言葉をアナザーザビーが言うが、本気かどうかが分からない。
「だったら俺たちで黙らせればいい。二度と騒げない様に。だろ? 兄貴」
「ああ、そうだな……。お前はやっぱり最高だ、影山」
「──気味の悪い二人だ」
ウォズが率直な感想を洩らす。馴れ合いを超えた依存関係、しかも片方は利用し、もう片方はそれを知っている一方的なもの。ウォズにもゲイツリバイブにも理解し難いものである。
「……誰か俺たちを嗤ったか?」
「安心しろ。ここにお前たちを嗤う奴はいない。──とっくにそれを通り越して嗤えもしない」
つめモードのジカンジャックローを構えるゲイツリバイブ。ゲイツリバイブの半ば憐れみを込められた言葉に、アナザーザビーは鼻を鳴らす。
「嗤えよ。どうせなら、な……クロックアップ」
アナザーザビーのクロックアップが発動。高速の世界に入り目視出来なくなる。
「嗤えない、と言った筈だ」
ゲイツリバイブも疾風の能力を全開にし、肉眼では追えない速度で動き出す。
空で火花が立て続けに散ったかと思えば、建物屋上の床が砕け、穴が穿たれる。
あらゆる場所でそれが発生する中、ウォズとアナザーギンガもまた動き出す。
「はあ!」
「ふん!」
アナザーギンガがウォズに接近すると掌打を繰り出す。掌は輝く光に覆われ、触れるもの全てを圧壊させる威力が込められている。それを受け止めるのもウォズの鎌モードにしたジカンデスピアであった。アナザーギンガの輝きを鎌の刃が受ける。
『フィニッシュタイム! 一撃カマーン!』
ぶつかり合う光と光。すると、ウォズたちを中心にして地面が陥没し、陽炎の様に周囲が歪み始める。光と光の衝突によって溢れた力が、二人の周囲の重力を狂わせていた。
今度はウォズの方が掌打を放つ。同じ様にアナザーギンガはこれを受け止める。受け止めたウォズの手を握り潰そうとするが、ウォズは素早く手を引く。そして、そこから鎌を左右に振るう。
右は弾かれたが、左は防御を避けてアナザーギンガの胸に命中。アナザーギンガは呻く。
すると、岩そのものであるアナザーギンガの体の一部が隆起し始め、ウォズに向けて岩を発射する。
拳程の大きさの岩が無数に打ち出され、どれも隕石の様に燃え上がっていた。
至近距離に加えて不意を衝く攻撃であった為、回避は不可能と即座に判断したウォズは左右の手で顔と胸といった重要な箇所だけ防御する。
顔面、胸部に撃ち出された小型の隕石は、ジカンデスピアで防ぐことが出来たが、力場が及ばない肩や脚、脇腹などを掠る又は命中する。一個一個の破壊力は大したものではないが、数が多いので小さいながらもウォズが苦しむ声を上げるぐらいのダメージを与えた。
隕石の散弾を浴びせられ、吹き飛ばされるウォズだったが、飛びながらも手裏剣型のエネルギーをアナザーギンガに放つ。
アナザーギンガに当たると爆発を発生させ、ウォズと同じ様にアナザーギンガも後方へ飛ばされる。
ダメージは互角の様に見えたが、倒れた体勢から先に立ち上がったのはウォズの方であった。
立ち上がる最中のアナザーギンガに、ジカンデスピアを振り翳し──
──ウォズ!
──ゲイツの声が聞こえた気がし、ウォズは攻撃を中断して今居る場所から一歩下がる。その直後に何かが眼前を通過していく。
ウォズが足元に視線を下げると地面に突き立つ数本の針。アナザーザビーの針に間違いなかった。
恐らくはアナザーギンガを救う為に放ったのだろう。もし、一歩下がっていなければ脳天にこれが突き刺さっていた。
「ぐっ!」
アナザーギンガのすぐ側にアナザーザビーが叩き付けられる。そこから離れた場所にゲイツリバイブが降り立った。
ウォズとゲイツリバイブがアナザーザビーたちを挟む形となる。
高速戦闘は五分の戦いであったが、アナザーザビーがアナザーギンガを救う為にウォズを攻撃したことで隙が生まれ、そのせいで空から叩き落された。
とはいえゲイツリバイブも、もしウォズがあの場から動かなかったのなら彼を助ける為に動き、逆にアナザーザビーに隙を見せていただろう。
高速世界の中で届く筈が無いと分かっていてもウォズの名を叫び、危機を教えたゲイツリバイブ。動けたのは偶然、と思うことにする。まさか、あの声がウォズに届いたから針を避けられたとしたら──
(偶然だ! 偶然!)
未だに残る蟠りのせいで、ゲイツは素直に認めない。
「ああ……」
アナザーザビーはゆっくりと立ち上がる。ダメージを受けている筈だが、常に気怠るげな態度のせいでいまいち判断し辛い。しかし、前後にはゲイツリバイブとウォズが立っている。客観的に二人が追い込まれている状況なのは間違いない。
「影山ー」
アナザーザビーが名を呼んだだけでアナザーギンガは全てを察し、アナザーザビーと共に変身を解除する。
「何っ!?」
戦いの最中に変身を解いたことにゲイツリバイブは驚く。ウォズは声には出さなかったもののゲイツリバイブと同じ心境であった。
そこに高速で跳ねてくる緑と茶のホッパーゼクター。二人の手の中に滑り込む様に入る。
予め腹部に巻いてある『ZECT』の文字が刻まれたベルトのバックルを開き、ホッパーゼクターを挿す。
「──変身」
「変身!」
『HENSHIN』
緑と灰色の装甲が二人を覆い、彼らを仮面ライダーへと変えていく。
『CHANGE KICK HOPPER』
『CHANGE PUNCH HOPPER』
アナザーライダーからキックホッパーとパンチホッパーへ変身する二人。その姿で今更何をしようとしているのか、ウォズたちには分からない。
「──ライダージャンプ」
「ライダージャンプッ!」
『RIDER JUMP』
ホッパーゼクターの脚を倒す。ゼクターからホッパーたちの脚部にエネルギーが供給される。
直接見たウォズ、間接的に聞いているゲイツリバイブは、これが必殺技への前準備であり、次にはホッパーたちが高々と跳躍する姿を脳裏に幻視する。
しかし、その予想は覆される。
「行くぜ、相棒……」
ホッパーたちは、脚部のエネルギーで跳躍するのではなく、その場で両足を地面から離して足裏を打ち付け合う。
エネルギーとエネルギーが衝突。ホッパーたちが凄まじい勢いで弾かれ合う。
本来ならば二人を宙へと跳び上がらせる力は、互いを踏み台にして反発し、二人を撃ち出す力へと変わった。
「何だと!」
「何ッ!」
異なる力の使い方に、ウォズたちは完全に意表を衝かれた。超高速で突っ込んでくる二人の動きに一手以上遅れてしまう。
地面と平行に飛びながら、ホッパーたちは上げたゼクターの脚を元に戻す。
「ライダーキック」
「ライダーパンチ!」
『RIDER KICK』
『RIDER PUNCH』
その速度を維持したまま攻撃に移行。キックホッパーの左足に、パンチホッパーの右手にゼクターのエネルギーが充填された。
ゲイツリバイブはその速度を生かし、キックホッパーの蹴りが届く前に上空へ飛び上がる。
その瞬間、キックホッパーは左足を地面に振り下ろす。踵落としの様な体勢となると、左脚側面に備えたジャッキが変形、撃鉄の様に衝撃を打ち込むとキックホッパーを真上に打ち上げ、ゲイツリバイブを追撃する。
「何ッ!」
「──お前も堕ちろ」
ゲイツリバイブよりも高く跳んだキックホッパーは、上がって来るゲイツリバイブへ左足を放つ。
咄嗟にジカンジャックローでガードするが、ジャッキが放つ衝撃がジカンジャックローごとゲイツリバイブを貫く。
息が詰まり、意識が飛びそうになる中、それでもゲイツリバイブは思考することを止めず、疾風の形態ではキックホッパーの蹴りに耐え切られないと判断してゲイツリバイブライドウォッチを回転させる。
『パワードターイム!』
疾風から剛烈となり、防御を万全するゲイツリバイブ。だが、キックホッパーの態度は崩れない。
「いいよなぁ、その姿。頑丈そうで」
ジャッキが再び変形し、力を溜める。
「だが何発耐えられる?」
蹴りがゲイツリバイブに炸裂する度にジャッキが力を解放。その反動でまた蹴りを放つ。
落下するまでの間にゲイツリバイブに反撃する機会を与えずに連続して蹴りが打ち込まれ続ける。
それとほぼ並行してウォズに向けて拳を繰り出すパンチホッパー。ウォズはジカンデスピアでその拳を弾く。
弾かれた拳が地面を叩く。すると、ジャッキが変形し、キックホッパーと同じ様に衝撃を放つとパンチホッパーがその反動で舞い上がる。
自身に掛かる反動に身を任せ様に横回転。そこからウォズの脳天目掛けて拳を振り下ろす。
「くっ!」
これも鎌で弾くが、パンチホッパーは外れる度にジャッキの反動を利用し、拳を繰り出す。整った体勢からではなく滅茶苦茶な体勢から放つそれは、不規則な動きから放たれるせいでウォズには避け難く、間を詰める様に連続して繰り出されるせいで防御に徹するしかなくなる。
キックホッパー、パンチホッパーと共に相手を倒すまで技を止めず、執念深く何度も何度も蹴りを放ち、拳を振るい続ける。
空中から蹴り落されたゲイツリバイブが地面へ叩き付けられる。剛烈のおかげでキックホッパーの蹴りを何度も受けても致命傷には至らなかったが、それでも必ず限界は来る。
コンクリートにめり込むゲイツリバイブに、キックホッパーが踏み下ろそうとした時──
「止めろ! 矢車!」
横から突撃してきたライダーフォームのガタックがそれを妨害する。
「終わりだ!」
全身を振り回しながら拳を打ち出そうとするパンチホッパー。構えるウォズであったが、その間に割って入る者が居る。
「させないよ!」
ジカンギレードとサイキョーギレードを交差させてパンチホッパーの拳を受け止めるジオウⅡ。
「我が魔王!」
ジオウⅡはパンチホッパーを押し返し、その間にウォズにツクヨミが取り返したギンガミライドウォッチを放り投げる。
「ウォズ! これ!」
「これはっ!」
「ツクヨミが取り戻してくれた!」
「ツクヨミ君が?」
パンチホッパーがすぐに距離詰めて拳を突き出す。ジオウⅡは二刀流でこれを辛うじて弾き返す。
「ウォズ! 早く! あんまり持たない!」
「もう少しだけ影山を引きつけてくれ、我が魔王。彼がアナザーギンガだからね」
「影山が!?」
そうと知ればここからパンチホッパーを絶対に逃せない。アナザーギンガを倒せば隕石も、ワームの侵略も止まる。
『ワクセイ!』
『アクション!』
ギンガミライドウォッチをワクセイにし、シノビミライドウォッチと交換する。
『投影! ファイナリータイム!』
『水金地火木土天海! 宇宙にゃこんなにあるんかい! ワクワク! ワクセイ! ギンガワクセイ!』
ギンガファイナリーワクセイフォームと化すウォズ。その姿を見てパンチホッパーは焦る。
『ギンガァ』
パンチホッパーからアナザーギンガへ姿を変えた。ジオウⅡにはクロックアップを見切られており、ギンガファイナリーには同じギンガの力で対抗するしかないので当然の選択と言える。
変身と共にジオウⅡへ掌打を打ち込むが、ジオウⅡは二本の剣でそれを受け、その場から一歩も退かない。
「ウォズ! 今だ!」
「正気か! 貴様!」
自分ごとアナザーギンガを攻撃しろと指示を出す。アナザーギンガは狼狽える。
『ファイナリー! ビヨンド・ザ・タイム!』
ウォズは迷いが無くギンガミライドウォッチの力を引き出す。
「ば、馬鹿な!?」
ジオウⅡとウォズ。どちらを対処すべきか一瞬判断が遅れるアナザーギンガ。
『フィニッシュタァァイム! ジオウ!』
その隙に動くジオウⅡ。
『ギリギリスラッシュ!』
『覇王斬り!』
マゼンタカラーの斬撃と七色の時計盤を模した斬撃が重なり合い、アナザーギンガに打ち込まれる。
「うあああああ!」
咄嗟に両掌から力場を発生させ、それを防ぐアナザーギンガ。
『水金地火木土天海エクスプロージョン!』
射線状にまだジオウⅡが居るにも関わらず、ウォズは惑星型の八つの光球を放った。
ジオウⅡはサイキョーギレードをジカンギレードに合体させながら右半身を一歩下げる。すると、その空いた空間を水星、金星、地球が通過していき、アナザーギンガに着弾。
今度はジクウドライバーに触れながら左半身を後ろに引く。同じ様に開けた道を火星、木星、土星がジオウⅡに触れずに通っていき、アナザーギンガに命中。
「ぐあっ!」
後ろに目が有る様にウォズの攻撃を回避するジオウⅡ。
ジオウⅡは既に自身の能力で未来を予測し、ウォズの攻撃の軌道を知っていた。ウォズもまたジオウⅡの能力を知っている為、躊躇わず攻撃することが出来た。
『ライダーフィニッシュタァァイム!』
『サイキョー! フィニッシュタァァイム!』
巨大剣サイキョージカンギレードを構えながらジクウドライバーを回転。それに合わせてジオウⅡもまた側転宙返りをする。
開かれた足の間、真下に向けられたジオウⅡの頭部下を飛んでいく天王星と海王星。立て続けに受けた攻撃が来ていると分かっていても避け切れず、防御に徹するしかなかった。
故に次の一撃は絶対に回避出来ない。
『キング! ギリギリスラッシュ!』
横回転しながら振り上げられるサイキョージカンギレード。剣身を覆う長大な光の剣がアナザーギンガを股下から頭頂部に掛けて斬り裂いた。
「う、あ……あああああああ……」
縦に走る光を抱いたままアナザーギンガは後退していき、やがて建物の端まで行くと──
「ああああああ!」
岩石の体を爆ぜさせながら建物から落ちていく。撒き散らされていく岩の中にアナザーギンガウォッチが有り、アナザーギンガと同じく砕け散った。
「影山ぁぁぁぁぁ!」
相棒が倒されたことで激昂するキックホッパー。それをガタックが体を張って止める。
「ここは俺に任せて、あの隕石を!」
「──分かった!」
ジオウⅡはフォーゼライドウォッチでフォーゼアーマーを纏い、ロケット形態に変形。ウォズとゲイツリバイブがその体を掴む。
「宇宙へ──」
『行くー!』
「お前も言うのか……」
ジオウとウォズの変な掛け声と共にフォーゼアーマーは超巨大隕石を急発進する。
地上に残されるガタックとキックホッパー。
キックホッパーは相棒を倒された怒りと共にガタックの腹部を膝で突き上げて離し、そこから上段、中段と素早い蹴りを打ち込む。
ガタックの動きが鈍くなれば、上段後ろ回り蹴りで首を狙う。
「くっ!」
何とかこれを防ぐガタック。
『ザビィ……』
次の瞬間、キックホッパーはアナザーザビーとなり、ガタックの右肩に針を突き刺していた。
「うあああ!」
体内を走る激痛にガタックは思わず叫ぶ。
やはり矢車は強い、とガタックは思う。アナザーザビーとキックホッパー。二つの力を完全に使いこなし翻弄してくる。だからこそ、酷く悲しく思えた。これ程の力を破滅の為に使うことが、ワームによって利用されていることが。
彼がその気になれば多くの人々を救える筈なのに。
アナザーザビーはキックホッパーへ戻り、ゼクターを操作し──
「お前も地獄へ堕ちろ、加賀美」
『RIDER KICK』
必殺の一撃がガタックの側頭部を貫き、そのまま頭部を──
『ザビィ……』
「はっ!」
ガタックは突き出されたアナザーザビーの針を咄嗟に両手で掴む。
「今のは……!」
「何が……!」
明らかに不可思議なことが起こり、二人は混乱する。その混乱の中、突然アナザーザビーが側面から何かに体当たりをされて吹っ飛ぶ。
「ぐあ!」
「あれは……!?」
赤と銀のカブトムシに似たゼクター。ガタックはそれを知っている。
ゼクターはガタックの前に飛んできて、ガタックを見つめる。ガタックが掌を向けるとゼクターはその手に降りた。
「ハイパーゼクター……天道、お前もこの世界に居るのか?」
手の中に在るハイパーゼクターを強く握り締める。
「力を借りるぞ、天道! ──矢車っ!」
ハイパーゼクターをベルト側面に上向きに装着。
「俺は! 戦士として! お前を止める!」
ガタックはハイパーゼクターの角を押し倒しながら叫ぶ。
「ハイパーキャストオフ!」
『HYPER CAST OFF』
金色の光がガタックの装甲を駆け抜けると、頭部の角は一回り以上巨大化し、金色で縁取られる。胸部装甲も厚みが増し、丸みのある形から角張ったものへ変化。中央には赤い線が入る。
『CHANGE HYPER STAG BEETLE』
仮面ライダーガタックハイパーフォーム。その姿を見たアナザーザビーはワナワナと体を震わせる。
「カブトだけじゃなく、お前もハイパーゼクターに選ばれただと……? いいよぁ! 加賀美ぃぃぃ!」
突き出された針を、ガタックは掴み取る。
「──俺が羨ましいか? 矢車」
「ああ! だが、どうせ俺なんか──」
「いつまでも甘えるな!」
ガタックの拳がアナザーザビーの頬を撃ち抜く。アナザーザビーは勢い良く地面を滑っていく。
「どうせ俺なんか? あんたは凄いだろ! 俺よりもずっと凄い筈だ! ZECTでシャドウの隊長をやっていた頃のあんたを俺は尊敬していた!」
紛れもないガタックの本音。だからこそ不幸の底で何もせずに流され、自分を卑下し、不幸に酔っている矢車を許せない。
「まだ地獄の底なんかじゃない! やり直せる筈だ! あんたがやり直す気持ちがあるなら──」
激しかったガタックの口調が一気に静かなものとなる。
「──俺は何時だって手を貸す」
アナザーザビーはガタックの言葉を聞き、ゆっくりと立ち上がる。
「加賀美……」
俯きながらアナザーザビーは言う。
「俺は……相棒を裏切れない」
「──分かった」
最早言葉での和解は不可能であることを実感する。後は戦うしかない。
「──クロックアップ」
アナザーザビーの姿が消える。
「ハイパークロックアップ!」
『HYPER CLOCK UP』
ハイパーゼクターを叩くとガタックの胸部の赤い線が金色となった。
ガタックの目の前でクロックアップを超えたハイパークロックアップの世界が広がる。
全てのものはほぼ停止し、クロックアップを発動させているアナザーザビーですらガタックには数十分の一の動きとなっている。
ガタックはハイパーゼクターの角を倒す。
『MAXIMUM RIDER POWER』
『
そして、ガタックゼクターのボタンを三度押して顎を閉じた。
「ハイパーキック!」
『RIDER KICK』
ガタックゼクターを開きながら、ガタックは跳び上がった。
ハイパーゼクターとガタックゼクターの力が流れ、右足で渦巻く白光と化す。
ガタックのスピードに追い付けないアナザーザビーにそれを回避する方法無い。ガタックの飛び回し蹴りがアナザーザビーを蹴撃。
『HYPER CLOCK OVER』
ハイパークロックアップ解除と共にアナザーザビーの体は限界に達し、爆発を起こした。
◇
宇宙空間。ウォズが建てた計画通り、隕石内部へと侵入し、そこでギンガタイヨウの力で内側から隕石を焼き尽そうとする。
しかし、アナザーギンガを倒す為に思った以上時間を費やしてしまったせいで完全破壊するには時間が足りず、超巨大隕石は形を保ったまま地球に落下しようとしていた。
その時、地球から隕石に向けて波動が放たれ、落下する筈であった隕石が宇宙空間で停止する。
地球を、ソウゴたちを助けたいと思ったツクヨミの能力が地球を超えて宇宙にまで干渉し、隕石を時間停止させる。
その間にウォズはギンガタイヨウで隕石を焼き、一気に脆くする。
最後の一撃を放つべく、三人の力を一つにしたジオウトリニティへ変身。
『三つの力! 仮面ライダージオウ! ゲイツ! ウォズ! トーリーニーティー! トリニティ!』
ジオウトリニティは超巨大隕石を破壊すべくドライバーに手を伸ばしかけ気付く。いつの間にか隣に誰かが居ることに。
「ほう? 中々壊し甲斐がある大きさだ」
「誰っ!?」
銀と赤の装甲。顔面中央から伸びるカブトムシを彷彿させる角。胸部と背部が左右に開き、背中からは粒子が噴き出して羽の様になっている。
『仮面ライダーカブト──天道総司か』
『何っ!?』
目当てのカブトと宇宙で邂逅し、三人は驚くしかない。
「何でここに……?」
「おばあちゃんが言っていた──」
「え?」
「何も無い場所でも強く望めば道が拓けると、天の道を往く俺が宇宙へ行くなど容易い」
「凄いこと言ってる……」
出会って数秒で強烈な個性の持ち主であることを理解するジオウトリニティ。
「そんなことよりもあの隕石を破壊するんだろう? 手伝ってやろう」
『何だその上からの言い方は……』
色々と話したいことがあるが、それよりもまず隕石の破壊を優先する。
『フィニッシュタァァイム! ジオウ! ゲイツ! ウォズ!』
トリニティライドウォッチを三度押すジオウトリニティ。カブトはベルト側面に付けたハイパーゼクターの角を倒し、中央に付けたカブトゼクターのボタンを順番に押す。
『MAXIMUM RIDER POWER』
『
引き倒されていたカブトゼクターの角を元の位置に戻し、再び引く。
「ハイパーキック」
『RIDER KICK』
『トリニティ! タイムブレーク! バースト! エクスプロージョン!』
カブトは右足に集束させた力を纏わせ、光を噴射しながら飛び、ジオウトリニティはジオウ、ゲイツ、ウォズの三人の幻影を取り込みながら真っ直ぐ隕石に向かう。
天の道を往く力と三位一体の力が隕石の中へと突入していき、突き抜けると共に超巨大隕石が砕け散った。
「──あ!」
砕けた隕石の一部が地球に向かって落下していく。慌ててそれを追おうとするが、カブトがジオウトリニティの肩を掴んで止めた。
「問題無い」
「でも!」
「あそこには加賀美が居る」
◇
空から落ちてくる隕石に向けてガタックはバイクを走らせていた。元の場所に置いて来た筈の専用バイク──ガタックエクステンダー。ハイパーゼクターの力か、呼び出したら現れた。
「キャストオフ!」
ハンドルを内側から押し上げる。すると、ガタックエクステンダーが中央から割れ、クワガタに似たサーフボードへと変形。
それに乗って空高く飛ぶ。
迫って来る隕石に向け、ガタックはハイパーゼクターの角を倒す。
『MAXIMUM RIDER POWER』
そして、両肩に付けられたガタックダブルカリバーを外し、重ねて鋏の様にした。
「ハイパーカッティング!」
『RIDER CUTTING』
電流の様な光を放つガタックダブルカリバー。その光が極まると、刃先から巨大な光刃が伸びる。
「おおおおおおおお!」
その光刃で隕石を挟み、刃を閉じながら突き進むガタック。
光刃と光刃の間で隕石は原子レベルにまで分解され、空中で爆散。破片一つたりとも地球に届くことは無かった。
「おっしゃあああ!」
地球を無事守れたことに、ガタックは勝利の歓声を上げる。
◇
「──さて、そろそろ行くとするか」
地球に落ちた隕石がガタックに破壊されたのを見て、カブトは去ろうとする。
「会わなくていいの?」
「必要無い。俺も加賀美も別々の道を往く。だが、共に立っているつもりだ──友達だからな」
加賀美も友達と言っていた。二人の信頼関係が伝わって来る。
「これを持っていけ」
カブトからジオウトリニティにライドウォッチが渡される。
「カブトウォッチ! ──ってどうして変身出来てるの?」
ライドウォッチに力を込められれば本人は変身出来なくなる筈である。
「それは
「え? どういうこと?」
「詳細は省くが、オーマジオウという奴から貰ってきた」
『……はぁ!?』
カブトのとんでもない発言に、三人は絶句してしまう。
「そう言う訳だ。渡したからには、それに見合った使い方をしろ」
『HYPER CLOCK UP』
「ちょっと待っ──」
もっと詳しく聞きたかったが、ハイパークロックアップを発動させ、カブトの姿が時空の彼方へ消えていく。
「ええ……」
残されたジオウトリニティは、宇宙空間で困惑した声を上げるのであった。
◇
「はあ……はあ……」
ガタックに敗れた矢車は、夕暮れの中で宛ても無く彷徨っていた。
何処に行こうとしているのか、自分でも分からない。
「相棒……」
矢車がワームと分かっていても影山に協力したのは贖罪であった。
本物の影山はとある理由でワームと化し、人として生きられなくなった。絶望した影山に引導を渡したのが矢車である。
そして、矢車もまた弟と呼んでいた影山を手に掛け、絶望の底に沈んだ。
生きた死人と化した矢車の心を再び蘇らせてくれたのが、影山に擬態したワームである。
救えなかった弟を今度は救う為に、利用されていると分かっていてもワームに協力していたのだ。
「ここに居たか……」
ワームが擬態した影山が姿を現す。
「相棒……!」
矢車は喜び、よろよろと影山へ近寄っていくが、影山はそんな矢車を殴り飛ばす。
「ぐっ!」
「アナザーギンガの力も仲間たちも失った! だが、まだゼクターさえあれば……! よこせ! お前のゼクターを!」
影山は矢車の首を掴み、壁に叩き付ける。
「影山……もう一度、兄貴と呼んでくれよ……」
「俺は影山じゃない……!」
擬態を解き、ワームの姿に戻ると爪を振り上げる。
「お前は俺の、兄貴なんかじゃない」
地獄の底を彷徨っていると思ったら、もっと底があったらしい。底の底は、絶望に満ちた死。しかし、それが今の自分には相応しいと矢車は自嘲する。
(これで、相棒の下に──)
──兄貴!
聞こえない筈の影山の声が聞こえ、矢車を抑えつけていたワームの手が弾かれる。
「どういうことだ!?」
ワームの手を弾いたのはホッパーゼクター。だが、それは矢車が持つ緑のホッパーゼクターではなく、影山の茶のホッパーゼクターである。
「影山……そこに居るのか?」
茫然としながらもその言葉を発すると、応じる様に矢車の手の中にホッパーゼクターが跳び込んで来た。
「返せよ! 俺のホッパーゼクター!」
ホッパーゼクターを取り戻そうとするが、矢車の方が早い。
「──変身!」
『HENSHIN』
矢車の体が灰色の金属に包まれていく。
『CHANGE PUNCH HOPPER』
ワームが爪を振るう。だが、手応えの無い空振り。急いで探すが右にも左にも姿が無い。
『RIDER JUMP』
聞こえたのは頭上。見上げたワームの顔面に足底が埋め込まれ、跳躍のエネルギーでパンチホッパーはもう一度高く上がり、ワームは地面に叩き込まれる。
「ライダーパンチ!」
『RIDER PUNCH』
振り下ろされるパンチホッパーの拳。ワームの顔面を貫き、ジャッキが衝撃を打ち込むとワームは緑の炎を噴き上げながら爆散する。
矢車は変身を解き、沈む夕日を見る。
自分は底の底まで落ちた。ならば後は這い上がることしか出来ない。
矢車は夕日に向かって歩く。今は目的は無いが、いつかは見つければいい。
「行こう、相棒。俺たちは永遠に一緒だ」
──兄貴となら何処へだって!
これにてアナザーザビー編は終わりです。
少しだけ矢車が希望を持つ終わりにしてみました。あと、ガタックのハイパーフォームも予定通り出せました。
アナザーザビー
身長:192.0cm
体重:127.0kg/92.0kg
特色/能力:脱皮/羽、針を用いての高速戦闘
アナザーギンガ
身長:201.2cm
体重:98.2kg
特色/能力:宇宙の力を操る
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ