仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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劇場版の時の話も組み込んだものとなっています。


アナザーガオウ2019 その1

 全ての平成ライダーが一つに集うことで生まれる偉大なる仮面ライダー。

 黄金の輝きを持つ体には仮面ライダーという名の歴史が刻み込まれ、豪華絢爛にして唯一無二の威光を放つ。

 

『グ・ラ・ン・ド! ジオーウ!』

 

 仮面ライダージオウの完成形と呼べる姿を遠くから眺める三人。

 表情を険しくする青年と、黒装束の様な姿をした巨漢の異形と赤い体に金の線が入った西洋の悪魔を思わせる異形。

 

「あれが世界を滅ぼす力……」

「──かもしれない力だ」

 

 グランドジオウの凄まじい能力を見て巨漢の異形が呟くが、青年は敢えて曖昧にする言葉を付け加える。

 

「おいおい。とんでもねぇな」

 

 赤い異形は軽い口調であったが、もし人の姿であったのなら冷汗を流していたであろう。

 

「侑斗……どうするんだ? 本当にソウゴが最低最悪の魔王になるとは限らないし……」

「俺は、あんまし気が乗らねぇなぁー」

 

 巨漢の異形は不安気。赤い異形の方はやる気を感じられない。

 

「あいつが、あの力を持つのに本当に相応しいのかはまだ分からない。あの力を手にしたことで最低最悪の魔王になるかもしれないし、最高最善の魔王になるかもしれない。だからこそ、見極めないといけないんだよ」

 

 侑斗と呼ばれた青年は二人に背を向ける。

 

「嫌だったら手伝わなくていい。俺一人でもやる。デネブ、フータロス、お前たちは留守番してろ」

 

 突き放す様に言う侑斗に、赤い異形──フータロスは巨漢の異形──デネブに耳打ちする。

 

「あいつ、いい歳してすぐああいうこと言うよなぁ? 本当は一人じゃ寂しい癖に」

 

 侑斗に聞こえる様にわざと大きな声を出す。

 

「侑斗は寂しがり屋だけど、それ以上に優しいんだ。きっと、俺たちに嫌な思いをさせない為にああいう態度をとっているんだ!」

「分かってる、分かってる。でも、露骨過ぎて見てるこっちが恥ずかしくなってくる」

「おーまーえーらー!」

 

 侑斗は好き勝手言う二人にラリアットを食らわして地面に押し倒し、デネブにチョークスリーパーを掛けながら、フータロスの首を蟹鋏で絞め上げる。

 

「いでででで! 照れ隠しで技掛けるの、止めろって言ってんだろう!」

「うるせぇ!」

「いででで!」

「でも、侑斗。本当に良いのか?」

 

 首を絞められながらデネブは侑斗に訊く。

 

「何がだよ?」

「ソウゴは侑斗の友達だ。友達の邪魔をしていいのか?」

 

 二人を絞める力が少しだけ緩まる。

 

「そんなの関係無い。それで、もし世界が滅ぼされたらたまったもんじゃない。それにだ……」

 

 その言葉を言った侑斗の顔は、デネブの位置から見ることは出来なかった。

 

「どうせ俺のことなんか覚えていないさ」

 

 

 ◇

 

 

 ソウゴがカブトライドウォッチを手に入れ、少し経った頃、それは突然訪れた。

 鳴り響く警笛の音。大地を走る電車から聞こえたものではない。音は空から聞こえ、間もなくして凄まじい轟音が響き渡った。

 偶々近い場所を歩いていたゲイツとツクヨミが急いで音の鳴った場所へ向かう。最近、アナザーライダーによる隕石騒動などがあった為、音もどうしてもアナザーライダーに関係あることだと思ってしまう。

 いち早く現場に辿り着いたゲイツたちが見たものは、見たことも無い形状の電車であった。白い流線型の車体に、先頭車両の窓と思わしき前面が赤いガラスで覆われている。

 近くに駅など無く、そもそも停車しているのは線路も繋がっていない寂れた工場跡である。電車の存在に違和感しかなかった。

 だが、ゲイツたちが感じたのは既視感である。

 

「あれは……」

「電車……? ゲイツ、私、似た様なものを見た事がある……」

「ああ、俺もだ。確かゼロライナーだったな」

「あれもそれに関係あるのかしら? あ、煙が出てる……」

 

 すると、電車から足音。そして、咳き込む声が聞こえてくる。警戒する二人の前に、彼らは現れた。

 

「あつつつ! ひでぇ目にあったぜ!」

 

 二本の角を生やした鬼の様な真っ赤な怪人。

 

「よく言うよねぇ、先輩は。自分のせいなのにー」

 

 亀の甲羅を思わせる紋様の水色の怪人。

 

「慣れん運転なんかするからや!」

 

 熊の様な巨体の金色の怪人。

 

「もう! モモタロス! 馬鹿じゃないの!」

 

 竜を彷彿させる紫の怪人。

 四人の怪人たちがギャアギャアと騒ぎながら喧嘩し合う。

 その光景を戸惑いながら見ているゲイツたち。その視線に水色の怪人が気付き、ゲイツたちに近付いてくる。

 

「ちょっとー」

 

 声を掛けられ、ゲイツが構える。

 

「おや? 可愛いお嬢さん」

 

 水色の怪人の目線がツクヨミの方に向けられると、ゲイツがツクヨミの前に立つ。

 

「そこで止まれ」

「うん?」

 

 ゲイツの警告。水色の怪人は大人しく止まる。

 

「何者だ、お前たちは?」

「そんな怖い顔しないで。僕たちは怪しい者じゃないよ」

「どっからどう見ても怪しいだろうが」

「若いね。見た目だけが全てじゃないよ」

 

 水色の怪人は余裕綽々といった態度。ゲイツよりも場慣れしている雰囲気がある。

 

「あの電車は何だ? ゼロライナーと関係があるのか?」

 

 ゼロライナー。その名が出た瞬間、水色の怪人だけでなく後ろの方で喧嘩をしていた怪人たちも止まる。

 

「もしかして、不幸中の幸い?」

「おい! てめぇ! 何でその名前を知ってやがる!」

「はいはい先輩。話がこじれるから黙ってて。キンちゃーん、先輩を押さえてて」

「おっしゃ、分かったで。モモの字、ちょっと大人しくしとけ」

「うお! 離せ! 熊野郎!」

「モモタロス弱ーい!」

「うるっせぇ!」

 

 羽交い締めされるモモタロスと呼ばれた怪人を、紫の怪人が幼い口調で煽る。

 

「答えろ。お前たちは何者だ? ゼロライナーとどんな関係がある?」

「質問は一つずつの方が有難いんだけどねー」

 

 顎に手を当て、考える仕草を見せる水色の怪人。ゲイツたちを焦らしている様にも見える。

 

「おい、ガキ! ゼロライナーを知ってるってことは、侑斗やおデブもここに来てんのか!」

 

 自分たちの都合良く話を進めようとしていた水色の怪人の算段を、モモタロスの怒声が台無しにする。

 

「──侑斗? 誰だ、そいつは?」

「おデブって……デネブのことかしら?」

「おい! おデブのことを知ってんのに、何で侑斗を──」

「せーんぱい」

 

 水色の怪人が窘める様にモモタロスを呼ぶ。

 

「──ああ、そういうことかよ」

 

 モモタロスは視線を明後日の方向に向け、急に大人しくなった。バツが悪くなった、そんな風に見える。

 

「さてと、話を戻そうか。僕たちも君たちにちょっと聞きたいことがあるんだよね。何処か落ち着いて話が出来る場所は無いかな? 有るならそこで話そう」

 

 

 ◇

 

 

 用事で家を出ていたソウゴは帰宅と同時に啞然とした。

 家の中で四人の怪人たちが騒がしく食事を摂っているからだ。

 そんな彼らにいつもの様に料理を振る舞う順一郎。彼曰くソウゴの友達を歓迎しているとのこと。

 見た事無い怪人たちを友達扱いされ、ソウゴは混乱する。

 そこにツクヨミとゲイツから説明が入る。

 彼らはイマジンであること。赤い鬼の様な怪人がモモタロス、水色の怪人がウラタロス、金色の怪人がキンタロス、紫の怪人がリュウタロスである事。デンライナーが故障して困っていること。今住んでいるクジゴジ堂の話をしたら、順一郎に会いたいと言ってきたことなどを話す。

 ソウゴは、デンライナーは知らないがゼロライナーとイマジンは知っていた。とある事件でその二つと関わっていたかたである。

 

「で、何でご飯を食べてるの?」

「とりあえずソウゴの友達って説明したら、順一郎が『なら歓迎しないと!』って……」

「よくあんな変な奴らと普通に接していられる……流石はジオウの育ての親ということか……」

「何かその言い方だと、俺も変みたいじゃん」

「変だろ」

「変でしょ」

「ひどっ」

 

 騒々しく競う様に食事をしていたイマジンたちであったが、唐突に目的を思い出す。

 目的はデンライナーの修理。順一郎にそれを依頼しに来たのだ。

 

「デンライナーって……あの電車をか!?」

「それは流石に……」

 

 ゲイツとツクヨミは幾ら修理に慣れているからといって電車は無理だと思った。

 

「でも、叔父さんならもしかしたら……?」

「いや、電車は無理だろう」

「……あれ?」

 

 ふと既視感を覚える。

 

『……うちの叔父さんだったら修理出来たりして』

『お前の叔父さん、何をやっているんだよ?』

『時計屋』

『時計屋にゼロライナーの修理なんて出来るか』

 

 似た様な会話を誰かとした気がした。だが、誰であったのか思い出せない。

 

「前にもこんな話したっけ?」

「した覚えは無いぞ」

 

 試しにゲイツに訊いてみたが、彼では無い。

 ソウゴが思い出そうとしている間に、イマジンたちは順一郎にデンライナーの修理を頼む。

 

「え? 電車!? それは流石に無理だよ」

 

 順一郎も最初は断る。

 

「電車って言っても大きな時計みたいなものさ」

「あんたがこの時間で一番の修理屋と聞いたから来たんや」

「そーそー!」

「頼むぜ、おっさん。あんたの腕が頼りなんだよ」

「え? そう……?」

 

 イマジンたちに煽てられ、順一郎もその気になっていく。しかし、やはり電車の修理となると自信が持てないのか渋ってしまう。

 

「答えは聞いてない!」

 

 リュウタロスの体が半透明となり、順一郎の中に入り込む。

 途端、何処から出したのか順一郎は帽子を被り、瞳が紫、頭髪の一部も紫に染まる。口調もリュウタロスそのものに変わってしまった。

 イマジンが憑依したことで体をコントロールされた順一郎は、モモタロスたちと共にデンライナーの修理に強引に連れ出されてしまった。

 啞然としてそれを見送ってしまうソウゴたち。

 

「我が魔王、彼らは電王ウォッチを手に入れる鍵かもしれない」

 

 巻き込まれるのが嫌だったのか、去った後に姿を現したウォズの言葉でソウゴたちは正気に戻る。

 ライドウォッチも大事だが、それよりも憑りつかれた挙句に連れ出された順一郎を心配し、ソウゴたちも急いで後を追った。

 

 

 ◇

 

 

 墓場に来た青年──遠藤タクヤは、姉の前で手を合わせている男を見て、怒りを露わにする。男の名は大澄ユキヒロ、姉サユリの恋人であった。

 タクヤはユキヒロが姉の墓に添えた花束を掴み取り、ユキヒロに投げつける。

 

「ここに来るなって言ったよな……?」

 

 怒りと恨みの言葉と視線をユキヒロに浴びせる。

 

「お前のせいで姉ちゃんはッ!」

 

 それを受けたユキヒロは何も言わず、大人しく去っていく。

 その背中を刺す様に睨みつけていたタクヤ。

 

「あの男に何か恨みがあるようね」

 

 そこにタイムジャッカーのオーラが現れる。

 ジオウが継承すべきウォッチはあと二つ。その内一つは既にジオウの手の中にある。故に、最後の電王ウォッチの入手だけは必ず阻止しなければならない。

 一方でウールの方は懐疑的になっていた。スウォルツのやり方に違和感を覚えていたし、事が上手く運び過ぎている気がしていた。

 しかし、オーラはそんなことを考えるよりもジオウがウォッチを入手出来ない様に手を打つ。

 その為のアナザーライダーをこの場で誕生させる。

 

『ガオウ……』

 

 起動させたアナザーウォッチをタクヤへ埋め込む。

 黒い力がタクヤを包み込み、アナザーライダーへ変貌させる。

 銅色の胴体には胸から腹に掛けて鰐の横顔が埋まり、それを挟む様に鋸状の刃が突き出ている。両肩にも同じく鰐の頭部を模した装甲を纏っている。腹部のベルトには∞のマークが刻まれたベルト。よく見れば∞の一部が欠けていた。

 顔の部分には顔からはみ出る程巨大なV字型のマスク。マスクには鋭い乱杭歯が並び、顔全体が口と化している様であった。

 胸にある鰐の上顎に『GA-O』、下顎に『2019』の刻印が描かれている。

 

「その力で時の列車を奪いなさい。場所は教えてあげるわ。付いてきなさい」

 

 オーラはアナザーガオウを連れ、墓場から去る。

 その光景の一部始終を目撃していたユキヒロは腰を抜かしていた。

 

「タクヤ君が化物に……!」

 

 起こった出来事の衝撃のせいで彼は気付かない。蛍火の様な光球が彼の体内に入り込んでいったことを。

 

 

 ◇

 

 

 デンライナーに連れて来られて順一郎。修理出来るか否かの答えは出来るであった。

 順一郎曰く、見た目は電車だが中身の構造は時計そのものらしい。

 修理の目途が立った瞬間、大きな衝撃がデンライナーを揺らす。一度ではなく何度も。

 デンライナー外ではアナザーガオウが暴れていた。

 胸から突き出ていた鋸状の刃を短剣として扱い、それをデンライナーに投げつける。短剣は見えない糸で操られているかの様にデンライナーに当たると方向を変えて、もう一度当たり、ブーメランの様にアナザーガオウの下へ戻って来る。

 デンライナーから出たソウゴたちは、襲っている存在を認識。

 

「アナザーガオウ……? だったらこれで!」

 

 ソウゴはトリニティライドウォッチを出し、三位一体の変身を行う。

 

「変身!」

『三つの力! 仮面ライダージオウ! ゲイツ! ウォズ! トーリーニーティー! トリニティ!』

 

 ジオウトリニティへ変身すると、ジカンザックスとジカンデスピアの二刀流となる。

 アナザーガオウはそれを見て短剣を飛ばすのを止め、同じく二刀流で構えた。

 一触即発の空気。最初に動いたのはジオウトリニティ。

 

「はあっ!」

 

 勢い良く飛び出した瞬間、いきなり目の前に線路が並び、猛牛を模した列車が走っていく。

 その列車には見覚えがあった。

 

「ゼロライナー!」

 

 ゼロライナーが走り抜けていくと、後には三人の人物が立っている。その内の二人には見覚えがあった。

 

「デネブ! フータロス!」

「──やあ」

「……よぉ」

 

 久しぶりの再会に驚き、喜ぶが、デネブとフータロスの反応は芳しくない。

 

「それと──」

 

 ジオウトリニティの視線が最後の一人に向けられる。

 

「あれ? あんた──」

 

 ジオウトリニティが何かに気付くと、最後の一人──侑斗は目を丸くし──

 

「桐谷京介、だよね?」

 

 ──途端、不機嫌そうな表情となる。

 侑斗が響鬼ライドウォッチを手に入れ際に色々と協力した桐生京介にそっくりだったからだ。

 しかし、言った後にジオウトリニティの中にソウゴは首を傾げる。見た目はそうだが、そんな名前では無かった気がした。

 

「誰だそれ?」

「うーん。やっぱり違った?」

「聞いたのはお前だろうが……」

 

 すると、侑斗は顔を横に向け、突き放す様に言い切る。

 

「──お前とは初対面だ」

「え? うーん……」

 

 何故か納得出来ない様子のジオウトリニティ。

 

「何だお前らは!?」

 

 アナザーガオウが叫び、三人はその存在に気付く。

 

「侑斗! あれ!」

「うげっ! またアナザーライダーかよ……」

「あの姿……ったくアナザーライダーっては一々嫌な格好をしてるな!」

 

 アナザーガオウに嫌なことを思い出し、侑斗は不機嫌そうに叫んだ。

 

「常盤ソウゴ!」

「は、はい!?」

「本当ならお前を止める為に来たが後回しだ! デネブ! フータロス! それでいいな!」

 

 すると、さっきまで気不味そうにしていた二人が急に元気になる。

 

「ああ、分かった!」

「そっちの方が気が楽だ!」

 

 侑斗は腹部にベルトを巻き付ける。中央の円に緑と黄の線が入っている。ゼロノスベルトと呼ばれるそれに、同じ線が入ったカード──ゼロノスカードを挿し込む。

 

「変身!」

『ALTAIR FORM』

 

 全身が黒のボディスーツで覆われると、空中で生成された緑の装甲とレールを模した黄色の装甲が装着される。

 顔面に付いた二本のレールを二頭の牡牛の顔が走り、変形して一つとなって仮面となる。

 

「最初に言っておく!」

 

 アナザーガオウを指差す。

 

「俺はかーなーり強い!」

「俺もかなり強い!」

「まあ、俺はそこそこ強い」

 

 自身に満ちた名乗りの後に、デネブとフータロスも加わる。

 

『仮面ライダーゼロノス。時を守るライダーだね』

 

 内にいるウォズが説明をしてくれる。

 

「時を? っていうか見た事無い?」

『──さあね』

 

 ゼロノスは二つに分離していたパーツを組み合わせ、大剣──ゼロガッシャーを握り締める。

 

「デネブ、フータロス、行くぞ!」

「了解!」

「あいよ」

 

 初手はデネブによる牽制。人差し指から弾丸を撃ち出し、アナザーガオウを怯ませる。

 

「ううっ!」

 

 その隙に両サイドからゼロノスとフータロスが接近。ゼロガッシャーで斬り付け、フータロスは腕に付いているブレードで斬る。

 

「くっ!」

 

 アナザーガオウは弾丸に耐えながら短剣でその攻撃を防ぐ。ゼロノスとフータロスの連携を一人で捌くが、反撃することまで出来ず守るので精一杯であった。

 突き出された槍の穂先がアナザーガオウの守りを崩し、ゼロノスとフータロスに一撃を与える隙を生み出す。

 三人の攻撃を受け、アナザーガオウは大きく後退する。

 

「あいつを止めないと! あいつはデンライナーを狙っている!」

「デンライナーを? 何のつもりだ?」

 

 ジオウトリニティも加わったことで四対一。アナザーガオウはますます不利になる。

 戦いに慣れておらず受けた痛みで大きな隙を見せているアナザーガオウ。ジオウトリニティはジカンデスピアを操作し、ゼロノスはベルトからカードを抜き、ゼロガッシャーに挿す。

 

『フィニッシュタイム! 爆裂DEランス!』

『FULL CHARGE』

 

 突き出されるジカンデスピアの穂先から緑の鋭利な光弾が飛び出し、振り下ろしたゼロガッシャーから同色の斬撃が放たれる。

 逃げ場の無いアナザーガオウはこれでお終い──かに思われた。

 アナザーガオウの顔面の口が開く。その奥には白く輝く両眼があった。仮面の口が閉ざされた時──アナザーガオウの背後にあった壁が爆発する。

 

「えっ!」

「何っ!」

 

 直撃する筈だった攻撃がすり抜けていった。その光景に戸惑うジオウトリニティたち。

 

「はあ……! はあ……! 必ず手に入れてやる……!」

 

 もう一度攻撃しようとするジオウトリニティたちの前に並べられていくレール。

 

「待て!」

 

 ゼロノスがジオウトリニティの肩を掴んで、後ろに引っ張る。

 レールを疾走するのは巨大な鰐の顔が付けられた列車であった。枯れ果てたミイラを連想させる鰐の顔が何度も顎を開閉しながらレールを通過。

 走り抜けた後にはアナザーガオウは居なくなっていた。

 

「あんな物まで用意してたのかよ……」

 

 走り去っていく列車を見ながら、ゼロノスはぼやいた。

 

 

 ◇

 

 

 侑斗の目的。それはジオウが創り出す最低最悪の未来を防ぐこと。

 彼はオーマジオウによって荒廃した未来を見た。それを防ぐ為にはジオウがオーマジオウの力を得られない様にする必要がある。

 彼は近い将来、オーマジオウに匹敵する力を得る未来を見ていた。

 ソウゴは最低最悪の魔王にならないと信じるゲイツはその未来を否定し、仮になったとしてもそれは自分が止めると言う。

 だが、もしソウゴが強大な力を得た時、それを止めることが出来るのかという侑斗からの問いに、ゲイツは答えることは出来なかった。

 

「俺は最高最善の魔王になる!」

「口では何とでも言える。──俺はお前を止める」

 

 侑斗はソウゴが近い将来得る筈の力が手に入らない様にある妨害をする。

 

「──あれ? フータロスは?」

 

 クジゴジ堂内をキョロキョロと探すソウゴ。言われて他の者たちも気付く。話に集中していたせいで存在を忘れていた。

 

「──あああっ!」

 

 そして、気付いた。ライドウォッチが付けられているライドウォッチダイザーが丸ごと無くなっていることに。

 

「お前にあの力を渡す訳にはいかない」

「うう……ごめん!」

 

 混乱に乗じて侑斗とデネブがクジゴジ堂から出て行く。

 

「やられたね……」

「嘘っ! ライドウォッチ全部盗まれちゃった!」

「──全く! 泥棒は奴一人で充分だっていうのに!」

 

 ソウゴたちは慌ててライドウォッチの行方を探す。

 

 

 ◇

 

 

「はあ……何で俺がこんなことしなきゃならねぇんだよ」

 

 ライドウォッチダイザーを抱えたフータロスが愚痴をこぼす。一緒になって巨大な陰謀を阻止した間柄、それを裏切る行為をしてフータロスは少し落ち込んでいた。

 

「これ持って隠れてろってよ……何処に隠れりゃいいんだよ」

 

 不満をダラダラと零していると、その腕にストールが巻き付く。

 

「うおっ!」

「手古摺らせてくれるね」

 

 ウォズが伸ばしたストールが、フータロスを拘束する。

 

「いてててて! 挟まってる! 挟まってる!」

「それは我が魔王の所有物。下賎の者が手にしていいものじゃない」

「誰が下賤だ! ──こうなりゃあ!」

 

 フータロスの体が半透明となり、ストールの拘束から抜ける。そして、そのままウォズに飛び掛かった。

 

「しまった!」

 

 ウォズの体にフータロスが飛び込む。体をビクリと震わすと、ウォズの眼が赤と金のオッドアイになり、髪に赤と金の二色のメッシュが入る。

 

「わりぃがちょっとばかし体を使わせてもらうぜ」

「あ、ウォズ!」

 

 そこにソウゴが駆け付けてくる。

 

「あ、やべ」

「ライドウォッチを取り返したの! それよりもゲイツから連絡が入って、アナザーライダーを見つけたみたい! 行こう!」

「いや、その……」

「早く!」

 

 ソウゴに強引に引っ張られ、なし崩し的に現場へと連れて行かれてしまった。

 

 

 ◇

 

 

 ゲイツとツクヨミは今まさにアナザーガオウと対決する直前であった。

 ジクウドライバーを装着し、ゲイツライドウォッチとゲイツリバイブにライドウォッチを出して変身しようとしていた時──モモタロスのエネルギー体がゲイツの中に入り込む。

 赤い瞳、逆立った髪には赤いメッシュが入り、荒々しい雰囲気となる。

 

「……ゲイツ?」

「おう。あの時計屋に居なくて探したぜ。デンライナーの修理が順調だって言いに来たんだが……こいつ!?」

 

 アナザーガオウに今気付き、驚く。

 

「あの野郎……! 見れば見るほどあいつに似ててムカつくなぁ!」

「ゲイツ、どうしたのよ!?」

 

 突然の変貌に、ツクヨミは心配になって声を掛ける。

 

「ゲイツじゃねぇよ! 俺はモモタロスだ!」

 

 そんなことを急に言われても混乱するのはツクヨミの方であった。

 

「居た! ゲイツ!」

 

 そこに間に合うソウゴたち。

 

「ああん? あっ! てめぇ!」

 

 ゲイツは何故かウォズを指差した。

 

「侑斗の所の、パクリ野郎じゃなぇか!」

「誰がパクリ野郎だ! おめぇの名前は特許でも取ってんのか!」

「ウォ、ウォズ……?」

 

 普段のウォズとは全く違うキャラにソウゴは鳩が豆鉄砲を食ったような顔となる。

 

「だいたいそれならおめぇん所の奴ら、全員パクリじゃねぇか!」

「うるせぇ! 俺が付けた訳じゃねぇ! 文句なら良太郎に言え!」

 

 ギャアギャアと騒ぐ二人。

 

「あんたたち! いい加減にしなさい!」

 

 ついにツクヨミの雷が落ちる。

 

「すぐそこにアナザーライダーが居るのよ! さっさと変身して!」

「わ、分かったよ……」

「ご、ごめん……」

「お前ら。俺を──」

「うるさい!」

 

 ツクヨミの手から波動が出て、アナザーガオウは止まってしまう。

 萎縮する二人。ソウゴも自分が怒鳴られた訳ではないのにビビッてしまう。そのタイミングで水色のエネルギー体がソウゴの体に入り込んだ。

 ソウゴの体が一瞬跳ね、次の時には水色の瞳に何故か眼鏡を掛け、水色のメッシュが入った髪型となっている。

 

「あ、亀公!」

「せんぱーい。あんまり遅いから様子を見に来ちゃったよ。はぁい、また会ったね、可愛いお嬢さん」

「ソウゴまで……」

 

 自分以外が変になり、流石のツクヨミも疲れてしまう。

 

「丁度いい! 亀公、手伝え! あの偽者野郎を倒すぞ!」

「えー。肉体労働は先輩の専門でしょ?」

「いいからやれ! お前ら!」

「はいはい」

「俺もかよ……」

 

 (ウラタロス)ソウゴはジクウドライバー、(フータロス)ウォズはビヨンドライバーを装着し、ライドウォッチも出すが、そこで止まる。(モモタロス)ゲイツも同じであった。

 

「これ──」

「どうやって──」

「変身するんだ?」

「あー! もう!」

 

 ツクヨミはMゲイツからライドウォッチを取り、起動させ、ジクウドライバーにセットして回転させる。

 

「はい! 変身!」

 

 ヤケクソ気味にツクヨミが叫ぶとMゲイツはゲイツリバイブ剛烈となる。

 

「成程ね。二つ使える訳だ。うん?」

 

 ライドウォッチホルダーに気付き、そこから一個取り外す。

 

「僕も使ってみよ」

「あのー……俺の、他と形が違うんだけど……」

「そのハンドルのスロットに挿して前に倒すの! 分かった!?」

「分かりました……」

 

 ツクヨミに気圧され、蚊の無く様な声を出すFウォズ。

 操作する度に『ウォズ!』『アクション!』『投影!』と鳴るミライドウォッチとビヨンドライバーにFウォズは一々驚く。

 

「じゃあ、行こうか。変身」

「へ、変身!」

『ライダーターイム!』

『フューチャータイム!』

 

 仮面ライダージオウと仮面ライダーウォズとなる二人。

 更に、ジオウには召喚したライダーアーマーが装着される。

 

『アーマーターイム! カイガン! スペクター!』

 

 スペクターライドウォッチによるスペクターアーマーを纏うジオウ。

 

「へぇ。変わってるね」

 

 顔に収まった『スペクター』の文字を興味深そうに撫でる。

 

「俺、参上!」

「お前、僕に釣られてみる?」

 

 変身後の口上を上げるゲイツリバイブとジオウ。

 

「……え? そういうの言わなきゃいけない流れなの?」

 

 変身も変身後も初めてのフータロスは、戦う前からオロオロしてしまっていた。

 

 




アナザーガオウの能力は、分かっても内緒でお願いします。

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ

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