「ほぉ。成程な」
モモタロスが憑依したMゲイツリバイブは、如何にも頑丈な見た目の橙色の装甲を軽く叩く。そして、右手に持っているのこモードのジカンジャックローのトリガーを引き、丸鋸を一回転させた。
武器を持つゲイツリバイブを見て、自分にも何か武器は無いかと念じるウラタロスが入ったUジオウスペクターアーマー。
すると、その意思に反応しドライバーから武器が飛び出す。
青い柄。先端は揃えられた五指を思わせる形をし、柄にはポンプアクションが付いており、柄頭の部分も銃を似た構造でカーブしたグリップと引き金が設けられていた。
Uジオウは知らないが、ガンガンハンドという名称を持つそれを上機嫌そうに撫でる。
「直感って結構大事だよね。こうやって僕好みの武器が出てくるし」
二人の姿をボウっと眺めているフータロスが憑りついたFウォズ。かつて仮面ライダーを召喚したことがあるが、仮面ライダーとしての知識がゼロの彼はどうするべきか分からず、ただ突っ立ている。
「ほら! あんたも!」
その無防備な姿に、ツクヨミは堪らず声を掛けてしまう。既にウォズにもイマジンが憑りついていると認識している為、素人同然の彼を動かす為に敢えて声を荒げる。
「分かったけどよ……どうすんだよ……?」
「兎に角、武器を出すって強く念じなさい!」
「いちいち怒鳴るなよ……武器、武器、武器、武器!」
ツクヨミに言われた通り、強く念じ始めるFウォズ。それが通じてビヨンドライバーから『ヤリ』の文字が飛び出てくる。
「何か出たぁ!?」
『ヤリ』という文字がジカンデスピアへ変換される。Fウォズはそれを手に取る。
『ジカンデスピア! ヤリスギ!』
「……これもベルトもすげぇ喋るんだけど、誰が作ってんだ?」
「そんなの私が知る訳ないでしょ!」
いい加減大声を出すのも疲れてきた。ツクヨミの集中力がこの時切れてしまう。その途端、時間停止されていたアナザーガオウが動き出す。
「くっ! 一体何だったんだ……!」
自由に動ける様になったアナザーガオウは時間停止体験に混乱していたが、すぐに目の前に並ぶ三人の仮面ライダーを見て、胴体に付けてある短剣を抜き、それを投擲した。
鋸状の刃が回転して三人を狙う。
「おっと」
「あぶねぇ」
左右から挟む様に来ていたそれを、UジオウとFウォズがガンガンハンドとジカンデスピアで容易く真上に弾き上げる。体も力も他人のものであったが、イマジンたちの身に付いている技術は本物であり、難なくやってのける。
「行くぜ! 行くぜ! 行くぜ!」
Mゲイツリバイブは刃など関係無しに真っ直ぐと突っ込んでいく。
間合いに入るとジカンジャックローによる振り下ろしで、胴体から腹部に掛けて一閃。高速回転する鋸で撫でられたアナザーガオウの体から火花が飛び散った。
すかさず真っ直ぐ突き出されたジカンジャックローが、削られた箇所に打ち込む。
「ぐはっ!」
胸を押さえて後ろに下げるアナザーガオウ。距離を詰めていくMゲイツリバイブ。
前のめりになりながら、アナザーガオウはMゲイツリバイブの注目を集めていた。UジオウとFウォズが弾いた短剣が上空で軌道を変え、Mゲイツリバイブの背後から迫っているのを悟らせない為に。
もう少しで短剣がMゲイツリバイブに届く。不意にMゲイツリバイブが後ろを振り返りながらジカンジャックローを振り、二本の短剣を纏めて弾く。
「何っ!」
「気付いてねぇと思ってんのかよ!」
正面を向くと、前方へ跳躍。前蹴りでアナザーガオウを蹴り飛ばす。
「がはっ!」
地面を横転していくアナザーガオウ。転がりながらも両手を上げ、弾き飛ばされた短剣を手元に戻すとすぐに立ち上がる。
「おら! 来いよ!」
チンピラの様な挑発をしながら手招きをするMゲイツリバイブ。元々気性が荒いアナザーガオウはあっさりとそれに乗り、怒りの声を上げながら短剣で斬り掛かる。
「はっ」
「なっ!」
Mゲイツリバイブが一気に懐に飛び込み、アナザーガオウが振り下ろす筈であった腕を肩で受け止める。そのせいでアナザーガオウは自由に短剣を振るえなくなってしまう。
「おらっ!」
頭突きがアナザーガオウの額に炸裂。アナザーガオウは堪らず仰け反る。
Mゲイツリバイブの戦いに定まった型は無く、持ち前のセンスと経験で戦う完全な喧嘩殺法。しかし、戦いのセンスも経験もアナザーガオウを圧倒的に上回っており、Mゲイツリバイブの独壇場であった。
「うおらっ!」
すかさずMゲイツリバイブは一歩下がり、ジカンジャックロー横向きに振り抜く。
「ぐはっ!」
アナザーガオウは苦鳴を上げながら、ジカンジャックローに削られた跡を押さえてふらついた足取りで下がっていく。
「へへっ!」
戦いを楽しむMゲイツリバイブ。癖なのか或いは動きを読ませない為か、ジカンジャックローを持つ右手を回しながらアナザーガオウを追い詰めていく。
「こいつでクライマックスだ!」
ジカンジャックローを大きく振り上げ、アナザーガオウの脳天を砕く勢いで振り下ろす。だが、アナザーガオウの顔面の口が開き、ジカンジャックローが届く前に閉じる。
「──あれ?」
振り下ろしたジカンジャックローが地面を砕いていた。居るべき筈のアナザーガオウが居ない。そもそも、Mゲイツリバイブは自分が何時地面を砕いたのかすら見ていないし、覚えてもいない。
「野郎、何処に──いでぇ!」
Mゲイツリバイブが絶叫を上げながら仰け反る。Mゲイツリバイブの背後には彼が見失ったアナザーガオウが短剣を振り下ろした姿で立っており、不意打ちで悶えているMゲイツリバイブの背中に短剣を交差させる。
「あだっ!」
もう一撃受けてMゲイツリバイブは地面に倒れ、その上でエビ反りの体勢になりながら背中を擦る。
「うおおお!」
今まで散々やられたことへの仕返しをしようとするアナザーガオウ。Mゲイツリバイブに短剣を投擲しようとするが──
「右から失礼するよ」
突然掛けられた言葉。慌てて右を見るが、誰も居ない。直後、左側からアナザーガオウの顔を突く青い五指。
「君、あんまり余裕が無いね。だから、僕の嘘にも簡単に釣られちゃうんだよ?」
左側からガンガンハンドを突き出しているUジオウがしれっとした態度で言う。
「お、まえ……!」
嘘に騙されたこと、攻撃を受けたこと。二つのことでアナザーガオウが屈辱を覚え、怒りに燃える。
「おい、亀! さっき何が起きた! お前、見てたんだろ!」
Mゲイツリバイブは、アナザーガオウを見失った時の状況をUジオウに訊く。
「見てたけど、いきなり先輩がカッコ悪く空振りして後だったから詳しくは分からないね」
「おい! カッコ悪くは余計だろ!」
「ごめんねー。僕、嘘が吐けなくて」
「それが嘘だろうが!」
「嫌だなぁ──おっと」
アナザーガオウが突き出した短剣をガンガンハンドで上から打ち落とす。前のめりになるアナザーガオウ。だが、体勢を上向きにしながらもう一本の短剣を下から突き上げてきた。
Uジオウはガンガンハンド中央を握り、それを軸にして器用に回転させ、短剣の側面を叩いて攻撃を防ぐ。
「残念──うん?」
回転させた際にポンプアクションの部分を誤って引いてしまう。すると、五指の部分が変形し、先端の指が九十度曲がり、変形箇所から銃口が出現する。握手を求める様なロッド先端が、人差し指を突き付ける様な形の長銃へ変わった。
「へぇー。こうなっているんだ」
初めて扱う武器故、知らないギミックがあったことに関心と若干の興奮を見せる。
「この!」
アナザーガオウが短剣を振るう直前、ガンガンハンドの銃口が目の前に現れる。
「バァン」
銃声──ではなくUジオウが発した声に反射的にアナザーガオウが身を守る体勢をとってしまった。すると、何故かUジオウはガンガンハンドを長銃からロッド形態へと戻し、アナザーガオウの防御の甘い箇所に先端を突き入れ、そのまま突き飛ばす。
「あれも便利かもしれないけど、僕の趣味じゃないんだよね。リュウタなら喜んで使いそうだけど」
Uジオウはあくまでもロッドを使うことに拘る。
「どうすっかなぁ……」
アナザーガオウ相手に優勢に戦うUジオウを見てFウォズは迷いが籠った言葉を洩らす。
成り行きで変身したが、MゲイツリバイブとUジオウの戦いぶりを見て手を貸す必要が無いと分かり、手持ち無沙汰となっていた。
視線を足元に向けるとライドウォッチホルダーが転がっている。
Fウォズの仕事はこれを暫くの間ソウゴたちから隠すこと。ソウゴが何らかの拍子で世界を滅ぼすかもしれない力を得るのを防ぐ為である。
ライドウォッチホルダーを持ってこの場から逃げ、侑斗たちと合流するのが最優の選択かもしれないが、ライドウォッチホルダーを盗んだ時と同様に気が乗らない。
憑依しているモモタロスたちとの縁など極薄いものだが、それでも見捨てて逃げるという行為にFウォズの足は動かなかった。
「──ん?」
Fウォズは気付く。こちらに近付いてくる気配。イマジンの気配を。それも一体ではなく二体。
急いで視線を動かすとそれは居た。
青いジャケットを着ており、右手に大きな爪、左手は鋸の様に刃が連なった斧を生やし、鉄製のフルフェイスの様な顔に丸く赤い円形の目。頭頂部と口部分からドリルが突き出されている。
モグラを連想させるイマジンが、Uジオウとアナザーガオウの戦いに横槍を入れようとしていた。
「おい! 待てよ!」
そこにFウォズが文字通り横槍を入れてイマジンの動きを止める。
「何だ、お前は? 俺の契約の邪魔をするんじゃねぇ!」
「契約?」
Uジオウたちの側でFウォズとモグラ型イマジン──モールイマジンとの戦いが始まってしまう。
「何、急に?」
「何だこいつ? イマジンか?」
UジオウとMゲイツリバイブは突然の乱入未遂に戦いの手を止める。アナザーガオウも同じ様に戸惑って立ち尽くしていた。
「そいつを助けるってのが俺の契約者の願いなんだよ! ヒャッハー!」
「助ける? どうせ碌でもない叶え方なんだろ!」
上から来る爪をジカンデスピアの穂先で防ぎ、横振りの斧をFウォズは相手の腹部を蹴り付けることで距離を離して空振りさせる。
その拍子でジカンデスピアのタッチパネルに触れる。
『カマシスギ!』
「鎌になっちゃった!? えっ! どうしたら戻るんだこれ!」
ジカンデスピアの変形機構に驚かされながらもモールイマジンの攻撃を捌くFウォズ。
「俺を助ける……?」
モールイマジンの契約内容に驚きを隠せないアナザーガオウ。ふと、誰かに見られていることに気付き、周囲を見回す。そして、見つけた。離れた場所でこちらを不安げな眼差しで見ているユキヒロの姿を。
「ユキヒロ……! お前……!」
湧き上がってくる憤怒。この世で最も憎い相手から差し出された手など怒りしか覚えない。
目の前にUジオウとMゲイツリバイブが居るのにアナザーガオウの矛先はユキヒロへ向けられる。
「おおおおお!」
咆哮を上げ、アナザーガオウがユキヒロ目掛けて走り出そうとする。
「おい! 待て! てめえの相手は俺たちだろうが!」
未だに地面に腰を下ろしていたMゲイツリバイブが、アナザーガオウの脚にしがみつき、足止めする。
「おい! 亀公! お前も手伝え!」
「はいはい」
Uジオウが向かおうとした時、金色の影がUジオウの側に現れる。
『おう、カメの字。なんや騒々しいことになっとるな』
「え? キンちゃん? 何で来たの?」
『そりゃあ、お前さんが遅いからやないか。モモの字呼びに行って、全然戻って来んせいでミイラ取りがミイラになったと思ったで』
エネルギー体となったキンタロスが腕を組みながら心配した様子を見せる。
『遅いと思っとったらこんなことになってたとはのう──よし! ここは俺に任せい!』
そう言ってキンタロスがUジオウの中に飛び込むと、ジオウの中からウラタロスが飛び出て来る。
「で、出て来た!」
ジオウの中からいきなりイマジンが飛び出したことにツクヨミは驚く。
「もう……キンちゃんは相変わらず強引なんだから……」
押し出されたウラタロスが少し不満を洩らす。
「ソ、ソウゴ……?」
ツクヨミは正気に戻ったかどうかを確かめる為にジオウへ声を掛ける。
「何や、嬢ちゃん」
「中身替わってる……」
その一言で全てを察してしまう。
「キンちゃーん。たぶん、その力、キンちゃんに合わないと思うから、これ使ってみたら?」
いつの間にかライドウォッチホルダーの側に立っていたウラタロスが、ジオウに向けてその内の一つを投げ渡す。
「何やこれ? どう使うんや?」
「それのスイッチを押して──それを抜いて──それを挿して──そこを外して──はい、一回転」
ウラタロスの指示通りジクウドライバーとライドウォッチを操作すると──
『ビースト!』
『アーマーターイム! オープン! ビースト!』
金色の獅子のアーマーを纏ったジオウビーストアーマーと化す
「ほお! こりゃええのう!」
同じ金の体色を持つのでその姿を気に入ると、アナザーガオウを見る。
「俺の強さは泣けるでぇ!」
前かがみの姿勢になり、両拳を地面に向ける。相撲の立ち合い前の構えをとると一気に前進。
「ふん!」
無意識のうちにビーストアーマー内にあるバッファローの力を引き出すことで、相撲で言うぶちかましの威力が跳ね上がる。
「うん?」
「へっ?」
揉めていたアナザーガオウとMゲイツリバイブはこちらに突進してくるKジオウに気付く。突進するその姿に、バッファローの幻影が重なって見えた。
「うぐおっ!」
「うおっ!」
Kジオウのぶちかましをまともに喰らい、アナザーガオウが吹っ飛んでいく。ついでにしがみついていたMゲイツリバイブも一緒に飛んでいった。
空中で離れる二人。地面を数メートル転がった後、Mゲイツリバイブが先に立ち上がる。
「おい! 熊公! 俺まで一緒にやるな!」
「何や、モモの字、そこに居ったんか。すまん、すまん。急に力が湧いてきてのぉ」
謝りながらも豪快に笑うKジオウ。
Fウォズはモールイマジンと戦いながら、その姿に呆れていたが、またイマジンが近付いていることに気付く。
『あー、皆で遊んでるー!』
リュウタロスのエネルギー体が怒りながら現れた。
「おう、リュウタ。留守番しとけと言うたやろ」
『僕だけ留守番させておいてひどーい! 僕も遊ぶ!』
「おい! デンライナーの──」
『デンライナーはもう直ったし、こっちに来るからいいもーん! それ!』
リュウタロスがKジオウに入るとキンタロスが体の中から押し出される。
「また出て来た……」
「ところてんか、お前ら……」
ツクヨミもFウォズもその光景に驚くよりも呆れの方が先に来る。
「リュウタったら……」
「まだ戦い足りんで、俺は」
ウラタロスは仕方がないと言わんばかりに首を振り、キンタロスは不完全燃焼と言った態度で腕を組む。
「このカッコ、僕好きじゃ無ーい!」
憑依して早々ビーストアーマーへの不満を声に出す
「しょうがないね。ほら、リュウタとお揃いの色だよ」
「わーい! って何これ?」
赤と紫の外装のライドウォッチを受け取り、首を傾げるRジオウ。
「それはね──」
ウラタロスが軽く説明をすると、Rジオウはすぐに理解した。
「面白そー! やってみよー!」
『響鬼!』
響鬼ライドウォッチのスイッチを押し、言われ通りにジクウドライバーへ挿し、アーマーを喚び出す。
『アーマーターイム!』
音叉の音が響き渡り、紫の胸部、両肩に巴紋に似たマークの入った太鼓型の装甲のライダーアーマーが現れ、Rジオウへ装着される。
『響鬼!』
装着すると、顔面の文字が『ヒビキ』となり、額に鬼の顔の紋章が付けられ、両手には鬼の顔が彫られた石を先端に付けた撥が出現する。
「わー! 太鼓を叩くやつだー!」
Rジオウは姿の変わった自分をペタペタと触る。
「うわー、角が生えてる。うえー、モモタロスみたい」
「何がうえーだ、はなたれ小僧!」
モモタロスに似ていることに拒否感を露わにするRジオウ。Mゲイツリバイブは思わず怒鳴った。
「くそ! さっきから何なんだ! お前は!」
アナザーガオウが短剣を構え、Rジオウに飛び掛かろうとする。Rジオウは何気なく撥の先をアナザーガオウへ向けた。赤い石に火が灯り、火球が放たれてアナザーガオウに命中する。
「ぐおっ!」
飛び掛かったアナザーガオウは火球で元の場所に戻される。
「うわ! 魔法のステッキみたい! 面白ーい! それっ!」
「うぎゃあ!」
「危なっ!」
モールイマジンにも火球を放ち、吹っ飛ばす。近くにいたFウォズも危うく巻き込まれるところであった。
「お前、太鼓にして遊ぶけど良いよね?」
子供の持つ無邪気さのまま恐ろしいことを言い放つRジオウ。
「答えは聞いてない!」
アナザーガオウの下へ一直線で接近するRジオウ。
「くそっ!」
アナザーガオウが短剣を振るうがRジオウが居ない。
「こっちこっち」
しゃがんだRジオウはそこから逆立ちし、回転しながら足で何度もアナザーガオウの顔を蹴る。
「よっと!」
片手で倒立しながら足をアナザーガオウの肩に叩き付け、もう一方の手でアナザーガオウの脚を撥で叩く。
「ぐうっ!」
上下から攻撃で強制的に体勢が沈むアナザーガオウ。
「よいしょ!」
ダンスの様な軽やかな動きとステップでアナザーガオウの背後に回り、その背に撥を打ち込む。
「──っ!」
息も詰まる衝撃に、アナザーガオウは前へと転がっていく。
「えい!」
撥を銃に見立て、火球を撃ち出すRジオウ。であったが、何故か火球はアナザーガオウをすり抜け、地面に炸裂した。
「あれ?」
「また妙なことをやりやがったなー!」
アナザーガオウの謎の能力でRジオウの命中する筈であった攻撃が外されてしまう。
その時、警笛の音が鳴り響く。空中を走るデンライナー。それがこちらに向かって走って来ていた。
「おお! デンライナーが直ったのか──んん?」
Mゲイツリバイブは疑問に思う。この場にイマジンたちが全員揃っている。ならば誰が操縦しているのか。
「──誰が運転してんだ?」
「そりゃあ、あの人しかいないよ」
「あのおっさんやな」
「時計屋のおじさーん」
その瞬間、ジオウの体からリュウタロスが弾き出された。
「うっそ!? 叔父さん!?」
ようやく体の自由を得たジオウ。変身が解除され、直後にすぐに膝を突いてしまう。
「何か凄い疲れた……」
その隙にアナザーガオウは動く。
「この時を待っていた!」
アナザーガオウが叫ぶと空間を食い破り、アナザーガオウライナーが走り出てくるとデンライナーの前方に割り込み、強制的に連結し操縦権を奪ってしまう。
「待ってろ! 姉ちゃん!」
アナザーガオウはアナザーガオウライナーへ飛び乗り、そのまま歪み彼方へ消えてしまった。
「ひゃははは! これで契約完了だな!」
その光景をモールイマジンは笑い、ユキヒロの方へ近付く。
「願い通りあいつを
一方的に言い切ると、モールイマジンは斧を振り下ろし、ユキヒロを真っ二つにする。その体を扉にして過去へ跳んでしまった。
『……』
全員が呆然としてしまった。そして、ジオウが気付いて叫ぶ。
「叔父さん、連れられちゃったー!」
デンライナーごと順一郎を攫われてしまった。
何とも言えない空気。すると、MゲイツリバイブとFウォズに変化が起こる。小刻みに震え出したかと思えば、中からモモタロスとフータロスが飛び出てきた。同時に変身も解除される。
「はぁ、はぁ……よくも俺の体を好き勝手に使ってくれたな!」
「──二度とこんな真似をさせられないようにしようか?」
体の自由を奪われていたゲイツとウォズが怒りに燃えた眼差しでイマジンたちを睨む。特にフータロスは逃げられない様にウォズのストールで拘束されていた。
「そんなことより! アナザーライダーと叔父さんを追わないと!」
「それならイマジンから追うべきかもしれない。何やらあのアナザーライダーとは因縁があるみたいだしね」
イマジンたちへの怒りを一先ず置き、茫然自失のユキヒロを横目で見るウォズ。
「どうやって?」
「──電王ウォッチがあれば、もしかしたら」
「ウォッチってこれのことか?」
モモタロスが何気無く出した物。間違いなく電王ライドウォッチである。
「良太郎の奴が持ってけって言うから預かっておいたんだがよ……必要ならやるよ」
モモタロスの手から電王ライドウォッチが放り投げられ、ソウゴの手に──渡ることなく間を勢い良く駆け抜けていく何かがそれを取ってしまう。
「こいつを手にするにはまだ早い」
電王ライドウォッチを手にしたゼロノスが、そう言い切る。
「侑斗!?」
「おい! 侑斗! 勝手な真似をしてんじゃねぇ!」
「勝手な真似じゃない。野上にも言ってある。こいつを手にするに相応しいかは俺が見極めるってな。野上もそれに納得している」
「良太郎が?」
初めて聞く内容らしくモモタロスたちも驚いていた。
「あのイマジンもお前の叔父さんも俺が何とかする。お前らは引っ込んでいろ」
「嫌だって言ったら?」
「言ってもどうにもならないぞ?」
「叔父さんは絶対に助けるし、それにウォッチの力が必要なら絶対に手に入れる!」
「我儘な奴め……欲しけりゃ力尽くで来い!」
ソウゴはジオウトリニティウォッチを構える。
「ゲイツ! ウォズ! 行くよ!」
二人が頷くのを見て、トリニティライドウォッチを起動。ジクウドライバーにセット。
『ジオウ! ゲイツ! ウォズ!』
摘みを回すことでウォッチが開き、それぞれのライダーの顔が露わになる。
全ての顔が揃い、ソウゴはジクウドライバーを回転させる。
『トリニティターイム! 三つの力! 仮面ライダージオウ! ゲイツ! ウォズ! トーリーニーティー! トリニティ!』
ジオウトリニティへと変身完了。
変身と共にその内面世界では大きな時計を中心にソウゴ、ゲイツ、ウォズが並んでいる──筈だったのだが。
「え?」
「何?」
「これは……」
三人は目を見張る。
「何だここは!?」
「何か薄いね、ここ?」
「こんだけ暗いと眠く──ぐごぉー」
「暗くて狭いとこ嫌ーい!」
何故かモモタロスたちもジオウトリニティの内面世界に居る。
「何で!?」
「──恐らくは、近くにいたせいで巻き込まれたんだろうね」
「そうだなー」
「へっ?」
モモタロスたち以外の声。そこにはウォズのストールで簀巻きにされたフータロス。
「離してくれー、出してくれー」
偶然の事故により、三位一体を超えた八位一体の仮面ライダーが誕生してしまった。
アナザーガオウ編は次で終わりとなります。
レジェンドライダー相手だと、どんなにアナザーライダーを強くしても勝てるイメージが湧かないのが難点。
そういう意味ではアナザージオウⅡやアナザーディケイドは別格の強さでしたね。
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ