保護したユキヒロから、アナザーライダーの変身者の名前が遠藤タクヤであることを知り、彼とイマジンがデンライナーを利用して跳んだ2017年5月11日が、彼の姉でありユキヒロの恋人であった遠藤サユリを病院から連れ出した日であり、その後に容態が悪くなり亡くなったことからタクヤがユキヒロに憎悪を抱いた日でもあった。
タクヤの目的は、その日にユキヒロがサユリを連れ出させないこと。そうすればサユリは長生き出来ると考えていたのだ。
イマジンとアナザーライダーを追う為に、ゲイツとウォズ──更にモモタロスたちも加えてタイムマジーンで過去に向かう。
ソウゴはユキヒロとまだ話があったのでゲイツたちを先に行かせた。
2017年では既にモールイマジンが病院で暴れており、アナザーガオウも姉を探して病院内を彷徨っていた。
ゲイツ、ウォズ、モモタロスたちの活躍によってモールイマジンとアナザーガオウを病院から追い返すことに成功したのだが──
◇
暴れるつもりがウォズとモモタロスたちによって叩きのめされたモールイマジン。命からがら何とか逃げることには成功したが、彼の心は復讐心で燃えていた。
「あいつら……! 折角過去に来たのに……! うん……?」
運命の悪戯か、モールイマジンは偶然見つけてしまった。無造作に停車させられているアナザーガオウライナーとそれに連結したデンライナーを。
「ヒャッハー! いいもの見つけたぜぇ!」
喜び勇んで中に入るモールイマジン。
「わあ! また怪物!」
デンライナー内には縛られた順一郎が横たわっている。アナザーガオウに暴れなければ危害は加えないと言われ、大人しくしていたがモールイマジンの登場に悲鳴を上げる。
「あーん? 誰だぁ?」
「え、僕? 時計屋ですけど……」
「何で時計屋がデンライナーに乗ってるんだ?」
「まあ、成り行きで……あ、これ、僕が修理したんですよ?」
「嘘吐け! 時計屋が電車を修理出来る訳ねぇだろ!」
「いや、嘘みたいな本当なんですって!」
「まあいい……それよりも」
モールイマジンの手が順一郎へと伸ばされる。
「お前は利用出来そうだ」
「え?」
モールイマジンはエネルギー体となり、順一郎に憑依すると、拘束していた鎖を軽々と引き千切る。
「ヒャッハー! 復讐の時間だぜぇ!」
両眼を赤く輝かせ、順一郎もといモールイマジンはハイテンションで叫んだ。
◇
アナザーガオウを押すゲイツであったが、アナザーガオウライナーに乗ったモールイマジンの横槍が入り倒せず、更にモールイマジンはアナザーガオウと手を組むことを提案し、アナザーガオウもその案を受け、二人は協力関係を結ぶとアナザーガオウライナーに乗って去ってしまった。
一方病室ではサユリの病室にこの時代のタクヤとソウゴたちが集まっていた。サユリはモールイマジンの騒動のどさくさに紛れてユキヒロによって病院の外に連れ出された後である。
ソウゴはタクヤに事情を話し、暴れているアナザーガオウが2019年のタクヤであることを告げた。
ソウゴはユキヒロに代わり、本当のことを教える。
サユリの病は既に手遅れの状態となっていた。連れ出そうと連れ出さないであろうと長くは持たない。例え本当のことを教えてもタクヤの心に空いた穴は塞がらず、それならば自分に憎しみや怒りを向けさす方がまだタクヤが楽に生きられると思い、敢えて憎まれ役となったのだ。
ユキヒロの真意を知ったタクヤは、ユキヒロがサユリを連れ出したことに何か特別な意味があると信じ、未来のタクヤを止めることを願った。
◇
病室に置かれた写真からユキヒロたちが向かったのが灯台であると分かったソウゴたち。勢い良く病室から出ると──
「──よお」
「侑斗!」
侑斗とデネブが待ち構えていた。
「おう! てめえ! 早速やる気かぁ!」
「先輩、焦らない」
「落ち着けや、モモの字。侑斗からは敵意を感じん」
「モモタロスのあわてんぼう」
他のイマジンたちに取り押さえられ、モモタロスは動けない。
「フータロスは?」
「少し野暮用だ。──助けに行くのか?」
「当然」
「魔王とか言われている癖に甘い奴だ」
「魔王は魔王でも最高最善の魔王を目指しているからね。こんなの当たり前だし」
人を助けることをさも当然と言うソウゴ。侑斗は苦笑を浮かべる。
「っていうかさぁ。俺が王様になったら侑斗たちも来ない?」
敵対関係である侑斗たちすら勧誘し始め出す。
「侑斗は時の番人っていうからやっぱり警備担当かな?」
「おい。まだ、やるとは一言も言ってないぞ」
「えー、でもデネブは俺の王国の専属パティシエに決めたし……あれ?」
ノイズが走った記憶がソウゴの頭の中を過る。
『さよならだ』
崩れていくカードを持つ侑斗の姿。初めて会った筈なのに、記憶に無い光景であった。
「──やっぱりさ、俺たちって前に会ってない?」
「桐生京介のことか?」
「違う違う。もっと前に会った、そんな気がする」
デネブはその言葉に驚く。過去にあった侑斗との記憶は赤いゼロノスカードによって全て消滅した筈である。なのに、ソウゴは無くなった筈の記憶を覚えている。
「──勘違いだろ?」
「いや、やっぱり会ってた気がするって!」
侑斗が否定してもソウゴはそれを認めない。
不意に侑斗はオーマジオウと出会った時の言葉を思い出す。
『大げさでは無い。己の存在を削りながらも未来の為、戦ってくれた戦士を私は決して忘れはしない』
「──はっ」
侑斗は小さく笑い、ソウゴに向けて電王ライドウォッチを投げ渡した。
「ライドウォッチ!」
「取り敢えず渡しといてやる」
「俺のことを信じてくれたの?」
「──少なくとも口だけじゃない奴と分かったからな。信用はしないが認めてやる」
その台詞にモモタロスたちは小声で喋り合う。
「相変わらず面倒くさい奴……」
「ま、素直じゃないってことでしょ」
「あれも侑斗の味ってやつやな」
「僕、きらーい」
そう言うと侑斗は振り返る。
「行くんだろ? イマジンとアナザーライダーを倒しに?」
「──ああ!」
◇
灯台近くにはアナザーガオウとモールイマジンも既に来ており、ユキヒロからサユリを奪い返す為に灯台を目指す。
そこに立ち塞がるはソウゴたち。だが、アナザーガオウの隣に立つ人物を見て、ソウゴたちは驚愕する。
「叔父さんっ!?」
デンライナーごと行方不明になっていた順一郎が、彼なら絶対しない醜悪な笑みを浮かべていた。
「叔父さん? ヒャッハー! ついてるなぁ! この体はお前の身内か! なら──」
アナザーガオウの腕を掴み、手に持っている短剣の先を自分に突き付けさす。
「抵抗するなよ? 抵抗したらどうなっても知らねぇぞぉ?」
順一郎の体を人質にし、ソウゴたちを動けなくさせる。
「おい!」
指示を出すと、彼の周りにモールイマジンがわらわらと集まり出す。
「増えやがった!?」
「こっちにはデンライナーがあるんだ!」
デンライナーによって過去の自分を連れて来て兵隊を増やすという反則技をする。
「てめぇ……!」
「止めとけよ」
抵抗しようとするモモタロスを侑斗が止める。侑斗の視線の先には厭らしい笑みを見せる順一郎。
「くそっ!」
人質の命を優先し、モモタロスは悔しそうにしながらも無抵抗の意思を示す様に腕を組む。ウラタロスたちも同様に大人しくする。
「叔父さん……」
「もう少し待ってろ」
「え?」
「きっとチャンスは来る」
侑斗の声には確信があった。
「──分かった!」
ソウゴはそれを信じることにする。
「ヒーヒッヒ! 観念するんだなぁ!」
モールイマジンたちがじりじりとソウゴたちを取り囲んでいき──
「せこい真似してんじゃねぇよ」
──アナザーガオウが突然後ろから蹴り倒される。
「何ッ!? うぐっ!」
短剣が離れ、代わり襟首を掴まれる順一郎。
「お前は!?」
順一郎を掴み上げるのはフータロスであった。アナザーガオウライナーとデンライナーを探す為に侑斗たちと別行動をとっていて、ようやく見つけたと思ったら、近くでソウゴたちがピンチなのも見つけた。
「お、俺に危害を加えてみろ! この体の持ち主が──」
「お前、馬鹿か?」
順一郎の脅しにフータロスは呆れる。そして、エネルギー体となって順一郎へ憑りつき、中に入っていたモールイマジンを追い出してしまう。
赤と金のメッシュが入り、赤金のオッドアイとなった順一郎は、追い出したモールイマジンの首を掴み上げる。
「イマジン相手にそんな脅しが通用する訳ねぇだろ!」
モールイマジンの額に頭突きを炸裂させる。
「うぎゃあ!」
頭突きに怯んでモールイマジンは倒れる。
「この体は俺が責任を以って預かっておく! 頑張れよ!」
安全な場所を目指し、順一郎は一目散に走っていく。これで人質の心配は無くなった。
「行くぞ、常磐」
「ああ!」
侑斗はゼロノスカードを取り出す。
「変身!」
『ALTAIR FORM』
仮面ライダーゼロノス・アルタイルフォームに変身すると群がるモールイマジンたちを指差す。
「最初に言っておく! 俺はかーなーり強い! あとこいつもな」
ついでの様にソウゴのことも言い、ゼロノスはゼロガッシャーを振り上げてモールイマジンたちに突撃していく。
ソウゴは電王ライドウォッチのスイッチを押す。これにより全てのライドウォッチがソウゴの下に集まった。
『電王!』
電王ライドウォッチの起動を切っ掛けに、クジゴジ堂に置かれてあるライドウォッチが時空の壁を超え、ソウゴの手の中に集い、一つとなる。
輝きが全て収まった時、黄金のライドウォッチが現れた。
大きさは他のライドウォッチとさほど変わらないが、厚みは倍近くあった。中心にはジオウの顔が描かれ、その周りには大小異なる時計盤が並んでいる。
ソウゴの手の中に、オーマジオウに匹敵する力がある。ソウゴは自然と笑みを浮かべていた。大きな力を得たことに恐怖は無い。自分を信じて突き進んだ道、その一つの集大成を前に臆することなど無い。
ジクウドライバーを装着。
『ジオウ!』
右手にジオウライドウォッチ。そして左手には王へ至る為のライドウォッチ。その名は──
『グランドジオウ!』
グランドジオウライドウォッチは起動するとその形を変える。両翼に各仮面ライダーを描いた能力解放弁が展開される。
ジオウライドウォッチとグランドジオウライドウォッチをジクウドライバーに装填し、中央のロックを外す。
グランドジオウライドウォッチが発する音。それは、このライドウォッチに宿った仮面ライダーたちを覚醒させる為の言霊。
それに応える様にソウゴの背後に黄金の城が出現。ソウゴを中心としてジオウを含む今まで手にしたライドウォッチの仮面ライダーたちの彫像が召喚され、響き渡る言霊の音により表層が剥がれ落ち、彩りを取り戻す。
「変身!」
『グランドターイム!』
召喚されたライダーたちが、出現した黄金のフレームの中に入る。
『クウガ! アギト! 龍騎! ファイズ! ブレイード!』
仮面ライダーたちを内蔵したフレームは縮小され、ソウゴを中心とし周囲に浮き上がる。
『響鬼! カブト! 電王! キバ! ディケイード!』
ジオウに姿を変えたソウゴの体に、フレームが次々と装着され、ジオウに黄金の鎧を纏わせていく。
『ダブル! オーズ! フォーゼ!』
唯一無二の強大なる力の誕生を祝福するかの様に、文字盤型の黄金が紙吹雪の様に舞い、全てを煌びやかに彩る。
『ウィザード! 鎧武! ドラーイーブ!』
胸部、腕部、脚部、両腰横に付けられたフレームが開き、中から仮面ライダーたちが姿を現すと、それぞれが独自のポーズをとり、そのまま黄金のレリーフと化す。
『ゴースト! エグゼイド! ビールドー!』
背後に建つ黄金の城から『ライダー』の文字が飛び出し、顔面に填め込まれる。
『祝え! 仮面ライダー! グ・ラ・ン・ド! ジオーウ!』
額のフレームの中からジオウが姿を見せ、構えと共に彫像となった瞬間、全てのプロセスが完了し、舞い散る紙吹雪は完了の際に発せられた黄金の光と共に消える。
全てのライダーたちの力を一つとしたジオウの到達点──グランドジオウ。
「凄い……! 力が漲る!」
溢れ出る力。底を感じる事無く湧き続ける。
ウォズはグランドジオウの姿に歓喜の表情を浮かべる。
「祝え! ──いや、もはや言葉は不要。ただこの瞬間を味わうがいい!」
祝福の言葉など思い付かない。どんな言葉で誕生を祝おうともグランドジオウの荘厳さの前では陳腐と化す。
グランドジオウの誕生を心から喜び、この場に立ち会うことが出来た自分の幸運を噛み締め、ウォズは天を見上げる。
グランドジオウの誕生を見ていたのはウォズだけではない。離れた場所からフータロスもまたそれを見ていた。
既に憑依を解除しており、フータロスは長時間の憑依で気絶してしまった順一郎を背負っている
「すげぇな、あれ……」
遠くから見ていても存在感や力が肌に伝わって来る。
「んん……?」
背負っていた順一郎が目を開け、遠くに立つグランドジオウを見た。
「ソウゴ君……王様になったんだ……随分金ぴかだけど……良かったねー……」
そう言ってまた気絶する。
変身後のグランドジオウをソウゴであると無意識のうちに見抜いた順一郎。彼にとっては夢と認識した光景であったが、順一郎なりに王様となったソウゴに祝福の言葉を送った。
グランドジオウはビルドのレリーフを叩く。
『ビルド!』
空中にフレームと2017の文字が出現し、フレームが扉の様に開きそこから現れたビルドラビットタンクフォームがアナザーガオウをグラフ型エネルギー固定装置で止め、グラフ上を滑走し、アナザーガオウを蹴り抜く。
「うああああ!」
蹴り飛ばされたアナザーガオウ。すぐに立ち上がろうとするが──
『クウガ!』
2000年の扉の向こうからクウガマイティフォームが出現し、封印のエネルギーを込めた右キックをアナザーガオウの胸部に打ち込む。
「ぐああああ!」
グランドジオウは再びクウガのレリーフを叩く。
『クウガ!』
クウガが出現するのではなく、彼が使っていた紫の大剣──タイタンソードがレリーフから出現し、それを装備したグランドジオウがアナザーガオウを斬り付けた。
ここまで見せれば誰もがグランドジオウの能力を理解する。過去のライダーたちとその武器を自由自在に召喚する、それグランドジオウの能力。
『オーズ!』
2010年の扉から赤、黄、緑の輪を潜ってオーズタトバコンボが現れる。右足に込められた三つの力がアナザーガオウへ炸裂する──直前。
「させるかぁぁぁ!」
アナザーガオウは口を開け、閉じる。すると、オーズのキックはアナザーガオウをすり抜けて後ろの地面を蹴り砕いた。
「はははは!」
辛うじて回避したアナザーガオウ。だが、グランドジオウは冷静であった。
額のジオウのレリーフが動き出し、指をクルリと回す。
「時間よー戻れ!」
「ははは──は?」
前方には連なる三つのリング。避けた筈のオーズのキックが眼前に──
「うぐあっ!」
──今度は能力の行使が間に合わず、オーズのキックが直撃してしまう。
「お前の能力、分かったよ」
時間操作の能力を得たグランドジオウだからこそ、アナザーガオウの能力が何なのか分かった。
口を開け、閉じるとアナザーガオウは周囲の時間を食らい、その数秒間の出来事を無かったとこに出来るのだ。故に命中したという事実が無くなり、あらゆる攻撃を空振りにさせてしまう。回避能力として無敵に近いものであったが、運が悪いことにグランドジオウは時間を操れる。どんなに時間を消そうが、消す前の時間に戻せてしまえる。
グランドジオウは鎧武のレリーフを連続して叩く。
『鎧武!』
『鎧武!』
『鎧武!』
『鎧武!』
オレンジをモチーフにした武者鎧を着た鎧武オレンジアームズ、パイナップルに似た鎧を着た鎧武パインアームズ、イチゴに似た鎧を着た鎧武イチゴアームズ、と三体の鎧武が現れ、グランドジオウも鎧武の武器である弓──ソニックアローを握る。
鎧武オレンジアームズが二本の片刃剣の柄頭を合わせた無双セイバー・ナギナタモードを振るい、パインアームズがパイナップル型鎖鉄球──パインアイアンを振り下ろし、イチゴアームズがイチゴ型苦無──イチゴクナイを投擲する。
三つの攻撃が迫り、アナザーガオウは反射的に時間を食らって回避しようとした。
「時間よー止まれ!」
アナザーガオウは口を閉じる。そして、見た。三つの攻撃が目の前で止まっている。時間を戻して当てた時と違い、今度は時間を止めてアナザーガオウのタイミングを狂わせたのだ。
グランドジオウがソニックアローから光矢を射ち出し、アナザーガオウを貫く。同時に時間停止が解除され、橙色の光刃がアナザーガオウに命中し、アナザーガオウをオレンジ型のエネルギーに閉じ込めると、パインアイアンが頭部に打ち下ろされ、イチゴクナイが刺さり、爆発する。
「これが……魔王の力!」
グランドジオウの圧倒的な力を実感する。
「だったら俺たちも!」
「先輩。ベルト、無いんだけど?」
「あれ!? どこやった!?」
モールイマジンたちと戦っていたモモタロスがライダーパスを出すが、肝心のベルトが無い。
電王ライドウォッチをソウゴに渡したため、現在のモモタロスたちは電王に変身不可能であった。
「ええー! 何だよそれ! こんなに盛り上がっているのによー!」
「おーい。だったらこれ」
『電王!』
グランドジオウが電王のレリーフを押し、過去の電王を召喚する。
「おお!」
モモタロスがそれに憑依し、変則的な形で電王になる。
「ようやく俺、参上! 久しぶりにてんこ盛りで行くぜ!」
赤い携帯電話型ツール──ケータロスを操作する電王。
『MOMO URA KIN RYU』
それをベルトに装着する。
『CLIMAX FORM』
電王の装甲が別の形に再形成され、エネルギー体となったウラタロス、キンタロス、リュウタロスと一つになる。
右肩に電王ロードフォームの仮面、左肩に電王アックスフォームの仮面、胸部に電王ガンフォームの仮面を装着し、電王ソードフォームの仮面が左右に割れ、新たな仮面が現れると、四体のイマジンが一人の仮面ライダーとなる。
「わーいわーい! 久しぶり!」
「うわー、こっちの方が狭くない?」
「何でやろうなぁ?」
「うるせぇ! そんなことより! 行くぜ! 行くぜ! 行くぜ!」
電王クライマックスフォームとなると、モールイマジンたちの大群へ突っ込んでいく。
「デネブ! 来い!」
「ああ!」
ゼロノスもカードを挿し変え、フォームを変える。
『VEGA FORM』
「最初に言っておく! 改めて侑斗をよろしく!」
『だからもういいんだよ!』
一体化したゼロノスは、大剣とキャノン砲を駆使してモールイマジンたちを次々と相手にしていく。
グランドジオウに手も足も出ないアナザーガオウ。しかし、彼はまだ諦めていない。
「まだだぁぁぁ!」
アナザーガオウが叫ぶと、空にレールが形成され、アナザーガオウライナーが走って来た。
デンライナーとの連結はフータロスによって解除されてしまったが、アナザーガオウライナーにも十分な攻撃力がある。
アナザーガオウの意思を受け、アナザーガオウライナーは大口を開けて走行。アナザーガオウライナーの口は相手を時間ごと呑み込むという能力がある。アナザーガオウライナーに喰われてしまえば、どんなに強力な力を持とうと封じ込めることが出来る。
それを狙ってアナザーガオウライナーを走らせるが──
『ファイズ!』
迫るガオウライナーに対し、グランドジオウが召喚したものは、バイク。それをバイクと呼んでいいのか分からない程巨大で、複数のジェットノズルまで付いている。
ジェットスライガーと呼ばれるそれに搭乗したグランドジオウ。エンジンから火を噴かせると共にアナザーガオウライナーへと突撃。
アナザーガオウライナーはそれを迎え撃つべき大口を開くが、口に飛び込む直前にジェットスライガーはタイヤを水平に変形させ、真横に移動しアナザーガオウライナーの側面に回る。
『ディケイド!』
扉が開き、現れたディケイド。二脚の大型ロボに跨り、肩にはミサイルが装填された重火器を乗せている。
通常時のディケイドと異なり、その眼は悪鬼の様に鋭くなっている。その姿は全てのライダーを破壊する者──ディケイド激情態。
「いっけぇぇ!」
ジェットスライガーのカウルが左右に展開し、そこから無数のミサイル。二脚のロボ──サイドバッシャーの発射機構からも大型ミサイルが発射、それが分解され中から小型のミサイル群が飛び出し、ディケイド激情態も肩のミサイル──ギガントから全弾撃ち出す。
数えきれない程のミサイルの嵐。それを側面から受けたアナザーガオウライナーは、為す術も無く爆散する。
「ば、馬鹿な……!」
最後の切り札すらも呆気無く破壊されたアナザーガオウライナー。
『フィニッシュタァァイム! グランドジオウ!』
その音声が呆然としていたアナザーガオウライナーの意識を現実に引き戻す。
『オールトゥエンティー! タイムブレーク!』
アナザーガオウの周囲に次々と時間の扉が現れる。
最初に開かれたのは、アナザーガオウの真後ろに現れた扉。気配を感じ、慌てて振り返ったアナザーガオウの顔を鷲掴みにし、握力だけで膝を突かせる。
漆黒のボディに無機質な殺意を宿す青と赤の複眼。ビルドラビットタンクハザードフォーム。
『ガタガタゴットン! ズッタンズタン! ガタガタゴットン! ズッタンズタン!』
片手でドライバーを操作し、その技を無感情に放つ。
『ハザードフィニッシュ!』
黒い霧の様なエネルギーを纏わせた拳が、アナザーガオウの顎を突き上げ、彼を宙に浮かせる。すると、そのタイミングに合わせて扉が開き出す。
『スキャニングチャージ!』
真紅の炎と共に猛禽類の爪をアナザーガオウに突き立てるオーズタジャドルコンボ。
『Start Up』
銀色の残像が走り、アナザーガオウの周囲に五つの赤く輝く円錐が現れ、それがほぼ同時にアナザーガオウを貫く。視認出来ない速度で動くファイズアクセルフォームによるもの。
『キング! ギリギリスラッシュ!』
天に向かって昇る巨大な光刃がアナザーガオウへと振り下ろされる。グランドジオウによる止めの一撃を避ける余裕などアナザーガオウには無く、空中にて一刀両断。
「うああああああ!」
爆発し、地面へと落下。元のタクヤの姿となり、アナザーウォッチも破壊される。
『CHARGE & UP』
「行くぜ、俺たちの必殺技! クライマックスバージョン!」
『FULL CHARGE』
クライマックスフォームの七色に光る剣身がモールイマジンたちを一掃し、ゼロノスのゼロガッシャーが残ったモールイマジンたちを斬り捨てる。
三人のライダーによってアナザーライダーとイマジンは全て倒された。
「俺は……姉ちゃんを……!」
タクヤは立ち上がる。既にアナザーライダーの力は無くなっているというのに。
「──会って来なよ。お姉さんに」
「え?」
グランドジオウは変身を解き、ソウゴに戻る。
「きっと、それで色々と分かる筈だから」
ソウゴに言われるまま、タクヤはフラフラとした足取りでサユリとユキヒロが居る灯台を目指す。
「いいのかい? 行かせて?」
「うん。──これで良かった、そんな気がする」
◇
灯台。そこで寄り添い海を見つめるユキヒロとサユリが居た。
「姉ちゃん……」
現れたタクヤに二人は驚くが、すぐに穏やか表情となる。
「ユキヒロを責めないで……私がお願いしたの。どうしても、この場所に来たいって。……最期にこの風景を見たいって……」
最期、その言葉にタクヤは全てを悟ってしまった。もう、姉は助からない段階にまで来てしまったということに。最初から姉を救う術など無かったことに。そのことが悲しくて、悔しくて涙が滲んでくる。
「良かったね……姉ちゃん」
涙で震える声で最期の願いが叶えられたことを一緒に喜ぶ。
「ありがとう……ユキヒロさん」
「タクヤ君……」
そして、その願いを叶えてくれたユキヒロに感謝する。
「ねえ、タクヤ。三人で写真を撮らない?」
「え? でも……」
「撮ろう、タクヤ君。三人で……家族で撮ろう」
「──はい!」
携帯電話のカメラの中に収まるように三人で肩を寄せ合う。そして、シャッターは切られた。
画像に映し出された姉の幸せそうな笑顔を見て、タクヤは涙を流す。
「良かった……もう一度……幸せそうな、姉ちゃんを見れて……!」
タクヤはユキヒロの方を見て、頭を下げる。
「ユキヒロさん……今まで、すみませんでした……!」
ユキヒロを憎む気持ちでずっと毎日を生きてきた。だが、真実を知った彼は憎む心を捨て、これから先を生きていくことだろう。
◇
和解する様子を遠くから眺めるモモタロスたち。
「へ、いい話じゃねぇか」
「あれ? もしかして先輩、泣いてる?」
「なんや、泣いてんのか? これで拭いとき」
「モモタロスの泣き虫ー!」
「うるせぇ! 泣いてねぇよ!」
ギャアギャアと騒ぐモモタロスたち。
「常磐。お前は──」
侑斗がソウゴに話し掛けようとしたが、ソウゴの姿が無い。
「あれ? 何処行った……?」
モモタロスたちもソウゴが消えたことに気付く。
「何処に──」
その時、侑斗の耳にある声が聞こえる。
『若き日の私は、私が呼び寄せた』
それはオーマジオウの声。侑斗以外には聞こえていない様子。
「──どうするつもりだ?」
『若き日の私は全てのライダーの力を手に入れたと驕っている。その勘違い、私が正さなければならない!』
「戦うつもりか?」
『若き日の私は、全てのライダーの力を継承するということの意味とその重みをまだ分かっていないからな』
自分に対し厳しいとも過保護とも取れるオーマジオウ。
「──そうか。ついでだから言っておく」
『ん?』
「俺は常磐ソウゴを信じることにした。──だから、お前も信じる。お前が最高最善の魔王であろうとすることを」
『──感謝する』
侑斗はオーマジオウとの繋がりが消えたのを感じる。
「行くぞ、デネブ」
「え、でも……」
デネブは居なくなったソウゴをこのままにしておくことは出来ない様子。
「大丈夫だ。あいつ
「あいつ
「それにだ」
こちらへ向かって来る順一郎を背負ったフータロスの姿が見える。
「あいつの叔父さんを元の時間に戻す責任が俺たちにはある」
侑斗はここではない別の時間で衝突し合うだろう二人の魔王の姿を幻視しながら、それが最高最善に至る道だと信じ、今やるべきことする為、フータロスたちの方へ歩いて行く。
本編に入る前に、アナザージオウⅡ編の前日譚的なものを入れる予定です。
アナザーガオウ
身長:198.0cm
体重:102.0kg
特色/能力:数秒間、時間を飛ばせる/アナザーガオウライナーを操る
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ