目が覚めたソウゴは、自分が見知らぬ場所に居ることを理解する。石畳の道に洋風の建物。どれも見覚えが無い。
そこから少し歩いた後、信じられない物を目にした。
円形に並ぶアナザーライダーと思わしき像。その中心に立つのはかつての敵、加古川飛流。
『加古川飛流変身の像』とプレートに刻まれた像に、ソウゴは既視感を覚えた。
2068年に見た『常盤ソウゴ変身の像』、それに良く似ていたのだ。
訳も分からないままソウゴはその場を後にする。
街に出たソウゴは、瓦礫の山が積み重なり、銃声が鳴り響き、人々の叫びがこだまする様子に啞然とする。まるで戦場の様な有様であった。
調べてみるとこの時代は間違いなく2019年。だが、ソウゴの知る2019とは大きくかけ離れている。
不安を抱えたまま自分の家であるクジゴジ堂へ向かうソウゴ。荒れ果てた道を駆け、着いた先のクジゴジ堂を見て絶句する。
馬防柵と鉄製のフェンスで周囲を囲われた物々しい見た目へと変わり果てたクジゴジ堂。店の名が描かれた看板も殆ど見えなくなっている。
中に入ると更に酷い様子であった。
重傷を負った者たちが生気の無い顔で横たわり、それを介護する者たち。野戦病院の様な状況と化していた。
そして、現れる大叔父である常磐順一郎。彼の口から衝撃的な言葉が飛び出す。
「誰だっ!?」
何を言っているのか最初は分からなかったが、その言葉の意味を呑み込むと慌てて自分だと告げるが、順一郎は戸惑ったまま。
何がどうなっているのか尋ねると、順一郎はソウゴを不審者を見る様な目を向けながら、ここがレジスタンスの為の救護施設であることを話した。
レジスタンス。救護施設。時計屋と全く結びつかない言葉に、ソウゴは更に混乱する。
その時、置かれてある通信機からツクヨミを名乗る通信が入ってきた。内容はアナザーライダーを発見し、シェルターが襲われているので援軍が欲しいとのこと。
それを聞いた瞬間、ソウゴはこの世界についてあれこれと訊く前にツクヨミの援護に向かうことを決め、シェルターの場所を教えてもらうとすぐにクジゴジ堂を飛び出していった。
◇
負傷者やレジスタンスが匿われているシェルター内。そこではアナザーライダーによる蹂躙が行われていた。
緑色に発光するU字型の仮面に、巨大化したクレーンの様な右腕を操るアナザーライダー。胸部の中心に赤い円があり、それを囲む様に『BIRTH PROTOTYPE』と『2019』の刻印施されていた。
アナザーバースPは、右腕を振るう。コの字型フックの先端が伸び、ライフルを構えていたレジスタンスの顔面を強打。ワイヤーで繋がっているそれを振り回すと、狭いシェルター内に居るレジスタンスたちが次々にフックで薙ぎ倒されていく。
そこへ駆け付けて来たのはツクヨミと、既に仮面ライダーに変身していたゲイツ。
ツクヨミに皆の避難を指示すると、ゲイツはアナザーバースPに飛び掛かる。
「貴様の相手はこっちだ!」
無抵抗な者たちですら葬ろうとするアナザーバースPに怒りを燃やして拳を放つ。
フックを振り回していたせいで防御が間に合わないアナザーバースPは、その一撃を顔面に受け、よろめく。
その間にゲイツの左右のフックが決まり、腹部に膝が入る。このまま押し切ろうとするゲイツ。
「うっ!」
背中に衝撃が走る。衝撃の正体は、アナザーバースPが巻き戻したフック。フックをゲイツの肩に引っ掛け、引き寄せた後前蹴りでゲイツの胸部を蹴り付けた。
「ぐっ!」
蹴り飛ばされるゲイツ。ゲイツとの距離が空くやいなやアナザーバースPはフックを地面に突き立てると胸の赤い円が突き出し始め、明らかに体の中に収まり切らない長い砲身が形成された。
砲の奥に赤い光が灯り出す。この狭い空間で砲撃を行うつもりである。ゲイツ一人ならどうにか出来るが、周囲には逃げ遅れている多数の負傷者が居る。彼らが犠牲になってしまう。
砲から光がせり出し始め、輝きを強め、今にも発射されそうになった瞬間──その動きが停止した。
「ゲイツ!」
レジスタンスたちを救助していたツクヨミが間一髪で現れ、アナザーバースPの時間を停止させたのだ。
「ツクヨミ! 助かった! さあ、今の内に早く逃げろ!」
アナザーバースPやゲイツの周囲にいたレジスタンスたちは、互いに支え合いながら可能な限り急いでこの場から離れていく。
手を翳しているツクヨミは歯を食い縛りながらアナザーバースPを一秒でも長く止め様とする。
数十秒後、ゲイツとアナザーバースPの周囲から人が居なくなる。
「今よ!」
「ああ!」
ゲイツは弓モードのジカンザックスにライドウォッチを填め、構える。
『フィニッシュタァァイム! ゲイツ!』
『ギワギワシュート!』
ジカンザックスから射られた赤い光矢は、アナザーバースPの砲口の中へ入っていき、同時に時間停止が解除。
砲身の中のエネルギーが、ゲイツの放った光矢と接触することで暴走し、結果砲身が内側から膨れ上がり暴発を引き起こす。
「がっ! かっ!?」
突然花の様に開いた砲身。体の一部が破壊された痛みで混乱してしまうアナザーバースP。混乱するアナザーバースPの喉元に近付いていたゲイツの上段蹴りが刺さり、そのまま壁に押し付ける。
『フィニッシュタァァイム!』
壁に押し付けた状態でジクウドライバーを回転。右足を通じてアナザーバースPに破壊の為のエネルギーが流し込まれる。
『タイムバースト!』
アナザーバースPは爆発して消え失せる。
「ふぅ……」
アナザーライダーを倒し、何とかシェルターの被害を最小限に抑えられたことで一息を吐くゲイツ。
直後、天井を突き破り、新たな敵がシェルター内に突入してくる。
「何っ!?」
油断していたゲイツは、奇襲に反応が遅れて吹き飛ばされた。
「またアナザーライダー!」
ゲイツを吹き飛ばし、ツクヨミの前に降り立ったのはアナザーバースPよりも大きな体躯の蝙蝠に似たアナザーライダー。
オオコウモリに似た顔の中心には縦に並んだ三つ宝玉。翼手が腕ではなく頭から生えており、腹部にはステンドグラスの様な配色の蝙蝠の形をしたベルトを巻いている。
広げた翼に刻まれた刻印は、『DARK KIVA』、『2019』。怪人というよりも怪獣と言った方が適したアナザーライダー───アナザーダークキバはその身に相応しい大きな咆哮を上げる。
アナザーダークキバは大きく口を開き、倒れているゲイツにその牙を突き立てようとする。だが、顔面に当たった数発の光弾がそれを阻む。
その光弾は、ツクヨミのファイズフォンXから撃たれたものであった。
アナザーダークキバがツクヨミを睨み付けるが、ツクヨミは怯むことなく銃撃する。
顔や胴体に命中し、苛立った鳴き声を上げるアナザーダークキバ。標的を完全にツクヨミへ定めていた。
アナザーダークキバは羽ばたき、飛んでツクヨミを強襲。ツクヨミはファイズフォンXで迎撃しようと試みるが、相手の突進を止められない。
「ツクヨミ!」
不意に後ろから誰かに押されて倒れ込む。その頭上をアナザーダークキバが通り過ぎていく。
「大丈夫!?」
ツクヨミを押し倒して助けたのはソウゴであった。
「私を知っているの? ……誰?」
「誰って……俺だよ? 俺」
順一郎と同じく初対面の様な反応に、ソウゴは念を押して聞いてみるが反応は変わらなかった。
「何をしている! 早く逃げろ!」
立ち上がったゲイツが、ジカンザックスでアナザーダークキバを射ちながらソウゴに逃げることを促す。
「逃げろって……」
「死にたいのか!?」
ゲイツは、ソウゴがアナザーライダーと戦う力を持っているのを知らないかの様な口振り。ソウゴはますます訳が分からなくなる。訳が分からないが、やることは分かっている。
ジクウドライバーを取り出し装着。そして、ジオウライドウォッチⅡを起動させる。グランドジオウライドウォッチを使わないのは、グランドジオウの能力を使うにはシェルター内は狭すぎた。
「変身!」
『ライダーターイム!』
二重の音声。二つ現れるエネルギーで構築された時計盤。時計盤が重なり、一つとなることでソウゴを仮面ライダージオウⅡへ変身させる。
『仮面ライダー! ライダー! ジオウ! ジオウ! ジオウⅡ!』
ツクヨミとゲイツは二重に驚いた。ソウゴが変身したこと、そして、彼があのジオウであること。
アナザーダークキバに、サイキョーギレードとジカンギレードの二刀流で斬り掛かるジオウⅡ。
アナザーダークキバは新たなライダーの登場に驚くことなく、威嚇の叫びを上げ、ジオウⅡに飛び掛かろうとする。
「はあっ!」
だが、先に飛び込んだジオウⅡが二刀流でアナザーダークキバの胸部を✕の字に斬り付けた。
「ギャアアアア!」
アナザーダークキバは苦悶の声を出すが、両足でジオウⅡの両腕を掴み、羽を動かす。
「ちょっ!?」
ジオウⅡを掴んだまま飛び立ち、壁面を突き破りシェルター奥へ飛んでいく。
突き破った先は何処かの工場地下であり、シェルターよりも開けた場所であった。そこに出るとアナザーダークキバはジオウⅡを放り投げる。
「うわっ!」
投げられた勢いのまま地面を転がっていくジオウⅡ。アナザーダークキバは大きく旋回した後、ジオウⅡの上空へ移動。
地面を転がりながらもジオウⅡはサイキョーギレードとジカンギレードを組み合わせており、サイキョージカンギレードを完成させると共に立ち上がる。
そして、アナザーダークキバに剣先を向けてそこで止まった。
「うっ……」
ジオウⅡの足元に描かれる蝙蝠の紋章。アナザーダークキバによって作り出されたそれがジオウⅡの動きを止める。
ジオウⅡはもう移動することも跳び上がることも出来ない。そして、上空にいるアナザーダークキバは、紋章を通じてジオウⅡの命を吸い取ることが出来る。
完全なる勝利──とアナザーダークキバは思っていた。
「──これは既に俺が視た未来だ」
『キング! ギリギリスラッシュ!』
構えていたサイキョージカンギレードから『ジオウサイキョウ』と描かれ光刃が伸び、アナザーダークキバを貫く。
ジオウⅡは、こうなることを自身の能力で予測していたのだ。
光の刃で胴体を貫かれたアナザーダークキバは、空中で爆散。ジオウⅡを拘束していた紋章も消えた。
「……あれ?」
ジオウⅡはキョロキョロと周囲を見る。アナザーライダーを倒したのに変身者もアナザーウォッチも見当たらない。
「どういうこと……?」
倒したのに倒した気になれず、ジオウⅡは首を傾げる。
『ゲイツリバイブ! 剛烈!』
「へっ?」
音声の方に目を向けるジオウⅡ。走りながらゲイツがゲイツリバイブ剛烈へ変身している途中であった。
『リ・バ・イ・ブ! 剛烈!』
ジオウⅡの顔をゲイツリバイブの拳が打ち抜く。
『剛烈!』
「うっ!」
いきなり殴られたジオウⅡは、仮面の下で目を丸くしていた。
「どうして……!」
「やっと姿を現したな! ジオウ! 大魔王である貴様を倒してこの世界を救う!」
追撃の拳がジオウⅡの胸を強打した。
「ぐうっ!」
殴られたことよりも敵として攻撃されたことの方が、ジオウⅡにとって大きなショックであった。
「大魔王とか、意味が分かんないよ、ゲイツ! ちゃんと説明してよ!」
「黙れ!」
ジカンジャックローを出したゲイツリバイブは、それを下から突き上げてジオウⅡの装甲を抉り取っていく。
まるで最初に会った時の様な問答無用な一方的な攻撃。痛みとは違う苦しさを覚える。
ゲイツリバイブは、倒れたジオウⅡにジカンジャックローを振り下ろそうとして、背後から聞こえた足音で動きを止める。
ツクヨミがゲイツリバイブがジオウⅡに止めを刺そうとする様子を無表情で眺めていた。
「──ツクヨミか」
一瞥し、足音の主がツクヨミであると分かると再びジカンジャックローを構え──
「ゲイツ!」
名を呼ぶ声に、ゲイツリバイブの手がまた止まる。
「一体──」
背後を見て気付く。現れたツクヨミの後ろにもう一人ツクヨミが居た。後から現れたツクヨミが叫ぶ。
「そいつは私じゃない!」
「なっ!?」
次の瞬間、先に現れたツクヨミの腕が変形しロケットの様な形になると、ノズル部分から火を噴かせ、無防備なゲイツリバイブの後頭部にロケットの先端を叩き込んだ。
「ぐあっ!」
いくら防御と力に特化した形態とはいえ、不意打ちで後頭部を全力で殴られれば意識が朦朧とする。
「ゲイツ!」
ツクヨミはファイズフォンXで偽者のツクヨミを光弾で撃つ。着弾すると偽者のツクヨミの全身が変わり出した。
水銀を思わせる不安定に波打つ銀色の全身。青い両目。耳の様に突き出た頭頂部。女性らしいフォルムをしており、胸の辺りが出て、腰は縊れていた。
体の中を泳ぐ様に『NADESHIKO』『2019』の文字が全身を移動している。
アナザーなでしこは、全身の関節など無い様な不自然で軟体な動きをしながら撃って来るツクヨミの方へ向かおうとするが──
「させるかぁ!」
ジオウⅡが背後からアナザーなでしこを羽交い締めにする。
「ツクヨミ! 今の内にゲイツを!」
「えっ!? ジ、ジオウの貴方が何で私たちを──」
「いいから! 早く!」
すると、アナザーなでしこは両腕をロケットに変形させ、炎を噴射。
「えっ!?」
ジオウⅡに羽交い締めにされたまま空目掛けで自らを打ち上げる。
「おおおおおおおお!?」
天井を突き破り、ジオウⅡとアナザーなでしこは外へと飛び出してしまった。
その様子を唖然とした様子で見上げていたツクヨミ。ゲイツリバイブが呻く声を聞き、意識を引き戻すと彼の介抱をする。
「あのジオウ……一体何者なの……? 大魔王ジオウとは違うの?」
疑問だけがツクヨミの中に残った。
◇
薄暗い地下から青い晴天まで打ち上げられたジオウⅡとアナザーなでしこ。
すると、アナザーなでしこの体が波打ち始め、後頭部から青い目が現れる。
「うえっ!」
何と体を変形させて体の前後を入れ替えたのだ。密着した状態で、アナザーなでしこは両腕のロケットをジオウⅡの背中に叩き付ける。
変形の驚きとロケットの殴打によってジオウⅡの拘束が緩まり、アナザーなでしこはその間にジオウⅡの腕から脱出。
アナザーなでしこが離れることは、飛ぶ手段を持たないジオウⅡが空中で落下することを意味する。
「うわあああああああ!」
高い高度から落ちていくジオウⅡ。アナザーなでしこはそれを見下ろしていたが、ロケットを噴射させ、ジオウⅡを追従する。
ジオウⅡが落下する前に万が一のことを考え、空中で始末するつもりらしい。
自由に身動きが取れないジオウⅡに、アナザーなでしこは空中で体勢を変え、ドリルの様に螺旋状に捻じれた右足で貫こうとするが──
『ライダーフィニッシュタァァイム!』
ジオウⅡが先にジクウドライバーを回転させ、金とマゼンタ色の『キック』の文字をアナザーなでしこの周囲に発生させる。
現れた文字はアナザーなでしこに接触し、体勢を崩すと共にアナザーなでしこの背後に回って一つとなり、アナザーなでしこの背中に張り付く。
突き出されたジオウⅡの右足裏に『キック』の文字が引き寄せられ、必然的にそれが張り付いているアナザーなでしこも引き寄せられる。
『トゥワイスタイムブレーク!』
ジオウⅡの右足がアナザーなでしこ胴体を貫き、『キック』の文字が足裏へ収まるとアナザーなでしこは空中で爆発する。
アナザーダークキバの時と同じくアナザーなでしこを倒しても変身者とアナザーウォッチが現れなかった。
その手応えの無さに、ジオウⅡはこのアナザーライダーたちの正体について薄々勘付き始めていたが、思考が纏まる前に地面へ叩き付けられる。
幸い落ちた先が川であり、地面に着地するよりもダメージは抑えられた。
「はぁ……はぁ……」
水面に出たジオウⅡ。何処かは分からないが、近くに公園があるのが見える。遊んでいる子供は一人も居ないが。
川から出ると変身を解き、そのまましゃがみ込んだ。戦いの疲労ではなく、誰も彼もが自分のことを忘れているショックによる心労である。
「大分疲れている様子だね」
知った声。立ち上がるとウォズがソウゴの方へ歩いて来る。
「ウォズ! 無事だったの!」
「──ああ」
「良かった……」
ようやく自分のことを知っている人物に会えたソウゴは、これまで在ったことをウォズに話す。
ゲイツたちがソウゴについて忘れていること。何故か未来で見た自分の像に似た加古川飛流の像が立っていること。
ウォズはそれに驚くことはせず、静かに最後まで聞いていた。
「早く原因を探さないと!」
「いや、その必要は無い」
「はあ?」
ウォズの返答に困惑するソウゴ。
「連れて来てあげたわよ」
ウォズの隣にいつの間にかタイムジャッカーのオーラが立っている。
「タイムジャッカー!」
突然の出現に思わず身構えてしまうソウゴ。
「君に紹介しなければならない人物が居る」
ウォズが視線を動かす。ソウゴもその視線を追い、見た先にあるものに絶句した。
「新たな我が魔王だ!」
天にも届く様な声で高らかに叫ぶウォズ。
金糸の装飾が入った黒いローブを纏い、金銀の飾りを首から掛け、額に勾玉に似た珠が連なった飾りを付けた人物。
「久しぶりだな。常磐ソウゴ」
「加古川……飛流! ウォズ! これってどういうこと!?」
「私は、新たな魔王に仕えることにした」
そう言ってウォズは飛流の隣に並ぶ。
「どういうこと!?」
ウォズは『逢魔降臨暦』を掲げる。
「君がオーマジオウとなる未来は、この本から消えてしまったということだ」
裏切り或いは見限り。忘れられる以上の衝撃にソウゴは言葉を失う。
「いい顔だなぁ。お前のそんな顔を見たかったんだよ」
飛流は立ち尽くすソウゴを見て嘲笑を浮かべた。
「飛流……この世界は君が……? どうして!」
ソウゴの尤もな疑問を飛流は鼻で笑う。
「どうして? お前に味わわされた屈辱を返す為に決まっているだろう!」
ソウゴは飛流から返された答えに何度目か分からない絶句をする。
そこから重ねられていく飛流の恨みつらみの言葉。飛流にとってソウゴの言葉全てが選ばれた者の上から目線の言葉にしか聞こえていなかったのだ。
あの事故で二人とも両親を失い、大きく人生が変わった。一方は王の素質があると言い渡され、もう一方は何も与えられないまま。
とは言え、王の素質が在ったとしてソウゴの人生が幸福だった訳では無い。順一郎の存在は大きいが、彼がソウゴに優しくしてくれたのは彼の性格によるもの。寧ろ、ソウゴの人生は困難の多い人生であった。
王を目指す故に過去からも未来からも刺客が来る人生。それに傷付きながらもソウゴは、自分の定めた目標を目指している。
「だから試してやるんだ。お前から全部を奪って、あの時と同じ言葉が言えるかどうかをな!」
その為に世界を滅茶苦茶にする飛流。彼は気付かない。嘗て自分が味わった悲劇を、たった一人を苦しめる為に数え切れない程起こしていることに。
だが、復讐と恨みしかない加古川飛流にそんな視点は無く、そんな考えは無く、そんな器は無い。
有るのは、王に匹敵する力のみ。
『ゲイツリバイブ』
アナザーウォッチを起動させ腹部に当てると、ソウゴがかつて戦ったアナザーゲイツリバイブに変身する飛流。
「どうした? かかって来い!」
挑発してくるアナザーゲイツリバイブ。怒ってもいいはずのソウゴであったが、戦う気力が湧いて来ない。
それは、ソウゴが飛流に対し憐みに近い感情を覚えてしまったからであろう。誰でも通じ合うことが出来ると信じているソウゴにとって、ここまで話の通じない飛流という存在は初めてのものであった。
だが、それでも狂わされた時間を正す為に戦わなければならない。
『グランドジオウ!』
ソウゴはジオウライドウォッチとグランドジオウライドウォッチを起動させる。
「変身!」
『グランドターイム!』
平成ライダーたちの像が並び、レリーフと化してジオウへ装着されていく。
『祝え! 仮面ライダー! グ・ラ・ン・ド! ジオーウ!』
グランドジオウへ変身したソウゴは拳を突き出す。アナザーゲイツリバイブもまた拳を繰り出し、二つの拳が衝突。発せられた衝撃波は水面を揺らし、突風の様に駆け抜けていった。
◇
グランドジオウとアナザーゲイツリバイブの肉弾戦。アナザーゲイツリバイブはその防御力と攻撃力を生かして戦うが、基本的な性能はグランドジオウが上回っていた。
骨の様なアナザーゲイツリバイブの外装にグランドジオウの拳が命中すると大きく後退させられる。
「──ふん」
だが、ダメージは少ない模様。
「こいつらで遊んでやる」
右手を振るう。
『ギルス』
『ネガ電王』
『龍玄』
何も無い空間から現る三体のアナザーライダー。薄々分かっていたが、アナザーウォッチのエネルギーだけを実体化させ、アナザーライダーを生み出している様子。だからこそ、変身者もアナザーウォッチを見当たらなかったのだ。
アナザーネガ電王は、腰に付けていた短剣と短斧を取り、グランドジオウへ投げつけ、アナザー龍玄は、葡萄を束ねた様な銃から赤黒い液体を射出する。
グランドジオウは両腕で投げられた短剣と短斧を弾き、横に転がって液体がかかるのを避ける。外れた液体が地面にかかるとその部分が溶けだした。
横転したグランドジオウに飛び掛かるのはアナザーギルス。
「グワォォォォ!」
獣そのものの咆哮を上げ、グランドジオウに咬み付こうしてくるが、グランドジオウは両手でアナザーギルスの顔を掴み、咬み付きを防ぐとそのまま投げ飛ばす。
三対一でもグランドジオウは負けていない。
「お前に面白いものを見せてやる」
アナザーゲイツリバイブはそう言って別のアナザーウォッチを出した。
『ウォォズ』
「えっ!」
起動させたアナザーウォッチを体に埋め込むアナザーゲイツリバイブ。その姿が別のアナザーライダーへ変わる。
銀色の体を赤紫色に染まった装甲が覆う。目の部分がゴーグル状、その中で目の代わりに白い光の点が動いている。首にはボロボロで擦り切れた黒のマフラーを巻いている。手に持つ武器は片方は鎌槍、反対側に鉤爪がついた長柄。
右肩、左肩に付けられた正方形の装甲に『WOZ』と『XXXX』の刻印が施されていた。
「嘘……ウォズの力まで……」
呆然とするグランドジオウ。アナザーウォズが長柄を振るうと、アナザーギルスたちが黒い帯状のエネルギーに包まれて姿を消す。
「えっ!?」
次の瞬間、グランドジオウは背に衝撃を受けた。
「ぐっ!」
消えたアナザーギルスが、腕から生えた爪でグランドジオウを斬り付けたのだ。
反撃しようと振り返るが、その時にはアナザーギルスは消えていた。すると、またも背後にアナザーネガ電王が現れ、短銃で銃撃する。
「うっ」
怯むグランドジオウに出現したアナザー龍玄が酸を浴びせ様とするが、間一髪逃れる。
今の攻撃でアナザーウォズの能力が分かる。相手は、ウォズの様に人を瞬間移動させることが出来るのだ。
「くらえ」
逃れた先に瞬間移動したアナザーウォズの鎌槍がグランドジオウを突く。当然ながら他人だけでなく自分自身にも出来る。
突かれて地面を転がっていくグランドジオウ。急いで立ち上がったが、アナザーギルスたちの姿は無い。また瞬間移動をしている様子
気付けば雨が降り始めている。分厚い装甲越しなのにその雨がやけに冷たく感じた。
「だったら!」
グランドジオウは素早く電王と鎧武のレリーフに触れる。
三方向にアナザーギルスたちが現れ、同時にグランドジオウを攻撃するが──
『電王!』
『鎧武!』
扉から出現した電王と鎧武がアナザーネガ電王とアナザー龍玄の攻撃を止め、アナザーギルスはグランドジオウ自身が止める。
「ほう」
グランドジオウの能力を初めて見て、アナザーウォズは小さく声を洩らす。
グランドジオウはアギトのレリーフを二度叩き、そこから炎の剣──フレイムセイバーと風の薙刀──ストームハルバードを召喚し、その二つを装備してアナザーギルスを貫く。
同時に電王も飛ばした剣先でアナザーネガ電王を斬り裂き、鎧武はオレンジ型のエネルギーを通り抜け、アナザー龍玄にキックを打ち込んでいた。
三体のアナザーライダーが撃破される。
「ふん」
しかし、それを見てもアナザーウォズは余裕に満ちていた。
「無駄だ」
アナザーウォズがウォッチを取り出す。
「何を──」
グランドジオウの視界の端を何かが通り抜けていく。
「え?」
一つ二つでは無い。無数のものが下から上に向かって昇っていく。
「雨が……」
降り注ぐ筈の雨が、空へと戻っていくという怪奇現象。それを行っているのは間違いなくアナザーウォズ。
「ははははは! 俺の前では時間すら思うがままだ!」
『ジオウⅡ』
またも別のアナザーウォッチ。しかもよりにもよって発動したのはジオウの力。
アナザーウォッチを埋め込むと、全身が灰色となり、装甲の一部が金とマゼンタの色に塗られている。
顔面は肉を剥いだ様な剥き出しの皮下組織が剥き出しになった様な顔付きであり、瞼の無い白眼、唇の無い口は、周りを銀のマスクで覆っているが、前歯部分は剥き出しとなっており生理的嫌悪を覚える。剥いだ皮の代わりに透明な仮面を顔に付け、額にはジオウⅡに似た長針と短針を組み合わせヘッドパーツが左右対称にあり、計四本の針が飾られていた。
透明な仮面に白い文字で『ZI-O』と『2019』。間違いなくこの姿はアナザーライダーと化したジオウⅡのもの。
「そんな……ジオウⅡまで……」
「驚くのはまだ早い」
アナザージオウⅡの額の針が逆向きに回ると、爆散したアナザーギルスたちが無傷の状態でアナザージオウⅡの前に並び立つ。
「何で……」
「俺が歴史を変えたのさ。これが俺の力だぁぁぁ!」
アナザージオウⅡは時計の長針、短針に似た剣を振るい、そこから放たれたマゼンタ色の斬撃によって電王と鎧武を斬り裂き、二体のライダーを消し去る。
数は四対一、グランドジオウは圧倒的不利に追い込まれる。しかし、それでもグランドジオウは諦めず、サイキョーギレードとジカンギレードを構えてみせた。
「どうやらまだ絶望が足りないみたいだな、常磐ソウゴ」
アナザージオウⅡは手に持っていた剣を放り捨てる。
「お前に見せてやる。真の絶望を! 俺が手にした最強の力を!」
アナザージオウⅡの手に握られるのは二つのアナザーウォッチ。
『ゲイツリバイブ』
『ウォォズ』
禍々しい力を発揮させたアナザーウォッチを体内へ押し込む。
「まさか……!」
グランドジオウが見ている前でアナザージオウⅡの体から声が発せられる。
『ジオウ……ゲイツ……ウォォズ』
三つの力が加古川飛流の中で一つとなり、生み出される新たな力の名は──
『トリニティィ』
アナザーバース・プロトタイプ
身長:199.0cm
体重:92.0kg
特色/能力:クレーンと砲撃による攻撃
アナザーダークキバ
体高:180.0cm
翼長:380.0cm
体重:100.0kg
特色/能力:紋章による拘束と生命力吸収
アナザーなでしこ
身長:180.0cm
体重:66.5kg
特色/能力:擬態
アナザーギルス
身長:200.0cm
体重:100.0kg
特色/能力:爪と牙による攻撃
アナザーネガ電王
身長:190.0cm
体重:87.0kg
特色/能力:四つの武器による攻撃
アナザー龍玄
身長:206.0cm
体重:105.0kg
特色/能力:酸性液体による攻撃
先にどちらが見たいですか?
-
IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
-
IFゲイツ、マジェスティ