仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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読み上げ機能に気付いて試しに自分が書いた文章を聴いてみました。
気恥ずかしさで最後まで聴けませんね。


アナザー2019 その3

『トリニティィ』

 

 腹部に装着されているジクウドライバーに似た真っ黒のドライバー。中央には『2019』の文字が映し出されている。既にドライバー右側のスロットにアナザージオウⅡのアナザーウォッチが填め込まれていたが、そこにアナザーゲイツリバイブ、アナザーウォズの二つのアナザーウォッチが出現し、アナザージオウⅡウォッチに触れる。すると、三つのウォッチは熱によって溶かされた様に癒着し一纏めとなる。

 一纏めになったアナザーウォッチが現れると、アナザージオウⅡの側にアナザーゲイツリバイブとアナザーウォズの首が召喚される。空中を漂う二つの生首は、大きく口を開き、そこから頭蓋骨を吐き出す。

 吐き出された二つの頭蓋骨は、右肩、左肩に追加装甲の様に装備されると、大きく口が開かれ、そこから腕が生える。右に二本、左も二本。そして元からあるアナザージオウⅡの腕を合わせ合計六本の腕。各腕がそれぞれ武器を握り締め、装備する武器は、アナザージオウⅡの長剣と短剣。アナザーゲイツの斧とボウガン。アナザーウォズの名柄を二つに分割させた鎌槍と鉤爪。

 アナザージオウⅡの顔がずれ落ちる。顔、首を伝い、胸へと移動していく。定まった位置に着くと、アナザージオウⅡの口が弛緩し、顎が限界まで開かれ、異様に長い舌が現れた。白眼とその舌のせいで首吊りを彷彿とさせる。

 

「うえぇぇ……」

 

 そのグロテスクな様に、グランドジオウは呻いてしまう。

 元から皮膚を剥いだ様な赤黒いアナザージオウⅡの顔。それが剥がれ落ちた後に残されたのは骨を思わせる顔とそこに埋め込まれてある眼球、顔と一体化し歯根まで露出した歯だけ。それを保護する様に透明の仮面が膜の様に張られる。

 新たな仮面を得ると、頭蓋骨を吐き出して厚みを失ったアナザーゲイツリバイブとアナザーウォズの生首が、仮面の側面に張り付き融合する。融合完了と共に中央が縦に裂けたことで現れる第三の目。

 アナザージオウⅡの顔から垂らされた長い舌に浮かぶ『TRINITY』。三つの眼球には中央に『ZI-O』、右眼に『GEIZ』、左眼に『WOZ』の刻印が刻まれていたが、眼球が裏返って白眼になったことで見えなくなる。

 三つのアナザーライダーの力が合わることで生み出された、一体の異形。

 ジオウトリニティと同じ力とは思えない程かけ離れた生々しさと醜悪さを兼ね合わせたアナザーライダー。六本の腕、三つの顔が阿修羅を連想させる。

 アナザージオウトリニティ。アナザーライダーの力を三つ、それも同時に使用するという規格外のアナザーライダー。

 

「見ろ、常磐ソウゴ。お前が三人掛かりでやっと変身出来る力を、俺はたった一人で使うことが出来る。笑えるな。お前も、そして他二人も」

「その力は一人で成っても意味が無い。それと、俺の仲間を馬鹿にするな!」

「仲間か。はっ! 一人はお前を本気で倒そうとし、もう一人は俺に鞍替えする様な奴を仲間って言うのか? 滑稽だな! ──なら、ウォズ!」

「何か御用で?」

 

 アナザージオウトリニティの側に膝を突いたウォズが出現する。

 

「アレをやれ」

「──では、僭越ながら」

 

 ウォズは立ち上がり、総ての者たちに届く様な声量をその細身から出す。

 

「祝え! あらゆる時を支配し、統べる時の大魔王! その名もアナザージオウトリニティ! 定められた歴史を漂白し、新たな歴史が描かれた瞬間である!」

 

 アナザージオウトリニティの生誕を祝福する言葉がウォズの口から出される。普段は殆ど聞き流しているウォズの祝福の儀式。それが他者に向けられることが異様に寂しく感じる。

 

「中々悪くない。褒めてやろう」

「有り難きお言葉」

 

 ウォズは恭しく頭を下げた。

 

「さあ、常磐ソウゴ。ここからは俺が遊んでやる」

 

 六つの武器の先端がグランドジオウへ向けられる。グランドジオウは、フレイムセイバーとストームハルバードを構える──と同時にアナザージオウトリニティがすぐ目の前に立っていた。

 

「速っ!?」

 

 この速度、紛れも無くゲイツリバイブ疾風のもの。すんなりと間合い入ったアナザージオウトリニティは、二本の剣を振り下ろす。

 

「はあっ!」

 

 上段から振り下ろされるそれよりも先にグランドジオウのフレイムセイバーが突きを繰り出し、アナザージオウトリニティの胴体を貫く。

 

「何かしたか?」

「なっ!?」

 

 耳元で聞こえるアナザージオウトリニティの嘲り。貫いた筈のアナザージオウトリニティの姿が無い。グランドジオウが攻撃したと思ったのは、アナザージオウトリニティの残像であり、既に背後に回られていた。

 無防備なグランドジオウの背中にアナザージオウトリニティは剣の刃を押し当て、一気に引く。

 

「ぐうっ!」

 

 交差する斬撃。最高の防御力を誇るグランドジオウの装甲越しに伝わって来る衝撃を伴った痛み。

 攻撃の重さはゲイツリバイブ剛烈を連想させる。否、もしかしたら力も速度も他のアナザーライダーの力が加わってそれ以上かもしれない。

 背中に受けた攻撃で前のめりになりながらも踏み止まり、後ろを振り返りながらフレイムセイバーとストームハルバードを平行にして振り抜く。

 

「無駄だ」

 

 アナザージオウトリニティの体が黒い帯の様なもので巻かれて消えた。炎の剣と風の薙刀が何も無い空間を空しく通過していく。

 

「があっ!」

 

 真横から衝撃が来た。車に追突でもされた様にグランドジオウの体がくの形に折れる。グランドジオウの横には鉤爪と鎌槍を突き出しているアナザージオウトリニティ。

 高速移動に加え、アナザーウォズの瞬間移動。それにより意図も容易く死角に回り込む。

 横滑りしていくグランドジオウだが、両足裏で急ブレーキを掛けて無理矢理止まる。

 

「くっ……ぐっ!」

 

 急停止で突かれた脇腹に鋭い痛みが走るが耐える。それに悶える余裕などアナザージオウトリニティが与えてくれない。

 アナザージオウトリニティは、グランドジオウのやせ我慢を見抜き、耐える姿を一笑すると、今度は真正面から突っ込んでいく。

 接近と共に掲げられる斧。移動も攻撃も追い付かない速度でこなすアナザージオウトリニティに、グランドジオウは必死に追い付こうとし、両手に持つ武器を交差させ、次に来るであろう斧による攻撃へ備える。

 思い描いた通りに振るわれる斧。振り下ろした後に風切り音が聞こえてくる。

 フレイムセイバーとストームハルバードの交差させた箇所に斧が叩き付けられると、その威力にグランドジオウの膝が折れる。

 

「ぐぅぅぅ!」

 

 軌跡は想像通りであったが、一撃の重さは想像を遥かに上回る。斧の斬撃を受け止めたフレイムセイバーとストームハルバードに亀裂が入ってしまう。

 

「ふっ」

 

 グランドジオウの抵抗を嘲笑すると、ボウガンの先端部分を交差させている部分に押し当て、引き金を引く。

 ボウガンから放たれた光の矢が、脆くなった二つの武器を砕き、グランドジオウへ着弾。光の矢は爆発を起こす。

 

「うああああ!」

 

 爆発の衝撃で吹き飛ぶグランドジオウ。背中で地面を削りながら後方へ滑っていく。

 

「こんなものか。──行け」

 

 アナザージオウトリニティとグランドジオウの性能比べに満足すると、後ろに待機させていたアナザーギルスたちに指示を出す。

 それに従い、アナザーギルスたちはグランドジオウを三方向から取り囲む。

 

 立ち上がったグランドジオウは、正面左右に立つアナザーギルスたちを確認。

 アナザーギルスたちはダメージが残るグランドジオウに襲い掛かった。

 

『ジカンギレード!』

『サイキョーギレード!』

 

 グランドジオウの体から召喚された二振りの剣がグランドジオウの周囲を旋回し、飛び掛かってきたアナザーギルスたちを斬り裂き、迎撃する。

 思わぬ反撃を受けたアナザーギルスたちは仰向けに倒れる。

 旋回するジカンギレードとサイキョーギレードは空中で一つに合わさり、サイキョージカンギレードとなってグランドジオウの両手に収まる。

 

『サイキョー! フィニッシュタァァイム!』

 

 サイキョージカンギレードの剣身から光の刃が伸びる。

 

『キング! ギリギリスラッシュ!』

 

 振るわれた長大な刃が、アナザーギルスたちへ振るわれ、彼らを一振りにて爆散させる。

 アナザーライダーたちを一蹴したグランドジオウ。だが、アナザージオウトリニティはその光景を鼻で笑う。

 

「予測通りだな」

 

 アナザージオウトリニティにはこの光景を数秒前に視ていた。彼の持つアナザージオウの力は、ジオウⅡと同様に未来を予測する。

 

「全てが無駄だと思い知れ」

 

 胸のアナザージオウⅡの額にある針が逆回転し出す。すると、爆散したことで生まれた炎が急速に鎮火し、炎の中に塵とあったものが集まり始め、それが倒した筈のアナザーギルスたちへ戻った。

 

「そんな!?」

「歴史は書き換えられた。お前に倒されなかったという歴史にな!」

 

 あっさりとアナザーライダーたちが復活したことに、グランドジオウは動揺。その隙に、アナザーギルスは背中部分から赤い触手を伸ばしてグランドジオウの右腕に巻き付け、アナザーネガ電王は、腰に付けている短杖の先から光の糸を放ち、左腕を拘束。アナザー龍玄は正面からグランドジオウにしがみつくことで、体からぶら下げていた葡萄房を潰し、中から強酸性の液体を溢れさせ、自分諸共酸で焼く。

 三人掛かりでグランドジオウの動きを止めると、アナザージオウトリニティは二本の剣の柄頭を合わせて両剣にすると、ドライバーをなぞる。ドライバーから生まれるマゼンタと黒を合わせた光が、体を通じて両剣へと流れ込んだ。

 

「まさかっ!」

 

 アナザージオウトリニティが何をしようとしているのか察し、アナザーギルスたちの拘束を解こうとするが、既に遅かった。

 

「はあっ!」

 

 アナザージオウトリニティが両剣を振るう。マゼンタと黒が混じり合った時計盤を模した光輪が広がり、グランドジオウもアナザーギルスたちも纏めて範囲内にいる者全てをその光で斬り裂く。

 

「うあああ!」

 

 アナザーギルスたちはアナザージオウトリニティの斬撃により爆発。グランドジオウも同じ攻撃で全身から火花を散らす。それを離れていた場所で眺めていたウォズは、眉間に皺を寄せ、明らかに不快感を示す表情をしていた。

 

「う、うう……」

 

 両手、両膝を突き、今にも倒れ伏しそうな体を支えるグランドジオウ。肉体のダメージは勿論だが、自分の仲間諸共攻撃してくることに少なからず精神的ショックを受ける

 

「お前を倒すのに相応しい一撃を与えてやる」

 

 当の本人は自分の蛮行に対し、何の疑問も罪悪感も持たず、ただグランドジオウを如何に苦しめるかを考えている。

 アナザージオウトリニティは額の目を閉じる。すると、アナザージオウトリニティの左右にマゼンタ色の光が現れ、それが人型となる。

 片方はアナザージオウⅡ。もう片方もまたアナザージオウⅡであるが、何箇所か装甲やパーツを外した軽装となっており、容姿から察するにこの姿がアナザージオウ。

 ジオウの名を冠する三体のアナザーライダーがグランドジオウの前に並び立つ。

 

「喰らえ」

 

 アナザージオウトリニティがドライバーをなぞる。他のアナザージオウたちも同じ動作をする。

 三人のアナザーライダーがその場で跳躍すると、グランドジオウの周囲にマゼンタカラーと黒を合わせた炎の様なエネルギーが発生。

 

「うっ!?」

 

 上中下に発生した三十六の二色の炎によって逃げ場を封じられるグランドジオウ。

 それがグランドジオウを嬲る様に四方八方から接触した後、跳び上がったアナザージオウトリニティたちの方へ飛んでいく。

 グランドジオウはそれに耐えながらも迎え撃つ為にサイキョージカンギレードを握り締めた。

 

『キング! ギリギリスラッシュ!』

 

 発動する必殺の斬撃。跳び上がったアナザージオウトリニティたちに向けて巨大な光刃が振るわれる。

 迫る光刃に向けて繰り出されるのは、右足にマゼンタと黒の業火を宿すアナザージオウトリニティたちの蹴り。

 

「はあああああ!」

「たあああああ!」

 

 一振りの斬撃と三連の蹴撃。互いの意志を込めた技が衝突。黄金の光が飛び散り、マゼンタと黒の光が天に昇っていく。

 打ち付け合う力と力。勝ったのは──

 

「おおおおおおお!」

 

 黄金の光をマゼンタと黒の炎が砕き、呑み尽くしていく。アナザージオウトリニティの執念、怨念がグランドジオウの力を貪っていく。

 

「そんな!?」

 

 最強の一撃が目の前で打ち砕かれていく光景は、悪夢とした言い様が無い。

 光の刃を突き抜け、三つの蹴りがグランドジオウを打ち抜いた。

 

「がっ!?」

 

 最硬の装甲でもその衝撃を殺し切ることは出来なかった。重く、冷たいものがグランドジオウを貫く。

 復讐と恨みの念が込められた一撃によってグランドジオウは蹴り飛ばされ、地面を何度も跳ねながら転がっていく。

 降り立ったアナザージオウトリニティたち。二人のアナザージオウは消え、アナザージオウトリニティを閉じていた瞳を開く。

 

「──驚いたな。まだ動けるか」

 

 グランドジオウはアナザージオウトリニティの攻撃に驚愕したが、アナザージオウトリニティはグランドジオウの防御力に驚く。止めのつもりで放った一撃だったが、グランドジオウはまだ変身解除しておらず、動けている。

 

「……そうだ。ウォズ!」

「何か御用で?」

 

 後方で待機していたウォズがアナザージオウトリニティに応じる。

 

「止めはお前が刺せ」

「──私が?」

 

 アナザージオウトリニティは背を向けたままで気付かなかったが、そう言われた瞬間、ウォズの体は一瞬だが硬直する。

 

「前の主に引導を渡す機会を与えてやる。──出来るよな? 俺に仕えると言ったんだから?」

 

 試す様な物言い。ウォズは少し黙った後、ビヨンドライバーとウォズミライドウォッチを出す。

 

「それが御望みならば」

『ウォズ!』

 

 ウォズは歩きながらドライバーとウォッチをセット。

 

『アクション!』

「変身」

『投影! フューチャータイム』

 

 背部に出現するスマートウォッチ型のエネルギー体がスーツと装甲をウォズへと投影し、仮面ライダーへ変身させる。

 

『スゴイ! ジダイ! ミライ! 仮面ライダーウォズ! ウォズ!』

 

 仮面ライダーウォズは静かにグランドジオウへ近付いていく。

 

「ウォズ……!」

「悪く思わないでくれ」

 

 力無く立ち上がったグランドジオウをウォズが殴りつける。呻くグランドジオウ、ウォズは手を緩めることなく二撃目、三撃目を与える。

 

「ははははは! 言い眺めだな! 常磐ソウゴ! お前を倒した後は明光院ゲイツだ!」

「な、何でゲイツまで……!?」

 

 首元を掴まれながら、ゲイツまで標的とされたことにグランドジオウは驚く。

 

「決まっている! 前に俺の邪魔をしたからな! お前を倒す邪魔を! 明光院の後は──」

 

 そこでアナザージオウトリニティは言葉を区切る。

 

「まあ、これから倒されるお前には関係の無い話だがな」

「飛流! 狙うなら、俺を! うっ!」

 

 ウォズの拳がグランドジオウの顔を殴り、それ以上言葉を続けられなくする。

 

「止めてよ……! ウォズ!」

「……」

 

 ウォズは無言のままグランドジオウを攻撃し続ける。そして、ウォズがグランドジオウを蹴り付け、二人の間に距離が出来た。

 

「さあ、これで終わりだ」

 

 ジカンデスピアを出し、装置部分を指でスクラッチする。

 

『フィニッシュタイム!』

 

 わざわざ見せつける様に勿体ぶった動作をするウォズ。それは、グランドジオウに反撃の機会を与えるものであった。

 サイキョージカンギレードを分解し、サイキョーギレードへ戻す。

 

『爆裂DEランス!』

『ライダー斬り!』

 

 放たれる光の穂先とサイキョーギレードから繰り出されるマゼンタの光刃が打ち合い、結果大きな爆発と爆風を引き起こす。

 それに煽られるウォズとアナザージオウトリニティ。それらが収まるとグランドジオウの姿が消えていた。

 ウォズは変身を解除し、アナザージオウトリニティの前で跪く。

 

「申し訳ございません。取り逃がしてしまいました」

 

 下げた頭を探る様な眼差しで見下ろすアナザージオウトリニティ。押し潰されそうな圧がウォズに掛かる。しかし、アナザージオウトリニティはすぐにその圧を消し去った。

 

「まあいい。簡単に倒したら面白くない。それにそう遠くへは行っていない筈だ」

『サイガァ』

『レーザァァ』

『アビスゥ』

 

 アナザージオウトリニティの周囲に召喚される新たなアナザーライダーたち。

 背部から炎を噴出させ滞空するアナザーサイガ。バイク共に召喚され、それに跨ったアナザーレーザー。全身を鮫のパーツによって構成されているアナザーアビス。

 

「奴を追え」

 

 アナザーサイガは上空へ飛び立ち、アナザーレーザーはエンジンを唸らせながらバイクを走らせ、アナザーアビスは反射物の前に立つと水の中に入る様に飛び込む。

 アナザーライダーたちの追跡を見送った後、アナザージオウトリニティは変身を解き、この場を後にする。

 彼が居なくなるまで跪いていたウォズは、小声でボソリと呟く。

 

「やれやれ……この魔王は陰湿で困る」

 

 

 ◇

 

 

 飛流が予想していた通り、ソウゴは然程遠くへ行っていなかった。彼の耳にはアナザーサイガの噴射音やアナザーレーザーのエンジン音が届いている。

 このまま何処かへ逃げるべきだが、体力の限界を迎えようとしていたソウゴにはその余裕が無い。

 少しでも動こうとした時、横から伸びた手がソウゴの腕を掴む。

 

「来い、魔王」

「門矢士!?」

 

 レジスタンスの格好をした門矢士が現れ、ソウゴは驚くがそれを無視して士は彼を引っ張っていく。

 暫くした後、士によってソウゴは地下駐車場内へ逃げ延びていた。

 一先ず安全な場所に辿り着くとソウゴは体力と精神の限界を迎え、仰向けに倒れ込む。

 

「王様に成りたいと言っていた時の威勢はどうした? こんな所でへこたれるなんて甘いな」

 

 挑発する様な厳しい言葉を士から浴びせられるソウゴ。すぐには反論出来なかった。ゲイツとツクヨミ、順一郎まで自分を忘れてしまったこと。ウォズが自分を見限り飛流の下に付いたこと。その飛流に自分の気持ちが何一つ伝わらず、逆に恨みを増していたこと。

 色々なことが一度に起こり過ぎて肉体よりも精神の方が限界近くまで来ていた。

 

「あんたに何が分かる……」

 

 やっと出て来た言葉は、弱々しく、反論になってすらいない。

 

「お前のことなら大体分かっているつもりだが?」

 

 士の見透かした様な言い方に、ソウゴは苛立つものを感じるが同時にソウゴもまた士という人間を大凡把握し始めていた。

 悪ぶっているが、こちらを奮起させようと敢えてキツイ言い方をしているらしい。その思惑通りに半ば八つ当たりに近い怒りが湧いてくる。

 

「俺は……オーマジオウに負けた!」

「そうか」

「きっとウォズはそのせいで俺に王に成る資格が無いって、そう思ったから……!」

「かもな」

「飛流の方が王様に相応しいと思って……!」

「知るか、そんなこと」

 

 ソウゴの激情を、士は軽く流していく。

 

「どちらにせよ、世界の崩壊はもう始まったということだ。加古川飛流によってな」

 

 士の言う通り、世界は急速に破壊されている。このまま進んだ先にあるのは確実な滅びのみ。

 

「魔王としてこのまま放っておくか? ああ、今は元魔王だったな」

 

 士が皮肉る様な言い方に、ソウゴは疲労を押し殺して立ち上がると、士を真っ向から睨みつける。

「崩壊を止めるには加古川飛流を倒すしかない。お前の手でな」

「分かってる、そんなこと……! でも……」

「何だ? 仲間が居なくて心細いのか?」

 

 ソウゴは言葉を詰まらせる。図星であった。

 

「だったら尚更王様であること、いや、魔王に成ろうとすることを貫き通せ」

「えっ?」

「魔王に成ろうとするお前だからこそ、他の奴らは付いて来たんじゃないのか?」

「それは……」

「──っと、無駄話はここまでだ。来るぞ」

 

 士が気付くと同時にソウゴもまた気付く。誰かの視線がこちらに向けられていることを。

 すると、置かれていた車のサイドミラーからアナザーアビスが現れた。

 アナザーアビスはソウゴたちの姿を認識すると吼える。それを合図にして地下駐車場内に向かって来る二つの轟音。

 飛行してきたアナザーサイガとバイクで疾走するアナザーレーザーもこの場所にやって来る。

 

「まずこいつらを倒せ。話はそれからだ」

 

 士は手出ししないという意思を見せる為、敵が居るにもかかわらず腕を組んで壁に寄りかかる。完全に傍観の体勢であった。

 ソウゴは無言のままジクウドライバーにジオウライドウォッチとグランドジオウライドウォッチを装填する。

 士に言った通り、このまま終わってしまえば何もかもが終わる。ゲイツたちともう一度会い、話すまでは負けることなど出来ない。

 

『グランドターイム!』

 

 変身の言葉すら発せずに、ソウゴはグランドジオウへと変身。

 

『祝え! 仮面ライダー! グ・ラ・ン・ド! ジオーウ!』

 

 一分一秒でも時間が惜しい。積み重なってきた精神への負担であまり余裕の無いグランドジオウ。

 故に一切手加減無し。

 手鎌を振り翳し、バイクで突撃してきたアナザーレーザー。手鎌が振るわれる前にバイクのフロント部分にある骸骨に拳を打ち込む。

 一撃でバイクは粉砕され、乗っていたアナザーレーザーは前へ吹っ飛んでいく。

 続いて空中を飛ぶアナザーサイガが操縦桿と一体化した砲口から青い光弾をばら撒いてくる。守ることもせず、それを浴びながらグランドジオウはレリーフに触れる。

 

『ファイズ!』

 

 扉から出現するのは銀の装甲。赤い両眼。剥き出しになる胸部の機構。仮面ライダーファイズアクセルフォーム。

 召喚と同時に姿が消えると、高速移動を以ってアナザーサイガの背部へと回り込み、その背中にパンチングユニットであるファイズショットを打ち込み、上空から引き摺り下ろす。

 アナザーアビスは鮫の頭部の形をした両手から水流を吐き出し、グランドジオウに当てる。人間を圧殺出来るそれもグランドジオウからすれば玩具の水鉄砲程度にしか感じない。だが、アナザーアビスには別の狙いがあった。

 グランドジオウの周囲が水浸しとなると、アナザーアビスはその中に飛び込む。反射物を出入口にすることが出来るアナザーアビスは、水によって自由にそれを生み出すことが出来る。

 反射物の向こう側の世界ならばグランドジオウは届かない──グランドジオウは。

 

『龍騎!』

 

 龍騎のレリーフを叩くグランドジオウ。だが、『2002』と描かれた扉は出現しない。すると、水溜りの中からアナザーアビスが飛び出してくる。その胴体を赤い龍──ドラグレッダーに咬み付かれた状態で。

 ドラグレッダーが吐き出した炎と共にアナザーアビスが地面に叩き付けられた。

 

『エグゼイド!』

 

 エグゼイドのレリーフを押し、召喚したのは黄色のアーマーに同じく黄色く染め上げたヘッドパーツ、両腕にバイクのタイヤを装備した仮面ライダーエグゼイドバイクアクションゲーマーレベル0。

 エグゼイドは立ち上がろうとしているアナザーレーザーに手に持っているバイクのタイヤを投げつける。

 エネルギーを纏いながら高速回転するそれがアナザーレーザーに直撃。軌道を変えて何度も衝突する。

 召喚したファイズアクセルフォームがグランドジオウと一体化する。そこから先の動きは目まぐるしいものであった。

 立ち上がろうとするアナザーサイガを取り囲む五本の円錐。それがほぼ同時にアナザーサイガを貫く。

 それと同時にエグゼイドが跳躍し、右足から極彩色の光を放ちながらアナザーレーザーに蹴り掛かる。

 左右から飛んできたタイヤに挟まれ身動きがとれないアナザーレーザー。飛び込むエグゼイドにいつの間にかいたグランドジオウの姿が重なり合い、アナザーレーザーを打ち抜く。

 黒焦げになったアナザーアビスの耳に届くドラグレッダーの咆哮。

 見上げた先にあったのは、ドラグレッダーを伴いながら跳躍するグランドジオウ。

 空中で体を捻りながら体勢を変え、右足を突き出した蹴りの構えとなるとその背にドラグレッダーの炎を受け、灼熱と共に降下。

 炎を纏った一撃でアナザーアビスの体を突き破った。

 三体のアナザーライダーがほぼ同時に爆散する。全力のグランドジオウには為す術も無く瞬殺されてしまった。

 

「やるじゃないか。魔王の面目躍如、と言ったところか」

 

 その圧倒振りに士も皮肉を言わず、素直に賞賛する。

 だが、そこでグランドジオウもとうとう限界に達したのか、崩れ落ちてしまい、荒く呼吸をする。オーマジオウとの戦闘の後に立て続けアナザージオウトリニティと戦闘を行っているので無理も無かった。

 

「ジオウ」

 

 そこに最悪のタイミングでゲイツが現れる。タイムジャッカーのウールによってこの場所を教えられていた。

 

「お前を倒して、俺がこの世界を救う」

 

 その手にはゲイツライドウォッチとゲイツリバイブライドウォッチが握られている。

 迫ってくるゲイツの前に、士が立ち塞がる。

 

「悪いが選手交代だ。俺が代わりに相手をしてやる」

「ジオウの手下か?」

「生憎、誰かの下につく様な性分じゃない。強いて言うならこいつの先輩みたいなもんだ。魔王も破壊者も似た様なものだしな」

「邪魔をするなら貴様も倒す!」

「やってみろ」

 

 士はマゼンタに染め上げられたドライバー──ネオディケイドライバーを出し、装着するとゲイツに見せつける様にカードを取り出す。

 ネオディケイドライバーに一瞬驚くゲイツであったが、即座に倒すべき敵と認識し、二つのライドウォッチをドライバーに装填。

 

『変身!』

 

 目の前の相手に向けて放たれた声が重なり合う。

 

 




テレビの話を大体二、三話に区切って書くつもりです。

アナザーサイガ
身長:193.0cm
体重:135.0kg
特色/能力:飛行能力

アナザーレーザー
身長:202.0cm
体重:98.0kg
特色/能力:バイクを操る

アナザーアビス
身長:187.0cm
体重:92.0kg
特色/能力:鏡面世界を移動出来る

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ

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