仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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主人公が強ければどんどん窮地に追いやっても良い、と考えて書いてます。
大丈夫、大丈夫。常磐ソウゴは強い子だから。


アナザー2019 その4

『リ・バ・イ・ブ! 剛烈! 剛烈!』

『カメンライド・ディケイド』

 

 背面に展開されたエネルギー体によって生成された装甲を装着し、ゲイツはゲイツリバイブに。虚像が重なることで一つの実体となり、顔に複数のプレートが収まることで灰色の身体にマゼンタの色が宿り、士をディケイドへ変身させた。

 

「随分と頑丈そうな見た目になったな」

「実際に試してみたらどうだ?」

 

 ディケイドはドライバー横に装着していたカードホルダー──ライドブッカーを変形させ、柄と剣を展開させるとその剣身を拭う様に指を走らせる。

 

「ゲイツを……」

 

 消耗し切っているグランドジオウはディケイドに何かを訴え掛ける。ディケイドは、そんなグランドジオウを一瞥し──

 

「手加減出来る様な相手じゃない」

 

 ──抑えた声でそう言って、ディケイドはネオディケイドライバーを引き、中央部分の向きを九十度変えるといつの間にか持っていたカードを投げ入れ、ドライバーを元に戻す。

 

『アタックライド・スラッシュ』

 

 ドライバーから音声が発せられる前にディケイドは駆け出していた。刃が届く間合いへと入ると、ライドブッカーを振るう。

 カードの効果によって斬撃は強化され、剣に幾つもの残像が現れていた。

 

「はあ!」

 

 ディケイドが一振りすると、五回の斬撃がゲイツリバイブに起こる。振り下ろしたライドブッカーを斬り上げ、更に五度の斬撃。しかし、ゲイツリバイブはその場から一歩も動かない。

 斬り上げた後にもう一度剣を振り下ろす。ゲイツリバイブはそれを肩で受け止め、刃を手で押さえ込んだ。

 

「効かん!」

 

 カウンターでのこモードのジカンジャックローがディケイドの胸部に打ち込まれる。

 

「くっ!」

 

 高速回転する丸鋸がディケイドの装甲を削り取りながら殴り抜け、ディケイドはその一撃で飛ばされる。

 数メートル程空中を飛び、足から着地するが勢いが止められず三、四歩程度後ろに下がる。

 

「──前に比べて随分と力を付けたな」

 

 ゲイツリバイブから攻撃を受けてもディケイドに焦りは無い。ゲイツリバイブとの短い攻防で以前よりも遥かに強くなっていることを冷静に分析していた。

 

「前? 何を言っている。お前とは初対面だ」

「そう言えばそういうことになっていたな。──ややこしい」

 

 ディケイドと戦った歴史も書き換えられている為、ゲイツリバイブからすればディケイドが突然変なことを言い出したことになってしまう。その記憶の嚙み合わなさに、ディケイドは面倒くさそうな溜息を吐きながら、カードを一枚出す。

 

「こいつで行くか。これを見せるのは、初めてだったな」

 

 そう前置きしてカードをネオディケイドライバーに装填。

 

『カメンライド・オーズ』

『タ・ト・バ! タトバ! タ・ト・バ!』

 

 軽快な音声と共にディケイドの縦、横に数枚のメダル型のエネルギーが浮かび上がり、胸部前で一つとなってディケイドの姿を変える。

 タカ、トラ、バッタの赤黄緑が一つの円に収まった胸部。その配色通り、猛禽の翼を思わせる赤い仮面、両腕に爪を仕込んだ黄色の胴体、緑のラインが入った下半身──仮面ライダーオーズタトバコンボの姿へ変わる。

 

「姿が変わった!?」

 

 ドライバー以外全く共通点の無いディケイドの再変身にゲイツリバイブは驚きを隠せない。

「よっ」

 

 脚部の線に沿って緑の光が流れていく。軽く踏み込むとディケイドオーズは高く、そして速く跳躍し、ゲイツリバイブの頭上を跳び越えて背後に移動すると、その背中に折り畳んでいたトラの爪で引っ掻く。

 火花が散るゲイツリバイブの背中。だが、ゲイツリバイブの装甲に裂傷は無かった。火花を立てていたのはディケイドオーズの爪であり、先端が微かに丸みを帯びていた。

 

「無駄だ!」

 

 ゲイツリバイブは振り向き様にジカンジャックローを振るうが、ディケイドオーズは後方に跳んでそれを避ける。

 

「堅いな。なら、こいつのパワーならどうだ?」

 

 ネオディケイドライバーの向きを変え、別のカードを挿入する。

 

『フォームライド・オーズサゴーゾ』

『サゴーゾ! サ・ゴーゾッ!』

 

 胸部の円がサイ、ゴリラ、ゾウの紋章へと変わり、三色に分かれていた体色が銀に近い灰色となる。脚部は膝まで装甲が覆い、腕部には重厚なガントレットを装備。頭部にはサイの角を思わせる鋭利な突起あった。

 これが仮面ライダーオーズサゴーゾコンボの姿である。

 

「また姿を……」

 

 底が見えないディケイドの能力に、ゲイツリバイブは警戒を強める。

 

「ふん!」

 

 ディケイドオーズは拳を突き出し、ゲイツリバイブに打ち込む。見た目通りの重い一撃だが耐えられない威力では無い。

 右拳を引かずに左拳もゲイツリバイブを突く。両拳を胸で受けるゲイツリバイブ。やはり、ゲイツリバイブは不動のままであった。

 

「姿を変えてもこの程度では俺を倒せない!」

「そうだな」

 

 あっさりと認めたかと思えば、次の瞬間、ディケイドオーズが装着していたガントレットが発射され、地に根でも張っているかの様に微動だにしなかったゲイツリバイブの足が離れて浮き上がり、ガントレットに押されて宙を飛んでいく。

 

「何っ!?」

「じゃあな」

 

 ディケイドオーズの狙いがこの時理解する。最初から倒すつもりはなく、ここから離れさせ、その間にグランドジオウを救出するのが目的だったのだ。

 

「させるかっ!」

 

 意図に気付いたゲイツリバイブは、ガントレットに飛ばされながらもゲイツリバイブライドウォッチを回転させる。

 

『スピードターイム!』

 

 剛烈からのモードチェンジにより胸部の装甲が左右に開く。それによって打ち込まれていたガントレットが左右に弾かれた。

 

『リバイ・リバイ・リバイ! リバイ・リバイ・リバイ! リバ・イ・ブ! 疾風! 疾風!』

 

 剛烈から疾風へ変わったゲイツリバイブ。ジカンジャックローを持ち替え、のこモードからつめモードに変える。

 

『スピードクロー!』

 

 直後にゲイツリバイブの姿が消えたかと思えば、ディケイドオーズの背後に立っている。そして、ディケイドオーズの身体から生じる火花。すれ違い様に最初の意趣返しを込めて五回斬り付けていた。

 

「くっ……!」

 

 幸い装甲の厚いサゴーゾの姿だったので損傷を抑えることが出来たが、完全に反応しきれなかった。

 

「──大した速さだな」

「俺の目的は大魔王ジオウだけだ。それ以上怪我をしたくなければ去れ」

「はっ。動きが速くなると気まで早くなるのか?」

 

 退く様に情けを掛けてくるゲイツリバイブにディケイドオーズは皮肉を返すと、カードを取り出し、ドライバーへ挿す。

 

『カメンライド・カブト』

『CHANGE BEETLE』

 

 サゴーゾの姿とは対照的に軽装と呼べる赤い装甲と黒いボディスーツ。青い複眼の中心へ上がっていく赤い角。それが定位置に収まると単眼であった青い複眼が区切られ双眼と化す。

 仮面ライダーカブトと呼ばれるその姿を見てゲイツリバイブは少し呆れた様に言う。

 

「さっきから何度も姿を変えてばっかだな。落ち着きの無い奴め」

 

 臨機応変に姿を変えるディケイドカブトへの皮肉。ディケイドカブトは、その言葉に鼻を鳴らすだけであった。

 ゲイツリバイブは構える。今までのことから考えるに、ディケイドカブトがゲイツリバイブ疾風の戦い方に合わせたものだと予想出来た。

 

「速さ比べといくか?」

 

 ディケイドカブトが指に挟んだカードをゲイツリバイブに見せ、挑発する。

 

「──面白い。ついて来れるか?」

 

 ゲイツリバイブはその挑発に敢えて乗り、高速の世界へと入る。と同時にディケイドカブトはカードをドライバーへ挿しこむ。

 

『アタックライド・クロックアップ』

 

 ディケイドカブトもまた高速の世界へ突入。二人の姿が消え、音と火花だけ至る箇所で発生する。

 グランドジオウにはその光景を見ることが出来なかったが、高速世界の中の二人は文字通り火花を散らしていた。

 ディケイドカブトは移動しながらライドブッカーで袈裟切りを繰り出す。ゲイツリバイブはジカンジャックローの爪でそれを弾き自分の間合いに入れようと踏み込むが、ディケイドカブトは後ろに下がりながら弾かれたライドブッカーの軌道を変えて振り下ろす。

 上から来る攻撃の気配を察し、ゲイツリバイブが踏み止まると眼前をライドブッカーの刃が通過していった。

 互いに相手の動きに対し瞬時に対応する。

 埒が明かなくなると悟ったディケイドカブトは、新たなカードをドライバーに追加した。

 

『アタックライド・イリュージョン』

 

 ディケイドカブトの姿がブレたかと思えば、実体を持った分身が発生。計六人のディケイドカブトがゲイツリバイブの目の前に現れる。

 数で圧倒的に上回るディケイドカブト。通常ならば動揺が生まれる光景であったが、レジスタンスとして常に最悪の場面を目撃してきたゲイツリバイブにとってその程度のことで動揺する様な軟な精神を持っていない。

 バラバラに動くディケイドカブトを冷静に対処する。

 ジカンジャックローに備わっているボタンを素早く連打。力を充填させるとトリガーを引き、それを一気に解放する。

 

『つめ連斬!』

 

 振り抜かれたジカンジャックローからばら撒かれる爪型の光弾。視界を埋め尽くす程のそれに貫かれ、分身が次々と破壊されていく。

 しかし──

 

「何?」

 

 ──前方に居たディケイドカブトたちは全て倒したが、全員が分身であった。肝心の本体が居ない。

 

『ファイナルアタックライド・カ、カ、カ、カブト!』

 

 その声が聞こえたのは背後。急いで振り返るゲイツリバイブが見たものは、赤い角から電流の様な光で輝かせ、それを右足に伝えているディケイドカブト。

 分身を目晦ましにしてゲイツリバイブの後ろに回り込んでいたのだ。

 

「はあっ!」

 

 気迫が籠った声と共に放たれる右上段回し蹴り。後ろを取られたゲイツリバイブに避ける猶予は無く。ディケイドカブトの回し蹴りが炸裂した──が。

 

「──俺のことをせわしない奴と言っていたが」

 

 ディケイドカブトは右足を上げたまま言葉を零す。ディケイドカブトの右足は、ゲイツリバイブ剛烈の絶対的と言える装甲によって受け止められていた。

 

「お前も開いたり閉じたりせわしない奴だな」

 

 避けられないのなら受け止めればいい。ディケイドカブトの蹴りが当たる直前にゲイツリバイブは疾風から剛烈へ形態を変えていた。

 ゲイツリバイブがジカンジャックローの丸鋸を突き出してくるが、ディケイドカブトは左足でゲイツリバイブを蹴り付け、その反動で後方に宙返りをして距離をとる。

 ゲイツリバイブはゲイツリバイブライドウォッチをジカンジャックローに填める。

 

『ジカンジャック!』

 

 丸鋸が激しく回転し出し、生み出される力が橙色の光輪を作り出す。

 ディケイドカブトはドライバーからカードを出し、元のディケイドの姿へ戻ると自身の紋章が描かれたカードを出す。

 生半可な一撃ではこれからゲイツリバイブが放つ攻撃を防げないと判断したからである。

 ゲイツリバイブの指がトリガーへ掛かり、ディケイドはカードをドライバーに装填しようとして──

 

「待って!」

 

 必死な声と共に二人の動きが硬直する。

 

「ツクヨミ……」

 

 二人を止めたのは、ツクヨミの時間停止であった。

 ツクヨミはグランドジオウの側まで移動すると時間停止を解除する。

 

「ツクヨミ! 何のつもりだ!」

「──私はこの子の話が聞きたいの」

 

 ツクヨミは自分たちを守ってくれたソウゴに対し、大魔王ジオウとは異なる印象を受けていた。ソウゴが本当に大魔王と呼ぶべき存在でこの世界を滅茶苦茶にした存在かどうかを確かめたかったのだ。

 

「そいつを倒せば世界が救われるんだぞ!」

「そうかもしれないけど……そうじゃないかもしれない」

 

 断言は出来なかったが、このまま倒すのは違う様に思えた。

 

「だが──」

 

 それでも食い下がろうとするゲイツリバイブ。すると、グランドジオウは変身を解き、ゲイツリバイブの前へと歩きだしていく。ツクヨミが止めようとするが、ソウゴの目を見て何故か止めようと伸ばした手を引っ込めてしまう。

 

「……俺はもうゲイツと戦うつもりはない」

 

 ジクウドライバーもライドウォッチも地面に置き、自ら戦う手段を捨てる。

 

「俺とゲイツが戦うとしたら、俺が最低最悪の魔王に成ったときだけだ……俺はまだ最低最悪の魔王になったつもりは無い。でも……」

 

 ソウゴはゲイツリバイブの目の前に立つ。

 

「ゲイツが戦いたいっていうなら、それは俺が最低最悪の魔王になったってことだから——倒せばいい」

「何を……言っている……」

 

 ゲイツリバイブからすれば意味不明の言動であった。だというのに、ゲイツリバイブは不自然な程に自分が動揺していることを自覚する。

 

「魔王がこうなんだ。倒そうと思えば何時でも倒せる」

 

 ディケイドはドライバーを外し、士へと戻った。

 

「話を聞いてからでも遅くないだろう?」

「ゲイツ……」

 

 ソウゴの姿、士とツクヨミの言葉を受け、ゲイツリバイブは立ち尽くしていたが、暫くして変身解除し、不機嫌そうな顔を露わにする。

 

「それでいい」

 

 何とか収まった場を見て、士は小さく笑った。

 

 

 ◇

 

 

 特に行く当ても無いのでクジゴジ堂内でソウゴはツクヨミとゲイツに加古川飛流によって歴史が書き換えられたことを告げた。

 ソウゴとツクヨミ、ゲイツ、そしてウォズを加えた四人で戦っていたことも教えたが、ウォズという名に二人は首を傾げる。この世界では出会っていない様子。

 その四人で何と戦っていたのか聞いてくるとソウゴも流石に即答出来なかった。

 

「やはり魔王か?」

「魔王な訳無いだろう。行く行くはこいつが魔王になるんだから」

「何……?」

「話がややこしくなるから余計なこと言わないでよ! あと魔王は魔王でも最高最善の魔王だから!」

 

 士の余計な付け足しにソウゴは噛み付きながらも必死になって自分とゲイツたちが味方であったことを説明しようとする。

 

「兎に角、加古川飛流を倒して歴史を元に戻さないといけないんだ?」

「何の為にだ? お前が魔王に成るためか? ──話にならんな」

 

 ゲイツは一方的に話を打ち切って席から立ち上がる。目を見て分かっていたが、ゲイツはソウゴの話を最初から信じようとする気配が無かった。ゲイツの信念が硬いことをよく知っているソウゴだが、ここではそれが思い切り裏目に出てしまう。

 

「俺からお前たちに一つ質問をしてもいいか?」

 

 士がゲイツを呼び止める。

 

「──何だ?」

「お前たちは、自分がレジスタンスに入る前に何をしていたか覚えているか?」

「何を馬鹿なことを。そんなの……」

 

 ゲイツはそこで言葉を詰まらせた。ツクヨミも同じ様に動揺している。今まで指摘されるまで不自然な程に気付かなかった。二人にはレジスタンスに入る前の記憶が全く無いのだ。

 

「どういう、ことだ……?」

「私たちは、大魔王ジオウを倒す為にレジスタンスに入って……でも、その前は……」

 

 どんなに思い出そうとも記憶が出て来ない。

 

「やはりな。いくら歴史を書き換えても限界がある。——特にこの時代の外から来た奴らは強引に辻褄を合わせをしたせいで記憶の齟齬が生まれている」

「──そうか! ゲイツもツクヨミも未来から来たからこの時代の人間じゃない! 飛流の力の影響も少ないのか!」

 

 そのことが飛流が歴史を書き換えた裏付けとなるが、ゲイツたちは別の言葉に引っ掛かる。

 

「未来だと……?」

「どういうこと? 説明して」

「ゲイツとツクヨミは2068年の未来から来たんだ」

 

 ソウゴから教えられた新たな情報に、流石にゲイツたちも絶句してしまう。

 

「──ここに居ると頭がおかしくなる」

 

 ゲイツはツクヨミを連れてこの場から去ろうとするが、ツクヨミはそれを拒否する様に動こうとしない。

 

「──私は信じてもいい」

「何っ!?」

 

 ツクヨミはどちらにせよ加古川飛流を倒さなければ未来は無いと言い、ソウゴと協力することを促すが、ゲイツはそれに納得し切れず、この場で戦うことも無かったが協力する気も無くクジゴジ堂から出てってしまった。

 

「頑固な奴だな」

 

 頑なに態度を変えないゲイツを士は呆れた様子でそう評する。

 

「他人事みたいに……」

「実際、他人事だからな」

 

 ソウゴにとって士という男はいまいち評価に困る人物である。敵として戦ったことがあれば、自分を守る為に戦ってくれたり、さっきの様に話に要らない横槍を入れたかと思えば、急に核心を突く様な言葉も吐く。本人の態度もあって本心が全く分からない。

 

「……あんた、友達居ないでしょ?」

 

 士への率直な印象がソウゴの口から飛び出る。

 

「お前よりは居るさ」

 

 口の端を吊り上げて嫌味っぽく返す。

 

「それって海東大樹のこと?」

 

 以前戦った怪盗ライダーの名を出す。彼が士の関係者だと知っていた。

 すると、士は眉間に深く皺を寄せ、悩む様な顔付きとって返答を詰まらせ、無言となる。

 

「……」

「え? 違うの?」

 

 

 ◇

 

 

 加古川飛流の居城にて飛流はウォズから常磐ソウゴの行きつく先、オーマジオウの未来について教えられていた。

 最低最悪の魔王になる未来を見て、飛流は笑う。

 

「だったら俺がそのオーマジオウとなる未来すら奪ってやる。あいつには何一つ残さない。全て奪ってやる」

 

 その未来を想像し、愉し気に笑う飛流を見て部屋の隅にいたオーラは彼を不気味そうに見ていた。

 

「でもいいの? 貴方のアナザーライダーはやられちゃったじゃない?」

 

 既に八体のアナザーライダーが倒されている。その内の三体は飛流の手によるものだが。

 オーラの指摘を飛流は鼻で笑い、指を鳴らす。すると、周囲の空間から倒された筈のアナザーライダーたちが召喚された。

 

「あれぐらい何の問題も無い。代わりなら幾らでも呼び出せるからな」

「──凄いじゃない」

 

 言葉とは裏腹にオーラは焦燥を滲ませていた。強い王は良い。だが、こちらの制御が効かない王となると話は別である。新しい歴史を創るには王を傀儡にする必要があるが、飛流の強大な力の一端を見せつけられ、それがかなりの難度であることを理解してしまう。

 

「流石は新しき我が魔王」

 

 飛流のアナザーライダー召喚を見て、ウォズは敬服した様子で首を垂れる。

 

「ふっ」

 

 それに気を良くした様子でもう一度指を鳴らすと召喚されたアナザーライダーたちは姿を消した。

 

「もっとだ。もっと常磐ソウゴを追い詰める」

 

 手元に置いた三つのアナザーウォッチを見ながら飛流はほくそ笑む。

 不意に扉が開いた。全員の視線が扉へと向けられる。いきなり中に入り込んでくる白いジャケットを着た茶髪の青年。

 飛流の記憶には無いが、ウォズとオーラはその人物を知っていた。

 

「海東大樹!」

 

 ウォズがその名を呼ぶと、彼は笑って手に持っている銃──ネオディエンドライバーを振るい、天井にある照明を破壊。破壊によって怯んでいる隙にカードを取り出す。

 

「歴史を書き換えるなんて凄いお宝だね。欲しくなっちゃったじゃないか」

 

 ネオディエンドライバーの銃身を伸ばし、そこにカードを装填。

 

『カメンライド・ディエンド』

「変身!」

 

 銃口を頭上に向けて引き金を引くと頭上に放たれた光弾は複数のシアンカラーのプレートとなり、海東の周りに赤、緑、青の虚像が現れ、それが海東と一つに重なり、シアンと黒の体色を持つ仮面ライダーへ変えると頭部にプレートが収まる。

 仮面ライダーディエンドとなった海東は、すかさず二枚のカードをネオディエンドライバーに挿す。

 

『カメンライド・スペクター』

『カメンライド・ブレイブ』

 

 二本角の青い仮面を持つ仮面ライダースペクターと、西洋騎士に似た姿をした仮面ライダーブレイブがネオディエンドライバーから召喚。

 召喚された二体のライダーを見て飛流は置いてあるアナザージオウⅡウォッチを手にし、構えるが──

 

『アタックライド・ブラスト』

 

 ディエンドの銃口から放たれた光弾が蛇の様に軌道を変えながら正確にアナザーウォッチを撃ち、飛流の手から自分の下へ弾き飛ばす。

 

「このお宝は、僕が頂いた」

 

 貰うものだけ貰うとさっさとこの場から逃げ出すディエンド。追撃出来ない様に、スペクターはガンガンハンドで銃撃、ブレイブはガシャコンソードから炎を出す。

 あっさりと目的の物を手にしたディエンドだったが、次の瞬間視界が黒一色に染まり、それが消えた時には目の前に見たこともないアナザーライダーが立っている。

 

「何処へ行くつもりだ?」

 

 答えを聞くよりも先にアナザーライダー──アナザーウォズがディエンドを鎌槍で斬り付ける。

 逃げようとしてもアナザーウォズの空間転移能力があれば容易く相手を連れ戻すことが出来る。

 

「うあっ!」

 

 その手からアナザージオウⅡウォッチが落ち、アナザーウォズが拾い上げた。

 

「参ったね。まだこんな力を持っていたとは……」

「盗人には盗人らしい罰を与えないとな」

「残念だけど、僕は捕まえるつもりも罰も受けるつもりもないよ」

 

 素早くアナザーウォズから距離をとると、ネオディエンドライバーにカードを入れる。

 

『アタックライド・インビジブル』

 

 透明化をして逃げようとした瞬間、ディエンドの動きが停止した。

 

「何の騒ぎですかな」

 

 スウォルツが薄ら笑いを浮かべながら現れる。

 

「スウォルツか……よくやった」

「貴方の手に掛かれば、こんなコソ泥を処刑することなど簡単なこと。―—ですが、こいつにはまだ使い道があります」

「使い道か……」

「貴方は常磐ソウゴから全てを奪うつもりだ。ならば──」

「成程」

 

 飛流とスウォルツは似た様な邪悪な笑みを浮かべた。

 

 

 ◇

 

 

 ゲイツは独り思考に耽っていた。ソウゴから齎された情報はゲイツには処理しきれない内容だったからだ。

 モヤモヤした思いを抱えているとソウゴを連れたツクヨミがやって来る。

 ツクヨミは加古川飛流を倒す為にはどうしてもソウゴの力が必要であり、それにはゲイツと彼が協力する必要があると強く説く。

 しかし、それを聞いてもゲイツは難色を示したままであった。だが、時間は掛かれば通じる筈と思い、ツクヨミは粘り強く説得しようとするが、それを快く思わない人物が現れる。

 

「そうはいかない」

 

 全ての元凶である加古川飛流がソウゴたちの前に姿を現した。

 飛流は相変わらず憎悪の滾った目でソウゴを射殺す様に睨む。

 

「この世界に王は二人も要らない。俺がお前の代わりに最低最悪の魔王になってやる」

 

 ソウゴを憎み過ぎて支離滅裂なことを言い出しているが、飛流はそんなことを気になどしない。彼から奪えるのなら最早何であろうといいのである。

 

「……欲しいならあげるよ。元々俺は最低最悪の魔王になるつもりは無い」

 

 飛流はアナザーウォッチを構え、ソウゴもまたジクウドライバーとジオウライドウォッチをセットする。

 

「お前を倒し、世界を元に戻す」

 

 そして、グランドジオウライドウォッチを構えた時、青白い光弾がグランドジオウライドウォッチを撃ち、ソウゴの手から落とさせる。

 

「えっ!?」

「成程ね。確かに良いお宝じゃないか」

 

 ネオディエンドライバーを構えた海東が笑う。

 

「海東大樹!?」

 

 急いで落としたグランドジオウライドウォッチを拾おうとするが、黒いストールが先にそれを奪ってしまう。

 

「ウォズ!」

「新しい我が魔王の命令でね……君を倒せとさ」

「そんな……」

 

 哀しみに染まるソウゴの顔を見て満足気に笑う飛流。

 

「絶望するにはまだ早いぞ? 真の絶望はこれからだ!」

 

 飛流は三つのアナザーウォッチを出し、海東はネオディエンドライバーにカードを装填、ウォズはウォッチを起動させてドライバーに填め込む。

 

『ジオウ……ゲイツ……ウォォズ』

『カメンライド』

『投影! ファイナリータイム!』

 

 絶望の時を告げる声。

 

『変身!』

 

 顕現するは三つの絶望。

 

『トリニティィ』

『ディエンド』

『ギンギンギラギラギャラクシー! 宇宙の彼方のファンタジー! ウォズギンガファイナリー! ファイナリー!』

 

 圧倒的がソウゴたちを追い詰めていく。

 

先にどちらが見たいですか?

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