仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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これにてこの話は終わりとなります。


アナザー2019 その10

 ここは自分に任せろ、とディエンドに言われ、グランドジオウは少しの間沈黙していた。その沈黙も無理も無いと言える。ディエンドという仮面ライダーは敵か味方かいまいち判断がし辛い。振り返ると敵であったことの方が多く、また彼にはライドウォッチやグランドジオウライドウォッチを盗まれたこともあった。

 限りなく敵に近いポジションに居る男から、任せろと言われても普通ならば信じない。何か裏があるか、策謀を考えてしまうのが普通である。

 しかし、グランドジオウは──

 

「分かった。任せる」

 

 ──ディエンドの言葉を信じ、アナザージオウトリニティが召喚したアナザーライダーたちを任せることに決めた。

 

「言い出しておいて何だけど、君ってお人好しだね」

「でも、あんたにとっても悪い話じゃない。少なくともこのお宝を俺以外の手に渡らずに済む──あんたが盗みに来るまで」

 

 グランドジオウはグランドジオウライドウォッチを軽く叩く。紆余曲折あって戻って来たが、ディエンドにとってこれはまだ価値のあるお宝の筈。

 

「へえ、成程。そういうのは嫌いじゃない」

 

 グランドジオウの決断と挑戦的な主張に興味と好感を示すと、ディエンドは呼び出した仮面ライダーたちの方を見る。

 

「なら、ちゃんと期待に応えないとね。行くよ!」

 

 ディエンドが声を飛ばすと、各ライダーたちが一斉に駆け出す。少し遅れて巨体の仮面ライダーコアが走り出すと地響きが起こり、燃え盛る体のせいで足跡に火柱が生じる。

 

「お前たちも行け! 叩き潰して来い!」

 

 アナザージオウトリニティが怒声を上げる。自分の邪魔をすることが腹立たしい。ディエンドがグランドジオウの味方をすることも更に腹立たしい。どんどんと味方を増やしていくグランドジオウが、腸が煮えくり返る程に腹立たしい。

 その指示に従い、アナザーワイズマンはベルトに手を翳す。

 

『エクスプロージョン……』

 

 音声の後に掌を突き出す。その手から放出される爆炎が先頭を走るライダーたちを喰らおうとしていた。

 だが、アナザーワイズマンが魔法を発動させたタイミングで仮面ライダーソーサラーが自身のベルトに漆黒の宝石を五本の爪で囲った金色の指輪を翳していた。

 

『リフレクト! ナウ』

 

 ソーサラーたちの前に、魔力で作られた正方形の金色の壁が出現し、爆炎を防ぐ。

 エクスプロージョンの爆炎は、ソーサラーの魔力壁を突き破ることが出来ない。

 ソーサラーはその状態で更に魔法を発動。本来ならば別の魔法を使用する度に指輪を交換する必要があるが、ソーサラーの持つ指輪は特別性であり指輪一つで複数の魔法を発動出来る。

 

『トルネード! ナウ』

 

 展開している魔力壁を渦の中へ取り込んだ竜巻がソーサラーの魔法によって発生。アナザーワイズマンの爆炎をも取り込んでいるので竜巻は炎の竜巻となってアナザーワイズマンたちへ押し返される。

 

『エクスプロージョン……』

 

 アナザーワイズマンは咄嗟にもう一度魔法を発動。竜巻内に発生した爆発によってアナザーライダーたちの眼前で炎の竜巻が爆破され、取り込んでいた炎が周囲に飛び散る。

 その爆発に怯むアナザーライダーたち。炎が目晦ましとなって仮面ライダーたちの接近を許してしまった。

 仮面ライダーコアとアナザークウガが組み合いながら衝突。巨体同士の衝突は二人を中心にして大きな衝撃波を発生させ、地震の如く大地を揺さぶり、森の木々がざわめく様に揺らす。

 至近距離でアナザークウガが火球を吐き出す。顔面にそれを受けるコアであったが、その炎を吸い込んでしまう。火炎で出来たコアの体には、アナザークウガの火球など温さすら感じない。

 音も気配も無くアナザーチェイサーに接近するのは仮面ライダールパン。彼の手に握られる巨大なアームガードに短いノズルが付けられた武器。金と宝石に彩られたそれは、変身アイテム兼銃武器であるルパンガンナー。

 ルパンがすぐ傍まで来ていることにようやく気付いたアナザーチェイサーは、左手の指をルパンに突き付ける。指先には銃口があり、そこから薄紫色の光弾が撃ち出される。

 するとルパンの前に宝石の形をした障壁が現れる。それに光弾が当たると、多面体の角度に沿ってあちこちに弾かれる。

 ルパンはその障壁の裏で優雅にルパンガンナーのノズルを掌で押す。

 

『GUN』

 

 流暢な英語音声の後にルパンは障壁を解除。ルパンガンナーの引き金を引いてノズルから金色の光弾を撃ち、アナザーチェイサーへ反撃。

 撃ち終えたタイミングで撃ち返されたアナザーチェイサーは防御が間に合わず、的の様に光弾を浴びせられる。

 激しく鳴り響く金属音。ぶつかり合う武器と武器が火花を散らす。

 対決するのは仮面ライダーガオウとアナザーネガ電王。アナザーネガ電王は短剣と短斧の二刀流で、対するガオウは鋸状の金の刃が付けられたガオウガッシャー一本。

 ガオウがガオウガッシャーを振るう。アナザーネガ電王は短剣と短斧でそれを防ごうとするが、激しい剣戟によって持っている武器ごとアナザーネガ電王の体が横に崩れ、慌てて体勢を立て直した所に二撃目が来て、今度は逆方向に体が傾く。

 ガオウの力にアナザーネガ電王は振り回されており、何とか反撃を試みようとするが、ガオウの重い一撃に耐えるだけで精一杯。

 下からの斬り上げを受け、アナザーネガ電王は万歳をする様に両手が上がる。がら空きになった胴体にガオウの中段蹴りが入る。聞く者が総毛立つ重い打撃音が鳴り響き、くの字に体を曲げたアナザーネガ電王が地面を何度も跳ねていく。

 アナザー龍玄は正確に狙いを定め、強酸性の液体を撃ち出す。液体はピチャ、という音と共に武神鎧武へ命中した。だが、彼は無傷。アナザー龍玄の酸は当たったは当たったが、武神鎧武が眼前に翳す刀、くし切りのオレンジを模した大橙丸の腹で受け止められていた。

 武神鎧武が纏う鎧、ブラッドオレンジアームズの名に相応しい本来の橙色とは異なった血を思わせる黒を帯びた赤い大橙丸──ブラッド大橙丸が酸で汚れるが、武神鎧武がそれを振り払うと酸が飛び、溶解どころか染み一つ無い刀身が現れる。

 アナザー龍玄は酸を何発も撃ち出すが、武神鎧武は大橙丸ともう一本の片刃剣──無双セイバーの二刀流であっさりと斬り払うと、無双セイバーの鍔をアナザー龍玄へ向ける。

 無双セイバーは鍔そのものが銃身となっており、柄に備え付けられた引き金を引いて弾丸を発射。アナザー龍玄は避け切れず、胴体から着弾の火花を上げる。

 武神鎧武は銃撃を行いながらアナザー龍玄へ接近。剣の間合いに入った瞬間にブラッド大橙丸で斬り付けると、アナザー龍玄の体から弾丸の時よりも激しく火花が飛び散った。

 仮面ライダーたちとアナザーライダーたちの激戦。それよりも一際大きな戦いが、この戦場の主役であるグランドジオウとアナザージオウトリニティの間で繰り広げられていた。

 

「消してやる! お前を必ず消してやる!」

 

 怒号と共に迫り来る六本の腕と六つの武器。上下左右から来るそれに対し、グランドジオウは二本の腕とジカンギレード、サイキョーギレードで対処しなければならない。

 上から振り下ろされた二本の剣をジカンギレードで受け止め、横から来た斧の一撃をサイキョーギレードの刃で防ぐ。そこへ飛んで来る光矢をサイキョーギレードの柄を上げることで柄頭で弾くという紙一重の防御を見せる。

 下から突き上げる鎌槍の一撃を、二本の剣を払ったジカンギレードで止める。が、グランドジオウの防御はそれが限界であった。次に来た鉤爪から身を守るには手が足りず、脇腹を痛打される。

 

「ぐっ!」

 

 グランドジオウとの未来予測で先を行かれたアナザージオウトリニティは力と手数というシンプルな戦い方に切り替えてきた。だが、今の様に単純な攻め方の方がグランドジオウへ確実にダメージを与えられる。

 しかし、手数というのならグランドジオウも負けていない。

 グランドジオウは下がりながらレリーフに触れる。

 

『ファイズ!』

『Faiz Blaster Discharge』

 

 グランドジオウ、アナザージオウトリニティの右手側、少し離れた場所に扉が召喚され、中から赤色のボディスーツを纏うファイズが出てくる。

 ファイズブラスターというツールによって強化された形態──仮面ライダーファイズブラスターフォーム。

 背部のユニットが変形し、両肩に砲門として展開される。そこから圧縮されたフォトンブラッドと呼ばれるエネルギーを発射。グランドジオウに迫っていたアナザージオウトリニティに側面から赤い光弾が狙ってくる。

 だが、そんな派手に動けばアナザージオウトリニティも気付く。急停止してグランドジオウへ接近するのを止めると、アナザージオウトリニティの目の前を光弾が通過していった。

 ファイズブラスターフォームの攻撃を簡単に避けたアナザージオウトリニティは、止めていた足を前に動かす。

 その瞬間をグランドジオウは待っていた。

 

「時間よ──」

 

 グランドジオウの額に収まっているジオウのレリーフが動き出し、指先を逆時計回しに動かす。

 

「戻れ!」

「ぐあっ!」

 

 アナザージオウトリニティは、グランドジオウの言う通り巻き戻された光弾を側面から受けてしまう。

 グランドジオウの能力の応用によってアナザージオウトリニティに罠を仕掛けたのだ。

 

「小賢しい真似をっ!」

 

 大きなダメージを受けてもおかしくない攻撃だが、今のアナザージオウトリニティには怒りを注ぐ行為にしかならない。

 二本の剣を交差させて振り抜くと、三日月状のエネルギーがXの字に重なった斬撃が飛ばされる。

 

『ライダー斬り!』

 

 サイキョーギレードからマゼンタの斬撃が放たれ、アナザージオウトリニティの斬撃と衝突。爆発して衝撃波が起こる。

 爆風を浴びながらもアナザージオウトリニティから目を離さないグランドジオウ。だが、突然アナザージオウトリニティが消えた。

 そこから先の行動は、グランドジオウの直感であった。勢い良く後ろに振り返りながらジカンギレードを薙ぐ。

 それを瞬間移動した直後のアナザージオウトリニティが剣で防ぐと、グランドジオウの腹部を蹴り飛ばす。

 

「ううっ!」

 

 蹴飛ばされながらもグランドジオウはレリーフを叩く。自分が攻撃出来なくとも召喚したライダーが攻撃すれば隙は生まれない。

 

『オーズ!』

『プ・ト・ティラーノヒッサーツ!』

 

 扉から現れたオーズプトティラコンボは、バズーカ形態のメダガブリューから召喚と共に渦巻く破壊の光線を放つ。

 

「無駄だ!」

 

 アナザージオウトリニティの胸のアナザージオウの額にある針が逆巻く。時間を逆行させて召喚したオーズを消し去るつもりらしい。

 

「時間よ! 止まれ!」

 

 グランドジオウはオーズの時間を止める。オーズも発射された光線も止まり、時間停止の影響でアナザージオウトリニティの歴史改変も受け付けない。

 

『カブト!』

 

 グランドジオウは手を止めず、またライダーを召喚。現れたのは銀色の装甲に真紅の角を持つ仮面ライダーカブトハイパーフォーム。

 腰だめして構えるのは、ゼクターと呼ばれる変身ツールを三つ装着させた武器──パーフェクトゼクター。

 銃口に光が集まっていくと、カブトの各部装甲が展開。腕部と両肩が開き、胸部も左右に開き金色の装甲を露出。背部の装甲が上羽の様に広げられると、虹色に輝く光が噴き出し薄羽の様になる。

 

『MAXIMUM HYPER CYCLONE』

 

 エネルギーが最大まで集束するとカブトが引き金を引く。銃口から発射される金色の光線を中心にして赤いエネルギーが竜巻状に展開される。

 銃口が向けられた先にあるものを全て消滅させる力がアナザージオウトリニティを狙う。

 

「無駄だと言っているだろうが!」

 

 アナザージオウトリニティが歴史を書き換える。だが、グランドジオウはまたも時間停止でそれを無効化。

 グランドジオウは、そこから立て続けレリーフを押す。

 

『龍騎!』

『フォーゼ!』

『ビルド!』

『W!』

 

 四つの扉の内、二つは上空に残りは地上に現れる。上空の扉から現れるのは、機械的な見た目をした赤い東洋の龍。ミラーモンスターと呼ばれ、その名の通り鏡の中へ住み、仮面ライダー龍騎と契約したモンスター──ドラグレッダー。

 橙色と黒色の二色。翼を持ちタカとガトリングを模した複眼のビルドホークガトリングフォーム。

 地上に現れたWは黄色と青の組み合わせであり、手には青いマグナム銃が握られている。幻想と銃撃手の記憶を宿すルナトリガー。

 炎の赤を宿すフォーゼ。炎と消火剤の二つを発射出来る大型銃ヒーハックガンを構える。アストロスイッチ──ファイヤースイッチによって変身したその姿の名はファイヤーステイツ。更にその両足にはガトリングとランチャーまで装備している。

 

「お前……!?」

 

 ドラグレッダーが上空から無数の火球を吐き出す。

 

『100! フルバレット!』

 

 ホークガトリングが持つ機関銃ホークガトリンガーからタカ型の光弾が飛び立ち、降下してくる。

 

『トリガー! マキシマムドライブ!』

『トリガーフルバースト!』

 

 重なる二つの声の後、ルナトリガーが握るトリガーマグナムから黄と青の光弾が多数同時に撃ち出され、それぞれが変幻自在に軌道を変えていく。

 

『LIMIT BREAK』

「ライダー爆熱シュート! 一斉掃射!」

 

 ヒーハックガンから放出される炎。それに加えて右足のランチャーからミサイル、左足のガトリングからは弾丸が一斉発射される。

 圧倒的な火力の嵐。流石のアナザージオウトリニティもこれには戦慄し、慌てて時間を巻き戻す。それを見越してグランドジオウはライダーたちの時間を停止。上空、地上共に触れれば消え去ってしまいそうな火力で埋め尽くされる。

 周囲を攻撃で囲まれる重圧は、アナザージオウトリニティも無視することが出来ず、更にグランドジオウが何時時間停止を解除するか気が気でない。

 アナザージオウトリニティが否応無く周りを警戒する中で、グランドジオウはその重圧すら無いかの様にジカンギレードとサイキョーギレードを合体させ、注意力が散漫となっているアナザージオウトリニティへ切り掛かった。

 周囲に気を取られていたアナザージオウトリニティは反応が遅れ、咄嗟に剣を動かすが僅かに間に合わず、剣を叩き付けた時にはサイキョージカンギレードの刃が肩に埋め込まれていた。

 

「があっ! 常磐、ソウゴォォォ!」

 

 ダメージを受けながらもアナザージオウトリニティはサイキョージカンギレードを押さえつけ、グランドジオウに反撃を与えようとする。

 そんな彼の耳に信じ難い言葉が飛び込んだ来た。

 

「時間よ──動け!」

 

 今まで止まっていたライダーたちが一斉に動き出し、全ての攻撃がグランドジオウとアナザージオウトリニティへ襲い掛かって来る。

 自爆同然のグランドジオウの行動に、アナザージオウトリニティは動揺を隠せない。

 

「正気──何っ!?」

 

 アナザージオウトリニティの動揺は目の前の光景で激しさを増す。動きと止めた筈のグランドジオウの体が金色の粒子状に変化し、気付けばアナザージオウトリニティから離れていた。

 今まで使って来なかったグランドジオウの新たな能力に啞然とした直後、あらゆる攻撃がアナザージオウトリニティへ襲い掛かり、その姿を爆発の中へ掻き消す。

 

「はあ……はあ……」

 

 大規模な破壊の余波を身に受けながらグランドジオウは肩で息をしていた。アナザージオウトリニティの能力を見て、もしかしたら出来るかもしれないと思った短距離間の瞬間移動。それを土壇場で成功させたグランドジオウは、極度の緊張からの解放で今まで無視してきた疲労とダメージが一気に圧し掛かってくるのを感じていた。

 アナザージオウトリニティと戦わなければ気付かなかったかもしれない自身の能力。皮肉なことに、アナザージオウトリニティの戦いはグランドジオウを成長させていた。

 爆発が消え、爆心地を見るとそこには両膝を付いている焼け焦げたアナザージオウトリニティ。あれ程の攻撃を一度に受けてもアナザーウォッチを破壊するに至らず。驚異的なまでの防御力である。

 だが、意識は失い掛けているのかアナザージオウトリニティは動く気配が無い。もう二度と無いかもしれない好機を逃す筈も無く、グランドジオウはサイキョージカンギレードを構え──

 

「あ、れ……?」

 

 ──前のめりに倒れる。

 ギリギリで剣を突き刺すことで体を支えるが、その体勢から体を起こすことが出来なかった。蓄積されていた今までの戦闘による影響が、最悪のタイミングでグランドジオウの体から力を奪う。

 

「どうやら、ここまでの様だな……!」

 

 顔を上げると、意識を取り戻したアナザージオウトリニティがこちらに向かって来ている。焼け焦げ体が徐々に元の姿へ修復されている。明らかに時間を戻す速度が落ちており、アナザージオウトリニティもまた消耗していることが分かる。あと一歩、あと一歩でアナザージオウトリニティを倒すことが出来るのに、意志とは裏腹にグランドジオウの体は動かない。

 アナザージオウトリニティはグランドジオウの前に立つと、六本の腕を振り上げる。原型を残さずバラバラにしようという強い殺意がそこにはあった。

 

「宣言通り、お前を消し去ってやる!」

 

 振り下ろされる処刑の一撃。グランドジオウは俯き、ただ黙ってその刃が体に食い込むことを待つしかない。

 しかし、どれだけ待ってもその刃がグランドジオウへ届くことは無かった。

 

「な、何だと……!?」

 

 アナザージオウトリニティの震える声が聞こえた。

 

「しっかりしろ! ジオウ!」

「大丈夫かい? 我が魔王」

 

 次に聞こえたのは仲間の声。俯いた顔を上げるとそこには左右から迫りくるアナザージオウトリニティの凶刃からグランドジオウを身を以って守るゲイツリバイブとウォズの姿。

 その姿を見て、脱力していた四肢に力が漲って来るのを感じた。彼らは戦っている。ならば自分も戦わない訳にはいかない。

 サイキョージカンギレードで地面を力の限り突き、グランドジオウはその反動で前に飛び出す。

 そして、アナザージオウトリニティの胸に頭突きを叩き込んだ。

 

「ぐっ」

 

 呻くアナザージオウトリニティ。グランドジオウは背筋を後ろに反らしながら前のめりになっている上体を起こし、勢いをつけてアナザージオウトリニティの額に己の額を叩きこむ。

 

「ぐうっ」

 

 無様でもいい。カッコ悪くてもいい。でも、仲間が戦っているのに何もしない事だけは嫌だった。

 頭突きによるダメージは、アナザージオウトリニティを軽く怯ませる程度。だが、グランドジオウのこの二撃はその程度では終わらない

 

『ジオウ!』

『ジオウ!』

 

 アナザージオウトリニティの目の前に扉が現れ、開くと中からジオウⅡが。

 空中にも同じく扉が現れ、そこからジオウが飛び出してくる。

 

『トゥワイスタイムブレーク!』

 

 ジオウⅡの七色に輝く拳が、アナザージオウトリニティの胸部にあるアナザージオウⅡの顔面を砕き──

 

『タイムブレーク!』

 

 ──空中から急降下したジオウの蹴りが、アナザージオウトリニティの顔面に亀裂を生じさせる。

 

「ぐあああああああ!」

 

 ジオウとジオウⅡの攻撃を同時に受けたアナザージオウトリニティが吹っ飛ばされる。

 

「く、くそ……!」

 

 大きなダメージを受けながらもアナザージオウトリニティは執念で立ち上がろうとする。

 

『サイキョー! フィニッシュタァァイム!』

 

 立ち上がったアナザージオウトリニティが見たのは、巨大な光刃を振り上げるグランドジオウ。だが、それでもアナザージオウトリニティは恐れない。何度受けようとも時間を書き換えて無効化させるつもりであった。

 だからこそ、そこから先に光景は、アナザージオウトリニティにとって予想外のこと。

 

「ジオウ! 使え!」

『ゲイツ!』

『ゲイツリバイブ!』

 

 ゲイツリバイブがゲイツライドウォッチとゲイツリバイブライドウォッチを押すと、赤、橙、青の光が飛び出し、グランドジオウの光刃へ吸収される。

 

「我が魔王よ! 私の力も!」

『ウォズ!』

『ギンガ!』

 

 ウォズミライドウォッチからは緑の、ギンガミライドウォッチからは粒の様な輝きを包み込んだ黒い光が出て、光刃へ同化していく。

 

「ありがとう! ゲイツ! ウォズ!」

 

 輝きを増す光刃。それを見たアナザージオウトリニティは、現実を否定するかの様に叫ぶ。

 

「それが……! それが一体何だって言うんだ! たかが一人か二人の力を得たぐらいで……!」

「勝てるよ」

「何っ!?」

「俺は未来を創る為に戦う! 仲間と共に! 過去ばかりしか見ていないお前には絶対に負けない!」

「何処までも偉そうに!」

 

 アナザージオウトリニティは、構えるグランドジオウの未来を予測する。そして、如何なるイレギュラーが起ころうともすぐに歴史改変で傷を回復する準備を整える。

 

『キング! ギリギリスラッシュ!』

(来い……! え……?)

 

 未来の光景が黒く塗り潰され、見えなくなる。グランドジオウが構え、次の瞬間には振り抜いていた。その間の過程が一切見えない。一瞬たりとも目を離していないのに。

 アナザージオウトリニティは振り抜かれた光刃を見る。黄金の光の中にマゼンタの文字で──

 

『ジオウゲイツウォズ剛烈疾風銀河サイキョウ』

 

 ──と描かれた文字を見終えると、アナザージオウトリニティの体に何本もの光の線が浮き上がってくる。

 

「馬、鹿、な……」

 

 何回斬られたのか分からない。少なくとも一回、二回では済まない数。急いで歴史改変をしようとするが、能力が発動しない。斬撃の痕はベルトのアナザーウォッチにまで伸びていた。

 未来が見えない。書き換えるべき時間も見えない。何も見えない。

 唯一見えるのは──

 

『フィニッシュタァァイム! グランドジオウ!』

 

 ──自分の敗北する姿。

 

『オールトゥエンティー! タイムブレーク!』

 

 グランドジオウが跳躍すると、彼を中心にして黄金の扉が円形状に現れ、開く。クウガからビルドまでのライダーたちが出現し、アナザージオウトリニティへキックと共に突撃し、その体に紋章を打ち込んで消えていく。

 そして、最後の一撃は放つのはグランドジオウ。黄金の輝きを放つ右足がアナザージオウトリニティを穿つ。

 

「でぇあああああああああ!」

「ぐああああああああああ!」

 

 その瞬間、書き換えられた世界が砕け、光が世界中を包み込み、狂った歴史を修正していった。

 

 

 ◇

 

 

 ソウゴは気付くと広場に立っていた。いつの間にか変身が解除されている。

 周囲を見渡す。崩れた建物や、燃えるビルも無く、人々が平和に過ごしている光景が広がっていた。

 すぐ傍に立つゲイツとウォズ。ゲイツがソウゴへ向ける微笑──

 

「ソウゴ!」

 

 駆け寄って来るツクヨミがソウゴたちの顔を見て安堵した顔になったのを見て、加古川飛流によって書き換えられた歴史が元に戻ったことを実感する。

 

「俺のこと思い出した?」

 

 ゲイツとツクヨミは、微笑みと共にそれに頷いた。

 

「──加古川飛流は?」

 

 ウォズに言われ、周囲を探す。すると、草むらの中で倒れ伏している飛流を見つける。

 彼の前には三つのアナザーウォッチ。あれだけの攻撃を受けても破損していないのを見ると特別なアナザーウォッチであることが嫌でも分かる。

 

「くっ……!」

 

 震える手でアナザーウォズウォッチに手を伸ばすが、その手が届くよりも先にウォズのストールが伸び、それを奪ってしまう。

 

「これは私が預かっておくよ」

 

 それを悔し気に見た後、今度はアナザージオウⅡウォッチを取ろうとするが、横から現れた海東が先に拾い上げてしまう。

 

「このお宝は、僕が頂くよ?」

「ああ。くれてやろう」

 

 海東の問いに応じたのはスウォルツ。

 

「またね」

 

 カードとウォッチ。その二つを手に入れて満足した海東は、この場をさっさと去っていく。何処までも自分勝手もとい自由な男であった。

 

「そいつは俺の物だ! 返せ!」

 

 這いつくばってでもアナザーウォッチを取り返そうとする飛流の前にスウォルツが立ち塞がる。

 

「お前の役目はもう終わりだ」

 

 忠臣の仮面を捨て、足元の飛流を冷たく見下ろす。

 

「まだだ……! まだ俺は……!」

 

 飛流は最後に残ったアナザーゲイツリバイブウォッチに手を伸ばすが──

 

「ふん」

 

 ──スウォルツが嘲笑と共にそれを拾い上げ、目の前で握り潰してみせる。パラパラと彼の手からアナザーウォッチの破片が零れ落ちる。

 

「なっ!」

 

 絶句する飛流。ソウゴたちも同じ気持ちであった。スウォルツの情け容赦の無い行動もそうだが、素手でアナザーウォッチを破壊するという行為に驚かされる。

 

「あ、ああ……」

 

 飛流は砕けたアナザーウォッチの破片を搔き集める

 

「お前には王たる資格など最初から無い。お前はただの道化だ」

 

 スウォルツは飛流をせせら笑う。

 

「道化が一時の夢を見られただけでも有り難いと思え」

「ス、スウォルツ……」

 

 飛流は搔き集めた破片を握り締める。掌が切れ、血が流れ落ちる。

 

「スウォルツ!」

 

 飛流は立ち上がり、スウォルツへ殴り掛かる。

 

「愚かな」

 

 その行為を鼻で笑うと、飛流の前に銀色のオーロラが現れ、飛流がその中に吸い込まれるとオーロラを消してしまう。

 

「飛流……! 何処にやった!」

 

 ソウゴが詰問するが、スウォルツは一笑するだけ。

 

「スウォルツ!」

 

 ツクヨミが兄の名を叫ぶ。

 

「また会おう」

 

 スウォルツはそれだけ言って去ろうとする。その動きを警戒して目で追うソウゴたちだったが、視線の先にあるものが映り、そこに釘付けとなる。

 倒れて気絶した門矢士。その姿を見た時、ソウゴたちは悟った。

 ディケイドの力がスウォルツによって奪われたことに。

 

 

 ◇

 

 

 そこは何も無い場所であった。

 生命を感じさせない白砂だけが果てしなく広がっていく虚無の大地。

 そこに独り立ち尽くす飛流。だが、彼はそんな光景を前にしても絶望していなかった。

 あるのは果てしない怒りのみ。自分を虚仮にしてくれた者への復讐心のみ。

 

「スウォルツ……スウォルツッ……スウォルツ……!」

 

 復讐する相手の名を口に出すだけで怒りが無限に湧いて来る。

 

「スウォルツゥゥゥゥッ!」

 

 飛流の手の中で砕けた筈のアナザーウォッチが胎動し始める。持ち主の怒りを糧にして、その時を待つ。

 復活の時はそう遠くは無い。

 




振り返るとアナザーライダーたちを出せるだけ出した話でしたね。殆どが簡単に負けましたけど。まあ、戦力的にほぼ完成しているソウゴらに勝つのは難しいかと。

アナザーウォズ
身長:198.2cm
体重:94.2kg
特色/能力:瞬間移動

アナザージオウトリニティ
身長:203.6cm
体重:116.4kg
特色/能力:時間改変/高速移動・怪力/瞬間移動

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