何度も収縮を繰り返して肺が痛む。呼気が抜けていく喉も痛い。
上気する体から吐かれる息は熱く、血に似た匂いがする。
体が重い。足が重い。苦しい。辛い。今にも休んでしまいたい。そう心の片隅で思っても足は動き続ける。
汗が流れて目に染みるが、決してその目を閉じない。
真っ直ぐと見つめる先にはこの苦しみの果てにあるゴールテープが見えているからだ。
あのゴールテープを一番に切る為に辛い練習に耐え、今も長く苦しい道のりを走って来た。
それがようやく報われる。疲れを一時忘れる程の歓喜が胸の中に湧いて来る。
少しでも早くその瞬間を味わいたく走る速度を速める。
それがいけなかった。
「うっ!」
足がもつれ、右足が左足のアキレス腱を蹴ってしまう。バランスを崩し、目と鼻の先にゴールがあるというのに転倒してしまった。
急いで立ち上がろうとした彼が見たのは、自分が切る筈だったゴールテープを別の選手が切る光景であった。
体から一気に力が抜ける。他の選手が次々とゴールしているのに立つ気力が出ない。
何故最後の最後で気を緩めてしまったのか。ただ、ただ後悔することしか出来なかった。
もう一度やり直せたら。そう考えた瞬間、銀色の光が彼の周囲に現れ、動揺する暇も与えずに銀色の光は球体となって彼を包み込み、消えてしまう。
その突然の光景に、他の選手たちや審判、係員は啞然とするしかなかった。
◇
周囲を警戒しながら建物の裏へ裏へと進んで行くのはタイムジャッカーのウール。スウォルツの真の目的を知って決別した今、元タイムジャッカーと称した方が正しいのかもしれない。
彼が警戒しているのは当然そのスウォルツである。加古川飛流の歴史改変の時から今に至るまで片時も心休まる暇は無かった。
もし出会ったとしたらその時点でウールもオーラも命は無い。オーラはスウォルツによって時間停止の能力を奪われている。ウールにはまだ残っているが、力の源流であるスウォルツには敵わない。それどころかオーラと同じく奪われる危険もあった。
今の所スウォルツの追手は無く、ひっそりと身を潜めながら生き長らえている。とは言え、ウールにとってそんな生き方は屈辱的であり、自分たちを利用したスウォルツへの恨みも消えていない。
何度も裏道を通っていくと少し開けた空間が現れ、そこに待たせておいたオーラが思いつめた表情で放置してあるドラム缶の上に座っている。
「オーラ。食べ物と飲み物を買って来たよ」
白いビニール袋に入ったそれを軽く掲げる。幸いこの時代の金銭は幾らでも出せるので困らない。最悪、時間停止を使えば簡単に盗むことも出来る。ただ、そんなコソ泥の様な真似はウールのプライドが許さず、やっていないが。
「オーラ?」
声を掛けるが返事が無い。オーラはまだ何か考え事をしている様子であった。
「オーラ……オーラ!」
「──ああ、ウール。帰ってたのね」
強めに名前を呼ぶと、今気が付いたという反応を見せたオーラ。
「何、ぼんやりしているのさ? もしかして疲れているのかい? 確かにここ数日はスウォルツのことで満足に寝てないけど……」
「……違うわよ。ちょっと考え事。これから先のことよ」
ウールは不機嫌そうな表情をし、ビニール袋の中からペットボトルを取り出して一気に飲み干す。喉が渇いているというよりも気を紛らわせる行動に見えた。
「ウール。あんた、これからどうする気?」
「決まっているだろ……!」
空になったペットボトルを握り潰す。
「絶対にスウォルツに仕返しをしてやる……! 僕たちを虚仮にしてくれたことを必ず後悔させてやるんだ……!」
「あんた一人で出来るの? 私は力を奪われたままだし、あんたの力だって──」
「だからってこのまま黙ってられる訳ないだろ! スウォルツは絶対に僕たちを見つけて始末してくる! 大人しく殺られるもんか!」
生への執着と同時に復讐にも燃えるウール。幼い容姿には不似合いな暗い怒りを抱えていた。
オーラは暫くの間、ウールを見つめていたが、やがて何か決心をした表情となる。
「……ウール。話があるの。ちょっと来て」
◇
『居なくなったのは右央地大学一年生の西村和馬さん十九歳で、未だ西村選手の行方は分かっていません』
競技場の前で女性アナウンサーが突然姿を消した選手のことについてテレビで報道していた。朝食を食べる準備をしていたソウゴ、ゲイツ、ウォズは自然とそのニュースを見ている。
ここ最近同じ事件が多発しており、嫌でも内容が気になってしまう。
行方不明になった選手の顔写真が映し出され、ソウゴはふと気付く。
「西村!?」
行方不明になったのはソウゴと同じ高校の同級生であり、顔見知りの相手であった。
現場からの報道が終わり、テレビが画面にニューススタジオが映し出される。
『続いてのニュースです。本日──』
「タイミングが良すぎるな」
「え? どういうこと?」
『──にて十代と見られる』
ゲイツの呟きにソウゴが反応する。
『──の状態で発見され』
テレビでは未だにキャスターがニュース原稿を読み続けているが、ソウゴの意識は既にゲイツに向けられているので耳に殆ど入ってこない。
「こんな怪奇現象、タイムジャッカーの仕業に違いない。そして、最近新しい力を手に入れた奴もいる」
「スウォルツが?」
ウールとオーラと決別した今スウォルツ一人のみ。タイムジャッカーという名など在って無い様なものであった。
「スウォルツはツクヨミ君とディケイドの力を吸収してより強大な力を得た筈だ。──もう少し大それた事を企んでいそうだが……」
「油断は禁物だ。この事件自体が奴の企みの前哨に過ぎないのかもしれん」
「一理あるね。ツクヨミ君から奪った時間を操る能力はともかく、ディケイドの破壊者の力は未知数。我々の想像もつかない力を秘めているかもしれない」
「ディケイドの力か……」
アナザーライダーと化すと本来のライダーの能力を歪めた様な能力を得ることがある。そう考えるとソウゴはますます友人の安否が気掛かりになった。
「最近、暗いニュースばかりだねー」
表情を曇らせながら順一郎がテーブルの上に朝食を置いて行く。多発する行方不明事件といい、先程流れたニュースといい、テレビで流されるニュースは未来に不安を抱かせるものばかりであった。
「そういえばツクヨミちゃんは? まだ起きてこないの?」
順一郎に言われ、ソウゴは改めてツクヨミが居ないことを不自然に感じた。しっかりとしているツクヨミが誰よりも起きるのが遅いのは考え難い。思い返すと昨晩から姿を見ていないことを思い出す。
「言われると昨日の晩から見てない……!」
「もしかして……! ツクヨミちゃんも事件に……!」
「ツクヨミ君なら早朝に出かけたよ。話をしたい人が居るらしい」
「なーんだ。それなら良かったー」
一瞬険しい顔をしていた順一郎は、ウォズからツクヨミの行方を聞いていつものお人好しそうな顔へ戻ると朝食の準備を続ける為にキッチンへ向かう。
「ウォズ、ツクヨミを一人で行かせたのか?」
能力を失ったツクヨミを知っていて一人にさせたことに対し、ゲイツがウォズへ怒りを向ける。
「恐らくは大丈夫だ。会いに行く相手が相手だからね」
「それってもしかして……」
「そう。ツクヨミ君が会いに行ったのは門矢士だ」
すると、全てが暗闇に包まれ、ウォズのみにスポットライトの様に光が当てられる。
「この本によれば、常磐ソウゴは様々なレジェンドたちと出会い、全てのライダーの力を手中におさめつつあった。しかし、敵も最強の力を手に入れ、その力で常磐ソウゴを追い詰めようとする。歩んできた旅の最終章の幕がひらかれる──前に一つの波乱が彼を待ち受ける。キーワードは『過去』『現在』『未来』」
◇
小雨が降る中、歩道橋の上で会話する傘をさした二人の男女。ツクヨミと門矢士である。
「貴方は知っていたのね。スウォルツが……私の兄だって」
「俺も気付いたのはちょっと前だがな」
ツクヨミは士に一歩近づく。
「教えて! スウォルツは──兄は何を企んでいるの!?」
「……俺は本来この世界の住人じゃない。その俺がこの世界に来たのは、時空の歪みが生じる原因を探る為だ」
「それがスウォルツのせい?」
「どうかな? 俺はやはり魔王のせいだと思っているがな」
「え?」
「そして、スウォルツはそれを利用しているんじゃないかと踏んでいる」
「それじゃあ、スウォルツの目的はソウゴを……?」
過去に跳んだ際にスウォルツが王の候補としてソウゴを見出したことを思い出す。あの時からスウォルツの計画が始まっていた。
「どちらにせよ直に答えは分かる。その時には俺もお前も答えを出さなければならない」
「私と貴方が……?」
「俺はこの世界を破壊すべきかどうか。そして、お前はこの世界を去るべきどうか、だ」
用意された選択に、ツクヨミは瞠目する。
「私がこの世界から……?」
「お前の存在もまた時空の歪みだ。分かっているだろう? この世界に居てはいけない存在だ。俺もだがな」
存在してはいけない。その事実を突き付けられツクヨミは言葉を失ってしまう。彼女には今の仲間たちと離れ離れになることは考えられなかった。
「──破壊するっていうけど、今の貴方はディケイドの力を奪われているじゃない?」
自分の答えを出せず、別の疑問を士に投げ掛ける。
「そんなことは大した問題じゃない」
当の本人は何てことも無い様に言い放つ。その不遜な態度にツクヨミも思わず閉口してしまう。
「答えを出すならなるべく早い方が良い。──あまり時間は残されていないかもしれない」
そう言い残すと士は歩道橋から去っていってしまった。一人残されたツクヨミはしばらくの間呆然と立ち尽くす。
「私はこの世界から……」
すぐに答えなど出る筈も無い。ただ頭の中でグルグルと士の言葉が回り続けていた。どれだけの時間が過ぎたのだろうか。
傘を打つ雨の音もすっかり静かに──
(え?)
目の前をゆっくりと通り過ぎていくのは無数の雨粒。驚き声を出そうとするが感覚よりも体の動きが何十倍も遅れており、ツクヨミは自分の体が非常にゆっくりに動いていることに気付く。
何もかもが時間を引き延ばされる空間の中、何故か足音だけが聞こえる。しかも、その足音はツクヨミの方へ近付いている。
ツクヨミは眼球だけ必死に横方向へ動かし、足音の主を視界に捉えようとする。
普通ならばすぐに見えるが、何倍もの時間を掛けてようやく動かし終えた時、それはツクヨミのすぐ傍に立っていた。
全身は薄汚れた白。胸には擦られた痕の様な三本の線が走っている。右肩にはタイヤ部分が剥ぎ取られたホイールを付け、右手首にタイヤが埋め込まれていた。
左肩後ろには金属の管が三本刺さっており、そこから白、赤、白の蒸気を噴き出している。腹部にもバイクのテールパイプが横向きに付けられ、こちらは炎を噴き出させていた。
頭部はバイクのヘルメットの様な形状をしているが、額から伸びるV字のアンテナは片方折れており、更にヘルメット下にあるバイザー型の目も片方が砕けており、下から円が連なって出来た無機質な目を覗かせている。
(アナザーライダー!)
と声を出すが、やはりすぐには出て来ない。
アナザーライダーはツクヨミを観察する様に見ていた。或いは動けないツクヨミを弄んでいるのかもしれない。
いつもならばファイズフォンXで銃撃を行う所だが、鈍重となったこの空間ではそれも叶わず。時間停止を使えていたら危機を脱せられただろうが、スウォルツに奪われた今それも叶わない。
無力な自分に悔しさを覚える。
ツクヨミの顔がゆっくりと悔しさに歪んでいく様を見て満足したのか、アナザーライダーは右手を上げる。手首部分のタイヤが高速回転し始めた。
数秒後には訪れる自分がそのタイヤで削り取られる未来。ツクヨミはそれから目を閉じることすら出来ない。
アナザーライダーが右手を振り下ろす──その時、アナザーライダーに何かが衝突し、アナザーライダーを突き飛ばす。
(何!?)
光の線を残して空中を走るそれは小型のミニカー三台。だが、小さいながらもアナザーライダーの体を吹っ飛ばす程の威力を持っていた。
その内の一台がツクヨミの方へやってきて手の中に納まる。すると、ツクヨミの動きが正常のものへ戻った。
「戻った! 何なのこれ……」
真っ黒なボディに水色の線が幾つも描かれたパトカーらしきミニカー。ツクヨミの安否を確かめる様にクラクションを鳴らす。
すると、今度は車のエンジンが聞こえてくる。音の方向は、あり得ないことに頭上から。
見上げると、黒いスポーツカーが空中を走っているのが見える。
「今度は何!?」
黒い車体。車種はこの時代のメルセデスベンツに似ている。車体全体にツクヨミの手の中のミニカーの様な水色のラインが回路の様に施されており、空中を走った後には同色の光が残っていく。
黒い車はツクヨミの傍まで来ると空中で停車、そしてドアが開く。
謎の黒い車から出て来たのはツクヨミとそう歳の変わらない整った顔立ちの青年。
ツクヨミの青年に対する第一印象は真っ白であった。左腕から肩まで網目が施された真っ白な服。履いているズボンも純白。靴も白、填めている手袋も白。あまり現代では見ない服装である。
唯一白ではないのは、二の腕に巻かれた赤い布。よく見ればそれはネクタイであり、そうと分かるとかなり奇抜な印象を受ける。
「大丈夫!?」
青年は開口一番でツクヨミの無事を確かめた。色々と急に起こり過ぎたのでツクヨミの頭は処理が追い付かず、呆然としながら取り敢えず首を縦に振る。それを見て、青年は安堵した様子となり、続いてアナザーライダーの方を見る。
最初は警戒した表情だったが、アナザーライダーの姿をまじまじと見て困惑の表情へ変わる。そんな青年の視線を受けながらアナザーライダーは拳の形にした右手を後ろに引き、反対に左掌を前に突き出して左脚を伸脚するという大仰なポーズをとる。
曲げた右脚の脹脛には『2019』。そして、伸ばしている左脚には──
「マッハ……?」
『MACH』の文字。青年はアナザーライダー改めアナザーマッハのことを知っているらしく、戸惑っていた。
「気を付けて! そいつはアナザーライダーよ!」
「アナザーライダー……? じゃあ本物のマッハじゃないんだね!」
ツクヨミの言葉で安心した表情になると、青年は腹部前に手を通過させる。手の動きに合わせて何本もの光が走るとその光が実体化し、ドライバーとなって青年の腹部に固定される。
中央には車のメーターを思わせるディスプレイ。その横にはキー型のスイッチも付いている。
青年はキー型のスイッチを回す。エンジン音が轟いた後ドライバーに付けられたホルダーからミニカーを引き抜く。それは青年が乗っていた車と似たデザインが施されていた。
左腕を眼前まで持ち上げる。左手首にはスロットが設けられたブレスレットが巻かれており、そこへミニカーを運んで行く。
「Start Our Mission!」
『OK』
その声に応じてくぐもった音声をミニカーが発した後、ブレスレットに装填。
「変身!」
『ドライブ! タイプネクスト!』
光の輪が現れ、青年の体を囲むとそれが上下に分割して青年の頭、足元へ移動。光の輪が通過した後に空中で装甲が形成され、それらが青年の全身を包み込む。
変身前の青年とは真逆の黒に染まった体。ドライバーのディスプレイにはNの文字が浮かぶ。コンピューターグラフィックスを彷彿とさせる角ばった黒い装甲、ボディスーツには回路を走る電流の様な青いラインが施されている。
額から頂点に掛けて伸びる角の様な一対の突起。額中央にはRの紋章。サングラス型の水色の複眼は吊り上がった形状をしており、眼光すらも鋭く感じさせる。
すると、黒い車の左前輪が光を放ち、その光から黄色の線で模様を施されたタイヤを生み出すとそれを青年目掛けて発射。
タイヤが青年に衝突すると一体化し襷の様に装備する。
「ドライブって…………仮面ライダードライブ!?」
ツクヨミの知るドライブとは異なるドライブの姿に驚く。彼女の知る限りではドライブは赤い姿であった筈。
アナザーマッハは唸り声を出すと黒いドライブに一気に距離を詰め、右手刀を放つ。
高速で回転する右手首のタイヤが黒いドライブを削り取ろうとするが、黒いドライブは胴体のタイヤでそれを受け止める。
衝突するタイヤとタイヤ。共に高速に回り、摩擦で凄まじい音が響くが回転数で勝ったのは黒いドライブの方であった。
回転に負け、アナザーマッハの右手が跳ね上がると黒いドライブは隙だらけの胴体に左右の拳で凄まじい連打を浴びせる。
目にも止まらぬ速さによる連打。アナザーマッハの足が拳によって浮き上がった所に音すら置いて行きそうな速度の上段回し蹴りがアナザーマッハへ突き刺さる。
勢い良く地面を転がっていくアナザーマッハだったが、すぐに地面に指を突き立てて急停止し、立ち上がる。
アナザーマッハは黒いドライブを睨み付けながら右鉄槌で腹部のテールパイプ型のベルトを数度叩く。すると炎が激しく噴射され、アナザーマッハの姿がその場から消え、次の瞬間には黒いドライブに左拳を放っていた。
黒いドライブは咄嗟に肘でそれを受ける。が、次の一撃には間に合わず腹部に右手刀を当てられる。埋め込まれたタイヤが接触し、黒いドライブの体から火花を撒き散らせる。
「くっ!」
後退する黒いドライブ。追撃を仕掛けようとするアナザーマッハであったが、黒いドライブのタイヤから光が放たれ、それが物質化すると接近していたアナザーマッハを斬り付け、戻って来たそれを黒いドライブが掴む。
黒一色の柄には鋲が付けられたアームガードと銃口を思わしきノズルが付いている。そこから伸びる水色の剣身。剣、銃、拳の三つの武器を一つに合わせた武器を構えると、斬られて怯んでいるアナザーマッハに銃撃。
銃口から発射された水色の光弾がアナザーマッハの手足を撃ち、機動力と攻撃力を削ぐと今度は黒いドライブの方から接近。水色の刃によってアナザーマッハを斬る。
胴体、肩、腕へ立て続け斬撃を受け、前のめりになるアナザーマッハ。すると、黒いドライブはナックルガード部分に指を引っ掛け、手の中で回転させ逆手に持つと前のめりになっているアナザーマッハの顎をナックルガードで突き上げた。
衝突の瞬間水色の閃光が発せられ、アナザーマッハは十数メートルも殴り飛ばされる。
大の字に倒れたアナザーマッハだったが、苦鳴を上げながらも立ち上がろうとする。黒いドライブの指先がドライバーのキーへ伸びていく。
だが、アナザーマッハはこれ以上の戦いは不利だと判断したのか立ち上がったと同時に高速移動で逃げてしまった。
戦闘が終わったと判断すると黒いドライブは変身を解き、青年の姿に戻ると長い息を吐く。
「この時代に来ていきなり戦闘か……」
「この時代って……もしかして貴方も?」
「貴方
「うう……」
青年がツクヨミの言葉に引っ掛かるものを感じ追求しようとすると、何処からか呻き声が聞こえてくる。
声の方に視線を動かすとそこには負傷したウールが体を引きずりながら歩く姿があった。
「ウール!」
ツクヨミはすぐにウールの傍に駆け寄る。敵対関係だが、負傷して弱っている相手を見捨てることは出来なかった。
「ツク、ヨミ……?」
「その傷……もしかしてあのアナザーライダーに!」
「お前も、あいつにあったのか……うっ……!」
「しっかりして!」
「この子は、君の知り合いなのかい?」
いつの間にか青年もすぐ傍に立っていた。
「……ええ、そんなところ」
「分かった。安全な場所まで僕が運ぼう」
「ありがとう。貴方、名前は……?」
「僕は──」
◇
「泊英志?」
「2035年の未来から来ただと?」
クジゴジ堂内でソウゴたちと青年こと泊英志は顔を合わせていた。
いきなりツクヨミがウールと謎の青年を連れて空から車で帰って来た時にはソウゴたちも絶句していた。
ウールは一先ずツクヨミが怪我の手当てし、ウォズも見張りという立場でそれに付いている。
「まさか、2019年に来て最初に会った人が同じ未来人だったなんて……」
「凄い偶然だよね」
「お前は2035年からこの時代に何をしに来たんだ?」
「実は──」
英志が言うに、2035年に突如として全滅した筈のロイミュードたちが復活し、暴れ始めたのだという。その原因を調査したところ、2019年に時空の歪みが発生していることが判明し、その原因を究明、解決する為にタイムロードで時間を跳躍してこの時代に来たと言う。
「時空の歪み……これもスウォルツが?」
「考えられるな」
「スウォルツ? その人が未来に影響を?」
「まさか、また未来の仮面ライダーが来るとはね」
「ウォズ。ツクヨミを一人にして大丈夫なのか?」
「ウール君なら今は寝ているよ」
ウォズはそう言って英志の方を見る。
「仮面ライダーダークドライブ、泊英志。彼は仮面ライダードライブの息子だ」
「え! ドライブの!?」
「なら最後のウォッチとも関係がありそうだな」
ウォズの説明に何故か英志は眉間に皺を寄せている。
「仮面ライダーシノビ、クイズ、キカイ、アクアに続いてダークドライブとは……この時代に様々な可能性が集束しつつあるみたいだ」
「あの……」
「何かな?」
「ダークドライブって言うのは止めてくれるかな? 確かに真っ黒な見た目だけどそんな悪そうな名前じゃないよ。仮面ライダードライブタイプネクスト。それが僕が変身するドライブの名前だよ」
「──成程。それは失礼した」
ウォズは一瞬だけ視線を彼が巻いてあるネクタイに向け、すぐに謝罪する。
「でも、親子で仮面ライダーって凄くない?」
興奮気味な様子なソウゴに、英志は苦笑を浮かべる。
「一応、だけどね。本物のドライブ──父さんみたいには成りたいけど僕は成れないんだ」
ドライブのベルト──ドライブドライバーには人格が宿っており、サポートするアイテム──シフトカーたちにも同じく人格がプログラムされていた。しかし、ロイミュードの襲撃が突然であった為、準備をする時間が殆ど無かったせいで彼が巻いているドライバーは性能をコピーしただけの量産型。シフトカーもバージョンアップしたネクストシフトカーと呼ばれるものだが、意志の学習が不十分で赤ん坊並みの意志しか宿していないという。
正式な仮面ライダードライブを名乗るには、色々と欠けている部分があると英志は語る。
「俺たちも手伝うよ」
聞き終えたソウゴが真っ先に言う。
「え、でも」
「おい」
「もし、スウォルツが関係しているんだったら、スウォルツの企みを知るチャンスかもしれない」
「……このまま奴が動くのを待っていてもしょうがないか。それに最後のウォッチを継承するチャンスかもしれいしな」
「でしょう? ウォズは?」
「我が魔王の望むままに」
三人が協力してくれることに英志は顔を綻ばせる。
「──ありがとう!」
「皆」
すると、ツクヨミが全員に声を掛ける。その隣にはウールも立っていた。ゲイツはウールへ露骨に敵意を向ける。
「傷の治療が終わったのならさっさと出ていけ」
「ゲイツ!」
「ツクヨミが連れてきたから大目には見たが、これ以上長居させるつもりはない」
「……話があるんだ」
「こっちには無い」
ウールの願いを一蹴するゲイツ。そんな彼をソウゴが宥める。
「取り敢えず話だけでも聞いてみようと。それから後で決めても遅くないし」
ゲイツは顔を顰めるが、それ以上は何も言わなかった。話だけは聞くつもりの様子。
「で、話って?」
「単刀直入に言う。僕とオーラをあのアナザーライダーから助けて欲しい!」
今回は本編の話を大分再構成しております。アクアを先に出してしまったので代わりにダークドライブを出しました。
これに加えて劇場版のドライブウォッチ継承の話も混ぜていきます。
先にどちらが見たいですか?
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IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
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IFゲイツ、マジェスティ