仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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この話も三話ぐらいになりそうです。最終章を楽しみの方はもう少しお待ちください。


アナザーダークドライブ1575(前編)

 本来ならば人が頻繫に行き交う噴水近くの広場。しかし、この日だけはその光景が消えていた。

 広場中央で陣取るスウォルツという存在によって。

 目を深く閉じ、黙禱する様に沈黙し続けるスウォルツだったが、徐にその瞼を開ける。

 

「──オーラか」

 

 スウォルツから二、三メートル程離れた所にオーラが腕を組み、不機嫌な表情をしながら柱にもたれ掛かっていた。

 

「蛮野が私たちを裏切ったわ」

「ほう? そうか」

 

 オーラから齎された情報にスウォルツと特に関心を示さない。

 

「分かってるの? あいつ、私たちの指示通りに動くことになっているのに、勝手に何処かへ行ったのよ? それも新しいアナザーライダーの力を持ち逃げして!」

 

 当初の予定では、ロイミュードの超進化体の力にアナザーマッハの力を掛け合わせる予定であった。だが、ここで一つのイレギュラーが起こる。

 時空の歪みによる調査の為に未来から泊英志がやって来たことだ。それにより、蛮野は未来のドライブに興味を移し、勝手にその力を狙い始めていた。

 

「ライドウォッチに移されても中身が変わらなければ意味がないか」

 

 蛮野天十郎という人物は既に故人であり、その精神を人格プログラムとして残っていた。スウォルツは蛮野の頭脳と目的の為ならば一切手段を選ばない外道な精神に目を付け、消滅寸前であった彼の人格プログラムをライドウォッチにコピーし、バンノライドウォッチとして新たな生を与えた。

 

「まあいい。放っておけ」

「──何ですって?」

「聞こえなかったのか? 放っておけと言った」

 

 スウォルツの出した指示に、オーラは信じられないという表情になる。

 

「あんた本気で言っているの? あいつは、あのアナザーライダーの力で恐らく過去に跳んだのよ!」

「そんなことは分かっている。だが、今の所俺にとって何の不都合も無い」

 

 スウォルツにとって蛮野の独断行動は些末なことに過ぎない様子。

 

「寧ろ都合が良い。ジオウたちの目を惹き付けておける。勘付かれて邪魔をされるのは鬱陶しいからな」

「……余裕ぶってるけど、あいつのせいで時間が滅茶苦茶にされるかもしれないのよ? スウォルツ、あんたにだってどんな影響が出るか……」

 

 オーラの忠告をスウォルツは鼻で笑うと、彼の背後に銀色のオーロラが出現した。オーロラの向こう側には姿がハッキリとしない人型の影が複数並んでいる。

 オーロラ越しでも強い殺気を感じ取り、オーラの顔に冷や汗が浮き出てきた。

 

「──その時は、俺が奴を始末するだけだ」

 

 傲岸不遜に笑うスウォルツ。だが、オーラはそれを否定することが出来なかった。着実にスウォルツは力を高めている。それが嫌でも理解出来てしまった。

 

 

 ◇

 

 

「英志の様子はどう?」

「今は寝ているわ。消えそうになる症状はまだ収まっていないけど……」

 

 クジゴジ堂へと戻っていたソウゴは、英志の看病をしていたツクヨミに容態を尋ねた。自身もまた包帯や絆創膏で怪我の治療を終えた後であった。

 

「結局、俺たちは奴らに踊らされていたということか……!」

 

 ゲイツは表情を歪めて吐き捨てる様に言う。アナザーダークドライブが去った後、ゲイツたちが駆け付けソウゴたちを救助した。英志は繰り返される消失現象によって苦しみ、まともに会話出来ない状態であった為ソウゴが何が起こったのかをゲイツたちに説明をした。

 そして、ウォズは──

 

「……今戻ったよ」

 

 クジゴジ堂を出ていたウォズが帰って来た。その声は心なしか暗い。

 

「……どうだった?」

「何度も念入りに確認したが、ウール君だったよ。残念ながらね……」

「……そう」

 

 クジゴジ堂内の雰囲気は一気に重苦しいものと化す。

 ウールは既に亡くなっている。オーラから聞かされたことが事実であるかどうかを確かめる為にウォズが自ら名乗り出て確認しに向かった。その答えが今のウォズの言葉である。

 

「ウール……」

「目的の為なら仲間すら切り捨てるか! タイムジャッカー……!」

 

 ツクヨミは悲し気にその名を口にし、ゲイツは忌み嫌っていた筈のウールの死に義憤を燃やす。敵対関係であろうとその死に何も思わない二人ではない。

 

「どうやら通報があって彼を見つけたらしい。……誰にも見つからないまま放置されるのを避けたのは、せめてもの情けなのだろうね」

「何が情けだ……!」

 

 ゲイツは怒りのまま吐き捨てた。そんな言葉で隠せられる程タイムジャッカーの罪は軽くない。

 

「ウール君のことは残念に思うが、今は姿を消したアナザーダークドライブ、蛮野の行方を探すのを優先すべきだ。──彼は間違いなく過去の時間へ跳んだ。その影響も出始めている」

 

 ウォズの目が台の上に置かれたライドウォッチダイザーへ向けられる。そこに付けられたドライブライドウォッチが存在が曖昧になっているかの様に半透明になったと思えば、元の実体へ戻るということを繰り返していた。

 ドライブライドウォッチが不確かな存在になってしまったせいでグランドジオウライドウォッチも現在使用不能状態である。

 

「過去の時間で彼は仮面ライダードライブに関わる者に危害を加えるか、もしくは抹殺しようとしていると考えられる。ドライブライドウォッチが消え掛けているのも、泊英志の存在が消滅し掛けているのもそれが原因だ」

「ならこちらも過去に跳ぶしかないな」

「それしかないが、ならいつの時代に行くんだい? 少なくとも仮面ライダードライブが活躍していた時間に行ったとしてもアナザーダークドライブは居ない。そんな分り易い時間移動なんてしない筈だ」

 

 ウォズにもっともなことを言われ、ゲイツは閉口してしまう。アナザーダークドライブを追うには正確な年代と日付が必要なのだ。

 膨大な歴史の中からアナザーダークドライブを虱潰しになど探すなど到底無理な話である。

 完全に手掛かりを失ってしまったソウゴたち。会話もそこで途切れてしまう。すると──

 

「ソウゴ君! 皆! ニュース見た!?」

 

 夕飯の買い物に出掛けた順一郎が慌てた様子でクジゴジ堂に入って来ると、重苦しい空気に気付かないままテレビの電源を入れる。

 全員の視線は自然と点けられたテレビ画面へ集める。

 

「戦国時代の屛風絵がいつの間にか変わってて大騒ぎになっているらしいよ!」

『ご覧ください。徳川美術館所有の『長篠合戦図屛風』に突如として謎の武者や巨大な球体が描かれています』

 

 テレビのニュースでは歴史的資料である『長篠合戦図屛風』に前日まで描かれていなかった今日になって武者と光の球が描かれていると報道されていた。

 球体は帯状の水色と赤色が何本も描かれ、そして謎の武者はソウゴたちにとって非常に見覚えがある姿をしており、武者の横には名前も描かれている。

 その名は『芸津殿』。ソウゴたちの視線が今度はゲイツに集中した。

 

「お、俺は知らんぞ!」

 

 ゲイツ本人も驚いており、動揺していた。

 

「そもそも何だ! その長篠のなんとかかんとかとは!」

「織田信長と徳川の連合軍が、武田軍とぶつかった長篠の戦いを題材にした屛風絵のことだよ。たしか起こったのは1575年の6月29日。旧暦なら天正3年の5月21日だった気がする」

 

 すらすらと知識を語るソウゴにゲイツとツクヨミは目を丸くする。

 

「まさか、お前から歴史を教わる日が来るとは……」

「ソウゴって、暗記が出来たのね……」

「二人とも酷くない?」

 

 自分がどんな風に見られていたのかを知り、ソウゴはショックを受ける。

 

「二人とも、我が魔王を甘く見ないで貰いたい。我が魔王は興味を持ったことだけなら驚異的な学習能力を見せるんだよ」

「ウォズ。それってぜんぜん褒めてないから」

「ソウゴ君って織田信長とか歴史上の殿様、王様とか好きだもんねー」

 

 順一郎が吞気な感想を言っていると突然テレビ画面が乱れ、屛風絵のニュース映像が消えて

 すると消え掛けているドライブライドウォッチが輝き出す。

 

『君たちの助けが必要だ……』

 

 テレビにはスーツを着用し、眼鏡を掛けた中年の男性が映っている。彫りの深い顔に整えられた口髭。高い知性を感じさせる雰囲気を纏っている。

 

「あれ? 混線しているのかなぁ?」

 

 超常現象を現実的に受け止めた順一郎は、アンテナの様子を確認しに行く。

 

「誰?」

『私はクリム・スタインベルト。ようやく辿り着くことが出来た』

 

 受け答えをし、テレビ画面の中で安堵する様子は録画の類ではないことを証明している。

 

「クリム・スタインベルト。仮面ライダードライブに関わる重要な人物だね」

 

 ウォズがクリムの自己紹介の補足をする。

 

『今、私は危険な状態にある。存在そのものを抹消されようとしている。恐らくは、時間改変によるものだ』

 

 自分に起こっている異常事態の答えに簡単に辿り着いたクリムに全員驚く。

 

「確かに、アナザーライダーが過去に跳んで何かをしようとしている。よく分かったな?」

『ケースは違うが、未来からの侵略者と戦ったことがあるからね。そういう事態に想定し色々と対策を施しておいたんだ』

 

 クリムが言うにその対策の一つが偶然ソウゴらと結び付いたと言う。

 

『私の元に来て欲しい』

 

 クリムはある住所をソウゴたちへ教える。それはクリムが住んでいた屋敷跡であり、そこの地下に今のソウゴたちにとって必要な物があると語った。

 

『そこで……』

 

 急に画面が乱れ始める。

 

『どう……歴史改変の……影響……急いでく……』

 

 クリムの姿が消え、テレビ画面が元のニュース映像へ戻った。

 

「──行こう」

「あのニュースといい、今のクリムとかいう奴のことといい、向こうから来た手掛かりだ。逃す手はない」

 

 ソウゴの言葉に全員が同意し、クジゴジ堂を出ようとすると、二階から英志が下りて来る。

 

「何処かへ行くのかい?」

「英志! 体は大丈夫なの?」

「ああ。──今の所は、だけど」

 

 ソウゴたちに手を見せる。半透明であった手が実体に戻っている。歴史改変による影響にも波がある様子。

 

「何かアナザーライダーの手掛かりでも見つかったのかい?」

「うん。さっきテレビでクリムって人が……」

「クリム? もしかして、クリム・スタインベルト!?」

「う、うん」

 

 興奮した面持ちの英志。大人しい時の雰囲気との差にソウゴらは驚いてしまう。

 

「そのクリムっていう人のこと、知っているの?」

「勿論だよ! クリム・スタインベルトは父さんの相棒で! ベルトさんで! 一緒にドライブになっていたんだ!」

『……ん?』

 

 英志の言っていることがいまいち分からず、一同首を傾げてしまう。

 

「その……クリムって人も仮面ライダーなの?」

「いや、仮面ライダーっていうか、ベルトなんだベルトさんは。父さんが腰に装着して──」

「え! あの人が巻き付いて!?」

 

 クリムが仮面ライダードライブ変身者の腰にしがみついて一緒に変身する様子を想像し、変な空気が流れてしまう。

 

「いや、そうじゃなくて!」

「取り敢えず詳しい説明はクリム・スタインベルトの屋敷に向かう途中でしよう」

 

 話が先に進まないのでウォズが一旦中断させ、当初の目的であるクリム・スタインベルトの屋敷を目指すことになる。

 ちなみに道中で英志は説明したかったことを誤解なくソウゴたちにちゃんと伝えることが出来た。

 

 

 ◇

 

 

 指定されたクリム・スタインベルトの屋敷は、廃墟と化し荒れ果てていた。

 手分けして地面を探すと、そう時間も掛からずに繋ぎ目のある箇所を見つけ、それを開けると、かなり深い地下室があった。

 螺旋状の階段を降り、ポツンと一つだけ置いてある重厚感ある金庫。かなり年代物の作りとなっており、ダイヤル式の施錠も掛けられているが事前に開錠番号を聞いていたので苦も無く開けられた。

 金庫の中には木製の箱の中に丁寧に置かれた十字架。その十字架は縦の部分は金属製だが、横の部分は木で出来た変わった作りをしている。そして、それよりも気になったのは──

 

「何か良いニオイ……」

 

 金庫を開けた時から甘く、品の良い香りが漂う。くどさの無い香りであり高貴な香りと表現出来るものであった。

 ソウゴが十字架を手に取る。ニオイは十字架から放たれている。

 

「その十字架に触るな!」

 

 頭上からの声。慌ただしく階段を降りる音。自分たち以外がこの地下室に来たことに警戒しながら階段の方を見る。

 茶髪に白いパーカーを来た青年が、殺気立った様子でソウゴたちを睨み付けていた。その雰囲気にソウゴたちも警戒心を強める。

 

「あっ……」

 

 英志だけが青年の顔を見て、小さく声を上げた。

 

「お前たちが悪党かっ!」

 

 出会って早々に青年から敵と認識され、ソウゴたちは目を丸くする。そんな中でゲイツもまた青年と似た様な気を発しながら、棘のある口調で訊く。

 

「貴様……何者だ?」

「俺は詩島──」

「剛叔父さん!」

「──剛叔父さん! ……叔父さん!?」

 

 いきなり会話に入って来た英志に、詩島剛と名乗った青年は面喰ってしまう。

 

「やっぱり叔父さんだ……! うわぁ……若い」

「誰がおじさんだ! 俺はまだおじさんって言われる年じゃない! 若くて当たり前だ!」

 

 初対面の人間からおじさん呼ばわりされ、剛はご立腹の模様。

 

「っていうか、誰だお前は!?」

「ええっと……泊英志です……」

「はあ!? 馬鹿言え! 英志はまだ小さい……まさか」

 

 何かピンと来た様子の剛。

 

『泊英志だと!?』

「うわっ! 出た!」

 

 英志の名前を聞いてホログラム状態のクリムが現れる。念の為に持ってきた不安定状態のドライブライドウォッチの効果である。

 

「あ、貴方が! クリム・スタインベルトさんですか!?」

『泊英志……まさか、君は未来から来たのか……?』

「えっ! あ、はい! そうです!」

 

 幾ら何でも話がとんとん拍子に進み過ぎて、英志の逆に戸惑ってしまう。

 

「クリム。未来から来た泊英志って……」

『ああ。──君たち』

 

 何故か英志を警戒するクリムと剛。クリムはソウゴたちへ声を掛ける。

 

『彼に……泊英志に不審な点は無かったかい?』

「え? 英志に? 何で?」

『……以前、泊英志本人を殺害し、彼に成り代わったロイミュードの偽物に襲われたことがあったからね』

 

 特異極まるケースのせいで怪しまれてしまう英志。ソウゴたちはどうやって彼が本物であることを説明しようか悩んでいると──

 

『うっ!』

「ま、また……!」

 

 ドライブライドウォッチが消え掛けてクリムの映像が乱れ始め、それと同時に英志の体の一部が半透明になる。

 

「お前、それ!?」

 

 クリムと似た様な現象が起きている英志の姿に、剛は思わず駆け寄ってしまう。

 

「だ、大丈夫……まだ、消えない筈だから……」

「本物の英志なのか……?」

 

 目の前の英志に触れ、何故か脳裏に幼い英志の顔が浮かび上がる。剛は直感的に彼が英志本人であると理解した。

 

「クリム……こいつは本当に」

『ああ、私も、そう──思、彼は──』

 

 雑音混じりであったが、クリムも英志を本物と認識していた。

 

「信じて、くれて、良かった……! 剛叔父さん!」

「取り敢えず、な。あと叔父さんは止めてくれ」

「叔父さんは、叔父さんだから……」

「ああ、もう! 分かったよ! 好きに呼べ!」

 

 ドライブライドウォッチと英志の状態が収まるまでの間に、ソウゴたちは自分たちのことを紹介し、ここに来るまでの間に何が起こったのかを剛に教えた。

 

「そのアナザーライダーっていう奴が過去で何かをして、クリムや英志に影響を与えているって訳か」

 

 普段の剛だったら半信半疑であるだろう内容だったが、現実に起こっているのを見ていると信じざるを得ない。

 

「何処に行ったかのか分かんなかったけど、多分あのアナザーライダーが向かったのは1575年だ。そして、そこでクリムたちと強い繋がりがある人を……この十字架がその人を見つける手掛かりだ」

 

 アナザーライダーを追う為の材料は揃った。

 

「これで、あの蛮野って人を──」

「……おい。今、何て言った?」

「え?」

 

 低い声で遮られソウゴが剛の顔を窺う。剛は激しい剣幕を見せていた。

 

「今、蛮野って言ったよな……?」

「え、ああ、うん。そのアナザーライダー、蛮野って呼ばれていたんだ……」

「……人を心底見下した態度の最低の悪魔みたいな奴だったか?」

「──少なくとも俺にはそう感じた」

 

 接触したのはほんの十数秒間だけだったが、喋っていた内容は殆ど他者を見下し、嘲るものであった。

 

「あの野郎ぉぉぉぉ!」

 

 剛は、近くの壁を怒声と共に殴りつける。

 

「生きていたのか……!? いや、蘇りやがったのかっ!?」

 

 声を掛けることすら躊躇う程の剛の怒気。蛮野という人物への底知れない怒りが感じられる。

 剛の怒れる声を聞き付け、不安定状態が収まった英志がおずおずと剛に尋ねる。

 

「あの……蛮野っていう人は、一体何者なんですか?」

 

 その瞬間、剛はバネ仕掛けの様な勢いで振り向き、睨む様な目付きを英志に向ける。

 

「知らないのか! 蛮野はっ──」

 

 そこでハッと何かに気付いた表情をし、剛は静かに言葉を継げる。

 

「蛮野は……ロイミュードを悪魔に変えた元凶だ。俺や進兄さん──お前の父さんの敵だった」

 

 今まで怒りが嘘の様に冷めた沈んだ声であった。ソウゴには剛は嘘は言っていないが、蛮野に関して何かを隠している様に感じた。

 

「そうだったのか……」

 

 未来では蛮野という存在がタブーと化しているらしく、英志は初耳という反応であった。

 

「……なあ、お前たちは蛮野が跳んだ過去を探っていたけど……追う手段もあるのか?」

「うん。あるよ」

「──そうか。なら、頼む!」 

 

 剛は何の躊躇も無く頭を深々と下げた。

 

「俺も過去に連れて行ってくれ!」

 

 

 ◇

 

 

 1575年。

 織田と武田の戦の気配がひしひしと近付いてくる中、庶民たちは戦は嫌だと思いながらも今日を生き、明日を迎えることに必死であった。

 使い古された小袖を纏い、頭にも同じく使い古された手拭いを巻く女性は、束ねた薪を担いで帰路を急ぐ。

 ここ最近、神隠しが起こっていると噂されており、自然と女性は足早となる。辺りに人がいないことが更に歩を早めた。

 すると、女性が突如横から伸びてきた手に腕を掴まれ、茂みへと連れ込まれそうになる。

 

「きゃあ!」

 

 悲鳴を上げて抵抗するが、引っ張る力が強過ぎて無意味に終わってしまった。

 そのまま女性は木の幹に背中を押し付けられる。この時、自分を連れ込んだ相手を初めて見た。

 

「きゃあああ!」

 

 またもや上がる女性の悲鳴。何故ならば連れ込んだ相手は、女性と全く同じ顔をしていたのだ。

 女性の見ている前でもう一人の女性は姿を変える。骸骨の様な顔。側面に羽の様な飾りを付け、その口は蛇の様な形状をしていた。

 

「ば、化け物──」

 

 そこで恐怖が限界に達したのか、女性は白目を剝いて気絶してしまう。化け物ことロイミュードは、気絶した女性の首に手を伸ばす。

 

「困るんだよねー。そういうことちょくちょくされると」

 

 軽い感じの男性の声。ロイミュードは手を止めて、声の方を見る。

 そこには二人の男性が並び立っていた。

 

「それにしても戦国時代にロイミュード? マッドサイエンティストって風情が無いねー」

 

 そうやって笑う男性であったが、その男は細身の体格をし髪は茶髪の上、ジーンズに灰色のシャツ。そしてボロボロの黒いロングジャケット。

 もう一人は、丸みのあるがっしりとした体型に癖の強い縮れた髪をし、ジーパンに白シャツ。その上に革のジャケットを羽織り、指ぬきグローブを着用していた。

 どちらも明らかに時代に合っていない未来の服装をしている。

 

「君たちがさぁ、何気無しにやっていることって俺たちからしたらすっごく迷惑な訳? 分かる? 色々と修正するのに時間も掛かるんだよー」

 

 ヘラヘラと笑いながら語る優男。太めの男の方は厳つい顔でロイミュードを睨んでいる。

 

「だからさぁ、何もせずにここは大人しく帰ってくれない?」

 

 優男がそう頼むと、ロイミュードは返事の代わりに音を鳴らす。すると、木の陰から次々とロイミュードが現れた。

 蛇を彷彿とさせるロイミュードは勿論のこと、蜘蛛に似たロイミュード、尖った大きな耳の様な装備がある蝙蝠に似たロイミュードも居た。

 全員が共通して胸に付けられたプレートにナンバーが無い。

 その光景を見て、優男は溜息を吐く。

 

「やっぱりこうなるかー。どうする?」

「構わん。全員、潰す!」

「やっぱりそうなるよねー」

 

 優男と太めの男の腹部に、浮かび上がる様にジクウドライバーが装着されると、二人はライドウォッチを取り出す。『0000』という有り得ない西暦が描かれたそれを半回転させ、仮面ライダーの顔を浮かばせると起動。

 

『ザモナス!』

『ゾンジス!』

 

 二人はそれをジクウドライバーのスロットにセットし、ドライバー中央のロックを解除。ジクウドライバーが傾くと同時に二人の背後に異なる時計型のエネルギーが生じる。

 優男の方は三本の金色の角飾りが付けられ、赤と紺色で半々に縁が彩られたもの。

 太めの男の時計は植物の様な装飾に覆われ、五箇所で赤い光を放っている。

 

「変身」

 

 優男は流れる様な動作でジクウドライバーを回転。

 

「変身!」

 

 太めの男は右人差し指と右親指を伸ばし、Jの文字を形作った後にドライバーを回転させる。

 二人の様子に危ないものを感じ取ったのか、ロイミュードが殺到する。

 

『ライダーターイム!』

 

 その時、優男から高熱の熱波が発せられ、押し寄せて来たロイミュードたちを纏めて吹き飛ばしてしまう。熱波が通過した場所は枯葉や木の枝など一斉に燃え始め、ロイミュードの何体かも火に包まれていた。

 

『仮面ライダーザモナスー!』

『仮面ライダーゾンジスー!』

 

 背後の時計型エネルギーを取り込みことで、二人の姿が変わる。

 ザモナスと呼ばれたそれは、赤と紺の二色の体。胴体には鱗の如く連なった装甲。両肩及び頭部側面に時計のムーブメントに似た黄金の装甲を付け額には真っ直ぐ上を向く時計針。顔に鋭角な黄色文字で『ライダー』が填め込まれている。

 ゾンジスと叫ばれたそれは、薄緑色の昆虫の外骨格を連想させる肉体。安易に晒さない様に金色のパーツで留められた黒いローブを纏っている。額に黄金の歯車の装飾と一対の針。その中央と口を覆う蛇腹の様な白いパーツ。こちらも同じく『ライダー』の文字が填め込まれており、暗い赤色をしている。

 見た目は異なるが共通して両腕にホルダーを巻き付けおり、そこには四つのライドウォッチが填められている。

 仮面ライダーザモナスと仮面ライダーゾンジス。ジオウたちですら知らない仮面ライダーたちが一足早くロイミュードたちの相手をする。

 ゾンジスはロイミュードたちに向かって悠々と歩いて行く。ロイミュードの一体がゾンジスに殴り掛かる。が、ゾンジスは怯むどころかそのまま歩き続けていた。

 もう一体がしがみつくがゾンジスの歩みは止まらない。もう一体、もう一体としがみついて止めようとするが、ゾンジスの歩みを鈍らせることも出来なかった。

 ロイミュードが七体しがみついたところでゾンジスは歩みが止まる。しかし、それはロイミュードたちの重さに屈したからではない。

 

「ふん!」

 

 ゾンジスが拳を突き出す。ロイミュードの頭を貫通し、その奥のロイミュードの胴体も容易く貫いた。

 そのままゾンジスは両手を伸ばし、別のロイミュードの頭を掴むと、リンゴでも握り潰すかの様に粉砕。

 ゾンジスによって破壊されたロイミュードたちはワイヤーフレームの形となり、破片も残さずに消滅する。

 

「あー、やっぱり複製品か」

 

 ザモナスはリムが金で出来たクロスボウをジクウドライバーから取り出し、番えた矢の先をロイミュードに向ける。引き金を引くと橙色の光矢が飛び出してロイミュードを貫く。

 

「手応えが無い。つまらん」

「同感だね。なら、もう少しスリルある戦いでもしようか」

 

 ザモナスはクロスボウを放り棄てると同時に跳躍。自らロイミュードたちのど真ん中に移動した。

 

『アマゾンオメガ!』

 

 腕のホルダーにあるライドウォッチが触れずに起動。ザモナスの両脚に鋭い刃が並び生える。

 

「しっ!」

 

 跳び上がると共に繰り出される後ろ回し蹴り。ロイミュードの頭部が豆腐の様に切り裂かれる。ザモナスは着地と跳躍を差も無く行い、今度は真上に上げた足をロイミュードの脳天に振り下ろす。ロイミュードの体は開きと化す。

 

「オラオラオラァ!」

 

 ライドウォッチの影響か、それとも戦闘のスイッチが入ったのか荒々しい声を出して逆立ち状態となると、頭を支点にして回転。周囲のロイミュードの脚を次々と切り裂いていく。

 

「ふん!」

 

 ゾンジスが拳を放てば、一撃でロイミュードは粉砕。蹴りを放てば、数体のロイミュードの上半身が纏めて飛んで行く。

 ロイミュードたちが指から光弾を何発も撃ち出すが、ゾンジスの肉体に傷一つ与えることが出来ず、間合いを詰められて全員潰される。

 たった二人の仮面ライダーによってロイミュードたちは為す術無く蹂躙されていく。

 だが、ロイミュードたちもただやられていない。

 ある程度まで数を減るとロイミュードたちは一箇所に集まり始める。

 

「何かするのかなー?」

 

 ザモナスは妨害出来るが敢えてせず、それを眺めていた。ゾンジスも腕を組んでそれを見ている。

 すると、ロイミュードたちは一つに融合し、二十メートル程の巨大なロイミュードたちと化す。

 巨大化したロイミュードを見上げ、ザモナスは一言。

 

「なーんだ。そんな程度か」

 

 詰まらなそうな声を出し、巨大ロイミュードに背を向ける。

 

「任せたよ。あんまり待たせないでね?」

 

 ザモナスがゾンジスの肩を軽く叩く。

 

「安心しろ。一瞬で終わる!」

 

 ザモナスの後ろでライドウォッチの音が響く。

 

『J!』

 

 続いて大地が大きく揺れ動く。大地自身が悲鳴でも上げているかの様に。

 結果など見るまでも無いと言わんばかりにザモナスは最後まで振り返ることは無かった。

 ロイミュードたちを全滅させた二人は変身を解く。

 

「さあて、そっちはどうする?」

「蛮野天十郎を探す。見つけ次第俺が殺す」

「そう。じゃあ、俺はジオウたちが来るのを待ってるよ。後を追えば見つけられそうだし」

「分かった。それで行く」

「また後でねー」

 

 優男は軽く手を振って太めの男と別れる。

 ジオウたちは、この時代で待つアナザーダークドライブ以上の脅威をまだ知らない。

 

 




という訳で戦国時代編ではマッハも参戦します。
そして、一足早くザモナス、ゾンジスの戦闘シーンを入れてみました。

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