仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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タイトル詐欺回。
もしかしたら一話増えるかもしれません。


アナザーダークドライブ1575(中編)

「はぁ……これがお前たちのタイムマシーンか……」

 

 ソウゴ専用のタイムマジーンのコックピットの中を見渡しながら剛は好奇心に満ちた声を出す。

 結局、ソウゴたちは剛の頼みに根負けし、彼も過去に連れて行くことに決まった。

 英志の話を聞くに彼もまた仮面ライダーであり、戦う力を持っている。幸い、彼の変身アイテムはクリムによって作られた物ではないらしく、今の所歴史改変の影響を受けていない。

 

「カメラ、持ってこればよかったなぁ。こんなチャンス、滅多にないし」

 

 心底残念そうな様子の剛に、ツクヨミは少し前まであれ程真剣に頭を下げていた人と同一人物であるのか疑わしく思ってしまう。

 

「何か急に雰囲気が変わったわね」

 

 最初に出会った時から同行が決まるまで常に険しい顔を浮かべていたせいで真面目な人という印象であったが、今は大分軽い雰囲気になっており、お調子者という印象に変わっていた。

 

「そう? まあ、まだ会ってすぐだしね」

 

 ソウゴは剛の雰囲気の変化を特に気にしていなかった。ソウゴが言うように剛と会ってまだ間もない。今の剛の振る舞い方が素の性格なのか、わざと明るく振る舞っているかも判断し難い。剛という人間を理解するにはもう少し時間が必要なのである。

 

「英志ー。聞こえる?」

『うん。聞こえているよ』

 

 ソウゴが呼び掛けると、英志の声がタイムマジーン内に響き渡る。

 英志はソウゴとゲイツのタイムマジーンに搭乗しておらず、ネクストライドロンに乗っていた。色々なことを想定し、持って行くことにしたのだ。

 ただ、ネクストライドロンで過去に跳ぶには大量のエネルギーが必要であり、帰れなくなってしまうので、タイムマジーンによって過去へ運んでもらう。ネクストライドロンなら時間跳躍の中でも耐えられる仕様となっている。

 ならばどうやって運ぶのか。その問題もネクストライドロンの機能を使えば簡単であった。

 ネクストライドロンから伸びる二本の鎖。結び付く先には二体のタイムマジーン。鎖は半透明の水色のエネルギー体で出来ていた。これはネクストライドロンのデータを実体化させる機能によるものである。

 

「そう言えば、クリムの先祖って外国人じゃないの? 戦国時代とどう繋がるんだろう?」

「戦国時代は南蛮貿易っていってポルトガルとかスペインとかと貿易してたみたいだし、それ関係かも。それに俺たちにはこの手掛かりがある」

 

 ソウゴはクリムの屋敷跡で見つけた十字架をツクヨミに見せる。

 

「あとは行ってから考えよう」

「まあ、それしかないわね……」

 

 歴史を知っていても、詳細は着いてからでないと分からない。

 

「んじゃ、行きますか?」

「行こう! 1575年へ!」

 

 ソウゴはタイムマジーンのレバーを操作すると、タイムマジーンが浮遊。空に時間跳躍の為のゲートが開く。

 二体のタイムマジーンが飛翔するとそれにネクストライドロンも引っ張られ、三台のマシーンはゲートに飛び込み、過去へ跳ぶ。

 そして、ソウゴたちはあっという間に1575年へと辿り着く。時間にすればほんの数分の出来事であった。

 タイムマジーンから降り立ったソウゴたちの前に約500年前に広がる。

 最初に感じたのは青々としたニオイと土の混じったニオイ。

 電柱の代わりに木々が並び立ち、舗装された道路など無く土がむき出しになり、人々の足で均された道。それが視界一杯に広がっていた。

 喧騒は聞こえず、遠くで鳴く鳥の声や虫の鳴き声がやたらと耳に入って来る。

 

「ここが1575年か……」

 

 タイムマジーンから降りた剛は、忙しなく周囲を見回す。分かっていてもあまりに呆気無く辿り着いてしまうと中々実感が湧かない。

 

「戦国時代かぁ。もしかしたら信長に会えるかも!」

 

 歴史の中で特に王と呼ばれた存在に心惹かれていたソウゴは、万が一の出会いを期待して心を躍らせる。

 

「第六天魔王と呼ばれた織田信長と我が魔王常盤ソウゴが時間を超えた邂逅をする! 家臣として是非ともその瞬間に立ち合い、祝福をしたいものだ!」

「そんな余裕はあるのか? 俺たちは一刻も早くクリム・スタインベルトの先祖を見つけないといけないんだぞ?」

「でも、ゲイツ、長篠合戦図屛風に出てたし、信長と会うことになるんじゃないの?」

「あー、あのニュースで出てたのってお前だったのかー!」

「だから俺は知らんと言っている!」

 

 若干緊張感の抜けた会話をするソウゴたちに、ツクヨミは呆れた様子で言う。

 

「もう、あんまり騒がないの。今の私たちがこの時代の人たちに見つかったら騒ぎになるかもしれないのよ」

「どうやら、もう遅いみたいだ」

「え? どういう」

 

 ウォズの言葉の意味を聞こうとしたとき、木の上からツクヨミ目掛けて黒い影が降って来る。

 しかし、その影がツクヨミに触れる前にウォズのストールが巻き付き、空中で停める。黒い衣装で目元以外隠すその姿は、紛うことなき忍者。

 

「忍者!? 本物!?」

 

 戦国時代で真っ先に忍者に会えたことに目を輝かせるソウゴ。

 

「いきなり襲って来るとは。君たちの目的は何だい?」

 

 ストールで縛り付けたまま尋問するウォズだが、忍者は一言も喋ろうとはしない。

 それを不信に感じる一同。その時、頭上からウォズの死角を狙って手裏剣が投擲される。咄嗟のことでウォズは避けることも気付くことも出来ない。

 すると、水色の光を残しながら空中を疾走するシフトネクストスペシャルが手裏剣を弾き、更に英志が所有する残り三体のネクストシフトカーが同じく空中を走り回りながら、周囲の木々に向かっていく。

 建設車両に似たネクストビルダーが木の幹の周りを周回すると見る見るうちに大木が削れ、倒木。倒れた木は別の木を巻き込んで倒れていき、そこに潜んでいた忍者たちを落とす。

 落ちた忍者たちはパトカーに似たネクストハンターが出現させる柵が囲み、デコトラに似たネクストデコトラベラーが放った光の鎖によって拘束された。

 

「お見事。助かったよ」

「やるなぁ、英志!」

 

 助けられたウォズは素直に礼を言い、剛は機転を利かせた英志を褒めながら肩を軽く叩く。叔父に褒められた英志は照れくさそうにしていた。

 

「さて、これで君の仲間は──ん?」

 

 皆が見ている前で忍者の体がテクスチャーでも剥がす様に変化し、機械の体を持つロイミュードへと変化。本性を現すとストールの拘束を力尽くで外してしまう。

 

「ロイミュード!?」

 

 ネクストシフトカーによって拘束されていた忍者たちも擬態を解いてロイミュードへ戻り、柵や光の鎖を破壊して拘束から逃れる。

 

「どうやら、相手の準備も順調に進んでいる様だ……」

 

 十体のロイミュードたちに囲まれ、ウォズが冗談っぽく言う。

 ソウゴたちがウォッチやドライバーを構える前にロイミュードたちが指先の銃口から一斉に光弾を発射しようとした時、剛のパーカーから五色の光の軌跡を描きながら飛び出した物が、ロイミュードたちに体当たりしていく。

 手のひらサイズの物体が遥かに大きいロイミュードたちを突き飛ばす。それはバイクの形をしていた。

 

「今だ!」

「ありがとう! 皆行くよ!」

 

 ソウゴたちは剛が作ってくれた時間を無駄にしない為、すぐにジクウドライバー、ビヨンドライバー、量産型ドライブドライバーを装着。ソウゴたちはライドウォッチをドライバーに、英志はシフトネクストスペシャルをシフトブレスに装填する。

 

『変身!』

『仮面ライダージオウ!』

『仮面ライダーゲイツ!』

『仮面ライダーウォズ! ウォズ!』

『ドライブ! タイプネクスト!』

 

 ジオウ、ゲイツ、ウォズ、変身した姿を見て剛は目を丸くする。

 

「自己主張激しいなぁー」

 

『ライダー』『らいだー』の顔文字への感想だった。

 

「そして、お前はやっぱそれかぁー」

 

 ドライブTNの姿を見て剛は複雑な表情を浮かべる。一度敵として倒した経験があるせいで、今度は味方として一緒に戦うと思うと不思議な気持ちになる。だが、決して悪い気持ちではない。

 

「なら、俺も行きますかぁ!」

 

 装着するベルトは、メタリックブルーの外装にバイクのマフラーを模したパーツが付けられた左右非対称のドライバー。その名もマッハドライバー炎。

 ロイミュードたちを蹴散らして戻って来たバイク、シフトカーから派生したアイテムであるシグナルバイクの内、白いバイク──シグナルマッハを掴む。

 マッハドライバーの右側を上部にスライドさせ、スロットを出すとそこにシグナルマッハを挿す。

 

『シグナルバイク!』

 

 スロットを倒し、元の位置へ戻すとマッハドライバー中央にシグナルマッハのタイヤ側面に刻まれたRの文字が映し出される。そして、マフラーから炎の様な光が噴き出す。

 

『ライダー!』

 

 剛は右腕を掲げながら体を左側に捻り、両手で大きな円を描きながら今度は逆方向に体を捻ると、掲げている腕の肘下に左手の甲を当てる。

 

「レッツ、変身!」

『マッハ!』

 

 剛を囲む様に光の輪が出現すると、それが物質化しタイヤの形状となった剛を前後で挟む。タイヤは幾つものパーツに分解されて、剛の体に装着していき、装甲へ再変換された。

 全身は純白の装甲。頭部はバイクのヘルメット形状のマスクでありバイザーは青色。頭部中央、胸部左側に赤い線が二本走り、ストライプになっている。

 左肩部には赤白のストライプのマフラーが二枚。右肩部にはタイヤ型のパーツが装備されている。

 全員が変身し終わり、いざ戦いが始まる──

 

「追跡!」

『え?』

「撲滅! いずれもーマッハ!」

 

 ──前に始まる前口上。急に始まったそれにジオウたちは戸惑って動きを止めてしまう。そんな彼らの前で大仰なポーズを決める剛が変身した仮面ライダー。

 その名も──

 

「仮面ライダーマッハ!」

 

 派手な名乗りと共にポーズまで決めるマッハに、ジオウたちは沈黙してしまうが、ドライブTNだけはそれを喜んでいた。

 

「懐かしいなぁ、子供の時に何度も見せて貰ったやつだ」

「そうなの? 俺って結構甥っ子を可愛がるタイプなんだ」

 

 ドライブTNは純粋に喜ぶ姿に、マッハは気を良くしている。

 

「ああいうのって俺もやった方がいいのかな?」

「我が魔王の名を知らしめるには有効な手段かもしれない。一緒に考えてみよう」

 

 ジオウとウォズはマッハの名乗りに刺激を受け、自分たちの名乗りも考えることを前向きに検討し始めていた。

 

「戦いに集中しろ!」

「そういうのは後にして!」

 

 ゲイツ、ツクヨミは悠長なジオウたちを怒鳴り、戦いに集中するよう注意しながら弓モードのジカンザックス、ファイズフォンXでロイミュードたちを撃つ。

 

「ごめん、二人とも」

「取り敢えず、『時の王者』という台詞は外せないね」

 

 ジオウとウォズもジカンギレードとジカンデスピアを取り出し、ロイミュードたちに斬り掛かる。

 

「どんなものか、お手並み拝見」

「はい!」

 

 ドライブTNはブレイドガンナーをデータから物体化させる。それぞれが愛用の武器を構える中、マッハの右手にもいつの間にか武器が握られている。

 マッハと同じカラーリングの銃。特徴的なのは、銃身の下にタイヤのパーツが付いている。

 マッハはロイミュードが接近するのを捉えると、タイヤを手で回転。

 

『ゼンリン!』

 

 右肩に付いたタイヤが後輪なら、右手に握る銃のタイヤは前輪。その名の通りゼンリンシューターをマッハは下から突き上げる。

 ロイミュードの体をタイヤが通過。回転摩擦によって金属の体は削り取られ、火花と共に散っていく。その抉られた箇所目掛け、ドライブTNがブレイドガンナーのアームガードを打ち込む。損傷した箇所に拳打の衝撃と水色のエネルギーを流し込まれたことでロイミュードの体は粉砕される。

 破壊されたロイミュードの体は色を失い、体の輪郭だけが残ると、その輪郭も粉々になって消滅する。

 

「これは!?」

「……ナンバー無しでおかしいとは思っていた」

 

 目の前のロイミュードたちが自分たちの知るものとは大きく異なる存在であると認識させられる。

 

「恐らくは、アナザーダークドライブの能力だ。あのアナザーライダーは複製を生み出すことが出来る」

 

 ウォズはジカンデスピアの穂先でロイミュードを突きながら、今戦っているロイミュードたちの正体を説明する。

 

「そういうことか……相変わらずロイミュードたちを利用するんだなっ! 蛮野っ!」

 

 どこかにいるであろう蛮野に怒りをぶつけながら、マッハは跳躍し、ロイミュードの一体に膝蹴りを打ち込む。

 

『シューター!』

 

 そして、着地と同時に別のロイミュードにゼンリンシューターの光弾で撃つ。今のマッハには鬼気迫るものがあった。だがそれは、魂を持たない操られるだけの哀れな傀儡たちを一刻も早く破壊しようとするマッハなりの彼らへの慈悲故の行動。

 マッハの怒りの中に憐憫の感情を見たジオウたちも、それに触発されて決着を急ぐ。

 ジオウはビルドライドウォッチを、ゲイツはスペクターライドウォッチを武器のスロットに填め込み、ウォズはジカンデスピアのタッチパネルを指でスワイプする。

 

『フィニッシュタァァイム!』

『フィニッシュタイム!』

 

 ジオウのジカンギレードにエネルギーが螺旋状に纏い、ゲイツがジカンザックスで相手を狙うとゲイツの周囲にエネルギー体のジカンザックスが無数に召喚される。

 

『爆裂DEランス!』

 

 緑に輝く穂先でロイミュードを突くウォズ。ボディを貫通されるとロイミュードは爆発せずにそのまま消滅。

 

『ビルド! ギリギリスラッシュ!』

『スペクター! ギワギワシュート!』

 

 ドリルの様に回転するエネルギーでロイミュードを貫くジオウ。ジカンザックスから光矢を放つと、周囲のジカンザックスからも光矢が発射される。

 胴体に風穴を開けられたロイミュード、ハリネズミの如く全身に光矢を射られたロイミュードが消滅した。

 ドライブTNがブレイクガンナーのスロットにネクストハンターを挿す。

 

『ハンター』

 

 機械的な音声が鳴り、ブレイドガンナーの剣身が青白い輝きを放つと、ドライブTNはそれを地面に突き立てる。

 光は地面に角張った線を残しながらロイミュードたちの足元まで伸びると、光が実体化をし、ロイミュードたちを捕らえる円形の柵となる。

 

「剛叔父さん! 今だ!」

「ありがとよ!」

 

 マッハはマッハドライバーからシグナルマッハを取り出し、青色のシグナルバイクを入れる。

 

『シグナルバイク!』

 

 そして、それをマッハドライバーの中に押し込む。

 

『シグナルコウカン!』

 

 すると、右肩のタイヤ側面に枝分かれをした矢印が浮き上がった。

 

『カクサーン!』

 

 交換したシグナルバイクの名が呼ばれると、マッハはゼンリンシューターの側面にシグナルマッハを挿入。

 

『ヒッサツ! フルスロットル!』

 

 ゼンリンシューターを真上に掲げ──

 

『マッハ!』

 

 引き金を引くと、マッハの頭上に通常時よりも一回り以上大きな光弾が打ち上げる。しかし、そのままではただ光弾を打ち上げただけで何の意味も無い。すると、マッハはマッハドライバー上部にあるスイッチを素早く四回叩いた。

 

『タクサンカクサーン!』

 

 その音声通り光弾は拡散し、柵の中のロイミュードたちへ豪雨の様に降り注ぎ、全身を撃ち抜く。そのダメージに耐え切れず、残りのロイミュードたちは消えて無くなった。

 

『オツカーレ』

 

 その音声後、マッハの変身が解除され、ジオウたちも変身を解く。解除後の剛の表情はかなり険しいものであった。

 

「私たちが来ない内に相手も色々と仕込んでいるみたいだ。我が魔王、急いだ方がいいかもしれない。時間が経って不利になるのは我々だ」

「だとすると手掛かりはあの屛風絵だな。織田軍か武田軍にロイミュードたちが潜んでいるかもしれん」

「そうだね。よし、手分けして行こう。俺とゲイツと剛は織田軍に、ウォズとツクヨミと英志は武田軍にコンタクトをとってみよう」

 

 ソウゴの提案に異論の声は上がらず、それぞれ別行動をとることとなった──筈だったのだが、武田軍との接触を目指していたツクヨミたちに暫くしてソウゴから連絡が入る。

 

「どうしたの? ソウゴ? 何かあったの?」

 

 緊急の連絡だと思い、ツクヨミの声は深刻なもの。その声を聞いて、ウォズも英志も自然と耳を近付ける。

 

「はあっ!?」

 

 途端、ツクヨミから困惑の大声が発せられ、ウォズたちは仰け反った。

 

「──分かった。後で合流しましょう」

 

 そう言ってツクヨミはファイズフォンXの通話を切る。

 

「どうかしたの?」

「……ゲイツが信長の影武者になったって」

「……え?」

「……流石は魔王と呼ばれた男。この展開は私の予想外だ」

 

 聞かされた内容に英志もウォズも戸惑っている様子。

 ソウゴが言うに、信長は一人の女性を連れて旅に出てしまったという。女性はオランダ人で名はクララ・スタインベルト。

 

「スタインベルト……!」

「余程の偶然でなければその女性がクリム・スタインベルトの先祖で間違いないね」

「なら早く見つけないと! 彼女に何かあったら歴史が変わってしまうわ!」

「信長の方も危ないかもしれないね。仮にアナザーライダーによって討たれたのならば……」

 

 その時は、歴史が大きく狂うことを意味する。

 

「早くソウゴと合流して信長たちを追いましょう!」

 

 

 ◇

 

 

 一方、織田軍陣地では甲冑を纏ったゲイツが苦い表情で床几と呼ばれる簡易式の腰掛に座っていた。織田軍と接触するだけなのにどういう訳か一気に影武者にまでなってしまい、未だに戸惑いが残っている。

 周囲では信長の家臣たちが慌ただしく兵たちに指示を飛ばしている。信長はいい加減な奴であったが、部下は優秀なのがせめてもの救いであった。

 

「何か大変なことになったな」

「そうだな……というか何だその恰好は?」

 

 ゲイツの隣でぼやくのは剛。彼は戦国時代に合わせて薄茶色の着物を着ていたが、何故かその上に不似合いな白パーカーを羽織っているという奇抜な格好であるが、どういう訳かゲイツ以外誰も不自然に思わない。

 

「いやぁ、信長様の方も普段から奇抜な格好や行動をしているので拙者たちも慣れてしまったでござる」

 

 その疑問に答えたのは、同じくゲイツの傍に立つ青年。名は牛三といい、織田軍に仕える忍者である。曲者と勘違いされ、いきなり襲撃されたがその時にソウゴが見事な動きを見せたのを切っ掛けに信長と接触する機会を作ってくれた──言い換えれば、この影武者騒動の発端と言えるが。

 

「そういうものなのか……? まあ、信長の行動が変なのは認めるが……」

「伝えられてきたイメージと大分違ったよなぁ?」

 

 言動が軽く、戦よりも女の方を優先してどこかへ行ってしまった信長。第六天魔王という異名からかけ離れていた。

 

「ゲイツ殿、剛殿には迷惑を掛けるでござる。この牛三! 信長様が戻るまでの間、命を懸けてお二人をお守りするでござる!」

 

 やたら暑苦しい牛三に、ゲイツは何とも言い難い表情をし、剛は苦笑いを浮かべている。

 

「最近は武田の忍も不穏な動きを見せているでござるからなぁ!」

「武田の忍……」

 

 二人の脳裏に忍者に擬態したロイミュードたちが浮かぶ。

 

「もしかしたら武田軍に?」

「ああ、かもしれんな」

 

 武田軍の中にロイミュードたちが入れ替わっている可能性が出て来る。

 

「牛三殿! 来て下され!」

「何用か? 申し訳ないでござる、ゲイツ殿、剛殿。しばし、席を外すでござる!」

 

 部下に呼ばれて牛三が陣地から離れていく。陣地内に残されるゲイツと剛。

 

「──いいのか?」

「何が?」

「クララ・スタインベルトを守らなくて。あの女性がクリムの先祖だ。彼女が死ねば仮面ライダードライブも仮面ライダーマッハも消えるんだぞ?」

「──それだけじゃない。クリムが居なければ俺のダチも消えちまう」

「ダチ?」

「そいつはクリムが作ったロイミュードなんだよ」

「何だと!?」

 

 ロイミュードを友人と呼ぶ剛に衝撃を受けるゲイツ。

 

「今は居なくなっちまったけどな。そいつを蘇らせる為に俺は生きているんだ」

 

 剛は遠くを眺める。彼の脳裏にはそのダチとの思い出が流れているのかもしれない。

 

「そのダチ曰く、人間を守るのが仮面ライダーの使命らしい。ロイミュード相手だといくら戦国時代の武士でもきついだろ? ちゃんと相手出来る奴が相手しないとな」

「一つ聞きたい。蘇らせて……どうするつもりだ?」

「どうするか、か……俺はアイツとちゃんとしたダチになりたい。居なくなる前に言えなかったからな」

 

 ゲイツは剛という男に共感を覚えていた。最低最悪の魔王として倒す筈であったソウゴといつの間にか友情を築いていた自分と剛が重なる。

 

「お前もダチは大切にしろよ?」

「──覚えておく」

 

 ぶっきらぼうに言うゲイツの肩を、剛は笑いながら軽く叩く。

 

「あれ? 空振りかぁ」

 

 軽薄そうな声。その声の方に目を向けると、明らかに現代の服装をした優男が立っていた。かなり近い距離にいるのに声を掛けられるまで存在感すら無かった。

 

「仮面ライダーゲイツに仮面ライダーマッハかぁ。全然違うなぁ」

 

 二人の正体を知っている口振りに、ますます警戒心が強まる。

 

「貴様! 何者だっ!」

「……蛮野の仲間か?」

「どっちかというと敵? そういう意味では君たちの味方だけどね」

 

 ヘラヘラと笑う優男。正直、不気味さしかない。

 

「ところで信長ってどこ行ったのかな? 多分、女性も一緒の筈なんだけど」

「言うと思うか?」

「怖いなぁ、ゲイツ君。そんなに睨まないでよ」

 

 優男は飄々とした態度を崩さない。

 

「今教えてくれたら、大人しく消えるよ。()()()()()()()()だし、あんまり痛いことをしたくないなぁ」

「こっち側? どういう意味だ!?」

「信長とクララ・スタインベルトの居場所を教えてくれたら教えてあげる」

 

 クリムの先祖の名まで知っている。最早、ゲイツと剛は優男を敵と認識した。

 

「断る!」

「言う訳ないでしょ」

「そう。──なら、ちょっと強引に聞かせてもらおうかな」

 

 優男がジクウドライバーを装着し、ライドウォッチまで構えたことに驚愕するゲイツたち。

 

『ザモナス!』

「変身」

『ライダーターイム!』

 変身と共に熱風が吹き荒れ、陣地内が燃え上がる。

 

『仮面ライダーザモナスー!』

 

 未知なる仮面ライダー、ザモナスを前にしてゲイツと剛もすぐさま変身。

 

「変身!」

「レッツ、変身!」

 

 仮面ライダーゲイツとマッハに変身すると、同時に仕掛ける。

 ゲイツが先制の前蹴り。ザモナスはそれを身を翻して避けると、そこを狙ってマッハが拳を突く。

 それを叩き落とし、カウンターでマッハの腹に膝を入れ、ゲイツの横顔を肘で殴りつける。

 ゲイツとマッハは怯むが、すぐに弓モードのジカンザックスとゼンリンシューターを構え、マッハはゼンリンシューターのタイヤで攻撃を仕掛けるが、それが届く前にザモナスはマッハの腕を掴む。その瞬間、ジカンザックスの光矢がザモナスに射られるが、頭部に飛翔してきたそれを、頭を動かすだけで躱してザモナスもクロスボウを取り出し、そこから光の矢を射ってゲイツに命中させる。

 

「ぐあっ!」

「ゲイツ!」

 

 マッハは脚を振り上げて、上段蹴りでザモナスの側頭部を打ち抜こうとするが、掲げられたザモナスの腕によってそれを防がれる。

 だが、それだけでは終わらない。

 

『アマゾンアルファ!』

 

 ライドウォッチの音声が鳴ると、腕からヒレ状の連なった刃が生え、マッハの足を斬り付ける。

 

「うあっ!」

 

 ザモナスはそのままマッハを片腕で放り投げる。

 

「馬鹿な!? 触れずにライドウォッチの起動だと!?」

 

 今までにないライドウォッチの使い方に、ゲイツは驚く。

 

「君たちも結構出来るみたいだからさぁ、これで分かったでしょ? 信長たちの居場所を教えてくれないかなぁ」

 

 ザモナスの言う通り、直に戦ったことで相手が強敵であると理解出来た。だが、そうであったとしてもゲイツもマッハも大人しく降参などしない。

 

「断ると言った筈だ!」

「そういうこと……!」

 

 射られた箇所を抑えながらゲイツは立ち上がり、マッハも片足を引きずりながら戦いの構えを見せる。

 二人の衰え無い戦意に、ザモナスは溜息を吐く。

 

『アマゾンネオ!』

『アマゾンネオアルファ!』

 

 二つライドウォッチが鳴ると、ザモナスの両腕から赤熱化した金属らしきものが流れだし、形を変えて武器を形成する。

 右手には両刃の長剣。左手には機関銃を付けたチェーンソー。チェーンソーの刃が回転し、駆動音を鳴り響かせる。

 

「じゃあ、もっと痛い目を見てもらおうかな」

 

 

 ◇

 

 

 ツクヨミたちと合流したソウゴは、すぐに信長たちを探すこととなった。早く見つけなければアナザーライダー、ロイミュードに襲われるかもしれない。

 が、広く雄大な大地で土地勘が無いソウゴたちが信長とクララを探すのは至難の業──だと思われていたが、持ってきたネクストライドロンの機能を使えばその問題もすぐに解決した。

 ネクストライドロンに二人の身長や身体的特徴のデータを入力すると、車体から光が発せられ、それにより周囲一帯を一瞬で調べ上げられる。そして、すぐに条件と合致する二人を察知することが出来た。

 その情報を基に信長たちを探すソウゴたち。すると、河原で火を起こそうとしている信長とクララを発見した。幸いまだ敵に見つかっていない。

 ソウゴたちが近付く。それに気付かずに信長が種火を作る為に何かを燃やそうしていた。すると、風に乗ってニオイが漂って来る。それは、あの十字架と同じニオイであった。

 

「あれは!?」

 

 ウォズが何かに気付き、急いで信長に駆け寄るとその手から長方形の木を奪い取ってしまう。

 奪い取った木をウォズが一嗅ぎ。

 

「やはり蘭奢待!」

 

 興奮した面持ちである名を出す。

 

「蘭奢待?」

「国宝級のお香だよ。信長が持っていたっていうのは聞いていたけど」

 

 ツクヨミの疑問にソウゴがすかさず答える。王に関することなら本当に色々な知識を持っている。

 

「その方ら! この信長の邪魔をするか!」

 

 信長の一喝に場が静まる。流石は戦国時代の武将、と思いきや。

 

「クララちゃんが寒がってるじゃん! 早く焚き付け返して! ほら!」

 

 急に態度が軟派なものに変わり、動きもナヨナヨとし出す。

 

「あれが本当に信長なの? ソウゴが憧れていた?」

「僕の知っている信長のイメージと全然違う……」

 

 ツクヨミと英志はイメージと全く異なる信長の姿に本物か疑ってしまう。

 

「確かにイメージとは違うけど、ちょっと面白くない?」

 

 ソウゴの方は、イメージと違う信長に失望することなく寧ろ楽しんでいる様子であった。

 

「──ジオウか」

 

 緩やかであった空気がその声で一瞬にして緊張感に満ちたものに変わる。彼らの前にジーパンに革ジャンという現代の服装をした太めの男が現れた。

 その男を見た時、ウォズは人知れず目を見開く。

 

「丁度いい。ここで潰す!」

『ゾンジス!』

 

 出現するジクウドライバー。翳されるライドウォッチ。その二つはソウゴたちを驚かせるのに十分であった。

 太めの男は右人差し指と右親指を真っ直ぐ伸ばす。見間違えか、Jという文字が浮かび上がった様に見えた。

 

「変身!」

『ライダーターイム!』

 

 ソウゴたちの変身と同じ様に時計型のエネルギーが浮かび、それを鎧として纏い、『ライダー』という文字を顔に埋め込む。

 

『仮面ライダーゾンジスー!』

 

 変身後のゾンジスに驚くも、ソウゴと英志も変身。

 

『変身!』

『仮面ライダー! ライダー! ジオウ! ジオウ! ジオウⅡ!』

『ドライブ! タイプネクスト!』

「何あれ? かっけー!」

「そんなことを言ってないで今はここから離れて!」

 

 ジオウⅡとドライブTNに目を輝かせる信長を引っ張って、ツクヨミはクララと一緒に巻き添えにならない場所まで離れていく。

 ジオウⅡとドライブTNはすぐにサイキョーギレードとブレイドガンナーでゾンジスに斬りかかった。

 

「ふん」

 

 ゾンジスは避けるもせず、サイキョーギレードを胸で、ブレイドガンナーを腹で受け止めてしまう。

 

「堅っ!?」

「そんな!?」

 

 ゾンジスの体があまりに堅過ぎて斬った方が反動で痛みを覚える。ゾンジスはジオウの顔面を殴り、ドライブTNの胴体を蹴り飛ばす。

 

「ぐあっ!」

「ううっ!」

 

 蹴り飛ばされたドライブTNは吹っ飛ばされていくが、殴られたジオウⅡは地面に叩き付けられた状態。ゾンジスはジオウⅡの頭を鷲掴みにして持ち上げる。

 

「このまま、砕く!」

「うあああああっ!」

 

 ミシミシと音を立て、ジオウⅡの頭が締め上げられていく。その痛みにジオウⅡは絶叫を上げる。

 

「ウォズ! 何をしているの! ウォズ!」

 

 何時もなら真っ先に駆け付ける筈のウォズが変身もせずに棒立ちとなっている姿を見て、ツクヨミが叫ぶ。

 その声を聞いて、ウォズはハッとした表情となり、ビヨンドライバーとギンガミライドウォッチを出す。

 

「潰れろ!」

 

 だが、ウォズが変身するよりもゾンジスがジオウⅡの頭を握り潰す方が早い。

 

「させ、るか!」

 

 ジオウⅡはサイキョーギレードの切先をゾンジスに押し当てる。

 

『ライダー斬り!』

 

 先端からマゼンタの斬撃が飛ぶ。零距離で受けたゾンジスは思わずジオウⅡから手を離し、後方に吹っ飛ばされてしまった。

 ここでようやくギンガファイナリーとなったウォズがジオウⅡに駆け寄る。

 

「──申し訳ない。我が魔王」

「だ、大丈夫、大丈夫。いてて……」

「我が魔王!」

 

 無事なことをアピールするつもりだったが、逆に心配させてしまう。その時、突然ジオウⅡはウォズを突き飛ばす。

 

「離れて! 来る!」

 

 ジオウⅡの未来予測が、立ち上がるゾンジスの姿を映し出していた。その予測通り、ゾンジスは何事も無かったかの様に無傷で立っている。

 生半可な攻撃は一切通用しない。ならば文字通り最強の一撃を浴びせるしかない。

 ジオウⅡはサイキョーギレードとジカンギレードを組み合わせる。

 

『サイキョー! フィニッシュタァァイム!』

 

 サイキョージカンギレードから伸びる巨大な光の刃。

 

『キング! ギリギリスラッシュ!』

 

 それをゾンジス目掛けて振り下ろす。

 

「面白い! 来い!」

 

 ゾンジスは振り下ろされたそれを肩で受け止めた。サイキョージカンギレードの光刃はゾンジスを斬り裂くことが出来ず、その外皮で止まってしまう。

 

「だったら!」

『ライダーフィニッシュタァァイム!』

 

 ジクウドライバーで解放したジオウライドウォッチⅡの力をサイキョージカンギレードへ流し込む。

 光刃は輝きを増し、耐えているゾンジスの足が地面に沈み込む。

 このまま押し切る──そう思ったジオウⅡの耳にある音声が入って来た。

 

『ZO!』

 

 聞いたことのないライドウォッチの音声。それを鳴り響かせたのはゾンジス。

 

「はああああ……!」

 

 ゾンジスは肩に光刃を受けたまま前身をし始めた。ジオウⅡはサイキョージカンギレードに力を込めるが、ゾンジスのそれ以上の力のせいで押し込めることが出来ない。

 ゾンジスが発動したZOライドウォッチの能力は至って単純、使用者の身体能力を上げること。だが、元々規格外のゾンジスがそれを使えば、恐ろしい程の効果を発揮する。

 

「おおおおおおお!」

 

 光刃を伝う様にゾンジスが疾走する。最強の一撃を受けた状態で攻撃を仕掛けてくるなどジオウⅡにとって予想外のこと。

 ジオウⅡを間合いに入れた瞬間、ゾンジスは新たなライドウォッチを起動。

 

『シン!』

 

 ゾンジスの指先から鋭い爪が伸び、それがジオウⅡの頭を掴み、腕から生える鋸状の刃がジオウⅡの喉を──

 

 

 




クォーツァーは一つのウォッチから複数の能力を引き出す、という感じの戦い方をさせていくつもりです。

先にどちらが見たいですか?

  • IF令和ザ・ファースト・ジェネレーション
  • IFゲイツ、マジェスティ
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