仮面ライダージオウIF―アナザーサブライダー―   作:K/K

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強くし過ぎたかも……


アナザーダークドライブ1575(後編その1)

 ジオウⅡの喉元にゾンジスの刃が届こうとした時、割って入る掌がそれをジオウⅡの代わりにそれを受け止めた。

 

「ウォズ!」

 

 ウォズはそのままジオウⅡの胸にもう片方の掌を押し当て、エナジープラネットの反発する力で彼を押し飛ばす。

 

「うあっ!」

 

 数メートル飛んだ後、今度は数メートル転がっていくジオウⅡ。丁度、見守っていたツクヨミたちの位置まで移動させられた。

 

「我が魔王! この相手は危険だ! すぐに離脱を! ここは私が食い止める!」

「でも、ウォズ!」

「ソウゴ! ここはウォズの言う通りにして! 私たちの本当の目的を忘れないで!」

 

 ジオウⅡらが過去に来たのはアナザーダークドライブを倒す為。あの正体不明のライダーと戦うのが目的ではない。それにこのまま戦えば信長とクララも巻き添えになる可能性もあった。

 

「ウォズ……無事に戻って来てくれ!」

「──大丈夫。私は君の家臣だよ?」

 

 ゾンジスは一旦退いた後、体を仰け反らせる程拳を大きく振り翳し、前方に倒れ伏す様な勢いで拳を放つ。

 それを両掌のピュアパワーで防ごうとするウォズ。ゾンジスの拳は確かにピュアパワーの前で止まった。

 

「おおおお!」

 

 しかし、それは一瞬のこと。ピュアパワーを突き破り、その奥にあるウォズの顔面に拳を打ち込む。ゾンジスはライドウォッチで増強されたとはいえ、腕力のみでギンガファイナリーの力を破ってみせた。

 

「ウォズ!」

「いいから行くんだ!」

 

 ウォズはなりふり構わずゾンジスの胴体にしがみつきながら叫ぶ。殴られたダメージは大きく、膝が震えていたがそれでも持てる力を振り絞って足止めしようとしている。そこにゾンジスの肘がウォズの背に容赦なく振り下ろされるが、それでもウォズは耐える。

 すると、舗装されていない悪路をものともせずに木々の間を潜り抜けネクストライドロンが現れ、ジオウⅡたちの前で急停車する。ドライブTNが遠隔操作で呼び出したのだ。

 

「何これ!? すっげー!」

 

 何百年先の技術の集大成であるネクストライドロンに、信長は子供の様な好奇心を露わにする。ネクストライドロンのドアが開くと、そんな信長をツクヨミは蹴り飛ばして中に強引に入れる。

 

「ソウゴ! 早く!」

 

 後ろ髪を引かれる思いであったが、ウォズの気持ちを踏み躙ることも出来ず、ジオウⅡが中に入る。全員が乗車したのを確認すると運転席に座っているドライブTNは急発進をして、この場から離脱していった。

 ネクストライドロンが彼方に行ってしまうと、ゾンジスは肘を振り下ろすのを止め、ウォズを引き離す。ウォズの方も先程の抵抗が嘘の様にあっさりと離れた。

 

「何のつもりだ、ウォズ」

「それはこちらの台詞だよ、カゲン」

 

 ウォズは名乗っていないゾンジスの本名を口に出す。明らかに顔見知り同士の会話である。

 ウォズはそのままゾンジスに詰め寄る。額と額が今にも触れそうな至近距離で睨み合うが、ウォズとゾンジスはどちらも両手を下げたままであった。

 

「君が──」

「ジョウゲンも来ているぞ」

「……君たちがこの時代に来た理由は凡そ察せる。それについては咎めない。問題は別だ。何故常磐ソウゴを襲う? 予定と違う。まだその時では無い筈だ……!」

 

 ウォズが詰問するが、ゾンジスはそれを一笑する。

 

「──随分と肩入れをしているな。あの魔王に」

「答えになっていない! 君たちの行動は──」

「許可は下りている」

「な、に……」

 

 ゾンジスの一言に、ウォズの勢いは明らかに削がれた。

 

「ここで常磐ソウゴを排除しても何の問題も無い。もう既に簡単な修正で済む段階だ」

「……そう言っても勝手な真似をされると私が困る。……あのスーパータイムジャッカーと名乗っていたティードも君たちの差し金なんだろう?」

 

 ゾンジスから否定の言葉は出なかった。

 

「──兎に角、君たちが許可を得ようとも私は予定通りに動かせてもらう」

「俺に逆らうか。面白い」

 

 消えていた殺気が両者から立ち昇る。

 

「勝てると本気で思っているのなら、掛かって来い」

「ふっ。何時までも君が知る私ではないさ」

 

 ウォズは一笑してみえたが、それは虚勢である。仮面の下ではゾンジスの一挙手一投足に過敏な程神経を尖らせ、尋常ではない冷や汗を流し続けていた。自身の体の反応をウォズは過剰だとは思わない。これが当然の反応なのだ。

 

「なら離れなくてもいいのか? ここは俺の間合いだ」

 

 互いに手を伸ばせば相手に届く位置。だが、殴り合いになればゾンジスの方が有利。彼から受けた拳の重さと痛みはまだウォズの頬に残っている。

 しかし、距離を取ればウォズにも正気が見えて来る。中距離、遠距離はギンガファイナリーの得意とする間合いである。

 どうやってゾンジスから離れ、その間合いを維持しようかと思考を巡らせしようとした時、ゾンジスはウォズの目の前で腕を組む。

 

「十秒やる。好きにしろ」

 

 ゾンジスから与えられるハンデ。通常時ならば屈辱的な行動であったが、今のウォズにはそれを感じる余裕など無い。

 ウォズのエナジープラネットを纏わせた掌打がゾンジスの頬を打つ。

 

「十、九」

 

 ゾンジスは顔を横に向けたまま、それを合図にしてカウントダウンを開始する。

 

「はっ!」

 

 往復するウォズの掌打。手加減無しの必殺の意志を込めて繰り出している。

 

「八、七、どうした? そんなものか?」

 

 宇宙のエネルギーを込めて打ち込んでいる筈の掌打は、ゾンジスの堅牢な外皮を貫けない。有り得ない事であったが、打ち込んでいるウォズ自身は効かないことに半ば納得してしまっていた。

 打ち込む手に伝わってくる途方も無い重み。等身大の相手にも関わらず、遥かに巨大な存在と対峙している様なプレッシャーをウォズは感じていた。

 

「三、二」

 

 カウントダウンも残り少ない。ウォズは接近戦を止め、ゾンジスから離れと同時にビヨンドライバーのレバーを素早く操作する。

 

『ファイナリー! ビヨンド・ザ・タイム!』

 

 ゾンジスの頭上に星雲が発生。渦巻く星々の中から大量のエナジープラネットがゾンジスに豪雨の如く降る。

 

『超ギンガエクスプロージョン!』

 

 大地に、ゾンジスに降るエナジープラネットが次々と爆発し、宇宙のエネルギーがゾンジスを覆い隠す。

 それを技の範囲外で見ていたウォズであったが──

 

「ゼロ、だ」

 

 宇宙のエネルギーが炸裂し続ける中でもハッキリと聞こえたゾンジスの声。その直後にエナジープラネットの流星雨を突き進んで全力疾走してくるゾンジスの姿が。

 急いで間合いを開けようとするウォズ。

 

『ZO!』

 

 後退しようとする足が何かによって止められる。地面から伸びる雑草、木の根がウォズの足に絡み付き、ウォズの後退を妨げていた。

 

「しまっ──」

 

 足元に気を取られてしまうウォズ。次にゾンジスを見た時には既に目の前にまで来ていた。

 

「ふん!」

 

 ゾンジスの剛腕から繰り出される一撃必殺すら可能な正拳。ウォズはエナジープラネットの障壁によってそれを防ごうとする。

 宇宙のエネルギーの壁は、ゾンジスの拳の威力を多少弱めることに成功したが、止めることまでは出来ず、エナジープラネットの障壁を突き破ってウォズの胸部に強打が炸裂。

 

「くあっ!」

 

 殴り飛ばされたウォズは、一直線に飛んで巨木に背中から叩き付けられ、その巨木はウォズが衝突したことでへし折れてしまう。

 

『J!』

「──はは」

 

 ゾンジスの右腕を媒介にして深緑色の半透明のエネルギーが何倍もの大きさの巨腕を作り出し、ウォズの前で拳を握り締める。その一切容赦の無いゾンジスの攻め方にウォズは思わず笑ってしまった。

 

「潰れろ」

 

 自分の体よりも遥かに巨大な拳を振るおうとするゾンジス。だが、巨大故に振り被るまでに僅かな時間が生まれる。

 この一瞬にウォズは最大の好機を見い出す。

 

『ファイナリー! ビヨンド・ザ・タイム!』

 

 再びゾンジスの頭上に星雲が生み出される。だが、ゾンジスは意にも介さない。自身に効かないと既に知っているからだ。

 

『超ギンガエクスプロージョン!』

 

 星雲から降り注がれるエナジープラネット。しかし、それらはゾンジスでは無く、彼の周囲に降ったのだ。

 無視しようとしていたゾンジスも、わざと外されたことで、ここでようやく意識を向けるが、既に遅い。

 エナジープラネットの爆破により地面に大きなクレーターが生まれ、それが連なってゾンジスを中心にして囲む大きな円が出来る。

 

「何を──むっ」

 

 ゾンジスの足が地面に沈み込む。土が柔らかくなったからではない。凄まじい圧力がゾンジス自身に掛けられていた。

 

「はあっ!」

 

 ウォズは持てる全ての力を使い、ゾンジス一点に絞って強力な重力を発生。数十或いは数百倍となったゾンジスの体が地面にめり込んだ。

 あと一歩踏み込めば、巨腕によってウォズを殴り飛ばすことが出来たが、エナジープラネットの爆撃によって脆くなった地面は、超重量と化したゾンジスを支えることが出来ず、蟻地獄の様にゾンジスを地面に引きずり込んでいく

 

「ウォズ……!」

 

 まんまとウォズにしてやられたゾンジスだが、発せられる声に怒り無く、寧ろウォズを称える様な響きがある。

 

「私たちのやるべきことが終わるまで、大人しく地面の中で待っていてくれると助かる」

 

 更に重力が増し、地面が先に陥没し、ゾンジスはそれに巻き込まれていく。

 ウォズの視界からゾンジスの姿が消える。このまま、もう一度技を放とうかと一瞬考えた時──

 

「星すら創り出す『創星』の力。味わってみるか?」

 

 ──陥没した地面から聞こえるゾンジスの声。その途端、自分が今立っている場所が急に恐ろしく感じた。ゾンジスの掌の上に乗り、命ごと握られている様な感覚を覚える。

 暫くして、ゾンジスは陥没した地面から姿を現す。重力によって潰された地面が隆起して、エレベーターで運ぶ様にゾンジスを上に押し上げた。

 周囲を見渡すが、ウォズの姿は見つからない。既に移動した後であった。しかも、一帯は荒らされており追跡出来ない様に痕跡も消してある。

 

「逃げたか。やるな」

 

 その気になれば追うことも可能だが、ゾンジスは変身を解いてしまい、太めの男──カゲンの姿に戻る。

 カゲンの目的はアナザーダークドライブを倒すこと。ジオウは二の次である。偶然出会った為に倒そうとしたが、ウォズによってそれも阻まれてしまった。

 

「褒めてやる、ウォズ。お前の勝ちだ」

 

 

 ◇

 

 

 その頃、ウォズによって逃がされたソウゴたちは安全と思われる場所でウォズが戻って来るのをひたすら待っていた。

 ソウゴは落ち着かない様子でウロウロと歩いている。日も大分傾いてきており、そろそろ夜に近い。

 

「あのさぁ、大分日も落ちて来たし、そろそろ火とか起こさない? クララちゃんも寒そうだし、火が無いと獣とかが来るかもよ?」

 

 信長が確認する様に言ってくる。自己中な態度の目立つ信長だが、一応助けられた立場だと分かっているのかやや控えめな聞き方であった。

 

「ワタシなら、大丈夫デス」

 

 クララは片言の日本語で心配しない様に信長に言うが、それが反って信長の心を刺激する。

 

「クララちゃん、やーさーしーい! やっぱ、今火着けよう! うん! 着けよう!」

 

 自分から聞いておいて勝手に火の準備をし出す信長の姿にツクヨミと英志は呆れた眼差しを向ける。

 

「ウォズ……」

 

 そんな騒がしさなど無視し、ソウゴは心配そうにウォズの名を呼んだ。

 

「君にそんな顔をさせるとは。私も家臣としてまだまだ未熟だ」

「ウォズっ!?」

 

 夕闇に紛れてウォズがソウゴたちの前に現れた。

 

「ウォズ! 無事なの!?」

 

 ツクヨミは慌ててウォズの全身を見る。少なくとも外傷は無い。

 

「ああ。とてつもない相手だった。何とか足止め出来たが……」

「兎に角、無事で良かった」

 

 ウォズの帰還に安堵するソウゴたち。

 

「でも、すぐにここから離れた方がいいんじゃない? また来るかも」

 

 あくまで足止めされたに過ぎないので、また追って来るかもしれないと懸念するツクヨミ。

 

「──いや、その心配は無い」

 

 それを否定したのはウォズであった。

 

「どうしてそう言えるの?」

「……足止めと言っても大きなダメージを受けていた。追うよりも治療を優先する筈だ」

 

 事情を知れば。この言葉がウォズの真っ赤な嘘であることが分かるだろう。ウォズが追って来ないと確信しているのは、ウォズとカゲンが顔見知り以上の関係であり、ウォズがカゲンの性格を良く知っている為である。

 しかし、この場に事情を知る者は居ない。周りもそれを聞いて納得する。すんなりとウォズの言葉を鵜呑みに出来るのは、ウォズへの信頼の表れであった。そのことに多少の罪悪感を覚えるのか、ウォズの微笑はやや引き攣っている。

 

「──今が戦国時代で良かった」

 

 薄暗さが引き攣ってしまった笑みを見難くしてくれる。

 

「ん? 今何か言った?」

「何も。さて、夕食の準備をしよう」

 

 ウォズはいつもの様に振る舞うことに努める。決して、素顔を悟られない様に。

 

 

 ◇

 

 

 人が得る情報の八割は視覚、という言葉がある。視覚から得た情報は脳へ送られ、過去の経験に基づいて想像を与える。

 話は変わるが、人生に於いて一度も傷付くことなく生きて来た者など生まれたて赤子を除けばほぼ存在しないだろう。

 切り傷、擦り傷、火傷などなど大なり小なりの傷と痛みを経験する。ましてや仮面ライダーとして戦うゲイツとマッハは常人以上に傷と痛みを経験している。

 故に最悪なことに──

 

 ギュイイイイイイイイイイイイイ

 

 ──二人は目の前で甲高い音を立てながら刃を回転させるチェーンソーの痛みを容易に想像出来てしまった。

 

「随分とロマンチックな武器だな……」

「悪趣味な奴め……」

 

 マッハは軽口を言い、ゲイツは毒吐く。台詞は対照的だが、仮面の下ではどちらも苦い表情をしている。

 

「ふふっ」

 

 二人の内心を見抜く様にザモナスは笑うと、左手を一振り。チェーンソーに付けられた機関銃から弾丸がばら撒かれる。

 弾丸はゲイツたちの足元に着弾し、土煙を巻き上げる。

 視界が土煙によって閉ざされ、ザモナスの姿を見失う。ただ、鳴り響くチェーンソーの回転音だけが嫌になるほど聞こえてきた。

 ゲイツは土煙の中で微かに輝く鈍色を見た。次の瞬間、土煙を斬り裂いて長剣がゲイツの首目掛けて飛んで来る。

 

「くっ!」

 

 斧モードのジカンザックスで咄嗟にそれを受け止めるが、一撃で両肩の骨が外れそうな衝撃が伝わり、踏ん張っている両足も地面を抉って後退させられる。

 だが、ザモナスの攻撃はこれで終わらない。右の長剣の次は、左のチェーンソーが待っている。

 回転が更に増したチェーンソーの刃が、無防備なゲイツの胴体に振るわれる。

 

『ズーットマッハ!』

 

 その音声の後、いつの間にか移動していたマッハがゼンリンシューターのタイヤでチェーンソーの刃を受け止める。

 

「させねぇよ!」

「へー」

 

 マッハの動きにザモナスは感心した様な声を出した。

 チェーンソーの刃とタイヤ。共に回転する物同士が衝突し、火花を散らす。だが、どちらも鍔迫り合いをするつもりはない。

 

『シューター!』

「おっと」

 

 ゼンリンシューターの銃口から光弾が発射されるが、ザモナスは至近距離でのそれを難なく躱し、お返しに付属の機関銃から弾丸を撃つ。

 しかし、マッハの姿が消え、次の瞬間にはザモナスの横顔がゼンリンシューターのタイヤで殴打される。

 

「あれ?」

 

 気の抜ける様な声の後に殴り飛ばされるザモナス。マッハがシグナルマッハから得た高速移動に咄嗟に対処出来なかった結果である。

 

「──助かった」

「こういう時は、お互い様」

 

 そう言ってマッハの姿が消える。高速移動を開始し、ザモナスに追撃を行うつもりらしい。

 そうなるとゲイツもとるべき行動が決まって来る。

 

『ゲイツリバイブ! 疾風!』

 

 ゲイツリバイブライドウォッチを起動し、ジクウドライバーにセットして即座にドライバーを回転させる。

 

『リバイ・リバイ・リバイ! リバイ・リバイ・リバイ! リバ・イ・ブ! 疾風! 疾風!』

 

 ゲイツリバイブ疾風へ形態変化すると、つめモードにしたジカンジャックローを握り締め、ゲイツリバイブもまた高速での移動を開始。

 

「一体何があったでござるかぁ!」

 

 騒がしい音を聞き付け、用事を途中で止めて牛三が戻って来る。彼が見たのは槍や刀を構えて逃げ腰になっている武士の姿。

 

「どうしたでござる!?」

「も、物の怪が……!」

「物の怪?」

 

 牛三が見たのは、紺と赤の二色の人らしき者が吹き荒れる白と青の風に翻弄されている姿。

 

「な、何が起こっているでござるか!? ──はっ! ゲイツ殿と剛殿は!?」

 

 ゲイツと剛の姿が見えず急いで周囲を探す牛三。その間にもザモナスとゲイツリバイブたちの戦いは続いていた。

 目にも止まらぬ速度でザモナスの肩が削られたかと思えば、脇腹に裂傷が生じる。それにザモナスが気付いた時には胸部にその両方の傷が刻まれていた。

 ゲイツリバイブとマッハによる疾風怒濤のコンビネーションを浴びせ続けられるザモナス。

 

「速いなぁ」

 

 だが、ザモナス本人は傷付けられてもまるで他人事の様であった。

 

「あー、痛い痛い」

 

 ふざけているのか本気なのか分からない声を出しながら長剣を振ろうとして根本から折られたので投げ捨てる。チェーンソーを振り回し、機関銃を撃つがどれも当たらない。

 

「……でも、意外と嫌いじゃないよ。こういう──」

 

 ザモナスのホルダーに填め込まれたウォッチの一つに変化が起こる。浮かぶライダーの顔はピラニア、或いは蜥蜴を彷彿とさせる赤い顔に緑の目。その目が白色へと変色した。

 

「──血生臭くなる戦いは」

『アマゾンアルファ!』

 

 高速移動しているマッハが拳をザモナスの頬に打ち込む。それと同時にマッハの腕がザモナスに掴まれる。ライドウォッチの能力で視覚以外の感覚を鋭敏にさせ、殴打された瞬間反射的に動いてマッハを捉える。

 

「うおっ!?」

 

 そして、マッハを地面に投げつけた。

 

「見ぃつけた」

 

 倒れたマッハの顔を覗き込むザモナス。左腕のチェーンソーを振り上げながら。

 

『リ・バ・イ・ブ! 剛烈! 剛烈!』

 

 しかし、そのチェーンソーが振り下ろされることは無かった。剛烈へ形態を変えたゲイツリバイブが自らの体にチェーンソーを押し当ててそれを止めたのだ。

 

「わお。ゲイツ君、カッコいいねぇ。流石は主人公候補」

「訳の分からんことを!」

 

 ザモナスの言葉を怒鳴り返すゲイツリバイブ。

 

「あの声! もしやゲイツ殿!?」

 

 ここで牛三がゲイツリバイブとゲイツが同一人物であることに気付く。

 ゲイツリバイブはザモナスの脇腹を殴りつけ距離を開けると、ジカンジャックローをつめモードからのこモードに切り換える。

 

『パワードのこ!』

 

 突き出されるジカンジャックロー。それを迎え撃つチェーンソー。ぶつかり合う回転鋸と鎖鋸。互いの刃を噛み合い、削り合う。

 

「うぐああああああ! 何て音でござるぅぅぅ!」

 

 高速回転する金属同士の衝突音は凄まじい音を鳴り響かせ、聞き慣れていない牛三や戦国の武士たちは耳を押さえて悶え苦しむ。

 

『のこ切斬!』

 

 ジカンジャックローの回転数が増し、ザモナスのチェーンソーを破壊。その流れでザモナスの胸部を強打する。

 

「おおっ」

 

 胸を抉られて後退するザモナスであったが、数歩後退する内にその傷は治ってしまった。

 

「やるねぇ、ゲイツ君」

「化物か……」

 

 驚異的な回復力を見て、ゲイツは吐き捨てる様に言った。

 

「もう少し本気をだそうっかなぁー」

 

 傷があった場所を埃でも払う様な仕草で撫でながら、ザモナスは言う。口調は軽いが、戯言には聞こえなかった。

 ゲイツリバイブとマッハは無言で息を呑む。

 

「多分、ゲイツ君たち死んじゃうと思うから、もう一度聞いておくね。──信長とクララ・スタインベルトはどこ?」

「誰が──」

「待つでござるぅぅぅ!」

「牛三!?」

 

 ザモナスとゲイツリバイブたちの間に牛三が割って入る。

 

「君、誰?」

「拙者の名は牛三! 信長様に仕える忍でござる!」

「ふーん。で? その牛三君が何の用?」

「信長様とクララ殿は既に旅に出てしまったでござる! 拙者たちも行き先は知らないでござる! ゲイツ殿はただ信長様の影武者を押し付けられたに過ぎないでござる!」

 

 ゲイツたちの身を案じ、自分たちが信長たちの行方を知らないという事実を教える。

 

「ふーん……」

 

 ザモナスは探る様に牛三を見ていたが、やがてベルトを外して変身を解除した。

 

「そうだったんだ。迷惑かけたね」

 

 あまりにあっさりと戦いを止めてしまい、逆に不気味に感じてしまうゲイツリバイブたち。

 

「牛三君だっけ? ちょっと来て」

「な、何でござるか?」

 

 手招きされて馬鹿正直に寄っていく牛三。

 

「おい!」

 

 ゲイツリバイブが呼び止めようとするが間に合わなかった。

 

「ちょっと手を出して」

「こうでござるか?」

 

 牛三の掌に手を翳すと、そこから大量の金貨が落ちる。牛三の掌では収まり切れず、大量に零れ落ちていく。

 

「おおおおおおおおおお!?」

「迷惑料。これで好きなものを何でも買っていいよ」

 

 それだけ言うともう用は無いと言わんばかりにさっさと去ろうとする。

 

「待て!」

 

 これ程不審な人物を簡単に野放しに出来る筈も無くゲイツリバイブが止めようとする。

 

『アマゾンネオ!』

 

 ライドウォッチの起動音。すると、地面から黒い液体が湧き上がり、人型となって蟻を思わせる怪人たちに変わった。

 

「二つだけ教えてあげる」

 

 優男は振り返らずに告げる。

 

「これが全ての生命を生み出す『創生』の力。そして、もう一つ、俺の名前はジョウゲン。また会おうね、ゲイツ君」

 

 ひらひらと手を振り、背後の喧騒から優男ことジョウゲンは離れて行ってしまった。

 

 

 ◇

 

 

「凄ーい! 速ーい! 足痛くなーい!」

 

 ネクストライドロンの中で子供の様にはしゃぐ信長。

 ゾンジスやアナザーダークドライブの襲撃があるかもしれないと考え、一晩明かした後にネクストライドロンでクララの目的地まで向かっていた。

 

「でも狭ーい!」

 

 全員乗車している為にネクストライドロン内はぎゅうぎゅう詰めになっている。

 

「文句を言わない!」

「はい……ごめんなさい」

 

 ツクヨミに叱られ、しょぼんとして肩を落とす信長。その頭をクララが撫でて慰める。

 

「この信長が本物かどうか分からなくなるわ……」

「でもさ、ツクヨミも俺に会った時は俺が最低最悪の魔王だって思わなかったでしょ?」

「それは……そうね」

「どんなに歴史の中で色々と書かれていても、これが信長と俺の今なんだ。ツクヨミもゲイツも今の信長と俺を見て、色々と思い直してくれてるでしょ?」

 

 ソウゴが言う通り、ツクヨミの中ではソウゴとオーマジオウが結び付かなくなっている。恐らくはゲイツも──。

 二人の会話を聞きながら、ウォズは『逢魔降臨暦』を一瞥し、隠す様にしまった。

 

「あ、見えたよ」

 

 運転していた英志が目的地周辺に到着したことを告げ、ネクストライドロンを停車。ソウゴとツクヨミの会話は一旦打ち切りとなる。

 クララが目指していたのはとある農家であった。何故そこに用が、と誰もが疑問に思った時、突然クララが走り出す。

 

「ピエトロ!」

 

 農村の庭には宣教師の姿。ピエトロと呼ばれた宣教師は、クララを見て驚いた表情をする。

 

「クララ! ドウシテココニ!?」

 

 互いに近寄り、手と手を取り合うその姿。傍から見ても好意を寄せあう関係であることが分かる。信長など絶望に染まった表情をしていた。

 

「誰? ねえ、クララちゃん! その人、誰!?」

「このヒトは──」

 

 ピエトロとクララは互いに互いを思っていた。しかし、ピエトロは神に仕える身。思い断ち切れなかったピエトロは、クララから離れ、辺境の地で修行する為にクララの前から姿を消した。

 

「ワタシは、神は怒りにフレタ。ダカラ、ワタシの十字架はコワレタ」

 

 そう言って取り出した十字架には横棒が無くなっていた。その十字架はソウゴたちにも見覚えがある。

 

「ああ、もう! 面倒くさい奴!」

 

 神の怒りを恐れてクララの思いを受け取らないピエトロに業を煮やし、信長はピエトロの手から十字架を奪い取ると、壊れた箇所に蘭奢待を挿し込んだ。

 

「あっ!」

 

 ソウゴがクリムから渡された十字架を取り出し、ピエトロの十字架と見比べる。全く同じ形、そして同じ香り。

 

「そういうことか……」

 

 過去と未来が繋がった瞬間を見て、ソウゴは破顔する。ツクヨミたちも微笑ましくそれを見ていた。

 

「案内ご苦労。これで私の目的が達せられる」

 

 嘲りを含んだ声。暖かかった空気が一瞬で冷える。

 

「アナザーライダー!」

「蛮野天十郎!」

 

 アナザーダークドライブが白々しい拍手と共にソウゴたちの前に現れる。

 

「その二人をどうにかすればいいという訳だ」

「まさか、俺たちにクリムの先祖を探させていたのか!?」

 

 返って来た答えは嘲笑であった。

 

「フハハハハ! その通り! 地道に探すよりも利用出来る者を上手く利用すれば良い! 馬鹿共を私の様な存在が上手く使って初めて価値が生まれる!」

 

 どこまでも傲慢に振る舞うアナザーダークドライブに嫌悪感しか覚えない。

 

「ツクヨミ! 信長たちを安全な場所へ!」

「分かったわ!」

 

 ツクヨミに信長たちの避難を任せ、ソウゴたちはアナザーダークドライブの前に立ち塞がる。

 

『変身!』

『仮面ライダー! ライダー! ジオウ! ジオウ! ジオウⅡ!』

『ドライブ! タイプネクスト!』

『スゴイ! ジダイ! ミライ! 仮面ライダーウォズ! ウォズ!』

 

 ジオウⅡらは武器を構え、アナザーダークドライブと対峙する。

 

「何何何? あれ!? 怖っ!」

「いいから逃げる!」

 

 ツクヨミは混乱する信長たちを引っ張って一秒でも早く安全な場所を目指す。

 

「あんた、武田軍にロイミュードたちを送っているんだって?」

「ああ、偵察の為にな。それがどうした?」

「そのせいで歴史が大きく変わっても何も思わないの?」

「フハハハハハハハ! 何だそんなことか!」

 

 ジオウⅡの問いに、アナザーダークドライブは哄笑する。

 

「よく覚えておけ。歴史に真の価値が生まれたのは私がこの世に生を受けた瞬間からだ! それ以前の歴史などゴミ同然だ」

 

 自己中心的な考えを極めた様なアナザーダークドライブの主張に、ドライブTNとウォズは絶句してしまう。

 

「──そう、分かった。なら、あんたはここで絶対に倒す!」

 

 自分以外何も尊重しないアナザーダークドライブを確実に倒すべき存在と認識を改め、三人の仮面ライダーたちは走り出す。

 

「ふっ」

 

 アナザーダークドライブの胸にある亀裂から光が放たれ、ジオウⅡたちはそれを浴びる。

 すると、アナザーダークドライブの手にワイヤーフレームで出来たジカンデスピアとブレイドガンナーが生成される。

 サイキョーギレードで初撃を繰り出すジオウⅡをコピージカンデスピアで捌き、続いて接近してきたウォズにはコピーブレイドガンナーの銃口から光弾を浴びせる。そして、最後に詰めてきたドライブTNのブレイドガンナーの刃をコピーブレイドガンナーの刃で受け止め、空いているドライブTNの鳩尾に拳を捻じ込む。

 

「うあっ!」

 

 地面を跳ねて転がっていくドライブTN。

 

「英志!」

 

 ジオウⅡは未来予測でアナザーダークドライブの動きを予測しようとするが──

 

「ふん!」

 

 アナザーダークドライブの手から放たれる波動を受け、動きが完全に停止する。

 

「ソウゴ!」

「これは、重加速! いや──」

 

 重加速は動きが遅くなるだけで停止までには至らない。ならば、アナザーダークドライブが放ったのは──

 

「お前も止まれ!」

「しまっ──」

 

 ウォズもアナザーダークドライブの波動を受けて、完全停止してしまう。

 

「ハハハハハハ! これが超進化体の力だ!」

 

 勝ち誇った様に笑うアナザーダークドライブ。

 108ロイミュードが融合したことで誕生した超進化体のロイミュード。その体を奪ったことでアナザーダークドライブもその能力が使用出来た。

 通常の重加速よりもより強力な重加速を発生させ、相手を完全静止させ、しかもそれを全世界を重加速の影響下に置ける非常に強力な能力──になる予定だった。

 蛮野がコアを砕いてしまったせいで魂の無い超進化体となり、結果として能力が不完全に発動。全世界ではなく極狭い範囲で相手を完全静止させるという劣化能力となってしまっていた。

 蛮野本人は自分が大きな失敗を犯していることに気付いていない。尤も、気付いたとしてもその責任は自分ではなく他人に求めるだろう。

 しかし、幾ら劣化した能力だといっても少人数の戦いに於いては非常に凶悪な能力と化す。

 

「二人とも!」

 

 ドライブTNはネクストハンターとネクストビルダーを二人に走らせるが、接触しても停止状態が解除されない。それ程までに強力な重加速なのである。

 

「そんな……」

「無駄だ! 私とこの力の前では全てが無力!」

「そんなの……やってみないと分からない!」

 

 木々を薙ぎ倒してネクストライドロンが自動操縦で走り出す。車体側面にデータから砲撃機関を実体化させ、銃口から光弾を撃つ。

 

「ほう、面白い」

 

 アナザーダークドライブもまたアナザーネクストライドロンを呼び出し、同じく車体に実体化させた砲撃機関で撃つ。

 ドライブTNとアナザーダークドライブの周囲を旋回しながら撃ち合う二台。高度に計算された撃ち合いは、二人を避けながら互いを狙い合う。

 光弾が紙一重で交差していく中、ドライブTNはドライバーのキーを回す。それを見たアナザーダークドライブもまたドライバーのキーを回す。心成しかドライバー中央に填め込まれたバンノライドウォッチの顔が笑みを深めた様に見えた。

 そして、ドライブTNはシフトブレス側面のスイッチを押す。

 

『ネクスト!』

 

 周囲を走り回るネクストライドロンが地面ではなく宙にタイヤを向け、横向きになって走り出す。アナザーネクストライドロンも同じ走り方になる。

 ドライブTNは前傾姿勢となり、アナザーダークドライブも同じ構えを取る。

 

「はあっ!」

「ふん!」

 

 跳び上がり、空中で衝突する両者の右の蹴り。威力は互角であり、互いに弾き合う。すると、二人は走っている車を足場にして跳躍。再び衝突する蹴り。弾き合い、跳躍、そして蹴り。それをあらゆる角度で繰り返す

 それだけでなく走っているネクストライドロン、アナザーネクストライドロンは車体に砲撃機関を形成して光弾を発射。

 回転する二台の車の中で蹴撃、砲撃が幾度となく衝突し続けた。

 均衡する両者の力。しかし、決着の時は訪れる。

 

「うっ!」

 

 ドライブTNの身に発作の様に起こる時間改変の影響。よりにもよって影響は右足に起こり、足が半透明となってしまった。

 

「貰ったぁ!」

 

 衝突する筈であった右足を通過し、アナザーダークドライブの右の蹴りがドライブTNのドライバーに直撃する。

 

「うああああああああ!」

 

 ドライバーは破損し、蹴り飛ばされながらドライブTNの変身が解除されてしまう。

 

「う、ううう……」

 

 地面に横たわる英志。改変の影響は強さを増し、両足が消え掛かっていた。

 

「ふっ、終わりだな」

 

 アナザーダークドライブは嘲笑しながら手を英志に向ける。その瞬間、向けていた手が真上に伸ばされ、続いて打撃音が響いてアナザーダークドライブが後退する。

 英志を守る為にアナザーダークドライブの前に立つのは白いマフラーをなびかせるマッハ。

 

「剛叔父さん!」

「剛! お前か……!」

 

 アナザーダークドライブは怨嗟の声と共にその名を忌々しく呼ぶ。

 

「やった会えたな……! 性懲りも無くまた蘇ったか、蛮野!」

 

 マッハもアナザーダークドライブに対し怒りを露わにする。

 

「もう一度、この手でお前を倒す!」

 

 マッハは、赤いスポーツカーにサイドカーの様にバイクが付いたシフトカーを構え、それを変形させ、一台のシフトカーにすると、マッハドライバー炎からシグナルマッハを抜いて、それを挿す。

 

『シグナルバイク! シフトカー!』

 

 マッハの体が赤い光を発し、稲光の様なエネルギーと高熱を発生させる。

 

『ライダー! デッドヒート!』

 

 




因みにジョウゲン、カゲンはウォズよりも上の立場として書いています。

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