仮面ライダービルド アナザーワールド   作:ラズベアー

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本編
第1話


エボルトの脅威は去った。

 

地球にもたらされた、火星のオーパーツ・パンドラボックス。

地球外生命体・エボルトの手によって解放されたパンドラボックスは、巨大な壁「スカイウォール」を生み出し、この日本を東都・西都・北都の3つの都市に分断してしまった。

さらに、パンドラボックスの力でパンドラ・タワーも創られ、日本はおろか、地球まで消滅の危機に瀕していた。

でも、この世界の危機に4人の戦士が立ち上がった。

 

その名は、「仮面ライダー」

 

彼らは時に敵対し合い、時に手を取り合い、世界を救うため、エボルトに立ち向かっていた。

けれど、その仮面ライダーは今はいない。

それぞれ戦いの中で散り、または行方不明になってしまった。

 

彼らのお陰で世界の滅亡は阻止されたけど、崩壊してしまったこの世界に、どれだけの希望が残っているのか。それに、制御する者を失ったパンドラボックスからは、かつて仮面ライダー達が使っていたフルボトルの成分を元にしたスマッシュも生まれてしまった。

東都政府を中心とした新政府が歩兵型兵器ガーディアンを投入するも、それがいつまで持つか分からない。

 

「どうなっちゃうの…。助けてよ…。ねぇ、どこに行っちゃったの?」

「戦兎…、万丈…。」

 

石動美空は、戦士達が守り抜いた青空を見上げながら、こぼすように呟いた。

 

 

 

「政府官邸から、スカイウォールの残骸及びパンドラ・タワー近辺でスマッシュの活動が活発になっていると発表しました。これに対し、多数のガーディアンを投入しており、市民の皆さんの安全は守られているとー」

「嘘ばっかり。」

 

海辺にたたずむカフェ・nascita

先日退院した父・石動惣一と共に経営しており、ジャーナリスト・滝川紗羽もお手伝いで来ている。そこでテレビの報道を聞き、美空は大きなため息をついた。

 

「ほらほら美空ぁ、ため息ばっかりついてると、幸せが逃げちまうぞ。」

惣一はそう言い美空にコーヒーを淹れた。

「そんなわけないでしょ。」

美空はコーヒーを啜る。

 

美味しい。

やっぱり今目の前にいるのは、紛れもなくお父さんだ。

それだけでも、気持ちがほっとする。

 

美空は自然と微笑んだが紗羽に言われるまで気づかなかった。

「あ!美空ちゃん。やっぱり笑ってる方がかわいいわよ~。」

「え?笑ってなんかないよ。」

そう言われ、顔が熱くなっているのがわかった。

「でも…。」

美空はうつむいた。

「みんないたときの方が楽しかったなぁ…。」

美空の言葉に、紗羽は何と声を掛ければいいかわからなかった。

惣一も黙ってコーヒーメーカーの手入れを始めた。

 

 

しばらく沈黙が続いた後、ドアのベルが鳴った。

「まだやってるか?」

一人の男性がお店のドアをくぐってきた。

「え、お客さん?」

「うそ、お客さん?」

「マジで客か!?」

突然のことで、三人とも驚きを隠せなかった。

「いや、客以外来ることあるのか?」

お客さんと思われる男性は、三人の驚きように戸惑っていた。

「あ…。いや、どぉもどぉも!いらっしゃい!!」

「あ、えと…。な、何にいたしますか?」

惣一と紗羽はとりあえず接客を始めた。

「…。じゃあ、コーヒーを一つ。」

「かしこまりました!ほら、美空。突っ立ってないで席を案内して。」

「あ…。うん。どうぞ。」

美空は男性客をカウンターまで案内した。

 

珍しい。こんなところにお客さんだなんて。

 

今まで客足なんてほとんど、いや皆無と言っていいほどなかった。ましてや、色々な事情があったとはいえ、こんな海辺にお客なんてくること自体不思議でもあった。

 

でも、何だろう。

とても他人のように思えない、何とも言えない雰囲気を美空は彼から感じていた。

 

「…。何か付いてるのか?」

男性客の一言に美空は我に帰った。無意識の内にガン見してしまっていた。

「あ、ごめんなさい。何でもないです。」

「なら、いいんだが。」

そう言い、男性客はコーヒーを啜った。

「ん、悪くない。」

「そりゃあ、当店自慢のコーヒーですから!」

惣一は自信たっぷりに答えた。

「噂で、ここのコーヒーは飲めたもんじゃない不味さと聞いていたんだがな。」

「いやー、それは…。最近豆を変えてみたんだ。」

「そうか。」

男性客は特別興味がある様子ではなかった。

 

何この人、失礼な感じ。

 

美空は自分でもわかるほどムスッとした顔になった。

「他に客はいないんだな。」

「まぁ、こんな海辺でやってるってのもあるけど、このご時世、余程の用事でもない限り外に出るやつはいないだろうさ。」

「と、言うと?」

この男性客の一言に三人は違和感を覚えた。

「え、今起きてること、ご存知ないんですか?」

紗羽は尋ねた。

「いや…。ここに来たのもつい最近だからな。」

男性客は答えた。

「旅の人かい?」

惣一も尋ねると

「まぁ、そんなところだ。」

と男性客は答え、コーヒーを一口啜った。

「今はな、化け物がうろついてて危ないんだ。」

惣一はそう言い、今までこの国で起きていたことを簡単に男性客に伝えた。

「なるほど…。」

「あの、失礼ですけど、多分日本以外のお国でもそれなりに影響あったんじゃないですか?」

「…。多分な。」

紗羽の問いに答えるが、丸でその現象にあっていないように見えた。

 

美空は改めて男性客のことを観察した。

旅人というには手荷物を持たず身軽で、唯一見て分かるのは首から下げているトイカメラだけだ。

それに紗羽さんと同年代だと思うけどそれよりも少し老けて見える。疲れなのだろうか。でも目付きだけは鋭どく、どこか優しさも感じる。

 

何なんだろう、この人。

美空には違和感しか募らなかった。

 

「それで、その仮面ライダーってのは今はいないのか?」

「いないわ。」

美空が自分でも驚くほど瞬間的に答えていた。

「いたら…。いるのなら、こんな世界になってるわけないじゃない。」

何故かわからない。何とも言えない悲しみが膨れ上がり、美空の目から涙が流れていた。

「美空…。ちょっと疲れたんだろう。部屋で休んでなさい。」

答える前に美空は部屋へ向かった。

「ん、そっちは冷蔵庫じゃないのか。」

「そういう…。デザインの扉なの。」

紗羽が答えた。

「そ、そうか。」

男性客は不思議に思っただろう。

「あー、申し訳ないね。あいつ、美空は俺の娘なんだけど、看板娘にしちゃあ無愛想で。」

「いや…。」

「だが、大体わかった。コーヒー旨かった。娘さんにもよろしく言ってくれ。」

そう言い男性客は席を立った。

「これからどちらへ?観光といってもこの辺じゃあ観るものなんてないですよ。」

「そうだな…。そのパンドラ・タワーとやらを拝みにでも行くかな。」

男性客のその一言に、惣一は慌てて言った。

「お客さん、悪いことは言わない。あそこにだけは近づかない方がいいぞ。」

「ご忠告、どうも。」

男性客は扉の外へ出て行った。

「何なんだろな、今の客。」

惣一は、紗羽に聞いた。

「さぁ…。でも、何だか他人には思えない…。何だろ、うまく言い表せないんだけど…。」

「紗羽さんも?実は俺も思ってたんだ。あいつに似てるなって。」

 

そう。美空が感じていた違和感は紗羽も惣一も感じていたのだった。

 

 

美空はベッドの上で目を覚ました。

どれくらい寝ていただろうか。枕はしっとりと湿っていることから、寝る直前まで泣いていたのだろう。

重い瞼をこすりながらも、先ほどの男性客のことを考えていた。

 

今どこで何をしてるのだろう。

そう思った瞬間、美空は立ち上りそのまま店の外まで出て行った。

 

辺りはすっかり暗くなっていた。只でさえ人気の無くなった街が闇夜も相まって一層静かで不気味さを増していた。美空はまっすぐにパンドラ・タワーを目指していた。

多分、あの人はそこにいる。

根拠などないが、美空には彼がパンドラ・タワーにいると確信を持っていた。

パンドラ・タワーの近くについた時、回りの空気が変わったことに美空は気づいた。

 

「ヴゥゥゥ…。」

暗闇から、三体の怪物・スマッシュが現れた。それはかつて仮面ライダー達がボトルとして使っていた成分をモチーフにした姿だった。

「助けて。」

美空はその場で腰が抜けてしまった。

「助けて…、戦兎!」

祈るように呟いた。

桐生戦兎。仮面ライダービルドがすでにいないことはわかっていたのに。

「ヴァアアアア!!」

一体のスマッシュが襲いかかろうとしたとき、横から人影が飛んでいき、身体でスマッシュを突き飛ばした。

「大丈夫か、美空!」

そこにいたのは惣一だった。

「お父さん、どうして。」

「それはこっちの台詞だ。なんだってこんなとこに来たんだ。夜な夜な外に出ていくお前を見て追っかけてきたらこれだ。」

「お父さん、早く逃げよう!」

「いや、こう囲まれたら無理だ。」

「そんな。」

確かに、スマッシュ達は少しずつだがこちらと距離を詰めていた。

「美空…。俺が何とかするから、お前だけでも逃げろ!」

「そんな無理だよ、お父さん!」

「いや、無理じゃない。俺にはこれがある。」

美空は惣一の手元にあるものに気づいた。

「お父さん!?何で?」

「黙ってて悪かったな。」

そう言うと惣一は左手に持ったフルボトルを降り、右手のピストルのようなものに装着した。

 

「蒸血!」

 

コブラ…コ、コブラ…

ファイア!!

 

ピストル型のデバイス・トランスチームガンから吹き出した黒煙が惣一の身体を包み込み、爆炎と共に、美空の目の前には見覚えのある姿があった。

「ブラッド…、スターク…?」

 

かつて仮面ライダー達に敵対した怪人。惣一はそれを身に纏うと、スマッシュに攻撃をしかけていた。

「お父さん!どうして。」

「仮面ライダーが消えた。いや、戦兎を消してしまったのは、俺の責任だ。」

「違う!あれはエボルトが…。」

「あぁ。だが、俺の身体を使ってこの星を消そうとしたんだ。それに俺が火星からあんなものを持ち出さなきゃこうはならなかっただろ。」

ブラッド・スタークとなった惣一は続けて言った。

「俺はなぁ。意識はあっても何もできなかった自分が許せなかった。だから、せめて俺がこの国を守る。そう決めたんだっ!!」

トランスチームガン・ライフルモードでスマッシュを一体撃破した。

しかし、残りのスマッシュを相手にスタークも徐々に追い詰められていた。

「何してんだ。早く逃げろ、美空!!」

「嫌だよ、お父さん。もう一人にしないで!!」

「うわぁぁ!!」

ついにスマッシュの猛攻に耐えきれず、スタークは惣一の姿に戻ってしまった。

「み…、美空…。」

「お父さん!!」

 

その時だった、銃声とともに近づいていたスマッシュ達が退いていた。

「何…?」

「っ!あなたは。」

彼らの目には、昼間現れた男性客の姿があった。

「あんた…。やっぱりここに、いたのか…。早く、逃げろ…。」

しかし、男性客は逃げる素振りを見せない。

「全く…。こんなところでも除け者扱いか。ま、慣れてはいるがな!」

「え?」

彼の手には何かカードのようなものがあり、腰にはビルドドライバーに似ているベルトを身につけていた。

「お前は…。いったい…。」

惣一は男性客に問い掛けた。

「通りすがりの、仮面ライダーだ。覚えておけ。」

「変身!」

 

カメンライド・ディケイド!!

 

ベルトにカードを装填すると、いくつもの鎧の幻影が彼の身体を包み込み、無数の赤いカードのホログラムが顔へまとわりついた。

 

そこにいたのは、かつて美空達が見てきた仮面ライダーだった。

 

「仮面ライダー?」

「ディケイドだ。いくぞ!」

ディケイドと名乗る仮面ライダーはスマッシュへ攻撃をしかけた。

カードを次々とベルトへ装填し攻撃を加えていく。

その姿はまるで、仮面ライダービルドがフルボトルを換えながら戦う様だった。

 

ファイナルアタックライド

DDDディケイド!

 

「はあああああ!!!!」

ディケイドの飛び蹴りが一体のスマッシュの身体を突き抜け、スマッシュは爆散した。

「逃がすか。」

逃げようとするスマッシュを横目に、またカードを装填する。

 

カメンライド・剣!!

 

「姿が変わった?」

先ほどのマゼンタカラーの姿から一変し、剣を携えた群青色の姿に変わった。

 

ファイナルアタックライド

BBB剣!!

 

切っ先に集めたエネルギーを光刃にかえ、斬撃波をスマッシュへ放つ。それはスマッシュを切り裂き撃破した。

 

「ひとまず、さっきの喫茶店に戻るんでいいな。」

ディケイドの姿から元に戻った男性客は石動親子へ聞いた。彼らは黙って頷き、男性客とともにnascitaへ帰った。




仮面ライダービルド本編後のお話です。

新世界創造で戦兎や万丈は以前の記憶をそのままに、一方その他の登場人物は同一人物ではないため、それまでの記憶がない、というより経験していないことになっています。

戦兎は万丈がいること、何であれ世界が無事でいたことでバッドエンドにはなりませんでしたが、美空達はどうなの?と思いました。

個人的解釈かつファンからしたら邪道なのかもしれませんが、戦兎・万丈以外のキャラにも救われる展開を考え、こんな形にしてみました。

ゲストとして、世界の破壊者、トレジャーハンター、時の列車一行と登場します。
というか、世界の破壊者さんが8割主人公みたいな扱いです。笑
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