破壊と創造
光寫眞館。
光栄次郎と孫娘・光夏海の二人で経営している写真館だ。
フィルムから写真を現像するという、今となっては大層レトロな所だが、その懐かしさが良いのか客足が途絶えることはない。
また、写真館だけあって、結婚祝い、七五三、入学祝い等で利用する客も少なくない。
むしろ、ある青年のお陰で客足は伸びていた。
「ありがとうございました。また、後日写真を受け取りにいらして下さい。」
夏海は幼稚園の入園祝いで撮影に来た家族の対応をしていた。
「こちらこそ、良い写真を取ってもらいました。ありがとうございます。」
父親が答えた。
「ねー、ねー、パパ。あそこみてみたいな。」
男の子がある方向を指さして言った。
「あの、よろしいですか?」
「ええ、もちろんいいですよ。」
夏海は笑顔で答えた。
「わーい、おねえちゃんありがと!」
男の子も嬉しそうにしていた。
「良かったわねぇ。」
母親と手を繋ぎながら、ある部屋へ入って行った。
〔仮面騎士館〕
部屋には、表の写真とは毛色の違う写真が飾られていた。
「わぁー!かっこいいー!」
男の子は顔を輝かせていた。
「お、いらっしゃい!」
中で写真の手入れをしていた男性が声をかけた。
男の子の目に映る写真。
それは、門矢士が撮影した仮面ライダーの写真だ。
「おにいちゃん、これなんだかわかるの?」
男の子が男性に聞いた。
「もちろんさ!この仮面ライダーは…クウガだよ。」
「くうが?かっこいいね!」
「そうだろ?何たって、このお兄ちゃんが変身するんだからな!」
男性は得意気に言った。
「え!?」
男の子は驚いていた。
「ユウスケ君!?」
夏海は思わず声を出した。
「…。なんちゃって。へへ。」
小野寺ユウスケは茶化して笑った。
「なんだぁ…。」
男の子は不機嫌な顔になってしまった。
「で、でも!実はお兄ちゃん、クウガに助けてもらったんだ!」
「ほんと?」
「あぁ!何事も一生懸命頑張ると、必ず応援しに来てくれるんだ!君も良い子にして頑張ったら、きっと会いに来てくれるよ!」
「わかった、ぼくがんばる!」
男の子に再び笑顔が戻った。それを見たユウスケは親指を立てサインを送った。
「またねー、おにいちゃん、おねえちゃん!」
男の子を連れて家族は店を後にした。
「もぅ、ユウスケ君ったら!」
夏海は頬を膨らませていた。
「ごめんごめん、夏海ちゃん!つい…。」
ユウスケは言った。
「…でも、上手に男の子に言えましたね。」
「俺の言葉で笑顔を無くされちゃ、ライダーやってる意味がないからね。」
小野寺ユウスケは仮面ライダークウガである。
士達が訪れた"クウガの世界"で出会い、それから士達の旅に同行していた。一通りの旅を終えたので、元の世界に帰れるはずだが、世界の人々の笑顔を守りたいという信念から、ずっと一緒に旅を続けている。
「さあさあ、今のお客さんが今日で最後だから、お茶でもしよう。」
栄次郎は珈琲と紅茶を持ってきた。
「やーっと、ワタシも羽を伸ばせるわ~」
小さな白いコウモリのようなモンスター・キバーラも表に出てきた。
間もなくすると、店のドアが開き、門矢士と海東大樹が入ってきた。
「じいさん、この写真を頼む。」
士はぶっきらぼうに言うと、トイカメラを栄次郎に渡した。
「はいはい。さて、どんな写真が撮れたのかねぇ。」
栄次郎も快く受け取り、早速現像作業に取り掛かった。
「おかえりなさい、士君、海東さん。」
「ただいま、なつみかん。」
「珈琲、頂くよ。」
士と海東はそれぞれ席についた。
「二人一緒に帰ってくるなんて、珍しいね。」
ユウスケが言うと、
「たまたまだ。」
「たまたまさ。」
二人とも否定するように答えた。
「あー、はいはい。」
ユウスケも席に座って紅茶を口にした。
士にとって、ここは特別な場所だった。
ライダーの世界を旅する時には決まってここから始めていた。かつて大ショッカーの大首領として、また世界の破壊者として夏海達と対峙することもあったが、それでも最後には温かく迎え入れてくれた。士にとって彼女達はかけがえのない仲間なのだ。
一人で旅を始めてからも、度々ここへ戻る。それくらい士にとって居心地の良い所なのだ。
もちろん、士自身の生まれ育った世界もある。妹の小夜にも、たまに顔を出すこともある。しかし、ディケイドとしての始まりの場所は、やはり光寫眞館なのである。
「ほら、出来たぞ出来たぞ。」
栄次郎が皆の前に士が撮影した写真を広げた。
「どれどれ…。」
ユウスケは写真をまじまじと見た。
「士君、幸太郎さん達と会ったんですね。」
夏海は幸太郎達の写真を見つけて言った。
「まぁな。野上良太郎には会えなかったが。」
それでも、彼らと共闘できたことは、士にとって悪くはなかった。
「これって、新しいライダーか?」
ユウスケは石動美空と仮面ライダービルドが写っている写真を見て言った。
「あぁ。仮面ライダービルド。創る、形成するという意味のビルド、らしい。」
「へぇ、仮面ライダービルドかぁ。どんなライダーなんだ?」
ユウスケは興味津々で士に尋ねた。
士は、ビルドの世界での出来事を夏海達に話した。
「…。そんなことがあったんですね。」
夏海は、かつて自身の世界で起こったことを思い出しながら聞いていた。
「ラブ&ピースか…。一緒に戦ってみたかったな。」
「ユウスケと気が合うかもな。」
士はフッと笑いながら言った。
「しかし、破壊のディケイドに創造のビルド。一見すれば、まさに水と油のよう。相まみえることはないと思うけど…。」
海東が言った。
「何が言いたいんだ、海東。」
士は海東を睨みながら言った。
「それでも、破壊によって生まれるものもある。この旅で良いものを見させてもらったよ。」
海東から思いがけない言葉が出たことに、一同は驚いた。
「お前、頭でも打ったか?」
士は敢えて尋ねてみた。
「冗談はよしたまえ、士。僕はいつも通りさ。」
そういうと、海東はズボンのポケットからあるものを取り出した。
「なんだこれ?」
ユウスケは蜘蛛の意匠のある小瓶のようなものを見て言った。
「海東、お前…!」
それは、アシッド・ハンターが使っていたスパイダーフルボトルだった。
「残念ながらあの世界から離れた途端、その成分は抜け落ちてしまったよ。ただの空っぽさ。」
海東は続けて言った。
「ただ、このボトルがいつかまた何かを引き起こすかもしれない。」
「どういうことですか?」
夏海が尋ねた。
「…。さあね?」
海東はしらを切っていたが、何かを知っているようだった。
「そうだ!久しぶりに皆集まったんだ、記念写真を撮ろう。」
栄次郎は思い付いたように言い、撮影の準備を始めた。
「さてさて、背景は…。とと!」
栄次郎は躓いてしまい、スタジオの背景を下ろす紐にしがみついた。
すると、それはある様子を描いた背景へと変わった。
「これは…。」
世界の破壊者・ディケイド
数々の世界を巡り、その瞳に新たに映すものとは…。
エピローグ・ディケイド編
ゲストは、ディケイド本編の登場キャラクターである
光夏美、光栄次郎、小野寺ユウスケ、キバーラです。
ディケイド本編以降、士は数々の世界を一人で旅(客演)をしていました。
一人で旅ができる理由。それは帰る場所が必ずあるから、と解釈して描きました。
もちろん、小夜のことも忘れていませんよ。
ビルドVシネ・仮面ライダークローズにて、まさかのクモ由来のライダー(怪人?)の情報解禁がなされました。
なので、勝手にそれも示唆するかのような描写も作りました。Vシネ楽しみですね!
次回、電王編
お楽しみに!