「大丈夫かしら…。」
突然店を飛び出した美空を惣一追いかけて行った。それから一時間近く経っていて、紗羽は心配していた。
カランカラン
扉のベルがなり、美空と傷だらけの惣一、そして惣一を担いで昼間の男性客が入ってきた。
「っ!?どうしたのその身体!」
紗羽は男性客から惣一の身体を預かり、近くのイスに座らせると、急いで救急箱を取りに行き治療を始めた。
「まさか、あんたが仮面ライダーだったとはなぁ。」
紗羽の治療を受けながら惣一は男性客に言った。
男性客はまた黙ってコーヒーを啜った。
「あなたのお名前は?」
紗羽が聞くと
「門矢士だ。」
男性客は答えた。
「門矢士さん。仮面ライダーディケイド。」
美空は繰り返して言った。
「あぁ。」
「でも、私達の知ってる仮面ライダーと少し違う。」
美空が呟くと士は答えた。
「だろうな。俺はこの世界の住人じゃない。」
「どういうことだ?」
惣一が聞き返した。
「俺は、数々の仮面ライダーの世界を渡り歩きながら旅をしていたんだ。」
「じゃあ、他にも仮面ライダーがいる世界があるというの?」
紗羽が尋ねた。
「あぁ。それでここ"ビルドの世界"にたどり着いたという訳だ。」
仮面ライダーの世界がいくつもある。にわかには信じられない発言だったが、目の前にいる士という男も現にビルド達とは異なるライダーである時点で納得せざるを得なかった。
「だが、どういう訳かここには仮面ライダーが存在しない。不思議に思ってパンドラ・タワーを調べようとしたら。」
「…。俺たちがいたということか。」
「そういうことだ。」
「俺がライダーの世界にたどり着くとき。そこには俺がやらなきゃならない使命がある。」
「その、使命って?」
紗羽が尋ねる。
「それは…。」
三人は固唾を飲んで聞いていた。しかし。
「知らん。」
一瞬の間があいた。
「…。え?」
「俺にもここにどんな役割で来たか分からない。」
「え、何それ。どういうこと?」
先ほどの士の一言で、美空は一気に胡散臭さを感じた。
「あんた、数々の仮面ライダーの世界を旅するって言ってて何も目的がなくてやってるの?」
美空は士に食って掛かった。
「まぁ…。そういうことになるな。」
「え、は。え?じゃあ何しに来たの?」
「だから知らないと言っただろ。」
「すごいこと言ってると思ったら目的も無しにフラフラしてるって訳!?あり得ないんだけど!」
「み、美空、ちゃん?」
紗羽が引き気味に声を掛けるが、美空は止まらなかった。
「な、何だよさっきから。」
「ラブ&ピースのために戦ってるんじゃないの?」
「ら、らぶ…?」
士は困惑した。
「はぁ。呆れた。仮面ライダーなら戦兎達みたいにラブ&ピースのために戦ってると思ったのに、ただのちゃらんぽらんライダーだったなんて。」
「おい、黙って聞いていれば好き勝手いいやがって。」
士はムッとした。
「美空ちゃん、でもほら、アイドルのために戦うライダーもいたでしょ。」
「何?」
「かずみんのことはいいの!はぁ、もう疲れたし、だるいし、寝るし。」
美空はそう言うと、冷蔵庫の奥へ消えて行った。
「だから、何で冷蔵庫なんだよ。」
「それは、知らない方がいいわ…。」
紗羽が意味ありげに言い、士もそれ以上は追及しなかった。
「士君。悪く思わないでやってくれ。あいつなりに仮面ライダーに対する想いがあって、ああ言ったんだ。」
惣一は言った。
「アイドルのために戦うことか?」
「そこかよ。違う違う。」
「ラブ&ピースのことだ。この世界のライダー達はそれを胸に秘めて戦ってきたんだ。」
「…。」
士は少し考えごとをしているようだった。しばらくして口を開いた。
「少なくとも、ここでの俺の役割が分かるまではこの世界を離れられない。しばらくここに住まわしてくれないか。」
惣一もしばらく黙ったが。
「…、いいだろう。以前戦兎が使ってた部屋があるから好きに使ってくれ。」
「助かる。」
「ただし、娘に手は出すなよ。あれでも俺の大切な愛娘なんだからな。」
「誰が手を出すかあんな女。」
「何?俺の娘に手が出せないだと!?」
「そこかよ。食いつくの。」
「あいつはみんなのアイドルなんだぞ。手が出したくてしょうがない存在なんだぞ!」
「何言ってんだ。」
「惣一さん。それ以上はやめてください。」
気がつくと紗羽が殺意のある目で士と惣一を見ていた。
「あ、すまん。えーっと、じゃあおやすみ士君。ちゃお」
「あ、あぁ。」
翌朝。美空が店のホールへ出ると士が出かける支度をしていた。
「どこに行くの?」
「昨日も言ったハズだ。パンドラ・タワーに向かう。」
士は美空と目を合わせずに答えた。
「そこに行けば何か分かるの?」
美空が尋ねるも
「知らん。」
と呆気なく答えられてしまった。
「またそれ。ほんと使えない。」
「何だよ。何でお前にそんなこと言われなきゃ行けないんだ?」
士はそういうとバイクに跨がった。
「ねぇ、待って。」
美空は士を呼び止めた。
「今度は何だ。」
士は面倒臭そうにしていた。
「私も…、私も連れて行って。」
士はじっと美空のことを見つめた。
「何故だ。」
「そこに行けば、戦兎達のこと、どこにいるのか分かるかもしれないから。」
「確証はあるのか?」
「それは…。」
美空は次の言葉が見つからなかった。
「まぁいい。俺もこの世界のライダーについて知りたかったからな。乗れ。」
そう言い、士は美空に予備のヘルメットを渡した。
二人はバイクに乗り、パンドラ・タワーを目指した。
「で、この世界のライダーってのはどんなやつらだったんだ?」
バイクに乗りながら士は聞いた。
「この世界には6人の仮面ライダーがいたの。」
「仮面ライダーローグ。ワニの仮面ライダーよ。」
「ワニか。珍しいな。」
「東都政府首相の息子、氷室幻徳が変身してたわ。かつてはパンドラボックスの影響で悪の組織ファウストのボスだったの。それがある切っ掛けから仮面ライダーになって国をまとめて平和を目指すために戦ってたの。」
「なるほどな。悪から正義に目覚めるライダーもよくいるものさ。」
「でもね、彼私服のセンスが壊滅的なの。」
「は?」
「ほんっとにダサくて。ようやくライダース着てマシになったと思ったら、アンダーのシャツに言葉を印刷したもの着ていて、それで会話するようになっちゃって。笑」
「何だその情報は…。」
「次は仮面ライダーグリス。ロボットの力を使う仮面ライダーよ。」
「北都の大地主、猿渡一海が変身してたの。農業で他の仲間も養っていたんだけど、スカイウォールのせいでそうもいかなくなってしまって…。それでライダーとして戦うようになったの。」
「ほぅ。」
「ただ…。けっこうイケメンなんだけど、アイドルオタクなの。」
「何!?」
「実は私、ネットアイドルのみーたん♪やってて、彼はその強烈なファンだったの。」
「み、みーたん?お前みたいなのがアイドルなのか。」
「何か言った?」
「いや…。」
「仮面ライダーエボル。エボルトが変身してたけど、こいつが世界をこんなにしちゃったの。」
「元凶ということか。」
「うん。地球外生命体で、仮面ライダーの大元ね。」
「地球外生命体…。」
「人に乗り移りながら暗躍してて、実は私のお父さんに擬態してたの。」
「ちょっと待て。お前の親父が元凶だと!?」
「あっちは本物のお父さんっ」
「星を飲み込むことができるほどの凶悪な仮面ライダーだったの。」
「それを戦兎とやらが倒したのか。」
「…。うん。」
「あ、内海さんも仮面ライダーマッドローグだった。」
「二人目のローグか。」
「ちょっと違うけど。仮面ライダーエボルと同じベルトで変身する、コウモリのライダー。エボルトについてたんだけど、実はエボルトを倒すためにスパイをしてたんだ。」
「肝の座ったやつだったんだな。」
「サイボーグだもの。」
「へ?」
「サイボーグだもの。」
「…。(この世界のライダーはどうなってんだ…。)」
「エボルトといえば…、仮面ライダーブラッドというライダーもいたわ。コブラとドラゴンのライダーだったかな。」
「その口振りだと、エボルトの仲間か。」
「そうみたいなんだけど、ブラッドはエボルトとは別で地球を滅亡させようとしたの。」
「つくづく迷惑な奴らなんだな。それで?」
「えー…と。それだけ。」
「え?」
「実は、ブラッドは国民を洗脳する力を持ってて、私もその影響を受けていたの。だから、洗脳されてる間は記憶が曖昧というか…。」
「そうか。」
「あ、でもスクリーン限t」
「わかった、それ以上言うな。」
「万丈龍我。仮面ライダークローズに変身するドラゴンのライダー。」
「ドラゴンか。似たやつを知っている。」
「エボルトの遺伝子を持った筋肉バカよ。好物はプロテイン。」
「また変なやつが仮面ライダーなのか。」
「元々格闘家だったんだけど、冤罪で捕まってて脱獄した所を戦兎に救われたの。」
「でも強いし、戦兎のことを気にかけてて良いやつだったな。」
「そして、仮面ライダービルド。桐生戦兎が変身する兎と戦車のライダーよ。」
「…。とりあえず続けてくれ。」
「二本のフルボトルを組み合わせて色々な力で敵と戦ってきたの。」
「なるほど。」
「戦兎は自称天才物理学者で、自分でライダーのアイテムを作っていたの。ちょっとナルシストな所もあったけど、誰よりも愛と平和を信じて戦ってたわ。」
「ラブ&ピースってやつか…。会ってみたかったな。桐生戦兎ってやつに。」
「でも戦兎は、ほんとは桐生戦兎じゃないの。」
「え。」
「ほんとは葛城巧っていうライダーシステムを創り上げた天才。ううん悪魔の科学者だったの。それがエボルトの手によって顔と記憶を変えられてしまったの。今の顔はツナ義ーズ佐藤太郎なの。」
「ん。…んん??佐藤太郎で葛城巧で桐生戦兎なのか?」
「そう。」
「というか、設定が複雑すぎて頭に入ってこないんだが。」
「じゃあそういうあなたは、どんな人なのよ。」
「通りすがりの仮面ライダーで、大ショッカーの大首領だ。」
「…なんて?」
「…。気にするな。」
「え、ごめん。何?大何とかの大首領?本気で言ってる?」
「もういいだろ。」
「すごい気になるんですけど。」
「いいから。俺に質問するな。ほら着いたぞ。」
パンドラ・タワーに近づくとスマッシュが何体も待ち構えていた。中には夕べ倒したはずの個体もいた。
「昨日倒したやつもいるだと。」
「アイツらはただ倒したんじゃだめ。フルボトルに成分抜き取らないとまた復活するの。」
「それを先に言え!!」
「でも倒してすぐにって訳じゃないから。」
「突破自体は出来るのか。離れてろ。変身!!」
ディケイドとなってスマッシュに立ち向かう。
その姿はやはり仮面ライダービルドと重なって見えた。
カードを装填しながら戦うもまだ数はあった。
「なら、こいつでどうだ。」
カメンライド・龍騎!
ディケイドの姿が赤い身体に鎧をまとった姿に変わった。
「え。」
頭部の意匠に龍が象られていた。
アタックライド・アドベント
どこからともなく赤い龍が現れ、火球を吐きながら次々と敵を蹴散らして行く。
ファイナルアタックライド
RRR龍騎!
「はああああ!!!!」
龍の火球を纏いながら、最後の一体に飛び蹴りを放った。
「この中はどうなってるか分かるか。」
変身を解いた士は美空に尋ねた。
「頂上が広場になっていて、そこにパンドラボックスがあるはず。」
「よし、行くか。」
中へ入ろうとしたとき、上空から何かが飛んできた。
「え、何?」
それは丸でサーフボードのようなものだった。
「アギト・トルネイダー?何故こんなところに。」
士はそれが何なのか知っているようだ。
「…。美空、これに乗って一気に上まで行くぞ。」
「え、大丈夫なの?」
士は答える間もなく美空を担ぎ、アギト・トルネイダーに乗った。
「きゃあああああああ!!」
一気に上昇して行き、美空は叫んでしまった。
しかし、あっという間にパンドラ・タワーの頂上に到着した。
そこにはパンドラボックスと一人の人影があった。
第2話
通りすがりの仮面ライダー・仮面ライダーディケイドこと、門矢士が現れた理由と美空と共にパンドラ・タワーへ向かうのがメインとなります。
美空視点で改めてビルド世界のライダーを振り替えるような内容です。ふざけました、ごめんなさいm(__)m
前回の戦闘ではディケイド・剣(以下Dライダー)でしたが、今回はD龍騎。これらにも訳がありますが、それはまた後程。