パンドラ・タワー頂上。
そこには中心に祭壇の様な朽ちた石碑があり、芝生が生える地面は所々はげ、地肌を晒していた。
そして、中心の祭壇に岩とも鉄とも言えない素材で出来た四角い箱の様なものが置かれていた。
アギト・トルネイダーから降りると、それはパンドラボックスの隣にいる男の側で仮面ライダーの姿となり、間もなく霞むように消えて行った。
「やっぱりお前か、海東。」
「やぁ、士。君なら気付くと思ったよ。」
海東と呼ばれた男が答えた。
「士さんの知り合い?」
「海東大樹。初めまして、お嬢さん。」
海東は美空に挨拶した。
「やつも仮面ライダーだ。仮面ライダーディエンド。俺と同じ世界のライダーだ。」
「え、てことは。彼も大何とかの大首領?」
クスッと笑いながら美空は言った。
「お前バカにするのも大概にしろよ。」
思わず士も口を出した。
そのやり取りを見ていた海東は、フンと鼻で笑う。
「まさか、彼と一緒にしないでくれたまえ。僕はただの」
「盗っ人だろ。」
士が先に答えた。
「ドロボウライダー!?」
美空は少し引いた。
「人聞きの悪い。僕は訪れた世界のお宝をもらいに来ただけさ。」
美空は少し考えた。
「え、この世界のお宝って…。」
「そう、このパンドラボックスさ。」
そう答えた海東の気味の悪い笑みに美空は悪寒を感じた。隣で士も身構えていた。
「毎度毎度何か企んでいたが、こればかりは止めておいた方がいいぞ、海東。」
士は言った。
「珍しいねぇ。君が僕に忠告するなんて。」
海東は飄々としていた。
「それが、この世界をこんなにしちゃった元凶なのよ。触ったりでもしたらどうなるか。」
美空も言った。
「知っているさ。この世界で起こったことも。これから起きようとしていることも。」
「何のこと?」
「あれ。士から聞いてないのかい?」
海東は意味あり気に言い、続けて言った。
「この世界は、いずれ消滅するよ。」
美空は海東の言っている意味がわからなかった。
「どういうこと?士。」
「…。」
士は黙っていたが、重い口を開けて言った。
「この世界に仮面ライダーがいないのならば、この世界は消えてしまう。」
「…え。」
士の言っている意味もわからなかった。
「簡単な話さ。」
海東が口を開いた。
「ライダーの世界。それはその世界の中心となるライダーがいて初めて成立するんだ。」
「ここ"ビルドの世界"も仮面ライダービルドが存在していたことで成り立っていたということさ。」
美空は少しずつだが理解してきた。
「でも、ビルドは…。」
「この世からいなくなった。故に世界の崩壊が進んでいる。」
士が言った。
「パンドラボックスからスマッシュが溢れ出ているのは、世界を崩壊させるため。世界の摂理に則った必然ということさ。」
海東も続けて言った。
「そんな…。」
美空はその場で膝をついてしまった。
「待ってよ…。エボルトもいなくなって戦兎達が犠牲になって平和を取り戻したのに。結局世界は滅亡しちゃうの?」
「…。」
士は黙って美空を見つめていた。
「それじゃあ、戦兎の闘いは無駄だったってこと?万丈もかずみんも幻徳も何のために戦ってたの…。」
美空の目から涙が止まらなかった。
「つまり、お宝だったパンドラボックスから際限なくスマッシュを生み出し続けてるんじゃ、こんなものはいらないよ。士、君も早くこの世界から立ち去った方がいい。」
「俺たちをここへ連れてきたのは、わざわざそれを伝える為にか。」
「さぁ。何のことかな。」
海東はシラを切るように言い、その場から立ち去ろうとしていた。
結局、世界が滅びるのは変わらなかった。その事実を突き付けられ、美空は絶望していた。
「待て、海東。」
士が言った。
「俺は、ビルド達仮面ライダーが消えた後にこの世界に訪れた。俺には、この世界を何とかしなくちゃいけない役割があるはずなんだ。」
美空は大粒の涙を流しながら、士を見上げた。
「確かに、君は世界を渡る中でそれぞれ役割を与えられていたね。でも、今回ばかりはどうだろうね。」
しかし、士も返す言葉が見つからなかった。
すると、どこからともなくスマッシュが何体も現れた。
「またか。」
「待ちたまえ、士。」
海東が変身を抑制した。
スマッシュの中から人影が現れた。
「さっきから聞いていれば。世界が崩壊するだと。馬鹿馬鹿しい。」
男は言った。
「確かにスマッシュを野放しにすれば経済は破綻するだろう。しかし、スマッシュを含めパンドラボックスさえ制御してしまえば、どうということはない。」
「貴様、何者だ。」
士は男に聞いた。
「失礼、自己紹介が遅れたな。私の名は御堂光明。」
御堂。それは美空にとって聞いたことのある名だった。
「御堂って、西都の御堂首領の…。」
「そう、息子だ。」
美空の言葉に続けて御堂は言った。
「そして、またの名を。」
そう言いながら、右手に持ったトランスチームガンに酷似したネビュラスチームガンにフルボトルを装填した。
「蒸血!」
スパイダー…。ス、スパイダー。
フィーバー!!
黒煙が御堂を包みこみ、蜘蛛の姿をした怪人となって現れた。
「アシッド・ハンター。ネオファウストの首魁だ。」
「ネオファウストだと?」
士と海東は身構えた。
「ファウストの意思を継ぎ、新たな世界の王となるための組織だ。」
「スマッシュを駒として制御し、残された人類を支配する。かつて親父が成し得なかった世界の統一。今こそ、この光明が成してみせる。」
「しかし、それには仮面ライダーが至極邪魔でねぇ。せっかく消えたのだ。君たちにも退場願おうか。」
御堂の言葉の後にスマッシュ達の血の気が立ったことがわかった。
「生憎だが、俺にはここでやらなきゃならないことがある。それが分かるまでは、ここを離れるつもりはない。」
士は一歩も引かない。
「別にこの世界が滅びようが支配されようがどうでもいい。けど、パンドラボックスを制御できるというなら、ぜひ教えて貰いたいものだね。」
海東も言葉は悪いが引かないようだ。
御堂は肩を落とした。
「残念だ。異世界のライダー諸君。私は親父と違って心が広い方だと思っているが、邪魔をするなら消えて貰おう。行けっ」
御堂の言葉を合図にスマッシュ達が迫ってきた。
「行くぞ海東。」
「僕に命令しないでくれたまえ、士」
そう言うと、二人は同時にカードを構えた。
「「変身!!」」
海東は手に持った銃にカードを装填した。
カメンライド・ディエンド!!
ディケイドと同じく、鎧の幻影が海東を包み込み青いカードが顔にまとわりつき、仮面ライダーディエンドに変身した。
二人の仮面ライダーは果敢にスマッシュへ立ち向かっていく。
カメンライド・キバ!!
ディケイドはカードを装填すると、赤いコウモリのライダーに変身した。
「なるほど、じゃあ僕はこれを使おう。」
海東は二枚のカードを手に取り、銃に装填した。
カメンライド・イクサ(セーブモード)!!
カメンライド・ダークキバ!!
銃から二体の仮面ライダーが召喚された。
一体は白い鎧を身にまとっており、もう一体は黒い鎧のコウモリのライダーだ。
「この俺が子猫ちゃんのためにお手本を見せてやる。」
「力を借りるぞ、蝙蝠擬き…。」
二人のライダーの声を聞いて、美空はハッとした。
「え、今のは…。」
いや、聞き違いだろう。美空はそう思うことにした。
4人のライダーがスマッシュを撃破していく。
「なるほど…。思ったよりやるじゃないか。しかし、切り札はある。」
ハンターは新たに二体のスマッシュを呼び出した。
「っ!あれは…。」
美空はそのスマッシュを凝視した。
兎を模したラビットスマッシュと戦車の意匠があるタンクスマッシュだ。
それはかつてビルドが基本フォームとして使ったフルボトルの成分から産み出されたものだった。
イクサとダークキバがそれぞれのスマッシュへ仕掛ける。しかし、ラビットスマッシュは目にも止まらぬ速さでライダーを翻弄し、片やタンクスマッシュは攻撃を物ともせず、重い一撃を与えていく。
とうとう、ディエンドが召喚したライダー達は消えてしまった。
「いかがかな、ライダー諸君。我が傑作。ラビットスマッシュとタンクスマッシュの性能は。」
ハンターは声高に言った。
「どうしてスマッシュを操れるの!?」
美空は叫ぶようにハンターに聞いた。
「その為のデータがあるのでな。このパンドラ・タワーに。」
ハンターは答えた。
「こいつは厄介だな。」
士は呟いた。
「正攻法は効かなそうだね。」
海東も構えるが息が上がっていた。
「海東、一瞬だけあの二体の動きを止められるか。」
「何する気だい、士。」
「真ん中の蜘蛛男。やつが司令塔ならば先に潰す。」
「見物だね、やってみたまえ!!」
二人の連携攻撃で二体のスマッシュは動きを止めた。その隙にディケイドはアシッド・ハンターに攻撃を仕掛けた。
「確かにそれは正しい選択だ。しかし、私が君たちより強いということは計算に入っているかな?」
ディケイドの攻撃を意図も簡単にかわし、一方で正確な一撃をディケイドの与えていく。
「うわぁ!!」
思わぬ反撃をくらいディケイドは膝をついてしまった。
「くぅ!!」
ディエンドも二体のスマッシュに攻撃され、突き飛ばされてしまった。
「士さん、海東さん!!」
圧倒的な強さを前に美空は恐怖を感じていた。
「これで終わりです。さらばライダー諸君。」
ラビットスマッシュとタンクスマッシュがそれぞれエネルギーを溜めている。今にも止めをさそうとしているが、避けようにも身体のダメージが酷く言うことを効かない。
インビジブルで避けられるが美空までは助けられない。
見捨てるしかないのか。
士がそう思った時だった。
フォーーーーーン。
どこからか電車の汽笛が聴こえてきた。
「え、電車?」
しかしここは地上より遥かに上空に位置している。電車の音など聞こえるはずがなかった。
しかし、空から突然電車が現れた。
そこから、三人の人影がスマッシュとハンター目掛け飛んできた。
とっさのことで、スマッシュとハンターは攻撃を止めて退いた。
「何者だ?」
そこには赤、緑、青色の三人の仮面ライダーがいた。
「はぁ?てめぇ、俺のこと知らないのかよ。」
「そりゃそうだよ。ここには初めて来たでしょ。」
「いいから、こいつら拾ってさっさと行くぞ。」
士には見覚えがあった。
「仮面ライダー、NEW電王、ゼロノス、それとモモタロスか。」
思わぬ増援に戸惑いながらも安堵した。
「な、ディケイド!俺だけ何で本名なんだよ!電王だ電王!!」
「で、電王?」
美空には何がなんだか分からなかった。
「ディケイド、ディエンド。とにかく、一度デンライナーに乗って。」
NEW電王と呼ばれる青いライダーが言った。
「そうするしかないようだね。」
ディエンドは何とか立ち上がった。
「美空、お前も乗るぞ。」
「ちょっと待って!」
答える前にまた担がれ電車に乗った。
ライダー達を乗せると、電車は空へ走り時空間へ飛び込んでいった。
第3話
今回から、オリジナルの敵組織や登場人物、怪人を登場させました。
〈御堂光明〉
西都首相・御堂正邦の息子。30歳。物理学者。
スカイウォールの惨劇の際に正邦と共に同席しており、パンドラボックスの光の影響を受けている。
野心家であり、いずれ国を統べようと思っていたが、正邦が現役だった為、難波重工の幹部としてその身を置き息を潜めていた。その間にカイザーシステムと内海成彰がもたらした葛城巧の研究を元に独自にスマッシュやネヒュラガスの研究を始める。
正邦、難波重三郎の死後、その頭角を表し残った難波重工の研究員を抱え込み、ネオファウストを設立した。
〈アシッド・ハンター〉
スチームシステムとカイザーシステムを応用して生み出された怪人。御堂がネビュラスチームガンにスパイダーフルボトル(本作オリジナル)を装填することで変身する。
ギア二本の力で変身するヘルブロスには劣るが、スチームシステムで生み出されたナイト・ローグやブラッド・スタークより基本スペックは高い。また、光明自身の格闘能力や高いIQによる戦術力により潜在能力はスペック以上で、ライダーシステムと同等の力を持つ。
ネビュラスチームガンとスチームブレードを両手に持って戦う。また、蜘蛛の脚を模した伸縮自在の触手を八本持ち、それらを用いて戦う。触手の先端から強力な酸や蜘蛛の糸を発射する。
※放送中、蝙蝠男やコブラ男が出たから、いずれ蜘蛛男も出るだろうと思っていました。ついに出なかった訳ですが。笑
なので、本作に違和感なく登場できると思い、設定しました。
〈ラビットスマッシュ〉
兎がモチーフの赤いスマッシュ。兎由来の脚力から生み出される高速移動を武器に戦う。またその脚力による蹴り技も得意としている。頭部に兎の耳の様な部位があり、そこからエネルギー弾を放つ。浄化するとラビットフルボトルになる。
〈タンクスマッシュ〉
戦車がモチーフの青いスマッシュ。動きは早くないが戦車由来の堅牢な装甲を持ち、高い防御力を誇る。パンチ力は凄まじく、分厚い鉄板や岩壁を一撃で粉々に砕く力がある。両肩に大砲がついており、そこからエネルギー弾を放つ。浄化するとタンクフルボトルになる。
※ビルドの基本フォームであるラビットタンクがスマッシュ化したらどうなるのか。と思い設定しました。
ビルドの基本フォームなんだから、当たり前に強いだろうと思い、そんな描写も作りました。
今回ディケイドが変身するDライダーは
Dキバ
またディエンドが召喚したライダーは
アギト(アギト・トルネイダー)
イクサ(セーブモード)
ダークキバ
アギト・トルネイダーを登場させた理由はD
龍騎と同じなんですが、実際の所タワー頂上まで行けるなら、何でも良かったです。笑
言うなれば、映画平成ライダー対昭和ライダーで、ディケイドがある少年を救うところでアギト・トルネイダーに乗っていた場面が脳裏にあり、それで決めました。
Dキバ、イクサ(セーブモード)、ダークキバの登場理由は、恐らく察して頂けるかと。笑
ただ、ダークキバに関しては、キバ劇中トップを争うほど強力なライダーなので、こんな形で登場させていいものなのか悩みました。
結果、ネタが優先され登場させました。