ここから先は、いわゆる原作レイプに当たる可能性があります。
本作における重要な話となりますが、覚悟してお読みになってください。
さっきまでパンドラ・タワーにいたはずなのに、今は電車の中にいる。状況が飲み込めないうえに、化け物が7人も美空の顔を覗きこんでいた。
「なんだか、コハナクソとおんなじ匂いがするなぁ。」
赤い化け物が言った。
「こらこら、センパイ。それはコハナちゃんに対してもこのレディに対しても失礼でしょ。」
青い化け物が言った。
「気の強い女子は嫌いやないで!」
黄色の化け物が言った。
「ねぇねぇ!一緒にお絵かきしようよ♪」
紫の化け物が言った。
「しかし無事で良かった。あ、侑斗をよろしく!」
緑の化け物から飴をもらった。
「君がネットアイドルのみーたんこと、石動美空君だね。よろしく。」
群青色の化け物が言った。
「ふむ…。姫ほどではないが美しい女性だ。側にいてもいいのだぞ。」
白い化け物が言った。
「士さ~ん、どうなってるのこれ…。」
美空は泣いていいのか叫んでいいのか分からなかった。
「心配するな。そいつらはイマジンという化け物だが人に危害を加えたりはしない。」
「仮面ライダー電王の愉快な仲間達くらいの認識でいいさ。」
士と海東は気にも止めていなかった。
車内のドアが開き、奥から二人の青年が現れた。
「驚かしてごめんね。でも無事で良かった。僕は野上幸太郎。仮面ライダーNEW電王。よろしくね。」
「桜井侑斗。仮面ライダーゼロノスだ。」
「あ、あの侑斗さん。アメご馳走さまです…。」
「ん…?あ、おい!デネブ!また勝手なことしやがって!!」
桜井侑斗と名乗る青年はデネブと呼ぶ緑の化け物にいきなり関節技を仕掛けに行った。
「僕たちは時の運行を守る仮面ライダーなんだ。」
「時の運行?」
美空は幸太郎に聞き返した。
「簡単に言うと、大きな歴史の改変を阻止するために仮面ライダーとして戦っているんだ。」
「そ、そんなことができるの?」
美空には信じられなかった。
「僕たちイマジンは過去の世界に飛んで悪さすることができるからね。その悪いイマジン達を僕たちが懲らしめてるって訳。」
青い化け物が丁寧に教えてくれた。
「だが、その電王達が何でビルドの世界にきたんだ?」
士は幸太郎に聞いた。
「それは、私がお答え致しましょう。」
車内ドアの奥から恰幅のいい男性が現れた。
「初めまして。私、このデンライナーのオーナーです。」
オーナーを名乗る男はそのまま続けて言った。
「我々があの世界に行った理由は、あなたの行動を止めるためです。門矢士さん。」
「どういう意味だ。」
士が問い返した。
「士さん。あなた、あの世界を崩壊から守ろうとしてますね?」
「…。」
士は黙って聞いていた。
「それが問題なんだ。」
侑斗が壁にもたれながら言った。
「え…。それって私の世界を崩壊させるってこと?」
美空が恐る恐る聞いた。
「ま、平たくいうとそう言うことなんですがねぇ。」
オーナーはさらりと言った。
「まぁ、まずは、事の経緯をお話しましょう。」
「その前に、コーヒーでも飲みながらにしましょ♪」
アテンダントと思われる女の人がみんな(イマジンを含む)の分のコーヒー(と思われる飲み物)を振る舞った。
「わーい、いただきまーす♪」
イマジン達は美味しそうにそれを口にしていた。
「ありがとーう、ナオミちゃん。」
オーナーもそう言うが一口も口にしようとしなかった。人間のみんなも同じようだったが、侑斗だけは平然と飲んでいた。
「さて、一息着いた所で、お話しましょう。」
「実は、あなたのお仲間、桐生戦兎君は、新世界の創造に成功致しました。」
オーナーの言葉に美空は自分の耳を疑った。
「え、本当なんですか?」
「えぇ。そこで桐生戦兎君、それと万丈龍我君でしたね。彼も一緒に過ごしていますよ。」
「…よかったぁ。」
美空は今にも泣きそうになった。
「しかし…、それが今回の問題を生み出してしまったのです。」
オーナーは淡々と言った。
「どういうことだ。」
士が聞いた。
「平行世界との融合。正確には成功していないんです。」
「え?」
「仮にスカイウォールのある世界をA世界。平行世界をB世界としましょう。葛城忍という科学者が立てた理論なら、A世界とB世界が融合しC世界として新世界が成立するはずでした。」
「しかし、そこでキーとなるエボルトの存在。これがまた予期せぬ結果をもたらしてしまったのです。」
「予期せぬ結果?」
美空は聞き返した。
「えぇ。世界の融合のためのエネルギーとなるエボルトも意思の持つ生命体。もちろん反抗する訳です。エボルトが最期の最後まで反抗したことでA世界とB世界は完全に融合することができなかった訳です。」
「結果から申しますと、A世界とB 世界が融合したC世界ではなく、A世界をB世界にアップデートしてC世界が生まれてしまったのです。」
車内の雰囲気は理解に難しいのか静まりかえっていた。オーナーは咳払いをして続けた。
「つまりB世界だけがC世界へと変わり、A世界とC世界が平行世界として存在することになってしまったという訳です。」
「なるほどね。」
海東が頷いた。
「そして、そのアップデートされたC世界に仮面ライダービルドこと桐生戦兎が辿り着いたということです。」
ここにきて士はハッとした。
「つまり、そういうことなのか。」
「えぇ、そういうことなのです。」
「どういうことなの?わからないんだけど。」
美空は士に尋ねた。
「本来、B世界にはライダーは存在しなかった。そもそも最初からライダーが存在しない世界なら何も起きない。しかしC世界となってそこに仮面ライダービルドがいることになると、C世界が"新たなビルドの世界"になるんだ。」
士は言った。
「そうなると、どういうことになるのかというと我々ライダーの時間のレールはビルドのいないA世界からビルドのいるC世界へ切り替わる。そうすることで時間の流れを安定させようとします。」
オーナーが続けた。
「ライダー世界の本流から逸れてしまった世界は存在を許されない。故に世界が崩壊してしまうんだ。」
幸太郎が続けて言った。
「海東さんが言っていた世界の崩壊ってそういうことなの…。」
美空の声は震えていた。
「だが、それと俺の行動と何が関係あるんだ。」
士がオーナーに尋ねた。
「あなたが"本来のビルドの世界"を崩壊から防ごうとする。そうすると、本来はあり得ないひとつのライダー世界が複数同時に存在してしまうことになる。」
「そうなると、時間のレールがどちらが正しい時間なのか判断できず、どちらの世界線にも繋がらなくなってしまうのです。」
「結果どうなるかと申しますと…。」
「仮面ライダービルドそのものの存在が消える。A世界もC世界も共にな。」
侑斗が続けて言った。
「そんな!?」
美空は愕然とした。
「そうなると、ビルド以降存在するはずだったライダー達も存在しなくなってしまうというわけです。」
オーナーは言った。
「だから俺たちは現状繋がろうとしているC世界を守るためにもお前達を止めに来たんだ。」
侑斗が続いた。
「…。」
士は黙ったままだった。
「士さん。お気持ちは察します。あなたも戦いの中で一度世界の消滅を目の当たりにした。かけがえのない仲間の消滅。さぞお辛かったでしょう。」
「しかし、今回はA世界を切り捨てるだけでビルドの存在は守られる。至ってシンプルな話ではあるのです。」
「簡単に言うな…。」
士は酷く低いトーンで言った。
少しの間沈黙が続いた。
「オーナー、やっぱり他に手はないんでしょうか。」
幸太郎が口を開いた。
「オーナーの話は理解できます。でも、やっぱりこうして本来の時間に存在する彼女を見てしまうと…。」
幸太郎は美空を見て言った。
「俺は。」
士も口を開いた。
「俺は、ビルドがC世界へ飛んだあとにこのA世界へ現れた。それは俺の役割は世界の消滅を防ぐためじゃないかと考えている。」
「士さん…。」
「まさか、君の口からそんな言葉が出るとはねぇ。士。」
海東は鼻で笑いながら言った。
「海東…。」
士は海東を睨み付けた。
「いや、士がどこまでやれるのか見届けたくてね。」
「オーナー、私からもお願いします。私達の世界を守って下さい。」
美空はオーナーに向かって頭を下げた。
「ふーむ…。」
オーナーは言葉詰まらせたがようやく口を開いた。
「どちらの世界も救う方法、無いこともありませんよ。」
「本当か!!」
士はその場で立ち上がった。
「しかし、私は正直オススメしません。というより理論上できるけど実行できるかわからない。とでも言っておきましょうか。」
「それはどんな方法なんですか?」
幸太郎も身を乗り出して聞いた。
「仮面ライダービルド。桐生戦兎を特異点とし、A世界とC世界、両方の世界に存在させる。ということです。」
美空にはよく分からなかったが、回りの空気から察してやはり不可能だということだけはわかった。
「まぁ…。一応、説明致しましょう。」
オーナーは続けた。
「つまりA世界のビルドとC世界のビルドがお互いの世界の記憶を共有し、なおかつ時間の流れの影響を受けない特異点となれば、仮に時間のレールがC世界に繋がっても双方の世界にいるビルドが懸け橋となることでA世界も存在することが可能となります。」
「特異点の件は正直何とかなります。主人公補正で。」
「おい、さすがにそれは許しちゃダメだろ。」
士は言ったが、オーナーは無視した。
「ですが、A世界、C世界ともに同一人物かつ双方の記憶を共有する。こればかりは不可能でしょう。」
化け物同士でじゃれあっていた、赤い化け物・モモタロスが閃いたように話に参加してきた。
「じゃあよ。C世界の未来のビルドをA世界に連れていきゃいいんじゃねぇか。」
「それは一時的には繋ぎ止められますが、連れ去った時間にC世界がたどり着いてしまったら、それ以降の時間にビルドがいないことになってしまうわけですから、今度はいずれC世界が消滅します。」
オーナーはバッサリと言った。
「ダメじゃねぇか…。」
「つまり双方とも同じ時間軸でビルドが存在しないといけない訳です。」
士は一瞬考え、あることに思い付いた。
「いや、待てよ。」
士が呟いた。
「美空、もう一度桐生戦兎について教えてくれ。」
「え、何で?」
「いいから!」
「え、うん。ええっと、桐生戦兎はほんとは桐生戦兎じゃなくて葛城巧で、二人は二重人格みたいな形でいました。それで葛城巧はあることから顔をツナ義ーズ佐藤太郎に変えられてしまったんです。」
「あ?何だその複雑なキャラ設定は。」
モモタロスは呆れて言った。
「あ、なるほど。」
オーナーが閃いたように呟いた。
「もしかして、桐生戦兎君は桐生戦兎の人格とは別に葛城巧の人格もある。そういうことでいいんですね?」
「は、はい。」
美空は答えた。
「それで肉体は本来は葛城巧のものだが、佐藤太郎という人物に書き換えられた。そういうことですね?」
「は、はい…。」
「何か思い付いたんですか、オーナー。」
幸太郎が尋ねた。
「うーん。道徳観や倫理観に大きく反しますが、できないことはありませんね。」
「それは?」
士が聞いた。
「それは…。」
オーナーの閃きを聞いた一同は、唖然とした。
しかし、それしかないと踏み、時の列車・デンライナーをある時間へと向かわせるのだった。
第4話
戦闘はありません。もしかしたらつまらない話になってしまったかと思いますが、この話が本作の重要な部分を説明しています。
我ながら複雑な設定にしてしまったと思うので補足していきます。
〈ライダー世界の崩壊〉
ディケイド本編で語られた設定。仮面ライダーの記憶を人々が忘れてしまうと、その世界が崩壊してしまう。
ディケイドは世界の崩壊を阻止するために数々のライダー世界を渡ってきた。その結果、人々(視聴者)の記憶にライダーの活躍を刻み永遠のものにした。
この設定から、人々の記憶からライダーが消える=ライダーが消えることでその世界が崩壊する=ビルドがいなくなったことでビルドの世界が崩壊する。
と設定しました。
しかし、それだと龍騎の世界(リセットエンド)は消滅するのかという矛盾が生じます。
龍騎の世界は同一の世界の中でリセットされ、尚且つライダーの記憶を持つ人物がいた(秋山蓮。まぁこれは公式のような非公式設定ですが)ため、消滅から免れます。
では、同じようにビルド世界も崩壊しないのでは。という更なる矛盾に突き当たります。
〈平行世界〉
ここでスカイウォールのあるA世界とスカイウォールのないB世界、新たなC世界が登場します。
ビルド本編では、A世界とB世界が融合してC世界が誕生します。しかし、A世界の記憶を持っているのは桐生戦兎と万丈龍我だけであり、その他登場人物はその記憶がない。
ここを独自に解釈し、以下のように考察しました。
①戦兎と万丈がかつての記憶を保持している。
本編ではイレギュラーな存在だからとしていましたが、そうではなく、実はA世界からC世界へやって来たのではないか。
②融合したはずなのにC世界の人々はA世界の記憶がない。
これは元々のB世界にはA世界の人物が一切おらず、融合の際にパンドラボックスが関与した事象以外の世界情報(人物情報も含む)をB世界にアップデートしたためであり、本編では記憶はなくてもライダーになる前の職が残っているのではないか。
元々B世界にA世界の人物がいたんじゃないか説もありますが、それを推すと戦兎と万丈だけがA世界からB世界に逃げたのではないかという解釈になってしまい、A世界は滅んだという、何とも言えない終わり方になりかねなかったので、②のように考察しました。
以上の考察から出た結論が
③実は世界は融合しておらず、B世界だけがA世界の情報をアップデートしてC世界となり、それとは別でA世界も存在している。つまり、A世界とC世界が平行世界として存在することになった。ということです。
そしてそうなった原因として、世界融合の引き金となったエボルトを利用し「最期まで抵抗していたため、不完全な融合となった」と設定しました。
〈ビルド世界の消滅〉
そして、電王の設定にある「時の運行」。これにライダーの世界線を当てはめて設定しました。デンライナーが走る時空間は、歴代ライダーから最新ライダーまで一貫した時間の中を運行している。ということです。
そうすると、新たなライダー世界が生まれる度に、デンライナーのレール(時間軸)は紡がれていく訳です。
ビルド世界も例外ではありませんが、考察を踏まえるとビルドの世界は二つ存在してしまい、デンライナーは一つの世界線にしかレールを繋げられないため、ビルドがいるC世界にレールを繋ごうとします。
その結果、繋がらなかったA世界は滅んでしまうという結末になってしまう。といった設定です。この設定が物語のバックボーンとして生かしています。
このままだと、美空達がいるスカイウォールのあるA世界が滅んでしまいますが、第1話でも掲載しましたが私自身は美空達もハッピーエンドへと導きたいと思って執筆しています。
そこで、オーナーからある提案をされる訳ですが、それ以降は第5話をお楽しみ下さい。