さて、雄英高校の近くに通学のために家を借りた。資金は両親がだしてくれたので問題ない。広めのワンルームマンションだ。ロフトがあり、そこが寝室となっている。どうせ二人で寝るのだからベッドは大きな一つだけだ。
クローゼットは二つあり、そのうちの一つがルーミアの物で、沢山の服が入っている。部屋の壁紙は黒一色で、家具も黒い。こちらの方が俺もルーミアも落ち着くからだ。といっても、照明もちゃんとある。
さて、そんな部屋に引っ越してからすでに数日。今日は入学式だ。そのため、俺は制服に着替えている。ルーミアといえば俺が準備している隣で着物に着替えている。
「別に普段の恰好でもいいだろう」
「やだ~それより、帯結んで~」
「やれやれ」
幼女モードのルーミアの後ろに周り、帯を結んでやる。ルーミアは幼女モードだと普通に子供らしく遊んでいるが、少女モードだと家事をしてくれる。食事を作ってくれたり、洗濯をしてくれたりするので助かっている。大人モードは絶対にでてこない。アレは駄目だ。でてきたら、この辺りが悲惨な光景に早変わりする。
「これでいいか?」
「似合う?」
「ああ、似合っている」
「そーなのかー」
興味なさそうに返事をしているが、姿見の前でくるくるしているので喜んでいるのだろう。この和服も両親が正月に買い与えてたもので、黒色に白やピンク、緑などで草花が描かれている可愛らしいものだ。頭部には花の髪飾りがあり、黒色のフリルと赤いリボンをつけている。
「そろそろいくぞ」
「は~い」
両手の指を合わせてはしゃぐルーミア。学校に通うのが楽しみなのだろう。俺達はひたすら個人授業や"個性"の制御訓練をしていたからな。俺は小学校の時があるが、ルーミアにはそれすらない。だから楽しみなのだろう。そんなルーミアと一緒に部屋を出てあるく。
「手、握っていい?」
「ああ、構わない。そちらの方がいいだろう」
幼女モードのルーミアは興味があると、すぐにそっちにいってしまうからだ。様々な人に見られながら、雄英高校の門を通っていく。廊下を歩いていると、黄色い変なのがあった。
「これなに~つんつん」
ルーミアが袖をひらひらさせながら駆け寄ってしゃがみ、つんつんしだす。どこかで見た事があるな。
「やめろ、くすぐったい。というか、痛い。威力があがってきている」
「そーなのかー?」
「ルーミア、人だ。やめろ」
「はうっ」
鎖を実態化させて後ろに引き寄せ、飛んできたルーミアを抱きしめる。腕と首に枷が出現して、すぐに消える。
「あー絵面的にかなりやばいな。それ、手だけはできないのか?」
「手だけでは容易く引きちぎられるか、引き寄せられる」
「首という急所だからか、力を込められにくいと。合理的ではあるな」
「ルーミア、謝らないとだめだ」
「あっ、ごめんなさい~」
「心が籠ってないな。まあ、いいが。それより時間だ」
「お~いこ~」
「ああ」
三人で向かうと、扉の前で話し合っていて、その時に彼が先生だと判明した。そこで思い出した。確か、抹消ヒーロー、イレイザーヘッドだったな。
「さっそくだが、これを着てグラウンドにでろ」
「はいはい! 私、もってないよ!」
「え、着物の女の子?」
「ちっさ! どっかの迷子か、もしかして先生の子供か?」
「可愛いですわ!」
「あの子も生徒? いや、まさか」
「お前のはない。生徒じゃないだろ。それよりさっさと来い」
「はーい」
それだけ言って去って行った。ルーミアも一緒に。
「こいつ、本当に自由だな」
「そーなのだー」
俺は教室に入って席に荷物を置き、着替えてからグラウンドに向かう。グラウンドではルーミアがゼリーをもらって大人しくしていた。俺達は全員、並ぶがルーミアはグラウンドを走り回っている。
「"個性"把握テストをする。入試のトップは常闇だったな。お前、中学のテスト、覚えているか?」
「覚えていない。それどころじゃなかったので」
皆の視線が集まる。中には殺気すら感じる。鬱陶しい。ルーミアが暴走したら殺されるぞ。
「まあ、そうだな。よし、"個性"を使ってこのボールを全力で投げてみろ」
「先生、正気か?」
「あ? 正気に決まって……ああ、いや、俺が悪かった。お前の"個性"はアレだったな。全力は出すな。コントロールできる範囲でいい」
「わかった」
俺は円の中に入って鎖をつくり、ルーミアに軽く引っ張って合図を送る。すると一瞬で俺の前まで移動してくる。正確には実体化を解いて改めて実体化しただけだ。
「呼んだ~?」
「ああ、呼んだ。これを入試の時と同じぐらいの力で投げてくれ。遠くにだ」
「は~い」
外野がルーミアに思いっきり不審がってる中、無視して指示をだす。ルーミアは身体中から闇を溢れ出させて、空に黒い雲を作りあげる。俺はルーミアの肩を掴む。すぐにボールをもって可愛らしい掛け声で投げる。
「えいっ!」
ズガンッと音速を越えた音とソニックムーブが発生し、周りが吹き飛ばされる。俺はルーミアを持つことで防ぐ。
「先生、記録は?」
「4777メートル。シグナルロスト。途中で消滅したか」
「褒めて~服、やぶれなかったよ~」
「よくやった」
頭を撫でてやると嬉しそうに微笑む。ついでに懐から飴を取り出してルーミアの口に放り込んでおく。
「なにあの幼女」
「やばすぎ」
「さて、こんな記録がでる。まあ、稀だがな」
「えっと、先生。あの子はなに?」
「蛙吹か。なにって"個性"だ。あいつは常闇踏陰の"個性"常闇の妖怪ルーミアとして登録されている。実際、歩いて動く"個性"だ。人間じゃない。それだけは覚えておけ。それと可愛い外見に絶対に騙されるな」
「人型の"個性"っているんだ……」
「初めて知りましたわ」
「ちなみにアレ、プロヒーロー数人がかりでも瞬殺される力があるからな」
あちらが話している間に考えていたことを先生にいうと許可がもらえた。ルーミアと俺で別々に記録をとるのだ。俺も鍛えているので、自分に闇を纏わせれば身体能力がかなりあがるからだ。二人で記録をとっていくが、ルーミアの記録には遠く及ばない。ルーミア自身も三段階の変身を残しているので、本当にまだまだだ。ただ、女子と楽しそうに話したりしながら記録をとっている姿は可愛らしい。
「ねえねえ、ルーミアちゃん、大人になれるっていってるけど、本当なの? できたら見せて欲しいな~って」
「本当だが、絶対に許可しない」
「なんで!」
「危険すぎるからだ。この場にいる連中なら、秒殺される。自殺志願者でもなければやめておけ」
「え、まじで?」
「伊達や酔狂で先生が絶対に騙されるなと言っていたと思うのか?」
「ご、ごめん」
「まあ、少女モードなら大丈夫だ。ルーミア」
「は~い」
よってきたルーミアの髪飾りを外すと、少女へと成長する。着ていた和服は子供のものなのでかなり小さいから、床におちてくる。実体化を解いて、改めて実体となったからだ。服装はいつものだ。
「おお、本当に成長した!」
「ふっふっふっ、どうだ!」
金髪のままなので暴走はない。そのまま楽しそうにおしゃべりをしていく。たまにこちらに視線をやるぐらいだ。
「あんな美少女が"個性"だと! ふざけんなよ、てめえ! あんなことやこんなこともできるんじゃないだろうな!」
「できるな。基本的に俺のいうことはなんでもしてくれる」
「ちくしょうがぁあああああああああぁあぁぁっ!」
血の涙を流すかのような峰田に飽きれながら、俺はルーミアを見守る。ルーミアは何故か顔を赤らめながら女子と話している。何を話しているのかは知れないが、女子からの視線がものすごく痛くなった。後で聞いたら、風呂に一緒に入っていることや、共に寝ていることを教えたらしい。