雄英高校に入学した次の日。午前中は普通の授業だ。ルーミアは俺の膝の上に乗りながら授業を受けたり、用意された席でお絵かきをしたりしている。
午後からはヒーロー基礎学で戦闘訓練を行っている。戦闘訓練はオールマイトが行っている。俺達はヒーローコスチュームを着て移動する。
「さて、本来はチームを組ませて室内戦闘を教えようと思った。だけど、その前にいいことを思い付いたんだ」
「いいこと?」
「今回はルーミア君がいるからね。君達には本物の、本物の死の恐怖を教えてもらおう。恐怖に打ち勝たねばヒーローになんてなれないからね」
「え?」
「ああ、ちゃんと危なくなったら止めるよ。いけるかね?」
「任せてよ~」
「まあ、鬼ごっこだ。10分間、彼女から逃げ切るか、常闇少年を捕まえるのが勝利条件だ。ちなみにルーミア少女は殺す気でいってもいいが、手加減するように」
俺は逃げればいいのか。そうなると勝ちは確定だ。
「つまり、それは俺が逃げればいいのか?」
「いや、それだと君達が有利すぎる。動けるのはルーミア少女だけだ。常闇少年は道の真ん中にある円の中からでることは駄目だ。つまり、これはルーミア少女と常闇少年の訓練を兼ねている。いいかな?」
「なるほど」
つまり、俺はルーミアの枷となる。他の連中が俺を狙うことでルーミアは守るしかない。
「おいおい、まさか全員を相手にするつもりかよ。俺だけで充分だ」
「いや、それは無理だね。たぶん、全員で挑んでも勝ち目は少ないよ。それだけ、彼女は強い。これでもまだ駄目なくらいだろう。う~ん、最初の五分間はルーミア少女は常闇少年の視界から出るのは禁止しようか」
「それはいくらなんでも、俺達をなめすぎなんじゃないか?」
「有精卵である君達はまだ本物を知らない」
「そ、そんなに強いん? 全然怖くないんやけど……」
「正直、本気の彼女は私でも相手したくないな。しんどいから」
「オールマイトでもですか!」
「本当にやばいのね」
「んな雑魚、俺だけで十分だ!」
「まあ、始めたらいいさ。何回かしたらいいからね!」
オールマイトの言葉と同時に俺達は別れる。俺はオールマイトの書いた円の中に入る。交差点でだいたい直径20メートルぐらいだ。隣にはルーミアだけで、オールマイトはどこかからみているようだ。
「ルーミア、最初の五分間は俺から離れるなよ」
「そーかー」
「殺すなよ。手足を取るのもだめだ。打ち身程度にしろ」
「そーなのかー」
「……い・い・な……」
「んーわかった。ちょっと虐める程度にするのだー」
ルーミアがちょろちょろと動く間に、俺は影から刀を実態化させる。ルーミアの剣を生み出す"個性"を利用して、俺も作り出せる。ルーミアは大きさ=強さと思っていて大剣を使うが、俺は刀だ。ツクヨミヒーローなのだから、日本刀がいい。もちろん、刀身は黒だ。
『はい、スタート!』
オールマイトの声と同時に轟と爆豪が道路にでてくる。
「待ってっ、作戦を考えないとっ!」
「しゃらくせぇっ! 雑魚をくびり殺すだけだ!」
「まずは様子見だ」
ルーミアが翼を出して飛び上がり、周りに弾幕を放つ。氷と弾幕がぶつかり、氷の一部が消滅する。爆発も同じだ。回避しないと駄目な量をばらまくルーミア。そして、彼女の手からはレーザーが放たれる。
「ムーンライトレイ!」
レーザーは建物を飲み込み、容赦なく切断していく。すると、オールマイトから即座にストップがかかった。
『大規模破壊禁止! あと、弾幕もやめてくれ!』
「え~つまんな~い」
「仕方あるまい。近接戦闘で蹴散らせということだろう」
『そういうことだよ!』
「やれやれ……ルーミア、暴れろ」
俺はリボンを外してやる。大剣とかは幼女では使えない。胸から上が黒色で、下が白色の服のルーミアは銀髪へと変化して頭上にリボンでできた輪が出現する。背中からも禍々しい幾重にも別れた翼が現れる。瞳も真紅に染まり、両手と首に鎖が出現する。
「変身した!」
「少女モードですわね」
「死ねぇっ!」
驚いている者達の中で、爆轟がこちらに爆発を利用して高速接近してくる。確かに変身中に狙うのはいいだろう。だが、甘すぎる。
「駄目だかっちゃん!」
「あはっ!」
「ぐっ!」
爆発を一切気にせず、爆炎の中からでたルーミアの片手が爆豪の頭を掴んでコンクリートの地面に叩き付け、蹴り込ませる。クレーターを作らないだけ、手加減したようだ。
「くそっ!」
「誰が誰を殺すの? 私が、アンタをだよねー」
足で頭を踏みつけてぐりぐりしだす。その瞬間、巨大な氷が迫ってくる。それに対してルーミアは大剣を生み出して一閃する。そだけで氷の塊は切断されて吹き飛んでいく。
「あはっ、あはははははっ! 弱いっ、弱すぎるよっ! このまま頭を埋めちゃえ!」
「くそがっ! あがっ、やろっ!」
どんなにルーミアの足を掴んで爆発させようが、一切傷つかない。多少は傷ついてもすぐに戻るからだ。そして、ルーミアは大剣を思いっきり振り下ろす。女性陣が悲鳴をあげる中、何度も何度も叩き付けて爆豪をボコボコにする。
「かっちゃんを離せ!」
「それなりの威力だけど、遅い」
緑谷が突撃してくるが、大剣をバッドがわりに吹き飛ばされる。切島や男達も突撃してくる。彼等は大剣の風圧で吹き飛ばされた。そんな状況に動きがでる。
「ルーミア」
「おー?」
発煙筒が投げ込まれた。おそらく、八百万だろう。蛙吹なども救助に向かったようだ。
「私は
『ヒーローは殺しちゃ駄目なんだが……』
「私、いっぱい殺してるけどねー。あ、この人達は食べていい人間かー?」
「駄目だ」
「そーなのかー。じゃあ、少し遊ぼうかな」
目の前のルーミアが叫んでいる爆轟の頭から足を退けて、起き上がろうとする彼の頭と地面の間に足を入れて蹴り上げ、そのまま拳を叩き込んで錐揉み状態で吹き飛んでいく。
同時に地面にクレーターを作って移動したルーミアが、峰田を蹴り飛ばして大砲を作っていた八百万にぶつける。峰田は大喜びみたいだ。次に狙われたのは麗日で、大剣を振り下ろされる。
「ひぃぃっ!」
「麗日さん!」
「させねぇ!」
氷が邪魔してきくるので、ルーミアが大剣で対応。その直後に緑谷が前にでて殴りかかってくる。それをルーミアが素手で受け止めて後ろに放り投げる。力を逃がしたようだ。オールマイトとは何度も殴りあっているからだ。暴走状態に近いが、冷静に対処できている。
「建物の中に!」
全員が八百万の声に従って建物の中に入る。発煙筒の煙もあり、鬱陶しそうに振り払うルーミア。それにより、制限のあるルーミアは追撃をやめた。
「正直、暇だな」
直接の警護をしているルーミアの前に相手になっていない。ヒットアンドアウェイで蹴散らされている。
「ばらばらに攻めても駄目だ。協力しよう」
「そうですわね」
「うん。絶対数人じゃ無理」
大剣で衝撃波を放つのを耳郎が音波で防ぐ。その後もなんどもぼこぼこにされるが、皆は頑張っていく。だが、俺は暇なのだ。それにビルに隠れだしたのでルーミアも暇そうだ。なので俺はルーミアと一緒に彼等がでてくるまでお茶をする。