学校でマスコミが侵入してきてから、ルーミアが別行動を取るようになった。彼女はこの辺りを走り回って探しているようだ。ただ、これには例のまっくろくろすけを探す以外にも理由がある。教室にいると、他の生徒が恐怖に震えるからだ。中には泣き出すものまでいる。それでも一日を置いて全員が復帰してきたのは驚いた。とくに驚いたのは峰田だ。
「なあなあ、今日はルーミアちゃんはいねえのかよ?」
「外回りをしている。それよりも、やはり怖くはないのか?」
「だってよ、考えようによってはルーミアちゃんの中に入れたんぜ! 女の子の中だぜ、最高じゃね!」
「屑だな」
「サイテーね」
バスの中にいる他の者達も次々と言っていく。峰田の言葉で暗かった連中も少しは持ち直したようだ。
「ねえ、ルーミアちゃんは大丈夫なの?」
「なにがだ?」
「その、彼女……人体実験の被害者なんでしょ?」
「そうだな。だが、基本的には俺といれば問題ない。問題はルーミアを攫って実験体にした奴と鉢合わせした時だ。その場合、容赦なく殺しにかかるだろう」
「昨日にあったっていうアレね」
「そうか、蛙吹は休んでいたな」
「流石に……恥ずかしくて死にそうになったから……」
「そっちか。てっきり、恐怖の方だと思ったのだが……」
「その、食べられる恐怖は知っているわ。もっとも、こっちよりも怖くはないのだけれど、友人に蛇の女の子がいるの」
「天敵だな」
「ええ、でも仲は良いの。私の夢を応援してくれているし」
「いい友達をもったようだな。羨ましいよ」
「あなたにもルーミアちゃんがいるじゃない」
「ルーミアは友達ではなく、家族だな」
蛙吹と話していると、彼女は梅雨ちゃんと呼ぶようにいってきたので、そうすることにした。
「"個性"を強くするのにいい方向はないかしら?」
「梅雨の"個性"なら、手っ取り早く毒を使うことだ」
「毒? ヒーローには合わないと思うわ」
「いや、麻痺毒や溶かせる毒を使えるようになると便利だ。梅雨はレスキューヒーロー志望だっただろ」
「ええ、そうよ」
「なら、麻痺毒は怪我をして痛みに苦しんでいる者達に痛み止め代わりにやればいい。当然、
「確かにそうね。毒は薬にもなるってことだから、頑張ってみるわ。口から吐き出すから、恥ずかしいけれど……」
「仕方ないだろ」
「そうね……」
話している間に訓練施設に到着した。そこで待っていた13号先生と合流し、相澤先生や他の先生達と施設に入る。今回、一緒に来ているのは相澤先生に13号先生、スナイプ先生、エクトプラズム先生、セメントス先生だ。ここにオールマイト先生も入る。つまり、ガチで殺しにかかっている。しっかりと教えておいた。
「行くぞ」
室内に入ると、すぐに黒い渦が現れて中から大量の
「情報通りだな。散開。13号とスナイプ先生は生徒をよろしくお願いいたします」
「任せろ」
「はい!」
そんな時、ルーミアの気配を感じた。俺はその場を後にする。USJ内の森の中にルーミアの気配があり、そこが地面から噴き出した闇に覆われた。すぐに闇の中に入っていくと、悲鳴が聞こえてくる。
「くそっ、くそがぁあああああああああああぁぁぁぁっ! どっから現れやがった!」
「死柄木弔! 逃げますよ!」
「あはっ、あはははははっ! 逃がさないよ!」
少女形態で銀髪へと変化し、翼を展開しながら真紅の剣を手の奴に振るう。相手の腕はすでに斬り落とされている。黒霧の方は弾幕によって近づけない。触れた瞬間、吸収されてしまうので吸い込むこともできない。
「奇襲は成功したか」
「うん! マスターの言う通り、地表に薄く薄く、闇を広げて地中にいっぱい濃い闇を展開して、地面から奇襲してあげたの!」
教えておいた通り、雄英高校の敷地全ての地中に闇を染み込ませておいた。これによって敵はルーミアの体内に飛び込んできたも当然だ。
「その姿、この"個性"! 間違いありませんっ、こいつは脳無、怪人のプロトタイプです!」
「ちくしょうっ、こんなふざけた"個性"なんて聞いてないぞっ!」
「私も知りませんよ!」
「死ねっ! 死んで私達に詫びろっ!」
周りから沢山の子供がでてきて、二人に襲い掛かっていく。ルーミアはそれに気を取られた死柄木弔の後ろに瞬く間に移動して大剣を振るう。
「ああ、それは断るよ」
その声と同時にルーミアが蹴られて首がねじ切れて吹き飛んだ。相手の姿はマスクのような機械の頭に、スーツの男性だ。
「馬鹿な……ここでくるか、オール・フォー・ワン」
「ん? ボクを知っているのか? まあ、君の言う通り、ここででるつもりはなかったんだがね」
「先生、助かった。これで……」
「いいや、まだだよ死柄木弔。闇は消えていない。すぐに逃げなさい」
「おい、さっき頭吹っ飛んだよな?」
「はい」
「手ごたえが変だった。生きている……ちっ」
オール・フォー・ワンが二人を抱えて瞬時に飛び出した。その瞬間、大量のレーザーが降り注ぐ。
「いいか、ここはボクが対応する。廃棄処分したものが化けて出たのだから」
「先生っ!」
「"個性"、強制転移」
消えていった二人。残ったオール・フォー・ワンの前に空からルーミアが降りたつ。
「やれやれ、プロトタイプが生きている上に本当に可愛らしくなったじゃないか」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すっ、コロスゥウウウウウウウウウウウゥゥゥッ!」
「狂化はそのままのようだが、なぜか奪えないね。まあ、いい。筋力増強×8、巨大化、空気を押し出す、筋骨発条化、瞬発力×5、膂力増強×6 」
巨大化した腕がルーミアに襲い掛かるが、高速で回避して接近して大剣を振るう。
「転送、負傷反転」
斜めに斬られた傷がルーミアにいくが、闇にばらけてまた瞬時に戻って攻撃する。容赦ない弾幕を放つ。俺は隠れて様子をみる。二人の戦闘は軽く、周りの地形を変えている。互いが互いに殺すためだけに破壊の力を振るっている。
「素晴らしい。なぜ、この力があの時はでなかったのか、不思議でならない。あの時は確か、少年が邪魔を……ん? そうか、なるほどなるほど。そこか」
「っ!?」
巨大な空気が俺の下にやってくる。俺は日本刀でそれを断ち切る。ルーミアは即座に俺の前に立って大剣を構える。
「あの時の少年か。見ていただけだが、そうか。君の"個性"と合わさって生きているのか。ふむ。これは繋がっているせいか、奪えないようだ。いや、奪えばボクがやられるね。意識ある"個性"とは厄介極まりないな」
もしも、ルーミアを奪われたら、彼女は間違いなく内側から喰い破るだろう。
「ルーミア、大丈夫か?」
「平気。それより、こいつが、敵の親玉だよね?」
「そうだ。すくなくともルーミアが巻き込まれた事件の親玉だろう」
「わかった。じゃあ、コロス」
「ああ、それでいい」
「これは怖いな。私も全力でいこう。火炎放射×5、酸素供給×3、空気操作×2、水流操作×1、鉄壁」
「ルーミアっ、盾!」
「くっ!」
大爆発が起こり、身体が吹き飛ばされる。相手は水蒸気爆発を起こして、俺達を殺しにきたようだ。おかげでルーミアの身体もボロボロで、俺の身体もボロボロだ。死にかけるというのはこういうことだろう。
「だが、これならば悩む必要もない。やるぞ、ルーミア」
「いいの?」
「ああ、構わない。喰らえ」
「わかった」
ルーミアが大きくなって黒い顎に変化し、俺を喰らう。そうすることで俺達は一体化となり、本来の力が出せる。ルーミアの身体が再構築され、150㎝から160㎝くらいに変化する。金色の髪の毛は伸び、胸も膨らんで大人の女性となる。
「これはこれは……どこまで計算を狂わせてくれる」
歩きながら、闇を実態化させて巨人の腕を作って振り下ろす。地面には巨大な顎を作り、丸呑みにかかる。相手は空を飛んで回避したので、こちらも空にあがる。
「あはっ、あははははははははははっ! Laaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」
口を開けて狂化を強制する声を発する。同時に闇から俺や私達を生み出していく。生まれた無数の幼女のルーミアと少女のルーミアが全員、狂化して襲い掛かる。
「単純だが鬱陶しい手だ! 質量を持つだけでこうも化けるか!」
レーザーや弾幕を空一面を埋め尽くすように放ち、フレンドリーファイアも一切気にしない。被弾しても即座に再生するからだ。
「我等が怨嗟をその身に受けて死ね。貴様が相手をしているのは今まで貴様の犠牲になった者達だ」
「どこからこんなエネルギーを生み出しているかと思えば、君が取り込んできた"個性"を焼却しているのか!」
世界中から怨念などの負の思念を集め、それを焼却してエネルギーを生み出して闇を供給する。オール・フォー・ワンのせいで犠牲になってきた者達は数千ではきかない。そんな彼等が集合体として今の私達へとなり、小型ルーミアへと変化して襲い掛かっている。
「その"個性"は私達の物だ。返してもらうぞ、オール・フォー・ワン」
全身から赤い血を流し、深紅の瞳で睨み付ける。相手の攻撃は子機になっているルーミアが身体を張って防ぎ、自爆していく。全方位、360度からの攻撃に流石のオール・フォー・ワンもダメージを受ける。ダメージを受けたら、そこから奴の"個性"を取り返し、こちらに適応していく。
「ああ、そうか。君は思念を集め、闇という根源的な恐怖を体現している。だからこそ、私も君達も恐れる"個性"を奪えるという"個性"を作り出せているのか!」
オール・フォー・ワンがなによりも恐れるのは"個性"を奪われることだろう。それは体験してきた私達も理解している。それを適応した。そもそも妖怪として統合されて"個性"を習得したルーミアは人々の恐怖が具現化した存在ともいえる。人々の恐怖など強い感情から生まれる妖怪が"個性"を奪えないはずはない。思念を集める"個性"があったからこそ、ルーミアになれたともいえる。
「統合されたのは恐怖そのものだ」
これが"個性"などなく、完全な化学の時代や、"個性"が完全に解明されていたのなら、このようなことにはならなかっただろう。だが、今はまだ不完全であり、その不完全ゆえにこちらが自由に解釈して取り込んだ個性因子という名の怨念達と共に進化する。
「私達は成長する"個性"となった。故に今度は貴様が喰われる番だ。弱者である私達に貴様は敗北する」
両手を広げ、弾幕の代わりに隙間なく大剣を並べて生み出し、中心部にいるオール・フォー・ワンへと収束させ、喰らわせる。
「ふざけるなっ、このボクが弱者に負けるなど……」
「ふざけていない。この国は民主主義だ。なら、弱者による集合体が強者を喰らってなにがわるい。そうだろ?」
身体を串刺しにされてボロボロになったオール・フォー・ワンの首を掴む。彼の両手や両足は他の私が噛みついて、肉をえぐり取っていく。その状態でもこちらを破壊するために自爆のような爆発を起こす。相手は手足どころか、下半身がなくなって空に浮いている。こちらもすぐに再生する。
「どうやら、君を殺すには全人類を皆殺しにすればいいのかな?」
「否。この星を壊してみせるがいい」
「動物すら取り込むか。ああ、本当に化け物を生み出したようだ」
「ルナティックの名にふさわしいだろう?」
「ああ、まったくだ。だったら、挑んでみようか。星を壊すのを! 原子操作、威力増強×10、浸透撃、爆発。喰らうがいい!」
「無駄だ」
周りを囲んでいたルーミアが闇の壁となってオール・フォー・ワンを覆い、そのまま圧縮して喰らっていく。同時に一瞬だけ膨張したが、闇はほぼ全てを吸収した。微かに漏れ出たものすら、きっちりと食べた。残ったのは放射物質が微かだけ上昇したぐらいだ。それも後で喰えばいい。
全てのルーミアを戻し、闇を引っ込める。随分と人数が減ってしまったが、それぐらいでなんの問題ない。いや、問題はあるが、今はいい。
闇を解除すると、いつの間にか辺りが更地になっていて、遠くに雄英高校の建物がみえる。USJは完全に消滅してしまったようだ。生徒や教師は無事かと周りをみると、遠くの方からオールマイトが降ってきた。
「ルーミア少女か?」
「そうだ」
「その姿は……大人モードか」
「その通りだ」
オールマイトはすぐに構える。
「コントロールは?」
「今は力のほとんどを失っているから、問題ない」
「そうか。それならいいよ。それで、この惨状については?」
「オール・フォー・ワンを殺した。ただそれだけだ」
「まじで! 生きてたの! こっちが君の闇から生徒達を避難させている間に倒しちゃったの!」
「ああ、生きていたからやった。だが、確実に殺して喰ったから、もう問題ない。後は弟子みたいな奴がいたから、そいつらだけだ」
「シット。まさか生徒に尻拭いをさせるとは……」
「アレは私達の獲物だ。誰にも譲らない」
「まあ、納得できないがわかった。とりあえず、常闇少年と少女に戻ったらどうだね?」
「………………………………」
「どうしたね?」
「モドレナイ」
「まじ?」
「まじ。身体の中がグチャグチャになっていて、整理するしかない」
「できるんだ。まあ、とりあえずは病院にいこうか」
「わかった」
翼を展開して飛び上がる。空を飛び、ふと思ってオール・フォー・ワンが使っていたスカイウォークを使ってみる。すると、できてしまった。どうやら、奴の"個性"を含めて全てを奪い返し、また奪ったようだ。
ルナティックのルーミアちゃん、大人モード。
人の根源的な恐怖などの感情を集め闇とする。それは妖怪の発生原因(東方)のものと同じであるがゆえに、現代の"個性"社外では一番恐れる無個性や"個性"を奪われるという恐怖から、その力を得る。また、闇は吸収などの性質もあるため、相性がいい。
ルナティック・ルーミアの完全な倒し方。合体する前に、現われる前に倒しましょう。もしくは世界から恐怖をはじめとした負の感情を一時的に消去しましょう。破滅的な方法を取るなら、地球を破壊しましょう。
一時的な倒し方。ルールを決めて弾幕ごっこなどで戦い、勝負しましょう。ほぼ人類が勝てるのはこちらの方法のみです。宇宙を完全に解明することなどほぼ不可能なのも理由の一つ。
ルーミアちゃんなら、リアルな現代でも普通に生存できそう。