自由教師の相澤(の奥様)先生   作:小指すまっしゅ

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遅れた理由は?
A.急に書けなくなった

アニメを見直してたら急に筆が乗ったのでどうにか書ききれた。うーん文字数減らしてみようかな……


奥様は仕事をしません

ㅤ雄英高校の正門をぶち壊し、堂々と職員室からカリキュラムを拝借。集めていたヴィランにも至らぬチンピラを集めて授業を破壊し、平和の象徴を葬る。

 

ㅤそして新たな時代を、このクソッタレな世の中を、ヒーローを、気に食わない全てを壊す。ヴィランの首魁である死柄木弔は今の今までそんな素晴らしい世界を夢想していた。

 

ㅤしかし今の理想の世界は音を立てて崩れ始めている。目に映る光景は死柄木にとって受け入れ難いものだった。

 

「何でだよ……」

 

ㅤ彼が先生と呼び慕う人物により与えられた怪人脳無は死柄木にとって作戦成功の要であり、成功を確信するのに十分な人材だった。

 

ㅤ圧倒的パワーとスピードを前に並のヒーローなど鎧袖一触、強烈な打撃を打ち込まれようと『ショック吸収』により無効化、焼かれようと斬られようと『超再生』により即座に復帰する。

 

ㅤ感情は取り払われ主人の言うことは絶対服従、故に裏切らない。痛みに悶え判断を鈍らせることは無く、黙々と命令を受諾する殺戮兵器。

 

ㅤ対平和の象徴に相応しい化け物。

 

ㅤだが化け物は地に落ちた。

 

「『充填(チャージ)』」

 

ㅤ最初は殴って殴られるデットヒートだった。しかし時間が経過するに連れて脳無の拳は累に届かなくなっていく。届きそうになっても相澤の絶妙なサポートによって累は遠ざかっていく。

 

ㅤここで脳無に感情があれば折れてしまっていたかもしれない。それ程に一方的な戦い。

 

「やっぱりダメージの蓄積にもならんかぁ」

 

「個性を消しても戻った瞬間再生される。厄介だな」

 

ㅤだがやりようはある。二人が思う所は同じだった。互いのやりたい事を瞬時に察した二人はすぐ様行動を移す。

 

 累の顔面目掛けて飛んでくる脳無の剛拳。常人であれば受け止めることさえ出来ず地面の染みになる所だが累は違う。その拳を受け止めてみせ。更に手首、肘、肩の順で適格に外してみせた。

 

 そこに追い討ちを掛けるように相澤の捕縛具であるマフラーを巻き付ける。

 

「もう片方も貰おうか!」

 

 次は累が打って出る。淀みない動きで顎を掴みあげ、外していない方の手首を掴み取った。

 

「『充填(チャージ)』!」

 

 掛け声と共に鳴る異音。強引に関節を外した音に他ならない。間髪入れずに相澤も腕を拘束する。結果として脳無は両腕を拘束後ろで拘束された。

 

 圧倒的な膂力を持つ脳無であれば簡単に引きちぎれた拘束は今も健在。それは何故か─

 

「力は、まぁ入らないだろうね。思いっきし脱臼させたから」

 

「再生されると厄介だからな。いつもより強く拘束した。藻掻くとより締まる」

 

 詰み。相澤夫妻は遠回しにそう伝えた。しかし脳無は分からない。不自由になった腕の代わりに脚を使う。

 

「もう終わった。動くな」

 

 脳無の初動を感知した相澤はマフラーを強く引く。両足が地面から離れ、脳無の巨体は物の見事に宙を舞う。

 

「効かないだろうから手加減しないよ」

 

 中空に浮く脳無の両脚を凶悪的な握力で掴みあげ、細腕に見合わぬ力強さで地面目掛けて振り下ろした。

 

 陥没する地面、吹き上げる砂塵や礫。その威力は一目で分かる。

 

 だがそれは飽くまでも打撃で『ショック吸収』によって脳無には効いていない。故に使えない両腕を無視し顔から起き上がりに行く。改人に下った命令は今も有効なのだから。

 

「タフネスで私に勝てると思わないでよね」

 

 起き上がる中途に顔面への容赦ない膝蹴り。馬乗りになって拳の一方的連打。その様はヒーローに在らず、その様は戦闘に在らず。その様はただのチンピラ、その様は暴力の形そのもの。

 

「『充填(チャージ)』──ッ!」

 

 バウンドする身体は何度も地面にめり込み、抵抗しようと動かす体躯は初動の時点で叩き潰される。幾度も振るわれる拳はなお速度を上げ、やがて脳無の抵抗は初動さえ見えなくなる。

 

「限界があるのかは知らない。興味もない。だけど……」

 

 ──良いサンドバッグだぜお前。

 

「遊び始めないでくれよ。敵の前だ」

 

「最近は家事全般しかやって来てないんだ。大変なんだぜ毎日の献立や愛妻弁当、不精者な旦那を持つ奥さんの内心。察してくれよイレイザー?」

 

「……私情を現場に持って来ないでください」

 

 やや日常に戻りかけた最中、突如脳無の身体が沈む。黒い靄が立ち込めている所を見てワープゲートの個性持ち。

 

「没収されちった」

 

 完全に沈み込む前に脱出した累は相澤の隣に着地する。

 

「13号は殺ったのか、黒霧」

 

「戦闘不能には出来ました。ですが散らし損ねた生徒が外に……」

 

「お前がワープゲートじゃなかったら殺してたよ」

 

 黒霧も死柄木の隣に立った。

 

 黒い靄に埋まる脳無を挟んで並び立ったヒーローとヴィラン。だが場を制しているのはヒーロー側であるのは歴然。ヴィラン側の最大戦力はヒーロー側の手の中にある。

 

「脳無を返せよヒーロー」

 

「気に入ったから返さないよ」

 

「そう、ならじゃあ…死ね」

 

 相澤の後方に現れる脚。半ば沈みこんだ脳無の脚だ。両腕は不能になろうとも脚は使える。そしてその脚力の凄まじさは健在。そんな脚が相澤に振り下ろされようとしている。

 

 速さと威力、そのどちらも一級品に届く脳無の蹴りに相澤は対応出来ない。炸裂音が響く。

 

「グゥァ……下手しなくても何処か折れたな」

 

 なんと相澤は耐え切った。累と同じ赤いオーラを纏って。

 

「ダーリンの容量が上がったかな。おっとサンドバッグはこっちね」

 

 相澤が耐え切った理由、それは累による気力の譲渡。一時的に気力を対象に分け与える事で全体的に能力を向上させることが出来る。そして譲渡の量は個人で違い、使用回数に応じて許容量を増加する事も可能だ。

 

 通常の気力許容量では焼け石に水。脳無の蹴りで肋骨数本で済んだ相澤はそれだけ許容量を持つと言う事になる。まぁ経緯は察してくれ。

 

「それで、どうするヴィラン?」

 

「……完敗だ。もう帰ろうかなー」

 

 首をガリガリと苛立ちながら掻きむしる死柄木は間延びした声を出す。

 

「でもその前に子供の一人くらい!!」

 

 水難エリア方向に黒霧がゲートを開き、死柄木は迷い無く右手を突っ込んだ。その先には緑谷の顔がある。あと数センチ程で到達すると言う距離。

 

「全部分かってんだよバーカ!!」

 

「口調戻ってますよタフクイーン」

 

 累の手には撒菱が収まっている。阿吽の呼吸で相澤が累に渡したものだ。腕を大きく振りかぶり、脚を高く上げ、投げる。

 

「ストライク──ッ!!」

 

「下着が見えるんで次から投法を改善してくれお願いだから」

 

 投げられた撒菱は死柄木の手の甲を狙い撃った。突き刺さった撒菱は緑谷の命を救う事になる。

 

「オールマイトどころか子供一人殺せないって? なんで勇者の装備でラスボスに挑もうって時に裏ボスが堂々登場してくれてんだよ。難易度調整がぶっ壊れなんだよクソが。そもそもカリキュラムにオールマイトって名前があっただろうが、なんでイレイザーヘッドとタフクイーンなんて居るんだよ。なんだよ体調でも崩して行けませんってか、仕事舐めてんの? そもそも教師としてそれは罷り通るのか? これだからオールマイトは社会の癌なんだよ。 脳無も役に立たねぇし、黒霧は生徒逃がすし、使えねぇ使えねぇ使えねぇ! クソが手が痛てぇ、思いっきり折れてやがる。あぁ、頭に来るよなァ、なんで思い通りになんないんだよ。 これもそれもあれも全部全部全部オールマイトのせいだ!」

 

 全く関係ない悪意がオールマイトを襲う。そこで累たちではなくオールマイトの責任にする所を鑑みて余っ程ご立腹のようだ。オールマイトは泣いていいけど教師としてのお仕事はしようか。

 

「ごちゃごちゃうるさーい!」

 

 タフクイーンの無慈悲の撒菱が脳無の右目を襲う。

 

「死柄木弔! 落ち着いて下さい。このままもたつくのは愚策も愚策、冷静な判断をするのです」

 

「チッ──撤退だ。次は上手くやる。脳無もくれてやるよヒーロー」

 

「いや逃がさんよ」

 

 撒菱の嵐。

 

 黒い靄に全て吸い込まれ、靄が晴れる頃には死柄木たちの姿は無かった。暴れるだけ暴れてあっさり帰って行った。ヴィランにも満たないチンピラ共を残して。

 

「……なんでみすみす逃がしたんだ?」

 

「分かっちゃう?」

 

「何年間の付き合いだと思ってる?」

 

 それもそうかと頭の後ろに手を回す累。相澤は何とも言えない顔で頭を搔いた。問い詰めているのに一切悪びれない累に呆れている。

 

「まぁそうだね。これは予感なんだけど──」

 

 シリアスモードに入った累に身を強ばらせる。いつも急に入っては直ぐに切れるシリアスモードは今日に限って相澤の肌をピリピリと痺れさせるようだ。

 

「──たぶんあれ以上追い詰めると虎の尾どころか龍の髭を踏む事になってた」

 

「……そうか」

 

「取り敢えずこの事態を解決しよっか」

 

 この後各場所にいるチンピラを千切っては投げ千切っては投げる。相澤夫妻が居たらしい。

 

 あと遅れて来たオールマイトが土下座する姿が影であったとか無かったとか。

 

 あと脳無を持ち帰ろうとする累が塚内警部に肩ポンされ、無事相澤に連行される姿が多くの雄英職員の目で確認された。

 

 

◇◆◇

 

 

 此処は雄英にあるとある会議室。そこでは現在USJ襲撃事件の報告が行われており、主に相澤が説明を行っていた。累はサンドバッグを没収された事にブー垂れていた。

 

「故に今回の主犯格死柄木弔の後ろには大きな影があると思われます。少なくとも回収された脳無を生み出す程度の力を持つ存在が」

 

「成程ね。話によれば脳無と呼ばれたヴィランの力はオールマイト並と聞くし、今後もこんな事が続くかもと思うと校長としても予断を許せないのさ」

 

「正直タフクイーンが居なかったら私は今頃病室を眺めていたでしょうね」

 

 脳無に正面切って対応出来るのはフルパワー全開の累かオールマイト位であると頭の中で誰もが思ったその間、累はまだやる気がなさげだ。

 

 正直旦那とさっさと家に帰って組手をしている方が何倍も有意義で楽しいと思っている。根津もその点は理解している為直接咎めることはしない。ただガン無視は決め込む。

 

「取り敢えず今後雄英は常に厳重警戒を解けなくなった。いつ如何なる場合でもプロヒーローが駆けつけられる状態が望ましいという事なのさ」

 

「体育祭も例年の数倍の警備ですかね」

 

「全部私がぶちのめす……」

 

「黙ってろ!」

 

「うぎゃあ! 暴力反対!」

 

 もう何時もの光景になってしまったのか累が相澤に折檻されていても皆懲りねぇなコイツとしか感じなくなっている。結局雄英体育祭の警備体制は例年の五倍程に上がり、全国のプロヒーローを起用する事となった。

 

「ちょっとダーリン。いい加減長くないかな? 貴方の大切な奥さんの頭が潰れちゃうぜ? ねぇ聞いてる? なんでより強くしたの!? ぅにゃあああぁぁぁああ──!!!」

 

 真面目な議論が交わされていく中、累一人が真面目じゃなかった。これでも聞くべきところはきちんと聞いているからプロって凄い。たぶんここら辺で根津に一喝されるとシリアスモードに入る。なお直ぐに切れる定期。

 

 

◇◆◇

 

 

 USJ襲撃事件のあと、学校は休校になった。そんな意図しない休日の時間を緑谷出久は持て余していた。

 

 ボーッと主婦向けの番組を母と見る時間は緑谷にとってはやや歯痒く、ダンベルを持つ力が強くなる。彼の頭の中にあるのは死柄木の手が迫ってくる光景と何も出来なかったという悔恨、そしてプロとしてヴィランに立ち向かった教師達の姿。

 

 ヒーローオタクの緑谷はタフクイーンの活躍も知っていた。黙々と暴れるヴィランを打ち倒し、災害現場では不眠不休で救助をする。素直に凄いヒーローだと思っていた。

 

 しかしヴィラン連合を前にして臆すること無く圧倒していく累たちの姿を見て過小評価していたのだと恥ずかしくなった。

 

(タフクイーンの強みは底がないスタミナだけじゃない。パワーも段違いだった。イレイザーヘッドとのコンビネーションも年季が違う。脳無と呼ばれたヴィランの動きは見えない程早かったのにタフクイーンは対応していた。元からあの反射神経なのか『超気力充填(スーパーチャージ)』に寄るものなのかは分からないけど、どちらにしても驚愕の対応をしていたのは間違いない。イレイザーヘッドにしたってあの速さを前にして全く引かずのサポートをしていた、アレは見えていた訳じゃない気がする。あれはきっとタフクイーンの動きを見て瞬時に対応していたんだ。それにボクを狙ってきたヴィランの攻撃を読んで撒菱を投げて見事的中なんて戦闘中にイメージ出来るものなのか、いや事実していたんだから可能なんだろうけど果たしてボクにも同じような事が出来るのかな──ブツブツブツブツ」

 

「い、出久……」

 

「んぁ? なに母さん」

 

「電話鳴ってる」

 

 テーブルに乗っていた携帯電話がけたたましく震えていた。手に持ってみると知らない番号からだった。

 

 首を傾げながら廊下に出て、携帯を耳に当てると何処か聞き覚えのある女性の声が聞こえてきた。

 

『ぁ、緑谷くん? 今から学校に来れるかな?』

 

 累である。

 

「え、でも今日って休校でしたよね?」

 

『うんそだよ。でも暇を持て余しているんだろうなって思ってね。校長には許可取ってるから訓練しよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」




戦闘シーンはなんか苦手で、なんかもっさりしちゃうんですよね。でも気にしだすとあっさりし過ぎてしまう。

難しいよな!!

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