絵のモデルを頼んだ女子高生が幼女を拾ってきたんだがどうすればいいだろうか 作:込山正義
その場合女性経験なしの父親が爆誕してしまいます。
リアル童貞お父さんです。流石にそれはアレですよね。よく分かんないけどアレだと思うんですよ。
雨の中女子高生を拾った日からまだ一月も経っていない。だというのに今度は女子小学生を拾ってしまった。
今回は直接ではなく間接なのであるが、だからといって弁明の余地があるかといえば微妙なところだ。事情を知らない他人から見れば俺はどう好意的に解釈しても怪しさ200%の男である。
誰だってそう思う。俺だってそう思う。
そして今回の件は問題の大きさがさとうの時の比ではなかった。
さとうが拾ってきた女の子は名を神戸しおというようなのであるが、それ以外の情報がほとんど謎に包まれているのだ。
しお本人が教えてくれた事といえば名前の他にあとは年齢くらいのものである。しかしこれはしおが俺たちを信用できないなどの理由で黙秘している訳ではなかった。彼女は記憶喪失だったのだ。面倒事の予感しかしない。嘘だと言ってよシーオー。
ならばなぜしおは記憶喪失になってしまったのか。
それはさとうとの話し合いを経てある程度推測できた。
しおはその日年上の女の人に置き去りにされたらしい。その事はさとうに聞かされた。彼女はその一部始終を偶然にも目撃していたのだ。
さとうの見解ではしおを置き去りにした人物はおそらく母親なのではないかと言っていたが、例えば親戚のおばさんだったとしてもしおの保護者的立場の人物であることは確かなのだろうと思う。
それ程までにさとうの観察眼は眼を見張るものがあるのだ。いや、ほんとまじで。たまに怖いくらいの正確性なんだよなぁ……。
何はともあれその人物はしおと密接な関係だったのだろう。でなければ記憶喪失なんてものは起こらない。起きようがない。
物理的にせよ精神的にせよ、記憶喪失なんてものはそう簡単になるようなものではない。
それがしおの身に起こったということは、彼女がそれだけのダメージを負ったということだ。
身体に怪我は無かったとさとうは言っていた。ならばあと考えられるのは精神的な要因のみ。
家族と別れる。いや、親に捨てられる。
それは幼い子どもにとってどれ程のショックだっただろうか。
俺も両親との別れは経験したがもちろん記憶は失っていない。悲しい出来事だったことは確かであるがそれでも正気を失うようなこともなかった。
当たり前だ。しおが経験した事は不慮の事故のそれとは訳が違う。
俺はしおに共感できない。それがどれくらい悲しいことだったのか想像もできないのだ。
さて、それがしおの現状である訳なのだが、その事実を知った俺がした事といえば家に住まわせるくらいのものであった。
本来ならば警察、もしくは病院に行くべきなのだろう。しかしその選択肢を俺は選ばなかった。
例えば警察に届け出たとする。その場合、おそらくしおの親が速やかに捜索される事だろう。その後すぐにしおの身元は判明し、本来あるべき場所へと返されるのだ。
病院に行った場合も同様だろう。俺はしおとの関係性を証明できない。
俺がしおと親戚関係であれば、いや、せめてしおの保険証でもあれば可能性はあったかもしれない。
しかししおは身分を証明できるものを持っておらず、俺との関係もせいぜい知り合い程度でしかない。
つまり警察に届け出るにせよ病院に行くにせよ、今回の出来事が俺たちの手から離れることは避けられないのだ。
所詮は一時の別れ。別に死に別れる訳でもなければ遠く離れた地に行く訳でもない。
しかしその現実を、俺はどうしてか許容できなかった。
分かってるさ。それが間違っているということは。ただのエゴでしかないのだということは理解しているんだ。
本来あるべき姿に戻ってもしおが幸福になるとは限らないからと。さとうがしおとの生活を望んでいるからと。そう言い訳を重ね、俺は現状維持に甘んじてしまっている。
それは間違ったことなのだろう。本来ならおかしいことなのだろう。
でも無理なんだ。
しおの笑顔を見て、さとうの笑顔を知って、それを壊そうなどとは思えなかったんだ。
俺自身もそうだ。この空間が、この三人で過ごす部屋が大好きなんだ。
できることならばこの時間が永遠に続けばいいと、無理だと分かっていてもそう思ってしまうのだ。
……まあ、だからといってこのままでいいなんてことは絶対にない。
いずれは動き出さなければいけないだろう。その時が来ることも理解している。
でも。
それでも。
――もう少しだけこのままでもいいかなぁ、なんて思ったりなんかしちゃったりして……。
****
「お兄ちゃん、できたよ!」
「おおっ、上手に切れたな〜」
「えへへっ」
ぽんぽんっとしおの頭を軽く叩いてやる。
俺としおは料理を作っていた。今はちょうどしおが野菜を切り終えたところである。
何かと過保護なさとうなら包丁なんて危なくて持たせられないと言いそうなところだが、しかし俺はそんなに甘くないぞ!
何よりこれはしおが言い出した事でもある。バイトを頑張るさとうのために夕食を作ってあげたいと言い出したのだ。
そんなこと言われたらもうやらせてあげるしかないだろう!
子供用の包丁も購入し、一時も目を離さない事で安全面も確保する。
あと危険なのはコンロの火であるがそこも大丈夫だろう。念のため氷嚢や絆創膏も準備してある。
ああ、怪我を前提に考えるなんて俺はなんて厳しいのだろうか。まるで鬼のようだ。だがこれもしおのため。どうか許してほしい。
「次はそれを鍋に入れてくれ」
「うんっ!」
笑顔で返事をするしおちゃん可愛い。
俺に妹はいないが、もしいたらこんな気持ちなのだろうか。
いや、現実の妹はなんとやらというからどちらかといえば娘かな。
ちなみにメニューはカレーである。
誰でも手軽に作れて尚且つ美味しい。好みが分かれることも少なく失敗もしにくいまさにゴッドフード。キャンプの定番になるのも納得である。
「しおも疲れただろ?あとは基本混ぜるだけだし俺がやっとこうか?」
「ううん、頑張る!さとちゃんに美味しいご飯食べさせたいもん!」
「よし、その意気だ!」
その後カレーは無事に完成した。
多少時間はかかったものの、その作業のなんと半分以上をしおが担ってくれた。
出来あがり具合も完璧。これにはさとうも歓喜の嵐だろう。しおに抱きつきなでなでする様子が脳裏に浮かんでくる。
しかしバイトかぁ。
働く年下の女の子が身近にいるため、自分も仕事をしなければという気持ちになってくる。
スマホでバイトの求人を眺めながら、俺はさとうの帰りを待つのであった。
****
さとうが帰宅し三人で一緒に飯を食った後、俺はリビングでさとうと向かい合って今後の事について話し合っていた。
ちなみにしおはすでに眠りについている。今日は頑張ったから疲れてしまったんだろう。いっぱい寝て元気に成長してほしいものだ。
「なあさとう」
「なあにお兄さん」
「俺、バイトを始めようと思うんだ」
「……え?」
俺がそう言うと、さとうが驚愕の表情で固まった。
え、いや、そんなに驚く?
むしろ『ふーん、それで?』みたいな軽い反応を予想していたんだが……。
「熱があるなら病院行った方がいいんじゃない?」
「おい、お前は俺をなんだと思ってんだ」
「だってお兄さんだよ?買い物以外は基本家から一歩も出ないお兄さんだよ?その買い物もなるべくならネットで済まそうとしちゃうようなお兄さんだよ?」
「なんて言い草だ」
「でも否定は」
「できない」
「でしょ?」
くっ、言い負かされた!それではまるで俺が引きこもりみたいではないか!
……事実だった!
「いや、でも、なんかさ。さとうが学校に行きながらバイトも頑張ってる姿を見てると、俺もなんかやらなきゃなって思っちゃうっていうか……」
「うーん、なるほどねー……」
顎に指を当て斜め上あたりを眺めるさとう。
なんというか様になっている。
「でもお兄さん、別にお金には困ってないんでしょ?」
「それは……そうなんだけどさ……」
俺が生を受けた家はお金持ちだった。
そして両親が死んだことにより、俺は一生働かなくても暮らせるだけの大金を手に入れた。
こう言っては嫌味に聞こえるだろうが、俺は別にそんなものは欲しくなかった。
命はお金で買えないとはよく言ったものだ。
俺はお金よりも家族と暮らしていたかったのだ。それが今になって痛いほど実感できている。
「でも、やっぱりなんかモヤモヤするっていうか……」
そして今、家族のような存在が未来のために頑張っている。
ならば自分も何かしなきゃいけないだろう。
必要不必要は関係ない。いわばただな自己満足なのだから。
「うん、お兄さんの言いたいことは分かるよ」
しかしやはりと言うべきか、さとうの反応は微妙なものだった。
「でもこれは私が望んでやってる事だから。そこまでお兄さんが気にする必要もないと思うよ?」
ぐっ、この俺が珍しくやる気を出したというのに!
俺はただ『頑張れ』いう一言がさとうから欲しいだけなのに!一体何がそんなに不満だと言うんだ!
「それに、お兄さんがお家でしおちゃんを見守っててくれるからこそ、私も安心して外出できるって部分もあるんだよ?」
なるほど理解した。
そりゃさとちゃんにとってはしおちゃんが一番だもんね!
いや、でもこの発言は俺を信用してくれているとも取れる。
それは嬉しい。すごく嬉しい。
固めた決心が鈍りそうになる。
いや、でも、うーん……。
「まあ、引きニートが恥ずかしいっていうお兄さんの気持ちも分かるから……あ、やっぱりわかんないや、私学生の上に働いてる身だし。お兄さんと違って」
嘲笑を浮かべてこちらを見下すその表情に、俺の決意は当初の数倍ほど固くなった。
俺は引きニートをやめるぞ!さとぉぉぉうッ!
****
俺がバイトを始める。それはしおが一人で長時間家にいるという事を意味している。
そのため話し合いの内容は自然と家の防犯についての事へと移り変わっていった。
「しおの身に降りかかる危険をどれだけ減らせるか、ねぇ……」
「違うよお兄さん。減らすだけじゃダメ。無くさないと」
「あ、うん、そうだな」
しおはそこまで幼くもないだろうという意見は飲み込んだ。
目がマジだったのだ。
流石しおちゃんガチ勢である。扱いの丁寧さが産まれたての赤子のそれと同程度くらいあるかもしれない。
「まずは……危険な物を手の届く範囲に置かない、とか?」
「当然だね。そもそもそのくらいの事はもうしてるでしょ?」
「じゃああとは、ガスの元栓を閉めておくとか?」
「常識だね」
「それと……戸締まりをしっかりするとか?」
「それはもうしおちゃんどうこう以前の問題だと思うよ?」
うーん、こう考えるもあんま出てこないなぁ。
やっぱり俺たちの考えすぎなのではないだろうか。
しおは人の目がなくなった瞬間に事件を起こすようなやんちゃな性格はしていない。包丁の使い方だってすぐに覚えたし、危ない事を危ないと認識するくらいのも普通に可能だ。
あとは外的要因だが、俺たちの住むマンションはセキュリティ面が弱いなんて事もない。
さらに言えばこの部屋は最上階に存在しているので他の階よりもさらに安全だろう事が予想される。
やっぱり何も問題は……いや、待て、確かに外からの侵入は難しいだろう。しかし逆ならどうだ?
「しおが家から出られないようにした方が安全、か……」
「! そうだね。外からかけるタイプの鍵もあった方かいいかも」
家に帰って来たらしおがいませんでした、なんて事になったら大変だ。
閉じ込めるようで心が痛むし、いずれ外にも連れて行ってやりたい。
でも今はまだ色々と不安が残る。しおを知っている者とか、あとは警察とか……。
「あとは急病の心配だけど……これが一番難しいな。どうしよ」
「緊急の時すぐに連絡できる手段を用意するか、薬を常備するか、あとは……監視カメラ?」
監視カメラ!?
「いや、それはないだろう」
「そうかな?」
「間違いなくそうだ」
「……そっか」
そんな残念そうにするな!
しおにだって一人の時間は必要だろう!小学生だって一人になりたい時はあるんだよ、たぶん、きっと!
まあ、体調を崩すのは大体の場合朝か夜な気がするので平気だろう。知らんけど。
熱中症とかは心配だがそこはクーラーの使い方を教えれば解決だ。
結論、何も問題はない。過保護すぎるのも良くないって言うしね。
その後少しだけ意見を交え、話し合いは終了した。
さとうが立ち上がる。
もう夜も遅いから寝ないとね。夜更かしはお肌の大敵よ。
まあ、その程度でさとうの可愛さが損なわれるとは思えないけどさ。
「それじゃあ、お仕事探し頑張ってね」
おおっ、ありがとう!
心が温かくなるのを感じながら、リビングから出て行くさとうの背中を見送る。
「あ、でも」
と、突然、さとうがこちらに振り返った。
「もし万が一しおちゃんに何かあったら――」
それだけ言い残し、今度こそさとうはリビングから立ち去った。
え、なに!?そこで切られると逆に怖いんですけど!
しおの身に何かあったら俺は一体どうなっちゃうんですか!?
その日から俺はしおの体調管理により一層気を使うようになった。
食事の栄養バランスはもちろん、室内でもできる運動をし、睡眠時間も適切になるよう心掛けた。
やれるだけのことはやる。だからしお、どうか元気なままでいてくれ。
君のためにも。そして何より……俺のために。
物語を見ていてこの時自分ならどうするだろうと考えることありますよね?
執筆中も考えたんですがこれがなかなか難しい。
まさに題名の通りです。
拾ったJKがJSを拾ってきたらあなたはどうしますか?
誰か教えて、エロい人!