絵のモデルを頼んだ女子高生が幼女を拾ってきたんだがどうすればいいだろうか   作:込山正義

4 / 10
ハピシュガ最終話だああああああ!
うわああああああ!


最近同居人の帰りが遅くて笑えない

 

 さとうは言った。新しいバイトを始めると。

 後から詳しく聞いたところ、その言葉は『今のバイトを辞めて新しいバイトを始める』ではなく『今のバイトをやりつつさらにバイトを増やす』という意味のものだった。

 メイド喫茶でのバイトを辞めないという事実は個人的に嬉しい。

 しかしそれもさとうが日々を楽しく過ごせるという前提あってこそ。働き過ぎて体調を崩す事など俺は求めていない。それならメイド喫茶でのバイトを辞めてもらった方がマシだ。どれほど惜しくとも彼女自身には代えられない。

 

 俺もバイトを始めようとしていた。そのために面接にも行った。

 しかし後日届いた連絡では不採用との事だった。

 これが以前までの俺なら少しくらいは悔しさを感じていたはずだ。外で頑張るさとうと家でダラダラ過ごす自分を比べて歯痒さを覚えていたかもしれない。

 しかしさとうの話を聞いた後だと事情が変わる。

 バイトなんてしている場合ではないと、そう思った。こう言うと負け惜しみのようであるが、もし仮に採用の連絡が届いていたとしても俺はそれを断っていただろう。

 俺が働く事はさとうの自由時間が増える事には繋がらない。

 それは俺がお金を余るくらい持っている事からも明白だ。

 極論を言えば、彼女は働く必要など全く無い。お金が欲しいなら俺にせびればいい。自分で稼いだものではないので得意げに渡す事はできないが、それでもさとうやしおのためになるのならば躊躇いはない。今を最大限に生きるためならば後先考えずあるものはなんでも使え。それが俺のモットーなのである。

 

 しかし当然ながらさとうはこれを了承しない。

 彼女は自身のみならずしおの事も己でどうにかしようとしている。

 あまり人に頼ろうとしない性格である事は知っているが、もう少し俺をアテにしてくれてもいいのではないだろうか。俺自身も自分の事を頼りになる大人だとはこれっぽっちも思っていないが、それでも何かしら彼女たちの役に立ちたいと思ってしまうのだ。

 故に考えた。家の事は全て俺がこなそうと。

 さとうの頑固さを鑑みれば意見を変えさせる事は困難。何かしらの不備が生じたり不調が出たならまだしも、現段階ではそれもあり得ない。

 だからこそ家事は全て俺がやる。今までは少し手伝ってもらっていたところもあったがそれもなくす。料理、洗濯、掃除、その他諸々にさとうの手を煩わせない。

 そして当然ながらそれらに手を抜くような事もしない。それが俺にできる最大限のサポートだと信じていた。いや、むしろ俺にはそれくらいしかできなかったのだ。はぁ、自分の情け無さが嫌になってくる。

 

 

 ****

 

 

 太陽はとっくの昔に沈み夕食も風呂も済ませたような時刻。すでにしおが布団で眠りについていてもおかしくない時間にもかかわらずさとうは未だに帰宅していなかった。

 いつもよりかなり遅い。メールではただ一言『バイトが長引いて帰りが遅くなる』とだけ届いていた。残業は無いとか言っていた覚えがあるが気のせいだったのだろうか。俺の記憶力は鶏と同程度なので全くアテにならない。

 

 俺としおは玄関の前で座り込んでいた。さとうの帰りを出迎えるためである。

 日頃からしおはこのようにしてさとうの帰りを今か今かと待つ事が多かった。いや、多いというよりもほぼ毎日そうしていた。その姿にはいつも温かさと愛らしさを感じていたが、これ程遅い時間になるのならば話は変わってくる。

 夜更かしはよくない。特に成長期の子どもなら尚更だ。俺はしおを説得していつも通りの時間に寝かせようとした。無理をしてしおが体調を崩してしまったら一大事である。

 しかし彼女は首を縦には振らなかった。

 さとうにとって一番大事なのはしおである。だからこそしおは無理をするべきではない。出迎えがない悲しさや寂しさをさとうは感じてしまうだろうが、それでもしおは部屋に戻って寝るべきだ。さとうもそれを望んでいる。そう納得させようとした。

 しかし彼女は首を縦には振らなかった。

 さとうもそうだがしおもこれでいて結構頑固なところがある。

 俺は早々に説得は諦めた。しかしだからこそ妥協せずに最大限の補助をする事に決めた。

 まず最初に寝室から布団を持ち出した。隣り合う布団のうちの片方、しおがいつも使っている方のものを玄関へと移動させる。もちろん掛け布団なども一緒にだ。

 次にしおをそこに寝かせる。最初のうちは渋っていたが、さとうが帰ってきたら必ず起こすと約束した事でなんとか布団に潜らせる事に成功した。

 その後しおはすぐに夢の中へと旅立った。さとうのためと張り切ってはいたが流石に眠気には勝てなかったのだろう。

 あどけない寝顔に頭を撫でたい衝動に駆られるがなんとか我慢する。

 せっかく寝かしつけたのに起きてしまったら元も子もない。

 なるべく物音を立てないように気をつけながら、じっとその場でさとうの帰りを待つ事にした。

 

 それからおよそ30分後。俺までウトウトし始めそうなタイミングで外から足音が聞こえてきた。

 おそらくさとうが帰ってきたのだろう。ようやくである。

 ぐっすりと眠っているしおを起こすのは非常に躊躇われたが、約束してしまった手前心を鬼にしてちゃんと声をかける事にした。

 肩を軽く揺すりさとうが帰ってきたと教えればしおは弾かれるようにして飛び起きた。幼い手で寝ぼけ眼を擦っている最中に鍵が外からガチャリと開かれる。帰って来たのがさとうと分かった時点でこちらから鍵を開けてやればよかったと反省していると、次いで扉がゆっくりと開かれた。物音が立たないようにするその行動はおそらく眠っているだろうしおを配慮してのものなのだろう。実際にはここにいるのだが。

 

「おかえりさとちゃん!」

 

 満面の笑みで出迎えるしおにさとうは一瞬驚きをあらわにする。まさかこの時間まで起きているとは思っていなかったのだろう。正確には今まで寝ていたのだがそれはそれである。

 

「ただいましおちゃん!」

 

 予想外の嬉しい出来事に固まっていたさとうだったがすぐに顔を綻ばせた。

 二人の笑みに釣られて俺まで笑顔になってしまう。

 

「もしかしてずっと待っててくれたの?」

「うん! さとちゃんにおかえりって言ってあげたかったから!」

「しおちゃん……!」

 

 感動したようにしおに抱きつくさとう。

 二人だけのその空間に水を差すのは憚られる。自分にも抱きついてほしいという欲望はそっと心の奥にしまい込む事にした。

 

 感動の再会が終わったらすぐに布団を元の場所に戻ししおを寝かしつけた。

 さとうを出迎えるという使命をしっかりと遂行できたからだろう。その寝顔は先程よりもさらに安らかで可愛らしかった。

 

「お兄さんもありがとね。わざわざ待っててくれて」

 

 寝室を出てダイニングへと戻りさとうの夕食を温めていると彼女にお礼を言われた。

 おお、覚えていてくれたか。しおに夢中になりすぎて俺の存在に気付いていないのではないかと心配していたのだがどうやら杞憂だったようだ。よかったよかった。

 

「ま、夜更かしには慣れてるからな」

 

 ゲームとか。テレビとか。あとはデッサンの止め時が分からなくて徹夜で絵を仕上げた事も多々ある。

 

「そういや残業は無いとか言ってなかったか?」

 

 さとうの前に食器を並べながら質問する。

 それを受けて彼女は困ったような笑みを浮かべた。

 

「うーん、私もそう思ってたんだけどねぇ……」

 

 この反応、もしや予期せぬ何かがあったのではないか。

 言いたくなさそうなので無理には聞かない。しかしとても心配だ。

 

「辞めたくなったらいつでも辞めていいんだからな。ほら、俺を見習ってさ」

「……うん、ありがとう」

 

 冗談混じりに諭してみれば苦笑付きで礼が返ってきた。

 うーん、これはまだ辞めないやつだな。

 さとうは強いから辛い事があっても耐え抜いてしまうだろうし、スペックも高いから例えば上司の無茶振りなんかがあっても平気でこなしてしまいそうだ。

 そしてだからこそ心配なのである。

 

「……ねぇ、すごく食べ難いんだけど……」

「お気になさらず」

「いや気になるから」

 

 箸を片手にこちらをじとーとした目で見てくるさとう。

 許せ。俺はすでにしおと同じタイミングで夕食を済ませてしまったがためにさとうと一緒に飯を食べる事ができないんだ。そんな俺にできる唯一の事はさとうの食事シーンをじっと見ている事くらいのもの。だからこれは仕方ないのである。

 

 その後なんやかんやあり普通にうざがられた。しおがこの場にいない寂しさを紛らわす効果はあったようだがその方法が致命的だったらしい。お詫びとしてデザートを献上した。

 

 それと余談だが、さとうの入浴後の浴室の掃除は俺が行なった。

 いつもは後に入るさとうとしおが二人掛かりでやるのだが今日は例外にした。

 これはさとうの負担を少しでも減らすための行動であり他意は無い。さとうの事を心配している俺に浴場で欲情する余裕など無いのだ。

 

 

 

 ****

 

 

 

 今日も今日とてさとうの帰りをしおと二人で待つ。

 玄関前で布団に包まるしおの姿はもはやお馴染みとなってしまっていた。可愛いのだが素直に喜べるものではない。それだけさとうの帰りが遅い日が多いという事なのだ。

 

「最近夜遅くまで起きてる日が多いけど大丈夫か? 気分が悪くなったりなんかしらの違和感を感じたりしたらすぐ言うんだぞ?」

「うん、大丈夫!」

 

 改めてしおの様子を観察してみる。無理をしている様子は今のところない。

 じーっと見つめていたからかしおと視線が合ってしまう。何でもないと微笑めば首を傾けながらもにぱっと笑い返してくれる。可愛い。

 

「あっ、そうだっ。ねぇお兄ちゃん。お兄ちゃんはなんでヒヨコがお湯に浮くか知ってる?」

「えっ」

 

 えっ、ヒヨコって水に浮くの?

 あいつ泳げたの?

 ……いや待てその前に――お湯?

 それはつまり料理的なあれなのか?

 

 俺が返答に困っていると、しおは布団から抜け出し『待っててねー』という言葉を残してそのままとてとてと玄関とは反対方向に小走りで去って行ってしまう。

 いつもなら眠気で動きが鈍る時間帯にもかかわらず今日のしおはまだ元気なままだ。その理由は夜遅くまで起きる事を考慮して昼寝をさせたからである。

 しかし誤算だったのは釣られて俺まで寝てしまった事だ。しおの寝顔を見ていたらついつい眠気を誘われてしまったのだ。

 夜に眠れなくなっても困るのである程度時間が経ったらしおを起こすつもりだった。しかし自身が寝ていてはそれも叶わない。

 結果夜でも元気一杯な俺としおが爆誕してしまった。完全にやらかしである。俺がしおの生活リズムを余計に崩してどうするのだ。

 

 走り去って行ったしおはその後すぐに帰ってきた。行きと同じようにとてとてと小走りでこちらに向かってくる。

 その手にはおもちゃを持っていた。水に浮かせて遊ぶ、鳥の形をしたゴム製の黄色いあれである。洗面所から持ってきたのだろう。

 

「あのね、このヒヨコが浮くのはね、下にあるお湯が助けよーって頑張ってるからなんだよ!」

 

 知ったばかりの事を他の人にも教えたがる子どものように、しおは嬉しそうな表情で説明してくれる。

 

「だから私はさとちゃんのお湯になりたいの! それでこのヒヨコみたいに、さとちゃんの事を助けてあげたいんだっ!」

 

 言っている事の意味は半分くらいしか理解できなかったが、それでもしおの心意気はこれ以上ない程に伝わってきた。

 さとうがしおの事をどれだけ大事にしているかは知っていたが、しおもさとうの事を心の底から大切に思っているのだと改めて実感させられる。

 

「しおはいつもさとうのために頑張ってるもんな。偉いぞしお。さとうも大助かりだな」

「えへへっ、そうかな? そうだといいなー」

「ああ、そうに決まってるさ。お湯じゃなく空に浮かべちゃうくらい大助かりに決まってる」

「えへへっ、それはよくわかんないやー」

 

 頭をなでなですれば気持ち良さそうに目を細めるしおちゃん可愛い。

 しおの想いは伝わった。好きな人を支えるために精一杯頑張る事。それはとても美しくとても尊く素晴らしい事だ。こちらも全力で応援したくなる。

 しかし悲しいかな。しおの言葉には一つだけ間違いがあった。

 そして非常に迷う。果たしてこの間違いは正すべきものなのだろうか、と。

 人は過ちを認める事で成長できる。そうだ。確かにその通りだ。

 でも。だからといって。ここは過ちを指摘する場面ではないのではないか。そう強く思う自分がいた。

 TPOの重要性を考え、今はその時でないと判断を下す。

 だから口には出さない。しかしこの胸の内の感情が行き場を失って荒れ狂ってしまっている。

 だから心の中で言う事にしよう。

 

 なあ、しお。

 それな、ヒヨコでなくアヒルなんや。

 

 

 

 ****

 

 

 

 今日も今日とてさとうの帰りは遅かった。

 いつもと同じような時間に帰宅し、その後夕食と入浴を済ませ就寝する。

 さとうはそのはずだっただろうが、しかし今日はいつもと少しだけ違った。夕食と入浴を済ませて後は寝るだけとなったさとうに声をかけ、少しだけ時間をもらったのだ。

 彼女の貴重な就寝時間を削る行為だという事は分かっている。しかしどうしても見せたいものがあったのだ。

 さとうを連れて小さなアトリエへと入る。そしてそこで今日完成したばかりの絵を彼女に見せた。

 

「わぁ……」

 

 感嘆の声をあげるさとう。どうやら気に入ってもらえたようだ。

 これはいわばサプライズプレゼントだ。

 作者は俺。そしてモデルはしおである。

 

「すごいすごい! いつの間にこんなの描いてたのお兄さん!」

 

 さとうは興奮した様子で絵を眺めている。今にもぴょんぴょん飛び跳ねそうな勢いだ。

 

「昼間しおに頼んで少しずつな。どうだ、気に入ってもらえたか?」

「うん、もちろんだよ!」

 

 目がキラキラと輝いている。お眼鏡にかなって本当によかった。

 もしこれがさとうにとって不出来だと判断されたらと少し不安だった。そんな事になれば彼女の疲れを癒すどころがストレスを溜める結果になりかねない。本末転倒もいいところだ。

 だがまあ実際のところ自信はあった。さとうをモデルにした絵を完成させた時に俺は覚醒したのだ。

 漫画などである次のステージに進んだというやつだ。その感覚を俺もリアルで感じ取っていた。

 そのおかげもあってかしおの絵はかなりサクサク進みすぐに完成まで至った。

 筆が本当に面白いように進むのだ。心と体が、頭の中の想像と腕の動きが完全に一致するような感覚と言うべきか。真理を理解したかのような全能感が俺を動かした。

 

 そんなこんなで今に至る。

 自分から見てもしおの絵はさとうの絵に匹敵する程の出来だった。そして今さとうからのお墨付きも貰えた。事しおの絵に関してはこれ以上評価に適した人物はいない。嬉しさに思わずガッツポーズしてしまう。

 

「ありがとうお兄さん。すごく元気出たよ」

 

 そう言って貰えるなら絵描き冥利に尽きるというものだ。こちらこそありがとう。

 

「でも、元気が出過ぎて今日はすぐには眠れそうにないなー」

 

 次いでさとうは揶揄うように笑った。

 うわぁしまった。そんな事態は考慮してなかった。

 俺はホットミルクを用意するために慌ててキッチンへと駆けた。

 善意が裏目に出てさとうが寝不足になるなど決してあってはならない事なのだ。

 

 

 

 ****

 

 

 

「しおちゃんただいま!」

 

 今日も今日とてさとうの帰りは遅かった。

 それだけならいつもの事だ。しかし今日はいつもとは違かった。

 さとうの様子がおかしかったのだ。内心を表に出すまいとしているが俺には分かってしまう。何かがあったのは明白だ。

 

「……さとちゃんおかえり!」

 

 俺が気が付くのだ。当然しおが気付かない訳がなかった。

 しかししおはその理由を問いただそうとはしなかった。さとうが故意に隠そうとしている事が分かったからだ。それが自身のためだということもしおは理解していたのだろう。

 

 本心を隠して上っ面だけの言葉をルーティンのように交わす。

 いつもと同じやりとりのはずなのに感情が乗っていない。どうにか浮かべた笑みは引きつっていた。俺も、しおも、そしてさとうも。

 らしくない。さとうがこんな風になるなど予想もしていなかった。想像もできなかった。それをいきなり目の当たりにして俺は困惑の真っ只中にいた。おそらくしおも似たようなものだろう。

 こんな彼女を俺は知らない。だからこそ分からない。一体何があったというのだ。余程の事があったのは理解できる。しかしその余程の事が何なのかまるで検討がつかない。

 

 ……いや、ある。

 さとうの心をここまで乱すもの。それに俺は心当たりがあった。なぜならそれは俺もよく知る存在だからだ。思わずそちらに視線を向けそうになる。

 

「……じゃあ私はもう寝るね! さとちゃん、お兄ちゃん、おやすみなさい!」

 

 子どもっぽいように見えて、事実子どもなのにもかかわらず、しおは本当に察しがいい。そして気が利く。

 人の感情を読み取る事に長けているというべきか。

 もしかしたら彼女の視界には何か別の景色が見えているのかもしれない。たまに本当にそう思う事がある。

 そしてそれについてはさとうにも似たような考えを持っているのだが、まあ今はあまり関係ないだろう。それよりもさとうの話である。

 

 

 

 

 

「お兄さん。私バイト辞める事にしたよ」

 

 ダイニングに移動し椅子に座り話し合う態勢を整えれば、真向かいに座るさとうがそう切り出してきた。

 

「でもそれはどうでもいい事なの。報告した方がいいかと思ったから一応言っといただけ。これについては本当にどうでもいい。全く気にしてないからお兄さんも軽く流してね」

 

 俺からしたら一大事なのだが口を挟める雰囲気ではなかった。

 空気が重い。酸素の半分が鉛に変わってしまったのではないかと錯覚する程だ。故に呼吸もし難い。

 

「で、本題はこっち」

 

 さとうは懐から一枚の紙を取り出し机の上に表向きに置いた。

 それはよくある張り紙だった。

 電柱などに貼られるイメージのある、ペットを探す際に使うチラシだ。家出した猫の情報を集めるために使われる事が最も多い気がするが、その写真に写っているのは猫ではなく人であった。

 小さな女の子。そして写真の下に書かれている名前は“神戸しお”。

 

「…………」

 

 怖くてさとうの方を見る事ができない。

 今彼女の内心に渦巻く感情は如何様なものか。

 読心能力を持っていなくともそれが手に取るように分かった。分かってしまった。

 

「ねぇ、お兄さん――」

 

 声をかけられる。酷く冷たい声だった。

 恐る恐る顔を上げる。そこに笑顔が魅力的な少女の姿はなかった。

 

「相談があるんだけど」

 

 どす黒く濁った双眸が、こちらを射殺すようにして見つめていた。

 彼女の全身から黒いものが止めどなく滲み出しているように見えるのは、果たして俺の目の錯覚なのだろうか。

 

 

 




ぐらんぶる最終話だああああああ!
うわああああああ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。