あの時のことは今でも夢に出る
あれは忘れもしない・・・今から12年前の夏のことだ・・・
その年の夏もうんざりするほどの暑さではあったが子供の俺達にはさほど気には止まらなかった。
俺たちは対ザンスカール戦争勝利15年式典のイベントで戦争博物館を訪れていた。
イベントの目玉としてMSの曲芸飛行を行うのとその後のコックピット試乗体験を楽しみにしていた俺と君・・・サラはショーの時間までほかの展示物を見学していた。
「しかしよく試乗なんてさせてもらえるよなぁ」
俺はサラにそう問いかけた。
「あー、うん それはね、本当は試乗は抽選なんだけどパパに頼んで私たちが乗らせてもらえるらしいよ」
そう、サラの父親は連邦政府のまあまあの位のお偉いさんらしくつまりは今回の試乗はインチキだ。
「そうなんだ、サラのお父さんが偉い人でよかった」
そのとき俺はまだ12のガキで心から試乗を楽しみにしていた。だからそのインチキに対する罪悪感などまるでなかった。
今思えばそんなインチキは・・・いやそのイベントに行くべきではなかったと後悔している。だが仮にあの時に戻ったところで俺に何ができるであろう。結局のところ何もできないのではないかと思う・・・いやこんなこと考えるのは止そう、この12年間そんな事考えては止める・・・それの繰り返しばかりだ。
「そうそう試乗するMSってすごい奴なんでしょ たしかガンダムっていう」
サラにそう聞かれると俺は少し考えて返事をした。
「正確には違うって解説の人がいってたよ、正式な名前はF90っていうらしいよ」
「ふーん、でも顔がガンダムだよね じゃあガンダムなんじゃないの?」
「いやそこまで詳しいことはわからないよ」
別に俺はMSに詳しいわけでもなくそのF90という機体のことを当時はよく知らなかった。
今では忘れもしないあの機体・・・
「ほらこれもガンダムだよね ていうかこっちのほうが有名じゃない?」
そうサラが指をさしたMSは白いガンダム νガンダムという機体だった
「ああこれは有名な奴だよね 乗ってた人なんてすごい英雄だよ。でもこれはレプリカで本物は70年以上前に行方不明だって」
「そっかぁ・・・じゃあ今も宇宙のどこかにあるのかなぁ」
暫く他の展示物を見学しているとサラの父親、トーマスさんが現れた。
「やあアレックス、いつも娘と仲良くしてくれて・・・おっとそろそろ時間だから行ったほうがいいな」
そうして俺たち3人は野外展示場に向かった。
かなり大勢の人が押しかけていたがそこはサラの父親の力なのか最前列で見学できるようだった。
そして曲芸飛行が終わりMSからパイロットが降りると試乗できることになった。
「サラから先にだって!」
「うん」
そうサラは返事するとF90に近寄りコックピットに入っていった。
そう、それから俺は君の姿をみていない・・・
その直後に警報が鳴った それからの記憶はあまりのことで完全ではないが爆発音が周囲に響き渡りF90の曲芸飛行の警備をしていたジェムズガン3機が吹き飛んだのだ。
「なんだ!あれはザンスカールの!」
そう誰かが叫び会場はパニックになった。
のちに調べて分かったことだが会場を襲撃したMS3機 ゾリディアによりイベント会場は火の海になった。
「サラ!!まずい!あいつら!軍はなにをやっているんだ!」
そうサラの父親が叫ぶのもむなしくゾリディア3機はF90を掴みどこかに持ち去ってしまった。
「サラ!サラ!」
俺とサラの父親は大声で叫んだがその声はパニックの群衆にかき消されむなしく消えた。
君は消えてしまった さらわれた
当初は連邦政府の高官の娘を誘拐しなにかしらの要求をしてくるものだという報道がなされたがテロ組織 おそらくはザンスカール残党からの声明はなくサラは戻らなかった。
そうしてまた俺は悪夢から覚める、この感情の矛先を俺はテロリストに向けることになる・・・だが本当に許せないのは何もできない自分なのかもしれない・・・