旧ザンスカール軍拠点アベッハ
俺は部屋から出るとクライアントが待つフロア2に向かった。
さて、今度は何をやらせる気なのか・・・あいつらあの12年前の仕事以来特に接触してこなかったというのにいったいどういう風の吹き回しか。しかも俺は連中の組織の名前すら知らない。親父ですら知っていたかどうか、その親父も3年前に亡くなった。少なくとも奴等の名前くらいは知っておきたいところだが聞いたところでそれに応えるだろうか?
そうこう考えているとフロア2についた。一応このフロア2は客間、いやそんなに立派なもんではないがほかのフロアに比べればまだましなフロアになっている。
ちなみにフロア1がMS格納庫兼港フロア2が応接間と倉庫フロア3とフロア4は居住区になっている。
部屋に入ると身なりの整った黒スーツの男がいた。見た感じ30代後半から40代といったところか。
「やぁ久しぶりだな、たしかあの時はまだ君は18くらいだったか?」
「世間話はいい、それより要件を聞こう」
「まぁまぁそんなに焦らなくても、と言いたいところだが、まあ確かに我々も実のところ時間が惜しくてね。じゃあ本題に入ろう」
そのスーツの男はそういうと何やら端末を取り出して操作しこちらに見せてきた。そこには赤い球体の画像が映し出されていた。
「これは・・・MSの脱出ポッドか何かか?」
「そうだ、君たちに頼みたいのはこれだ。」
「・・・いったい何が目的だ?こんなもの俺たちに頼んで?自分たちでなんとかしたらどうなんだ?」
「目的など君らが知る必要はない。それに我々は今はまだ目立つ時ではないからな。どうだ報酬はこれだけ用意する。もちろん前金も払う。YesかNoか今聞こう。」
そう言うとまた端末を操作してこちらに金額を提示してきた。とんでもない金額だった。そしてこの金額が意味しているところはこの仕事が危険、もしくは相当大きな力が働いているということを表していた。
断れるわけがない。この金額があれば・・・いやサラは望まないかもしれないな。
「・・・でそのブツはどこにあるんだ?」
「そうかやってくれるか、場所は把握済みだ。サイド7付近を拠点としている規模の小さなジャンク屋と海賊連中が所持しているはずだ。詳しくはデータを渡すからそれを読んでおいてくれ。」
サイド7、また厄介な場所だ。サイド7は開発途上だったが戦乱が続いたため、現在他のサイド再建が優先されいま現在は手つかずになっていたはずだ。
居住者も他のサイドに移ったか、残った連中もいるがやはりそいつらは俺たちの同業のような感じであろう。
だが問題なのはそういった連中ではない。サイド7は放置され荒れているにも関わらず他のサイドより治安がいいのだ。なぜならあのサイド7のあるL3(ラグランジュポイント3)付近には古くからの連邦軍の拠点、宇宙要塞ルナツーが存在するためである。
連邦軍の意地なのかそれはわからないがルナツーの連邦軍は他と比べると動きが活発であり、それがサイド7での俺たち同業者の仕事のやりにくさにつながっている。
そのためサイド7のアウトロー連中は規模は小さくその動きも慎重でありあまり目立たない存在であるらしい。
なるほど目立ちたくないこいつらが自分たちでやりたがらないわけだ。俺達だって目立ちたくないのは同じだというのに。
「で、あんたらの名前は?それくらいはいいだろ?」
「私か?まあ、アポステル・ドクトルとでも名乗っておこう。では、また次は仕事を終えてから、いい報告を待っている」
こいつ個人の名前ではなく組織の名前を聞きたかったんだが・・・。そのアポステルとかいう名前も偽名だろう。
まあいい、だがこいつらからの仕事はもうこれっきりだ。この仕事の報酬があれば自分達だけの分け前でもかなりの金額になる。
この仕事はあくまでこいつらが俺達ザンスカール残党に依頼した仕事だ。このアベッハにいる全員に支払われるわけではないのだ。
この報酬をもらったらMSを売り払ってサラと2人でまっとうに生きていくのも悪くはないかもしれん。