宇宙 月面 フォン・ブラウン市
※アレックス視点
ふざけるな 何が信憑性の薄い情報だ そもそもの問題が連邦軍がもう少しちゃんとしていればこんな事にはなっていなかったのかもしれないというのに
例の機密ファイルの情報はすぐに連邦軍とマハの上層部に伝えられた。もっともマハの宇宙での戦力は現在無いに等しい 今回の件の対処は連邦軍が行う・・・筈であった。
あの地球連邦宇宙軍総司令のふざけた言葉を思い出すだけで今でも怒りが込み上げてくる。
何がそんな信憑性の薄い情報で艦隊は動かせんだ あの忌々しい声でこう言いやがった 君は艦隊を動かすのにどれだけの人員と金が掛かるか知っているのかね?と・・・
もしあの総司令がその場に居たら俺は恐らく手が出ていただろう それでなくともモニターを殴りつけようとして止められたくらいなのだ。
軍がもっとしっかりしていれば今宇宙はこんな状況になっていないのだ そして今必要とされている行動すらしないとは冗談では済まされない。
形ばかりに一応こちらでその情報の真偽を精査するなどと抜かしたがそんな悠長な事している暇など無い あのファイルによればもう来月にも木星帝国の艦隊は地球圏に到達すると記してあったのだ。
止められないのか むざむざ敵の情報を知りながらただ準備もできずに待つなどと・・・
これではヨハンナは全くの無駄死じゃないか
マハは動かない・・・いや動けないだろう 今のマハの戦力では敵の戦力に対しては無力すぎる
こんな公園のベンチで腐っている俺をみたら死んでいった皆が失望するだろう だが出来ることなど・・・
全てが嫌になる そんな時だった いつの間にか近くに初老の男性が寄ってきており話しかけてきたのだ
「どうしたのだね、見たところその制服は軍人かね?・・・いや連邦軍の制服とは少し違うようだがこんな昼間から君のような人がこんなところにいると目立ってしょうがなくてね。」
「・・・すいません、今は誰かと話す気分では無くて・・・一人にしておいてくれませんか?」
「まあ少しばかり年寄りのお節介に付き合ってくれても構わんだろう?それにその様子はあまり一人にしておくと危険そうな気配がするのでね・・・で何か良くないことがあったように見受けられるが話してみてくれんかね?人に話すと楽になるという事もある。」
少し怪しいとは思ったがなぜか俺は口が開いてしまった この初老の男性が紳士風の身なりで人当たりもよさそうであったという事もあるかもしれないが・・・赤の他人に何故話す気になったのか自分でもよく分からなかった。
機密になる事は伏せ例え話を交えなんとなくその男性に俺は話を始めていた しかし自分でも話している途中でヒートアップしてしまったのかもしれない いや、もはや機密を守るなんて俺の中でそんな義務は吹き飛んでいたのだ 自分の所属しているマハはともかくあの連邦軍のお偉いさんはファイルを信憑性が薄いなどと言い放ったのである。ならもはや俺も機密を守る気なんて消し飛んだとしてもいいじゃないか・・・少なくとも今の俺はそんな気分であり守秘義務を放棄していた。 正直に言って自暴自棄になっていたのだ。
一通り話を終えると初老の男性は少し考えてから口を開いた。
「そうか、なるほど君の怒りは最もであろう。前回の戦争でも連邦軍は殆どその動きをみせなかったに等しい、動いていたのは一部主流派から外れていた戦力だけであったのだ。だが今の連邦軍にムバラク・スターン提督のような人物は存在しないであろうからな。」
「・・・はい。」
「そして君の話した事が事実であれば前回の戦争よりも厳しい状況にあると言えるだろう。前回は一部であれ軍が動いておりリガ・ミリティアと言う反抗勢力が存在したが今回はそうではない、たとえマハが動いたとしても竜の鬚を蟻が狙うが如き無謀であろう。」
「すいません、こんな話をして・・・もしこの機密を知ったとなったら貴方にも迷惑がかかる可能性があると言うのに・・・」
「いや私から聞いたのだ。気にすることはない。」
「自分が無力で情けなくて嫌になります・・・誰一人守れないで・・・」
「君はシャア・アズナブルという人のことを、知っているかね?」
「シャア?あの赤い彗星のですか?勿論知っていますけど自分はアースノイドなのであまりいい印象は持っていませんよ。」
「まあ彼についての印象は置いておくとして、彼はたった独りで両親の苦労を背負い込み強大なザビ家にそして連邦と言う巨大な組織に立ち向かったのだ。たとえ最終的には敗れたとしてもその行いは無駄ではなかった。」
「・・・つまり自分も立場は違えど立ち向かえと貴方は言いたいんですか?できませんよ自分には・・・」
「そうとも限らん、私はね、人間と言うのはどんな人物でもそこまでの差はないと考えているのだよ。たとえニュータイプであろうがオールドタイプであろうがね、どんな人間にも可能不可能はあるだろうがそれが人によって変わるかと言ったら私はそうは思わん。シャアに出来て君に出来ないという事は無いと私は考えるがね。」
「買いかぶりすぎですよ・・・確かに自分の直面している困難などシャアに比べれば小さいものかもしれません、しかし俺はシャアのようなリーダーシップを取れる人間ではありませんよ、今回の件だってあのシャア・アズナブルやアムロ・レイと言った人物ならばともかく自分には無理です。」
「果たしてそうかね?少なくとも彼等ならば不可能であると分かっていても、どれだけ無謀だとしても立ち向かうことはするはずだと私は思うがね、ならば君にもそれは出来るはずだ、確かに今私は人間に差はないと言ったがそれは何かをやり遂げようとする意志を持つことが前提の話なのだ 初めから諦めていては出来ることも出来なくなってしまう。」
「・・・」
「少し昔話をしよう、あるところに一人の青年が居た、年齢はちょうど今の君と同じくらいであったな確か。その青年は強い信念を持ち自分の役目を見事に全うしたのだ、確かに人は彼の事を赤い彗星より劣ると言うかもしれない 実際にその青年は自分の事をシャア・アズナブルやアムロ・レイより劣っていると考えていたのだ、だがしかし私はそうは思わない。その青年のあの意思、信念はそれこそあの英雄二人と比べても劣るなんてそんなことは無いのだ。彼は最後まで己の意思を貫き通したのだ、その高潔な意思をそもそも誰かと比べる事自体私は間違いだとすら思う。」
「その人もニュータイプだったんですか?」
「ああそうだ、だがね、彼がNTであるかどうかは重要ではないのだ、言ったであろう?重要なのは意思があるか無いかそこでありNTかOTか・・・はたまたNT能力の差ではないのだ。」
その初老の紳士風の男の言葉は俺の中に染み入るように入っていくようだった
そうじゃないか、俺は連邦軍を非難するだけで結局自分の力で何かをしようなんて最初から考えてすらいなかったのだ。
最初から他人任せで自分でやろうともせず諦めていたのだ もし歴代の英雄のようなNT達であればそうはしなかったであろう。
ならばたとえ命令違反でもやってみせる必要がある 自分の意思でだ たとえそれが先ほどの言葉の通り竜の鬚を蟻が狙うが如き無謀であってもだ。
「すいませんこんな事に巻き込んで・・・俺は最初から諦めていたんですね・・・でも決心がつきました、たとえ無謀でもやってみせますよ俺は、でなければ死んでいった人達に顔向けできません。」
「そうかならよかった、だが無謀かどうかはまだ分からんぞ。状況というのは刻々と変わるものだからな、さあもう戻ったほうがいい、何か進展があるやもしれんぞ・・・例えばもしかしたら身近なところに強大な竜を打ち倒す伝説の剣があるかもしれんからね。」