今回のサブタイトル鈴原拓海さんが考えてくれました!ありがとうございます!!
ギンと碧に置いてかれて何十年も経った。あの二人は私を置いて真央霊術院に通うと言う噂を聞き付けた私は慌てて同期のテストを受けて入学した。
結論から言うとあたしとギン、碧の差は大きかった。ギンと碧は一年で卒業し『神双』なんて大層な異名までつけられているにも関わらず私は真央霊術院にきっちり六年居座った挙げ句卒業した後、席官入りすることも出来なかった。
ギンは参席、碧は四席まで上り詰めたと言うのに。
男女の差とかそんな生易しいものじゃないと思う。きっと天才か凡人の差で才能やセンスがあるかないかの差だと思う。そんなの勝てるわけないじゃない。あの二人ののとなりを…歩けるわけないじゃない。
ダメよ、弱気になっちゃダメあたし。天才?才能?センス?そんなの…あたしは要らない。あたしはそんなの必要とせずに自分の努力で上まで上り詰めるんだ。
そして今日見事、副隊長にあたしは任命された。話を聞くと前任の
理由が知りたかった。つい最近ようやく始解が使えるようになったようなあたしが副隊長なんて荷が重すぎる。だからあたしは聞いた。「なんであたしを推薦したんですか?」って。高須さんは一瞬きょとんとした顔をするとすぐに笑いだし言った。
「キミが夜遅くまで残って練習し斬魄刀と向き合っていた姿をずっと後ろで見てきたんだよ」
「え……」
まさか見られていたとは。思わぬ言葉にあたしはものすごい間抜けな顔を晒してしまう。それを見た高須副隊長は更に笑いながら言った。
「副隊長の仕事としてね、最後に十番隊隊舎全ての施錠があるんだよ。キミが帰らないことには儂も帰れなかったものだからねぇ。ついつい後ろのほうで覗き見してしまった」
「す、すいません!!」
まさか修行が終わるまで待っててくださってたなんて…!!あたしなにやってんのよ!バカ!!副隊長の気配ぐらい気づきなさいよ!!
「なに、謝ることはない。若い子が頑張るのはとてもいいことではないか。儂は嬉しいよ。最近はキミみたいな情熱を持った子が少なくなった。確かにキミには副隊長はまだ重荷かもしれないね。けれど、いつかキミはなってよかったと思う日が、キミの実力を感じられる日が来るはずさ。キミがなにかを守りたいと強く願うとき、平隊士であることが嫌になるかもそれない。その時は副隊長の権限を使えばいい」
「…え?」
「キミが正しいと思ったことは部下も分かってくれる、隊長も分かってくれるはずさ。少なくとも十番隊にそんな分からず屋はいないと儂は思っている」
「………」
「キミならこの十番隊をもっとよく、明るくしてくれる、儂はそう信じているよ」
高須副隊長はあたしの肩に手を乗っけると、引き継ぎを全て終わらせ出ていってしまった。
そして高須副隊長と入れ替わるように十番隊隊長
「お前が新しい副隊長か!!俺は志波一心だ!!これからよろしくな!!」
「ガハハ」と笑いながらあたしの背中をバンバンと叩き隊長が言った。背中がジンジンと痛くなる。きっと赤い手形がついているであろう背中のことを思うと思わず顔が歪む。勿論隊長は気づいていない。
鈍感ね。ギンなら気づいてくれるのに――。
そもそもギンはそんなことしないかと少し笑いながら思うとふとなんでギンが出てきたのだろうと疑問に感じた。
「高須さんがキミは頑張りやだと聞いたからな!どんな男かと想像したら…まさか女だったとは!!」
さっきの疑問なんかを吹き飛ばすぐらいの声で隊長は言った。あたし、男だと思われてたの…。
「普通、乱菊って言う名前で分かりません?」
「男かもしれんだろ!!」
「あたしには隊長の言ってる意味が理解できないわ」
あたしの言葉を聞いてまた隊長は大きな口を開け、笑う。
「その調子ならこれからもやっていけそうだな!!」
隊長の言葉にあたしはついクスリと笑ってしまう。
「…これから、よろしくお願いします、隊長」
「ああ!松本!よろしくな!!」
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「え?なんやて?もう一回言ってくれへん?」
ギンは珍しく笑みを崩し驚いた表情でボクに「もう一回」と言ってきた。ボクは苦笑いでもう一度言ってあげる。
「乱菊がね、十番隊の副隊長になったんだって」
「元十番隊副隊長に推薦されたらしいよ」と言えばギンは「…いつの間に乱菊、死神になっとったんや……」と呟いた。
「乱菊あれでもボクらと同期だよ?」
「…なんやそれ。初耳なんやけど」
「まあクラスも違ったし、ボク達は飛び級しまくったからね。会うこともなかったし」
因みにボクが乱菊が死神になったと知ったのは数年前。平子隊長にパシりにされ十番隊へ足を運んだときだった。まさか
「あんた達あたしを置いてホントなにしてんのよ!!」
そんな乱菊のきつい言葉と共にボクは頬をおもいっきりビンタされた。
頬は腫れるし隊長には笑われた(十番隊、五番隊両方の隊長に)。悪いのは乱菊じゃなくボクとギンだと分かっていたので隊長達に笑われてつもりつもった怒り全ては平子隊長に行った。とりあえずは平子隊長の頬をつねりボクと同じ顔にしてやるので気をおさめた。因みにこの後、平子隊長に凄く怒られたが後悔はしていない。笑う方がいけないんだバカヤロウ。
そもそもギンは乱菊が死神になったことを知っていると思ってた。だから何気なく普通に「乱菊副隊長になったらしいよ」と言えば驚きの顔と「もう一回言え」。予想外にも程がある。
「今の話からすると…乱菊とは瀞霊廷で一度もあってないわけだよね?」
「そうやな」
「ってことは、ギンもあったらビンタされるんじゃない?」
「だってギンは乱菊を拾った…いわば保護者みたいなところにいたわけだし、その乱菊を置いていった訳じゃん?往復ビンタは覚悟しといた方がいいんじゃない?」と言えばギンは笑って「乱菊ならやりそうやね」と言った。
「ええ。あたしはギンに往復ビンタの1つや2つやってやるわよ」
「……」
突如後ろから聞きなれた…いや、昔よりも声が少し高くなっている声が聞こえた。ギン肩が強ばるのが見える。そして…ギンは瞬時に相手に自分の心情を悟らせない笑みを張り付けた。
「…なんや、松本副隊長おったんか」
「ええ、いたわ。といってもついさっき来たばかりだから往復ビンタの話しか聞いてないけど」
乱菊が来たのは本当についさっきらしい。乱菊の声からも表情からも怒っているのがわかる。ボクは口出しするつもりはないけれど、ギンはどんな風に乱菊に対応するのか。だいたいは想像がつく。
どうせ冷たく接するんだ。わざと自分から突き放すように。
それは本当にボクの考えた通りとなった。
「あんたは…あんた達はいつも、いつも…!!なにも言わずどこかへ行っちゃう!待ってるあたしの身にもなりなさいよ!!」
乱菊は大きく手を振りかぶりギンの頬を叩こうとした。けれどそれはかなわなかった。なぜならギンがあたる直前に乱菊の腕をパシりと掴んだから。
「それで?そんなこと言いにわざわざここまで来たん?…案外副隊長も暇なんやね」
いつもの笑みを張り付けたままギンは乱菊に言った。乱菊は泣かなかった。でもとてつもなく儚い、壊れそうな顔で言った。
「もう…あたしはギンをビンタすることさえできないのね」
「邪魔したわ」乱菊はそう言うとどこかへと去ってしまった。乱菊の霊圧が感じられなくなるとギンは「はあぁぁ」と長いため息をつき地面にしゃがみこむ。
「…なにやってんやろ、ボク」
「乱菊悲しませてしもうた。見捨てられるかもしれん」そう頭を抱えながら言うギンに「自分がやった行動なんだから責任持ちなよ」とボクは言う。
「…せやけど……。はあぁぁ」
「本当にギンってバカだよね」
「…それでも碧の『相棒』なんやろ?ボクは」
「うん。たとえギンが好きな女子の前では仮面を被った内心気弱な少年だとしても、どっかの少女マンガでありそうな性格だとしてもボクの『相棒』にはかわりないよ」
「……ボク碧の『相棒』やめたい。言葉が痛いわ」
ギンの言葉にクスッとボクは笑うとギンに手をさしのべた。
「乱菊の奪われたものを取り返すまでは『仮面』をかぶり続けるんだろ?こんなところでへこたれるなよ」
ギンはボクの手をつかむとボクは力をいれギンを立ち上がらせる。
「せやな。乱菊の奪われたもん取り返して全部終わったら乱菊に謝ろう。それまでの…辛抱や」
「そうそうそのいきだよ。たとえボク達よりも乱菊が上の立場にいたとしても、ボク達三人の中で乱菊が一番出世してたとしてもこの調子で頑張ろう」
「…なあ、なんなん?さっきから。ほんまにボク励ます気あるか?さっきから要らんことばっか言うとるやん。五月蝿いねん」
珍しくギンに蹴られた。尻痛い。
――少年達は厚い厚い仮面を被った
――上司も部下も全ての人を欺く仮面を
――カオもカラダもココロも、全てに仮面を被せ
――少年達は少女の為に全てを殺した
――そして明日。少年達は自分達のことを気にかけてくれていた『上司』を裏切ることとなる
――それでもなお、少年達は仮面をかぶり続ける
――全ては少女の為に