if物語 市丸ギンの息子   作:フ瑠ラン

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悲痛な叫び、そして願い

 

 

「碧、乱菊頼むわ」

 

「……ごめん。ボク、乱菊とは付き合えな…」

 

「なんでそうなるんや!?」

 

「え?違うの?」

 

 

突然ギンからの乱菊頼む宣言。流石にボクも将来自分の母親となる乱菊とは付き合えないので断ったのだが…。どうやら違ったらしい。まあ、当たり前か。

 

 

「碧が囮になって十番隊長さんと乱菊を離れさせるんや。いけるやろ?」

 

「もちのろん」

 

 

ボクが頷くとギンは「おおきに」と言った。

 

 

「それじゃ作戦開始としよか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

 

中央四十六室。尸魂界全土から集められた四十人の賢者と六人の裁判官で構成される尸魂界の最高司法機関。尸魂界、現世を問わず死神の犯した罪咎は全てここで裁かれ、その裁定の執行に武力が必要と判断されれば隠密機動、鬼道衆、護廷十三隊等の各実行部隊に指令が下される。

 

そして、一度下った裁定には例え隊長各といえど異を唱えることは許されない。それが四十六室だ。その四十六室が今、俺の目の前で全滅――――している――…

 

試しに血を触ってみる。が、それも黒く変色してひび割れるぐらいに血は乾いており、四十六室はかなり前に全滅させられたことがわかる。

 

いつだ!?いつ殺された!?阿散井がやられて戦時特令が発令されて以降はこの中央地下議事堂は完全隔離状態に入り、誰一人としてここへ近付くことさえ許されなかった。

 

そして今日、俺達が強行突破するまでここへ至る十三層の防壁は全て閉ざされたままで何者も侵入した形跡はなかった。

 

殺されたのはそれよりも前!そしてそれ以降に俺達に伝えられた四十六室の決定は全て――

 

 

「贋物か…!」

 

 

やったのは誰だ?市丸か?だが誰にも気づかれず四十六室を皆殺しにし、それを今まで隠し通す……それほどのことを奴ら二人で?他にも協力者がいるのか――

 

 

「やっぱりここにいたんだ、十番隊長さん」

 

 

遠い入り口で俺に話しかけて来たのは…――

 

 

「……市丸碧…!やはりお前らが…!」

 

 

市丸碧は俺と目を合わせるとその場から立ち去った。

 

 

「!!追うぞ松本!!」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

 

 

「待て市丸!てめえらが四十六室を殺ったんだろ!!」

 

「さぁ、それはどうだろ」

 

「質問に答えやがれ!!」

 

 

ボクに怒鳴ってくる日番谷隊長に優しいボクは教えてあげる。

 

 

「いいの?十番隊長さんボクなんかを追って」

 

 

「どういう意味だそれは!!」

 

「キミは雛森桃の騎士(ナイト)なんだろ?だったらちゃんと守ってあげなきゃ」

 

 

ボクの言葉に日番谷隊長は驚いた顔をする。

 

 

「何言ってやがる…!?雛森は今…」

 

「十番隊隊舎にはいないよ。十番隊長さんは雛森桃の為に高等結界『鏡門(きょうもん)』を張ってきたみたいだけど…あれって案外内側からじゃ普通に破れるんだ。知らなかったでしょ?雛森桃は鬼道の達人と言われる程の腕前だし結界を破るなんてわけないよ。自分の周りに結界を張って霊圧を消すことなんて更に簡単だろうね。……気づかなかったの?十番隊長さん達の後ろついて来てたことにさ」

 

 

日番谷隊長は唇を噛み締めると「松本!!」と乱菊の名前を呼んだ。

 

 

「任せていいか!」

 

「どうぞ!」

 

 

日番谷隊長はボクを追うのをやめ、雛森桃を追いに反対方向へと走り出す。ボクは逃げる足を止めた。

 

 

「…何?逃げるのやめたの?」

 

「……こうやってちゃんと話すのって久しぶりじゃない?乱菊」

 

 

ボクがそう言うと乱菊は一度目を閉じた。そして乱菊は目を開くと「スゥ」と息を吸う。一体乱菊は何をし始めるつもりなんだろうか。

 

 

「………アンタ…アンタとギンは一体何をしようとしてるの?いっつも二人で悪巧みしてるような顔しちゃって…姿を消す…!」

 

 

ボクは乱菊の問いにいつもの仮面のような笑みを張り付けて言った。

 

 

「ボクの役目はね、乱菊をここで足止めすることだよ」

 

「足止め…?あたしを?」

 

 

意味がわからない、そんな顔をしている乱菊の言葉にボクは肯定の意味として頷いた。

 

 

「そう。乱菊は関わる必要はないんだ。死神なんか止めてひっそりと暮らして。そしたらキミの目の前に、乱菊の目の前にいつか…騎士(ナイト)が現れるからさ」

 

 

ボクが乱菊にそう告げると乱菊から怪訝な目で見られた。

 

 

騎士(ナイト)?そんな人、あたしにはいないわよ」

 

「いるよ。好きな女性(ヒト)の目の前ではカッコつけたがりやで自分の行動にいっつも後悔してる騎士(ナイト)がさ。乱菊にここで死なれたら騎士(カレ)は生きる意味をなくしてしまう。だから乱菊、死神やめてひっそりと暮らして…?」

 

 

ボクが乱菊に言うと乱菊は「そんなことできるわけないじゃない!!」と大声で言った。

 

 

「あたしはいっつも独りぼっち!碧みたいにギンに近い人間じゃなければ、あたしは碧のこと全然知らない!!何も知らない無知な哀れな女よ!カッコいい、好きな背中を追いかけても最後には見えなくなって、視界にすら入らなくなる…!!…あたしは、あたしは…!!また三人で前みたいな暮らしが出来ればいいと思って、アンタ達を止めに来たの!!こんな危ない仕事なんか、早くやめて欲しかったのに!!そんなあたしの気も知らないでアンタ達はまたあたしを独りぼっちにする!!騎士(ナイト)?そんなのあたしが知るわけないじゃない!!」

 

 

乱菊は「ハァハァ」どういう肩で息をした後、言葉を続ける。

 

 

「あたしは諦めない…!!ギンに壁を作られたあの日から!!あたしの意思は固まったの!!アンタ達を連れ戻して、またあの日常に戻るって!!」

 

 

「だから、こんなことはやめて碧!!」それは乱菊の悲痛な叫びだった。

 

 

「乱菊…」

 

「アンタならギンを止められるでしょ!?ギンにも言ってよ、もう止めて、って……」

 

 

乱菊の頬が濡れた。雨は降っていない。憎い程の晴天である。空を見ても雲1つ無かった。

 

それを見てなお、ボクは首を横に振った。否定の意である。

 

 

「なんで…!?」

 

「ギンにはやりたいことが有るんだ。それが成し遂げられるその日までボクらはやめられない、とめられない。だから…乱菊のお願いは聞けない」

 

「~っ……!?」

 

「…ごめんね」

 

 

ボクは乱菊に一言謝るとギンのいる場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

 

いっつもそう。あたしの言葉なんかろくに聞かないでいなくなる。碧のいなくなった地面を見てあたしは唇を噛み締めた。

 

また、またあの二人を止められなかった――。

 

あの二人があたしの言葉を聞かないのは日常茶飯事。だから期待はしていなかった。していなかったけれど…。

 

 

「…少しぐらいは迷って、くれると、思ったんどけどなぁ……」

 

 

目から涙が溢れ出す。泣きたい訳じゃない。けれど止まらない。止める術を今のあたしは知らなかった。

 

独りぼっちは辛い。寂しくて、怖くて、胸がはち切れそうで。

 

 

一体あたしはいつまで、独りぼっちでいればいいの…?

 

 

もう、あの頃のような、三人で楽しく笑いあっている日常は戻って来ないような気がした。

 

 

「ごめんな、乱菊」

 

 

ギンの謝罪の言葉はあたしの耳には届かない――。

 

 

 

 

 

 

 

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