乱菊とギンの結婚話。
結婚
松本がサボってきた仕事を俺は手伝う。…ったく、なんでアイツはこうもサボるんだ。志波隊長の時は自分があれほどサボるな、と口煩く言っていたのに。書類と睨めっこを俺はかれこれ何時間やったことだろうか。
「隊長」
珍しく真剣な声色で俺に話しかけてくる松本。俺は書類から前に立っている松本へと視線をかえた。
「…あたし、籍を入れることになりました」
「市丸か」
俺がそう聞くと松本は嬉しそうに「はい」と答えた。
「式はいつだ?」
どうせ松本のことだ。ソファーにでも寝そべって式場のカタログ片手にブツブツと何かを言っているんだろう。式の日程等が決まっていればその日は俺も速く仕事を片付けるつもりだ。そのため、知っておきたい。
松本は少し悲しそうな顔をすると「式は挙げないんです」と一言。
「…松本、熱でもあるのか」
仕事のことをし過ぎだろうか。基本的松本は仕事をサボるのでまともにやった日には体がついていけないのかもしれない。そんなことを考えていると松本は「なんか失礼なこと考えてません!?」と言った。
「ほら、ギンは尸魂界を追放されてるでしょ?だから…」
「尸魂界では挙げられない、ってことか」
「それにあたしは現世のことはよくわからないから現世で挙げるとこも出来ないですし。だから挙げなくてもいいかな、って」
「そうか」
俺はそう一言告げると書類を持って隊舎を出た。
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十三番隊舎。書類を十三番隊に渡さなくてはならなかったので持ってきた。
「浮竹、体の調子はどうだ」
「今日はいい感じだ。…日番谷隊長はそうでもないみたいだね」
「暗い顔をしている」浮竹は俺の頬を引っ張りながら言った。
「悩み事があるなら俺に話してみてはどうだ?こう見えても俺は日番谷隊長よりも長く生きてる。もうしかしたら力になれるかもしれない」
「……実は…」
俺は先ほどの事を全て浮竹に話した。すると浮竹も「意外だ…」と呟いた。
「…どうせ松本のことだ。式は挙げたいんだろう。だが市丸のこともある。…今回アイツは充分な働きもした。だからこそ俺は挙げてやりたいと思っている」
「日番谷隊長は部下思いなんだな」
「そういうわけじゃねぇ!」
浮竹は笑いながら「照れなくてもいいよ」と言った。
「わかった。俺も一肌脱ごうじゃないか。俺にいい考えがある」
「?」
浮竹は襖の方に視線を移すと「聞いていたんだろ?京楽」と言った。襖が開き京楽が「バレちゃってたか」と頭をかきながら部屋に入ってきた。
「話聞いていたか?」
「ホント、盗み聞きするつもりはなかったんだよ?偶々タイミングが良かったと言うか…」
「聞いてたんだな」
俺が呆れた声で言うと京楽は「ゴメンよ」と言った。
「いや、隠すことでもないし別に気にしてねぇよ」
俺がそう言うと浮竹が横で手をパチンと叩いて「さて」と言った。
「本当なら現世で挙げるのが得策なんだが…生憎俺達は現世のことについてよく知らない」
「黒崎達に聞こうとしてもまだアイツらは学生。知るはずもねぇよな」
「となると…山爺を説得して尸魂界で挙げるのが一番得策かもしれないね」
京楽の言葉で雰囲気が微妙な雰囲気へと変わった。
「山爺頭カタイからなぁ」
「可愛い日番谷隊長の部下の為だ。俺達が頑張るしか無いだろう。なぁ!日番谷隊長!」
「…………」
「女の子の為ならボクも一肌かすよ」
こうして俺を含む三人は一番隊舎へと向かった。
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「ならぬ。尸魂界を追放されたものが尸魂界に入るなど言語道断!」
「いいじゃん山爺。挙式ぐらいさぁ」
「ならぬ!」
「そこをどうにか頼みます!源流斎先生!」
「お願いだ総隊長!!」
「…………」
総隊長は上から俺を見下ろす。俺は頭を下げているので総隊長の顔は見えないがきっと見下ろしているだろう。
「あ、あのっ!!総隊長!わ、私からもお願出来ないでしょうか!」
この場からは聞こえる筈のないソプラノの声。俺が振り向くと「ハァハァ」と肩で息をしている雛森が立っていた。
「雛森!」
「…日番谷くんは暫く五番隊の仕事を手伝ってもらってた時もあったし…私にはこれぐらいしか出来ないけれど…」
雛森はそう言って笑った。
「総隊長!市丸はもう尸魂界に攻撃する気はねぇ!!そんな気があるならアイツはもうとっくに現世を滅ぼしている!!」
「そうだよ山爺。だからさ」
「源流斎先生!」
「総隊長!!」
「…ふむ」
総隊長は長い髭を触りながら言った。
「…そこまで言うのなら許可しよう。ただし市丸が居ていいのは1日限りとする」
「…!!ありがとうございます!!総隊長!!」
「やったね!シロちゃん!!」
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「松本」
「?何ですか隊長。仕事ちゃんと珍しくやりきりましたよ?」
「…総隊長から尸魂界で式を挙げていいと許可がおりた。良かったな」
「えっ!?」
「何で急に」と驚く松本を見て「珍しくお前は今回頑張ったからな。神からのプレゼントだろ」と言った。
「隊長の嘘とかじゃないですよね!?」
「ちげぇよ」
「じゃあホントに…!?やった!!あたしギンに連絡してきます!!」
ダダダと走っていく松本の後ろ姿を見て俺はため息をついた。
全く元気な奴だな。
その元気を仕事にもまわしてもらいたい。俺はそう思った。
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「やっぱり尸魂界で挙げるんだから着物かしら?」
「でも最近は尸魂界でも“ドレス”って言う衣服が流行ってるんでしょ?」
「そうなのよ~。弓親、アンタはどう思う?」
あたしが弓親にカタログを見せると「乱菊さんはどう考えてもドレスでしょ」と言った。
「それ、ギンにも言われたわ」
「ならドレスでいいじゃん。何迷ってるのさ」
「…ドレスにする!!」
急に立ち上がったあたしを見て弓親は思い出したように「よく総隊長からのお許し出たよね」と言った。
「そうなのよ~。あたしもびっくり」
「え?らんらん達知らないの?」
「あら!やちるじゃない!!」
突然ヒョコリと現れたやちる。やちるの片手には金平糖の入った袋を持っていて、今もボリボリと食べている。
「あのね、ひっつーとうっきーとしゅんしゅんがじいじに直談判したんだよ」
「え?隊長達が?」
「へぇ。意外にいい隊長じゃん」
「ひっつーね、ひなもんと一緒にじいじに頭下げてたよ!!」
「ひ、雛森まで!?」
やちるはまだ金平糖が沢山入った袋をあたしに預け笑って言った。
「いい上司と後輩持ったね!らんらん!!結婚おめでと!!お祝いに
やちるはそう言うと何処かへと行ってしまった。
「…隊長…」
「……何で副隊長知ってたの?」
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結婚式当日。結婚式には沢山の人達が来てくれた。本当は一護や織姫達も呼びたかったんだけど現世で“テスト”なるものをやっていると耳にはさみ、呼ぶのを急遽止めたのだ。
「乱菊綺麗やで」
「ふふっ、ギンもカッコいいわ」
ウェディングドレスを身に纏ったあたしを見てギンが言った。あたしは嬉しくて顔を綻ばせながらギンにも「カッコいい」と言う。
式が始まると横側に座っていた雛森と目が合う。雛森に口パクで「ありがとう」と伝えると雛森はぶわっと目から涙を出しブンブンと首を縦に振っていた。それを見てあたしはクスッと笑う。
「…シロちゃーん」
「おい、雛森。泣くの早すぎだぞ!?まだ始まってもねぇのに…」
「乱菊さんかわいいよぉ、綺麗だよぉ、美人だよぉ」
「分かった、分かったから泣き止め」
泣いている雛森の横に座っている隊長がアタフタとしている姿を見て早くくっつけばいいのにと思ってしまう。
着々と式は続いてそして今式が終わろうとしている。
「新郎新婦、誓いのキスを」
その言葉を聞いた瞬間あたしはジャンプしてギンの唇にあたしの唇を重ねた。まさかこんな荒業をしてくるとはギンも思っていなかったのだろう。眼を見開いていた。
唇を離すとあたしはギンに言った。
「愛してるわ!ギン!!これからもよろしくね!!」
「ボクも乱菊のこと世界一愛してるで。もう、離さへん」
あたしとギンは抱き締めあった。盛大な拍手が会場に響き渡った――。
やちるは乱菊と雛森にはあだ名をつけていないみたいで…オリジナルです。