if物語 市丸ギンの息子   作:フ瑠ラン

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番外編⑤

消えた碧を探す弱った乱菊


消えた碧を探して

「…松本、いるか」

 

 

十番隊隊長 日番谷氷獅郎は副隊長 松本乱菊の部屋の目の前に立っていた。松本の部屋から返事は返ってこない。日番谷が松本の部屋のドアを開けると案の定松本はいなく、日番谷は眼を伏せて「…またか……」と呟いた。

 

市丸ギンが松本乱菊の目の前で殺されたあの日。松本の目の前から市丸とはまた別人の大切な人物がいなくなってしまったらしい。らしいと言うのも日番谷は彼の事を覚えていない。

 

松本曰く日番谷は彼とは仲のいい間柄だったワケではないが面識はあったらしい。けれど日番谷は忘れてしまっている。否、正確に言うと彼に関わる記憶を書き換えられた、と言うべきか。

 

松本はずっと探していた。市丸碧と言う人物を。ろくに休みも取らずずっと探していた。その姿はとても痛々しく日番谷でも見ていられない程だった。

 

 

「…そろそろ無理矢理にでも休ませるか」

 

 

日番谷は松本の居ない部屋を見て呟いた。

 

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

穿界門を開いて碧のいなくなった現世でずっと碧を探していた。けれど碧は見つからない。見つかる気配もなかった。

 

探しても探しても見つからない。ホント、碧もギンもあたしには行き先を告げず何処かへと行ってしまう。探すあたしの身にもなって欲しい。

 

 

「…乱菊さん」

 

 

後ろから話しかけられあたしは振り向く。あたしに話しかけてきたのは織姫だった。

 

 

「…織姫」

 

 

「こんな時間に出歩いちゃ危ないじゃない」と織姫に言うと「乱菊さんも危ないよ」と織姫が言ってきたのであたしは「別に人間にはあたしの姿は見えないから大丈夫よ」と言った。

 

 

「違うよ。乱菊さん、最後にあった時よりも痩せちゃってる。ちゃんとご飯食べてないんじゃないの…?」

 

「……食べてるわよ」

 

「嘘」

 

 

織姫の眼を見て「食べてる」とは言えなかった。あたしは顔を伏せる。

 

 

「乱菊さん碧、って人探してるんでしょ?私多分だけどその人知ってる」

 

「ホント…!?」

 

「確か…乱菊さんみたいに綺麗に笑う人だった……と、思う」

 

「あたしみたいに、か。考えたことも…なかった、わ」

 

 

なんだか急に眠くなっちゃった。織姫の焦る声が聞こえる。…ダメね、あたし。ギンと碧が居ないと…ダメみたい。

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

「創造主サマァ。昨日まで夜遅くになに作ってたのさァ」

 

 

マジシャンズ・レッドは五徹目の創造主サマに聞いた。創造サマは「感情を人間化させる装置を作っていたんだ」と言った。

 

 

「感情を人間化させる装置ィ?一体何に使うのさァ」

 

「私のせいで心の傷を負ってしまった彼女の為に作ったんだ。だがまさか…死んだはずの市丸ギンまでも人間化、いや一時的に具象化させるとは思わなかったけどね」

 

 

創造主サマは水晶玉に映っている倒れた(・・・)松本乱菊を見て言った。

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

乱菊は白い何もない世界に立っていた。

 

 

「…ここは…」

 

「ほんの少し会わんかっただけで随分久しぶりな気するなぁ、乱菊」

 

「ギン…!?」

 

 

「久しぶりやね」そう言ってあたしに手を振るのは紛れもなくギンだった。あたしは走ってギンに抱きつこうとする。しかしそれは叶わなかった。ギンは透けてあたしと触れることはできない。

 

 

「!?」

 

「ごめんなぁ乱菊。これでもボク死んでもうてるから触れんのや。今は無理矢理機械使うて具象化して乱菊の目の前に現れとるだけや」

 

 

「触れんでも少しの間だけやったら喋ることはできる。だからそない悲しそうな顔せんといて」ギンそうは言った。

 

 

「それにな、ここに来とるのはボクと乱菊だけやないんや」

 

「え?」

 

「お姉ちゃん!!」

 

 

急に足元に現れたのは小さい銀髪の男の子だった。その子の顔は…小さい時の碧の顔にそっくりで思わず目に涙が溜まる。

 

 

「…ボク、碧!!でもね、碧だけど碧じゃない」

 

 

碧はそう言った。

 

 

「いつまでも乱菊が前に進めとらんから小さな碧がわざわざこうして逢いに来たんや。もちろんボクも乱菊に逢いに来たんやで」

 

「ギン…碧……」

 

 

碧はあたしの手に触れようとする。しかし触れることは叶わず透けてしまう。それを見て碧は悲しそうな顔をするが見上げてあたしの眼を真剣に見た。

 

 

「悲しまないで。ボクもギンも居なくなってしまったけれどいつかそう言う運命だったんだ。特にボクはね。ボクはあるべき場所に帰った。だから探しても居ないんだ」

 

 

碧は真剣な表情で言う。

 

 

「まだ乱菊とは会えない。運命が巡って、巡って、巡った時いつかまたボクに会える。その時は三人一緒だ」

 

 

「運命は巡るもの。乱菊とギンは運命の人だから輪廻転生してまた巡り会える事ができるよ」と碧は笑って言った。

 

 

「凄いんだよ。ボクは楽しい(・・・)記憶(・・)しかわからないんだけど、ほとんど乱菊達といた記憶はね楽しかったんだ。抜けた記憶が少ない。それほど乱菊とギンはボクに影響を与えたんだ」

 

「だから前に進むんや、乱菊」

 

「…進む…?」

 

「碧が言うにはまたボクと乱菊はいつか巡り会える。それに、碧とはよ会いたいならボク探さなあかんし」

 

 

ギンの言っている意味がわからなかった。

 

 

「ここで乱菊とサヨナラしたらボクは輪廻転生するやろな。その輪廻転生したボクを乱菊が尸魂界で待つんや。そしたらまた会える。ボクが乱菊探し出す。そしたら今できんかったことやろな」

 

「何を、言ってるの…?」

 

「この先の言葉は来世のボクに聞いてや」

 

 

「来世でボクと会えたら碧とも絶対会えるから」ギンはそう笑って言うと「そろそろ行こか」と言った。

 

 

「うん。バイバイ乱菊。次は本物の(・・・)ボクと会ってね!!」

 

「また待たせることになるけど…ええか」

 

 

ギンが不安そうなん顔で聞いてくる。そんなギンの顔を見てあたしはクスッと笑った。

 

 

「当たり前よ!直ぐに探し出して見せるわ!」

 

「ならその日まで」

 

「「「バイバイ」」」

 

 

ギンと碧の姿は一瞬で見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

眼を開けると織姫の顔がドアップで見えた。

 

 

「あっ!!起きた!!良かったぁ…!」

 

 

「浦原さーん乱菊さん起きました!」と織姫は大きな声を出して言った。

 

 

「そうですか。それは良かったッス」

 

 

奥から浦原が出て来てヘラヘラとした顔で「いやぁ井上サンが貴女を抱えて連れてきた時はさすがのアタシでもびっくりしました」と言った。

 

 

「織姫、迷惑かけたみたいね。ここまで運んできてくれてありがとう」

 

「あれ?部屋を提供したアタシにはお礼の言葉ないんスか…?」

 

「…なんか乱菊さんスッキリしたような顔してる」

 

「そうね。きっといい夢見れたからだわ」

 

「無視?無視ッスか?」

 

 

横で五月蝿い浦原の顔面に一発拳をあてると大人しくなった。あたしは織姫の頭を撫でると「かし作っちゃったわね」と言った。

 

 

「そんな!かしだなんて思ってないよ!」

 

 

「乱菊さんが元気になってくれて良かった」そう笑う織姫にあたしは「一護に泣かされたらあたしに言いなさい。成敗するわ」と耳打ちした。

 

 

「へっ、えっ…!?な、な、な、何で黒崎くん!?」

 

「あら?好きじゃないの?」

 

 

「てっきり織姫は一護の事が…」と言うと織姫は大きな声で「わー!わー!!」と言った。

 

 

「もう、乱菊さんったら!」

 

「別にいいじゃない。隠すことでもないんだし」

 

 

あたしは織姫にもう一度「ありがとう」と伝えると穿界門をくぐった。

 

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

「帰ったのか、松本」

 

「はい、隊長。今までのご迷惑、ご心配をかけてしまって…すみませんでした」

 

 

あたしが頭を下げると隊長は「顔を上げろ松本」と言った。

 

 

「もう、いけるな」

 

「はい。もう大丈夫です」

 

 

「ならいい」隊長はそう言って書類に視線を落とした。

 

 

 

 

 

ギン、貴方があたしを見つけてくれるその日まで

 

あたしは待ってるから。だからその日まで

 

あたしは十番隊(ここ)で頑張るとするわ

 

 

 

 

 

 




活動報告の方で次回作についてのアンケートをとっています。ご協力して貰えるとありがたいです。期限は10月12日までです。
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