if物語 市丸ギンの息子   作:フ瑠ラン

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皆さんキャラは誰が好きですか?


市丸碧の焦燥

「えっと、ちょっと、タンマ。ワンモアプリーズ」

 

「ん?これで五回目やで?ま、ええけど」

 

 

六回目となる説明を嫌な顔をせずギンはボクに教えてくれる。

 

 

「ココは現世ちゃう。尸魂界や。現世は確か…織田信長やったか?そんなん奴が威張っとったなぁ」

 

 

織田信長がいた時代だと…約百年前。あれ?二百年前だったっけ?まあ、どっちでもいいか。…とりあえずだけど、ボクは現世の歴史とかそんなに知らない。でも、時々父ちゃんが教えてくれたから少しだけだったら分かる。

 

え?百年前?いやいや、可笑しいって。変なヒトと遭遇したと思ったら急に体が光はじめて、意識飛ばしたかと思えばまるで父ちゃんを小さくしたような市丸ギンとういう同性同名のヒトがいて…。

 

え?もうしかして、もうしかしてだけどボクの目の前にいる市丸ギンって父ちゃんじゃないよね?ココ、父ちゃんが小さい頃の世界とかそんな感じじゃないよね?いやいや、あり得ないって。だってボクそんな力持ってないし……。

 

ん?それはボクの話しであってあの変質者みたいなヒトがボクを飛ばした可能性は?……うぉおい、なんかそんな気がしてきたよ。アタリのような気がするよ。

 

え?どうすれば帰れるわけ?て言うか、帰れるの?帰れないなんてことないよね?まさか、そんなわけ……。

 

 

「ないよねぇぇええ!!ないと言ってぇぇええ!!」

 

「なっ、なんや!急に大きな声出して!?」

 

「ふざけんなよぉぉおお!あの変質者がぁぁああ!!」

 

 

帰れなかったらどうしてくれるワケ!?絶対父ちゃん血眼になって探してくれてるよ!!何、ボク変なのに巻き込まれたの!ざけんな!!

 

 

「ハァハァハァ」

 

「…なんや、大変そうやな……」

 

 

もし、もしだよ!?目の前にいる“市丸ギン”が父ちゃんだとすると…。えっ!?ボク父ちゃんさっきまで呼び捨てにしてたわけ!?

 

 

「ご、ごめんなさいぃぃいい!!」

 

「さっきからなんや!急に大声出しよったと思ったら土下座なんかして!!謝るな、アンタ何もしとらんやろ!!」

 

「したの!してたの!ボクは親不孝者だぁぁああ!!」

 

「はぁ!?親不孝!?ワケ分からんわ!ちょっ、ええかげんにして!!」

 

 

急に土下座をし始めたボクに驚きの声とほんの少しの怒りの声を含んだギン(父ちゃん)は言う。

 

 

「何で悩んどるのか分からんけどまあ、ここに居るんやろ?」

 

「と、当分は……」

 

「当分、なぁ。すぐにアンタの家に帰れたらええな」

 

「うん」

 

 

ギンは優しくボクの頭を撫でてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボク、干し柿取ってくるわ」

 

「行ってらっしゃい」

 

「うん、すぐ帰るから安心してな」

 

 

そう言って家から出ていくギンを見送るボク。ギンに拾ってもらってかれこれ数十年経つが大体理解した。ボクの予想ではココは過去の世界。ギンはボクの父ちゃん。ギンはボクの父ちゃんだけどまだボクは生まれていないから父ちゃんではないと言う何とも分かりずらいことこの上ない世界だと思う。

 

ギンのことを父ちゃんと呼びたいのは山々だが、ギンに普通に却下された為、ギンと呼んでいる。とりあえず元の時代に戻ったら父ちゃんに土下座して謝ろうと思う。そうしないとボクの気が済まないからね。

 

過去の世界でもやはりギン(父ちゃん)の趣味は変わらなかった。ギンは家の近くに柿の木を作って、その柿で干し柿を作っている。ついさっきその柿を収穫しに行ったところだ。

 

ギンが帰ってくる前にご飯を作ろうと思う。干した茸や木の実などでシチューのようなスープを作ろうと現在考え中だ。野菜のお浸しなんかもいいかな。明日はゆっくりと休みたい気分なので多めに作ろう。考えの纏まったボクは具材をとって切り始める。

 

約数十分経つとスープは出来上がり、後はギンの帰宅を待つだけとなった。…遅いなぁ、ギン。いつもなら数分で帰ってくるギンが帰ってこない。何かに巻き込まれてなければいいんだけど…。

 

 

「すまん、遅なってしもうた」

 

 

がらがらとドアが開く音がしてボクは慌てて玄関に行く。するとギンの後ろに茶髪の女の子が隠れていた。その光景を見てボクは一言。

 

 

「…ギン、犯罪だよ」

 

「違うわ!!」

 

 

「えっ、拐ってきたんじゃないの?誘拐違うの?」と聞けば「アホ!!ボクはそんな事せえへん!!」と怒られてしまった。…良かった、とりあえず誘拐じゃないらしい。ボクの父親がこんなにも小さいときから犯罪者とかたまったもんじゃないから。安心、安心。

 

 

「ホラ、乱菊。ちゃんと自分で挨拶せな」

 

 

ギンの後ろに隠れている彼女をギンは突っつきながら言った。……え?さっきナチュラルにギン、爆弾発言したよね?乱菊って言ったよね?え?乱菊なの?まさかボクのお母さんですかぁぁああ!?

 

身長の小さい、しかも普段想像つかないぐらいのボロボロの服を着ている乱菊を見て内心ボクの心はフィーバーしていた。

 

わ、若ぇぇええ!!すっごい若いし化粧もしてない!!ボクの母ちゃん確かに、化粧とかはそんなにしない方だけどでもやるからなぁ。すっぴんボクにも見せてくれないからかなり激レアだと思う。

 

しかも服とかも今の母ちゃんなら絶対着ないぞ、あれ。母ちゃん着ないくせに新しい服とか買ったりするもんなぁ。服を置く場所がないとかなんとかで昔上司と喧嘩してたような気がするし。

 

それにしても母ちゃん小させぇぇええ。色々と小さいわ。うん。……なんだろ、小さい父ちゃんよりも小さい母ちゃん見たときの方がなんか凄い、って感じするわ。うん。

 

ギンの後ろに隠れていた乱菊は恐る恐る出てくると言った。

 

 

「…松本、乱菊…」

 

「はーい、了解」

 

 

小さい頃、母ちゃんと父ちゃんは一緒に住んでいたらしい。時々酒に酔った母ちゃんが懐かしそうに話していたのを思い出す。まさか、父ちゃんが母ちゃんを拾ってきたとは思わなかった。

 

 

「あれ?あんま驚いてないなぁ」

 

「いやいや、充分驚いたから。とりあえずはギンが誘拐してないことにホッと息をついた感じかな」

 

「なぁ、ボクってキミにどないな印象なん?」

 

「いやぁ、ニコニコしながら適当に人一人拐ってるイメージはあるよね」

 

「アオイ、奥でボクとちょっと楽しいお話でもしよか。安心してくれてええで。一発顔面に殴り入れるだけや」

 

「あ、遠慮しておきます。ボクMじゃないんで。そんな趣味ないんで」

 

 

余談だが、この頃ギンの口癖は「キミ、性格変わったとちゃうの?」だ。ギン曰く昔のボクはもっといい子で純粋だったらしい。…今でもボク純粋だから。まあ性格についてはノーコメントと言うことで。

 

ギャアギャアギャアギャアとギンと口論していると乱菊がクスッと笑みをこぼした。

 

 

「なんや?急に笑いだして」

 

「ギンの顔が面白かったんでしょ」

 

「は?ちゃうで。アオイの顔がおもろかったんや」

 

「…二人とも似てるな、って」

 

「「どこが!?」」

 

 

正直、嬉しい。ホラ、ボクなんだかんだ言って父ちゃん大好きし。ギンも好きだ。ちなみに変な扉とかは開けてないからそこんとこは安心してほしい。人として好きなだけだから。性的な意味じゃないからね!

 

 

「顔も、髪の色も、行動も、全部」

 

「そんなボクら似とる?」

 

 

「血ぃ繋がりはないんやけどなぁ」と呟くギンに思わず苦笑い。だってボク、キミの息子だし。アンタの目の前にいる乱菊さん将来嫁さんになるからねー。

 

 

「双子みたい」

 

「それ、褒められてる気せんわ」

 

「うん、褒め言葉ありがとう。ギン、喜べ。キミはボクに似てるんだってさ!!」

 

「うわぁ、いややわぁ。何でボクがアオイに似なあかんの?アオイがボクに似てきたとちゃう?」

 

 

…ごもっともです。よく母ちゃんからは父ちゃんの生き写しと言われています、ハイ。ぐうの音も出ません。

 

 

「とりあえず、ご飯食べよ。もうできとるんやろ?」

 

「うん。今日は少し多めに作ったから乱菊の分もあると思うよ」

 

「なんや、アオイ予知でもできるんか」

 

 

違います。本当は明日の朝ごはんにして楽しようとしてました。楽するために多めに作りました。だからそんな尊敬の眼差しで見るのをやめてもらいたい。

 

 

「あ、ボク碧。市丸碧って言うんだ」

 

「市丸…?ギンと一緒」

 

「偶々や。ボクも最初びっくりしたわ」

 

「うん、ボクも」

 

 

ボクがスープを机の上に運んでいる間にギンは茶碗にご飯をよそいでいた。三人分のご飯の用意が完了すると手をあわせて「いただきます」と言う。

 

 

「そう言えば、乱菊もこの家で暮らすわけ?」

 

「うん。ええやろ?どうせ部屋もあと一個余っとるし」

 

「うん、いいんじゃない?ボクは賛成」

 

 

ちなみにギンの「部屋一個余っている」と言うのには少しばかりの誤弊がある。この家には小さな部屋が3つしかなく、1つの部屋はリビングとして。もう1つの部屋はボクとギンの寝室として使っていて余った部屋は食料等を保管する部屋として使っていたのだ。なので余っている、と言えば余っているし、使っている、と言えば使っていると言う微妙な感じなのだ。

 

とりあえず、乱菊が使えるようにご飯を食べたら部屋を片付けようと思う。さすがに女子が男子と同じ部屋は駄目だからね。ギンがそんな過ちを犯さないと信じてはいるが男は皆狼。獣である。

 

え?ボクはどうなのかって?よしてくれ。ボクも生物学上男だけれどそこまでの心は持っていないさ。よく考えてくれたまえ?この三人は親子である。ギンは未来の父ちゃん。乱菊は未来の母ちゃんだ。それを知っていてなお、母ちゃんに手を出すなんてできない。そんな事やったら土下座ぐらいじゃ足りない。切腹だよ、切腹。

 

父ちゃんの母ちゃんに対しての溺愛っぷりを間近で見てるからこそだよね。それに今のところ女に興味ないし。たとえ興味を持ったとしてもボクはこの世界の本当の住民じゃないから結局は意味をなさない。これこそが悲しい現実なのさ。

 

 

「…美味しい」

 

 

乱菊がスープを飲んで呟く。ボクは乱菊に褒められたことが嬉しくて「ありがとう」とお礼を言う。

 

 

「ほんま、アオイ主夫向いとるで。料理こんなにも上手なんやもん」

 

「残念ながら主夫になるつもりはこれから先の予定にはないよ」

 

「んー、今のところはボクたちの主夫でいてくれたらええよ」

 

「……」

 

 

いや、ギン達の主夫になるつもりもこれっぽっちもないんですけど。勝手に話し進めないでもらえます?

 

こうしてボクの母親こと松本乱菊が新たなメンバーに加わり、三人で暮らすこととなった。

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