とあるバカの幻想拒絶   作:ミリライ

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二話

 

 

 

『上条ちゃーん、アキちゃーん、バカだから補習でーす♪』

 

 

「「‥‥‥」」

 

 

七月二十日、夏休み初日。

携帯電話の電子音で強制的に起こされた二人に待っていたのは担任からの連絡網(ラヴコール)だった。

 

「え?補習‥なんで?」

『決まってるじゃないですかーアキちゃん。二人の前期の成績が直視できないぐらい酷かったからですよー』

じゃ、二人共ちゃんと学校に来てくださいねー♪と、言うとプツリと電話が切れた。

 

「ふ、不幸だ」

 

上条当麻はパタリと携帯を閉じるとバタリと布団の上に倒れ込んでしまった。

 

「なんか‥流石だね。まあ僕も補習だけどさ」

去年の四月からこの少年と相部屋で暮らしている吉井明久だが当麻の不幸体質は物凄い。自販機で飲み物を買おうとすればお金を飲み込まれ、お金を飲み込まれなかったとしても冷えたお茶ではなく何故かアツアツのブラックコーヒーが出てきたりするのを何回も見てきた。

今朝だって優子をようやく振り切って家に帰ってきたら非常食のカップやきそばを流し台にぶちまけてキャッシュカードを踏み砕いた当麻が部屋の隅で体育座りをしていじけていた。

いやもう呪いでもかけられてるんじゃないの?と、思うほどこの少年は不幸なのである。

 

「ほ、ほら、いい天気だし布団干しとこうよ当麻。僕は何かご飯が作れないか台所見てくるからさ」

「‥りょーかい」

 

布団を持ってベランダに歩いて行く当麻を確認してから台所に向かい冷蔵庫を開けるが、

「うっわ‥全滅だなーこれ‥」

昨日落ちた例の雷のせいで冷蔵庫はただの白い箱と化していた。中の焼きそばパンやカット野菜からは控えめな異臭がする。

野菜は焼いたらギリギリいけるかな?なんて考えていると、

 

 

「はぁ!?」

 

 

ベランダで当麻の叫び声がした。

まったくまた何か不幸なことが起きたのかやれやれ、と首を振って彼のもとに向う。

「どしたの?」

ギョッとしている当麻の視線の先を見る。

 

 

 

ベランダには白い服を着た女の子が干されていた。

 

 

 

「はぁ!?」

思わず先程の当麻と同じようなリアクションをしてしまう明久。

 

真っ白いソレは腰の辺りをベランダの手すりに押し付けて手足をだらーっと伸ばして干されていた。年は二人の一つ二つぐらい年下だろうか?長い銀髪と色白の肌を見る限り外国人のようだ。

そして何故か純白の修道服を着ておりその異様な光景を際立出せていた。

 

「‥明久、お前に妹っていたっけ?」

「姉はいるけど‥銀髪の妹なんていないよ。当麻は?」

「妹はおろかシスターさんなんて知り合いにすらいねーよ」

どうやら明久、当麻の妹では無いらしい。では誰なのか?というかどうやって家に入って来たのだろうか?

 

突如、ピクッと女の子は顔を上げた。

 

「「っ!?」」

 

綺麗な緑色の瞳に見つめられて思わず後ずさってしまう二人。

 

 

「ぉ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

続いて綺麗な唇がゆっくりと動いた。

二人は更に後ろへ後ずさる。

 

 

 

 

「おなかへった」

 

 

 

 

「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」」

 

 

 

 

銀髪翠眼少女の開口一番の言葉が『おなかへった』である。理解不能な異国の言葉が出てくるのかと予想していたが発せられたのはそれはそれは流暢な日本語でした、はい。

 

 

「お腹いっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな」

 

 

ニコリと、可愛く首を傾げて彼女は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、野菜炒めしか作れなかったけど‥」

「わ!美味しそう!ありがとう!」

 

明久はただ野菜を炒めただけのソレを女の子の前の机に置いた。なんだか凄く嬉しそうだ。

 

「食べる前にまずは自己紹介をしなくちゃだね。私の名前はね、インデックスって言うんだよ?」

「「‥‥‥偽名?」」

「イギリス清教の教会の者です。バチカンの方と間違わないでね」

「「‥‥‥清教?‥‥‥教会?」」

「この国のかんじ?で書くと禁書目録。魔法名はDedicatus545だね」

「「‥‥‥‥‥‥‥」」

ぷしゅーっと二人の頭からは煙が出ていた。今、目の前で話しているのは人間ではなく宇宙人なのかもしれないとか本気で考えていた。

 

「それじゃ自己紹介も終わったしいただきます」

インデックスと名乗った少女はグーで握った箸で野菜をぶっ刺して食べ始めた。

 

(なんか凄く怪しいな‥てかあの炒め物大丈夫なのか?)

(よく火を通したから大丈夫だと思うけど‥)

‥多分、と明久は心の中で小さく呟いた。

 

ぱくぱく

 

「ん!凄く美味しいよ!」

「そ、そっか。良かったー」

 

むぐむぐ

 

「少しすっぱいのって疲労回復のためにわざとそう味付けしてるんだよね?」

「「すっぱい!?」」

 

もぐもぐ

 

「でもすっぱいの大丈夫、美味しい!ありがとう」

「「ぅ‥‥うおおおぉぉぉ!!!」」

 

男二人は腐った野菜炒めをインデックスから取り上げて貪り始めた。

最上級の笑顔で生ゴミ同然の野菜炒めを食べている彼女をただ眺めていることなんて彼らにできるはずが無かった。

 

 

 

 

 

 

上条当麻と吉井明久はソレを口に詰め込んで微笑んでいた。対してインデックスは不満げな顔でビスケット(明久の鞄に奇跡的に残っていた)をもぐもぐとかじっていた。

 

「えっと、その、インデックスさんとやらはなんでウチのベランダに干されていたんですかね?」

「追っ手に追われててね、本当は屋上から屋上に飛ぶつもりだったんだけど撃たれて落ちてそこに引っかかっちゃったんだよね」

明久と当麻の表情がサッと変わった。

 

 

追われていた?撃たれた?屋上から屋上に飛ぼうとしていた?この女の子が?

 

 

にわかに信じ難いことだが7階のベランダに引っかかっていたことは事実。それに今の話を微笑みながら彼女は話していた。嘘をついているようには見えない。

 

「撃たれたって‥全然そんな風には‥」

「それなら大丈夫、この服が守ってくれたから」

そう言ってインデックスは自分の修道服をポンポンと叩いた。もしかして防弾性があるのだろうか?修道服にそんな役割があるとは思えないが。

「もしかして警備員(アンチスキル)に追われていたのか?」

「あんちすきる?違うよ」

彼女は初めて聞いたとでも言いたげに小首を傾げた。

警備員(アンチスキル)とは学園都市の治安維持組織なのだがどうやら追っ手は違うらしい。

 

 

 

 

「魔術結社に追われてたんだよ」

 

 

 

 

「「‥‥‥‥‥‥」」

 

 

ひゅるるー、と気持ち良い風が部屋を通り過ぎた。

 

 

「魔術って‥はぁ‥何?魔術!?なんじゃそりゃ」

「え?あの魔術だよ?魔術(マジック)魔術結社(マジックキャパル)

インデックスの言葉にぽけーっと当麻と明久は顔を見合わせる。少し長い間を空けてから、

「いや、ゴメン、魔術は無理なんだよ。学園都市には色々な『超能力』があるけど魔術は無理、絶対」

「超能力ってのは信じるのに魔術は信じないの!?おかしいよ!」

明久のその言葉に彼女はドン、と机を叩きながら反論した。

「超能力ってのはクスリ打って電極貼り付ければ誰だって『開発』できちまうんだぜ?一切合切が科学で説明できるんだから信じて当然だろ?んで魔術ってのは何なんだよ。原理を説明できるのか?ってか見せてくれよその魔術ってヤツをよ」

「魔力がないから私には使えないよ?」

「「‥‥‥」」

 

カメラあると超能力使えないわーとかほざいてるダメ能力者かこの子は。

 

「な、何その私を小馬鹿にするような目は!魔術は使えなくても私には十万三千冊の魔道書があるんだからね?」

「十万三千冊のまどうしょ?持ってるようには見えないけど‥」

じーっと二人はインデックスを観察するが約十万冊の本を所持しているようには見えない。図書館のカギを持っているとかそういうオチだろうか?

「ちゃんとあるよ、ここに」

 

トントンと、彼女は自分の頭を人差し指でつついた。

 

「頭?‥記憶にあるって言いたいのか?」

「そう言うことなんだよ」

「「‥‥‥」」

 

いや、胡散臭すぎるだろ。

 

「うー、さっきから何なのあなた達は!大体超能力だなんて言って君達には一体何ができるって言うの?」

「あー、うーん、そうだなぁ」

上条当麻は少し考えてから、

「俺の右手には幻想殺し(イマジンブレイカー)、隣の明久の左手には幻想拒絶(イマジンリフューザー)って力が宿ってるんだけど」

「ふんふん」

「その手で触ると‥それが異能の力なら超電磁砲(レールガン)だろうが神様の奇跡(システム)だろうが問答無用で打ち消せます、はい」

「‥‥‥」

 

 

沈黙。

 

 

「ぷぷぷぷぷ」

「‥なんだそのわざとらしい笑い声はオイ」

「いやだって神様の名前も知らない人に神様の奇跡打ち消せますって言われてもなー」

ぷぷぷぷぷ、と口を押さえて笑うインデックス。

「くっそ‥ムカつく。こんなインチキ魔法少女に小馬鹿にされたことがこんなにムカつくとは‥」

「インチキ魔法少女!?インチキじゃないもん魔術はあるもん!」

「だったら早く見せてくれよ!ソレを俺の右手か明久の左手でぶち壊せば俺らのこと信じるしかねーだろ」

 

売り言葉に買い言葉とはこのようなことを言うのかなーと、明久はちょっと遠目から二人を見て考えていた。

 

「いいよ!そんなに言うなら見せてあげるよ!!これ、この服は『歩く教会』っていう最強とも言われる防御結界なんだからねっ!」

彼女は立ち上がりくるりと一回りして『歩く教会』を見せつけた。

「試しに包丁でもお腹に突き刺してみてよ!私は無傷だからっ!」

「んじゃあ一丁包丁でも刺してみるかーってやるわけねーだろ!明日の朝刊の一面を逮捕された俺の顔で飾りとぉ無いわ!嘘つくならもっとマシな嘘付きやがれってんだ!」

「むきー!嘘じゃ無いもん!この分からず屋!ちくちく頭!」

「ちょ、ちょっと二人共落ち着いて」

明久が二人の間に入って仲介しようとするがここまでくると止まらない。

「その服が本当に『異能の力』ってんなら俺の右手が触れただけで木っ端微塵って、ことだよなァオイ」

「え、いやいや、当麻それはやめた方が」

「君の力がほ、ん、と、う、な、ら、ね?ふっふーんだ!」

上等だゴラァやってやんよ!と、明久が止める暇も無く当麻はインデックスの肩を掴んだ。

 

 

 

 

 

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

 

 

 

 

 

しかし何も起きない

 

 

 

「‥‥‥あれ?」

 

 

 

ぽんぽんと何回か肩を叩いてみるがが本当に何も起きない。

 

 

 

「別に何も起きないけど?」

 

 

 

ふっふっふ、という感じで両手を腰に当て威張るインデックス。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、するりとインデックスの服が落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

床に落ちた修道服は糸が綺麗に解けてただの布と化していた。

 

ただ、帽子のようなフードは服から独立していたからか無事だった。

 

 

 

 

 

状況を理解して凍りつく少女と少年二人。

 

 

 

 

 

数秒後、夏の暑さを吹き飛ばすような悲鳴が第七学区に轟いた。

 




超能力とか魔術の説明は怠いのでほぼカット
申し訳
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