とあるバカの幻想拒絶   作:ミリライ

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五話

 

 

 

合格者

アキちゃん、71点

坂本ちゃん、96点

 

 

 

「「「うそだあああぁぁぁっ!」」」

 

 

 

時間は昼休み直前の午前12時、小萌先生が黒板に書いた文字を見て絶叫するFクラスの面々。

 

「ちょっと俺は調べることがあるんでな、先に失礼するぞ」

 

合格者の一人、坂本雄二は当然とでも言いたげに笑った。

そしてもう一人の合格者、吉井明久は、

「ふっ、僕が本気を出せばこれぐらいは」

「坂本はともかく明久が合格とか納得できませんよ先生!」

「そうやで小萌先生!こんなん地球が滅びたとしてもありえへんで!」

「‥どんな手を使った明久?」

「アキが合格?明日の天気は大雨‥いえ嵐ね‥」

「‥ねぇ?みんな酷くない?」

 

雄二も合格したはずなのにこの扱いである。

 

「んー、ですが100問テストの70問が正解だったら今日は帰って良し!と言ったのは先生ですし‥アキちゃんはちゃんと勉強していたみたいなので合格なのです!」

「「「畜生ッ!」」」

壁や床を叩くクラスメイト達。それを見て明久はそこまで悔しいのか、と思わず呟いてしまった。

 

「と言うわけで午前中の補習はここまでにするのですー。お昼ご飯ちゃんと食べるのですよー?」

ガラガラと教室のドアを閉めて小萌先生は教室を去った。

 

その数秒後、

 

「さて明久、どんな手を使ったんだ?白状しろ」

雄二のその言葉で明久の尋問が始まった。

 

「簡単なことだよ、僕はこれを使ったんだ」

 

ゴソゴソと筆箱を漁ってソレを取り出す。

 

 

 

strikerΣ5(ストライカーシグマファイブ)!」

 

 

 

カッコ良さそうな名前を叫ぶと共に掲げたのは一本の鉛筆。

 

 

「「「‥‥‥」」」

 

 

しーん、と静まり返る教室。

 

「‥ワシには何の変哲もないただの八角形の鉛筆にしか見えないのじゃが」

「ほらここ見てよ秀吉、鉛筆の上の部分にちゃんと数字が書いてあるでしょ?」

 

よく見ると八角形それぞれの面に1、2、3、4と細字の油性ペンで書いてある。

 

「これをこうして」

 

カラコロ、と鉛筆を転がして、

 

 

「出た数が答え!正答率驚異の70%超え!それがstrikerΣ5なんだ!!」

 

 

デデーンと効果音がつきそうなポーズでソレを見せつける明久。

 

「はぁ、なんだそう言うことか」

「まぁ明久はなかなか運が良いからなぁ」

「そんなことだろうと思ったわよ」

「アホくせぇ」

「‥明久はほっておいて早くご飯」

それを見て足早に教室を出て行くクラスメイト達。

 

「えぇ!?ちょっと待ってよまだstrikerΣ4(ストライカーシグマフォース)の話が」

「「「うるさい黙れ」」」

「酷い!さっきまであんな興味津々に見てくれてたのにっ!」

ガクッと明久は机にうなだれる。

strikerΣ4(ストライカーシグマフォース)を改良するのにどれだけの苦労があったのか話すのはまた別の機会になりそうだ。

 

 

「明久よ、少し頼みごとがあるのじゃが」

「ん、秀吉?どうしたの?」

 

ズーンと凹んでいる明久に声をかけたのは木下秀吉、やはりいつ見ても可愛い。

 

「まずはこれを見て欲しいのじゃ」

と、彼女‥じゃなくて彼が差し出したのは携帯電話。画面には一通のメールが映し出されている。

 

 

『親愛なる我が弟へ

今日の一時ぐらいに「ラ・ペディス」でケーキセットの予約してあるから受け取って177支部に届けてくれない?アタシは幻想御手(レベルアッパー)の件で動いてて行けなさそうだから、お願いね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お姉ちゃんの言うこと聞けるわよね?』

 

 

 

「怖っ!最後の文がなんか怖いよ優子さん!」

お願いというより強制しているような気がする。

「ワシは不合格じゃったから行けなさそうなのじゃ、そこで姉上と面識のあるお主に頼みたいのじゃが‥」

「うん、いいよ。僕に任せといて」

 

確かに明久は「ラ・ペディス」や「177支部」の場所を知っているので適任だろう。177支部の風紀委員(ジャッジメント)達とも顔見知りだ。

 

それにここで秀吉に貸しを作るのは悪くない。今度メイド服を着てくれとお願いして

「む?明久よ、何かやましいことを考えておらぬか?」

「はっはっはっそんなこと考えてる訳ないじゃないか秀吉」

「むぅ、気のせいだったかの?」

 

流石は読心能力者(サイコメトラー)低能力者(レベル1)で何を考えているかまでは分からなくともなかなか鋭い所を突いてくる。

 

誤魔化すために視線を携帯に向けているととある単語が頭に引っかかった。

「ん?そういえば幻想御手(レベルアッパー)って確かあの爆破事件で聞いたような‥』

「知っておるのかの?最近姉上はその事件で忙しいらしくてのぉ」

夏休みに入る数日前だっただろうか、とある事件に遭遇してしまい幻想御手の話を優子から少し聞いたことがある。

 

「まぁ色々あってね‥ともかくちゃんと優子さんに届けて」

「その話詳しく聞かせてもらおうか」

「「!?」」

 

後ろを振り向くといつの間にかFFF団会長の須川亮が黒装束を着て立っていた。さらにその後ろには部下達が列をなして並んでいる。

 

「優子さん、というと木下のお姉さんか。罪状は如何なるものか」

「会長、勿論火炙りの刑ですよね?」

「ぬるいな、釘バットの刑が妥当だろ」

「いやここは電撃使い(エレクトロマスター)の俺がビリビリに」

「横溝お前の静電気じゃ何もできないだろ。やはり俺の空力使い(エアロハンド)で」

「扇風機(弱)並みの風でどうするつもりだ福村?」

 

さすがFFF団、もう既に処刑方法について会議を行なっている。

 

「全員で一回ずつバックドロップってのはどうだ?」

「久しぶりに頭下屋上落としでもいいんじゃね」

「‥様々な意見が挙げられているな。いっそのこと全部やるか」

「「「それだ!!!」」」

「いやそれだじゃないよ!僕は秀吉のお願いを聞いてるだけだよ、別にやましいことなんて全然ないって!」

 

手をブンブン振って必死に否定する。ここで弁明しなければ待っているのは死、のみだ。

 

「ふむ、確かに木下秀吉のお願いだったら仕方ないのかもしれないな。可愛い女子の願いを叶えようとする吉井の行動は間違っていない」

「ワシは男なのじゃが‥」

一日に一回は言っているセリフを秀吉はため息とともに吐いた。

 

「よし、罪は軽くするべきだと判断した。それを踏まえて吉井の罪状は」

 

明久は左胸をさすって安堵する。この感じだと全員からビンタ1発程度で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「半殺しの刑」

 

 

「さらばだっ!」

 

 

「絶対に逃すな、地の果てまで追え」

「「「コロス」」」

 

 

明久は用意していたカバンを掴んで廊下に出ると全速力で廊下を走り一階の下駄箱を目指す。

 

「吉井止まれヤァ!」

「ヒャッハァー!血祭りダァ!」

「捕まえたらまずは火炙りの刑だゼェ!」

「君達須川君の話聞いてた!?半殺しだよね!?」

もうどう見ても半殺しじゃなくて完全に殺しに来ているのですが。

 

「「「関係ねぇ裏切り者には死を!」」」

 

「このひとでなしっ!」

 

とりあえず手に持っている刃物や釘バットを収めて欲しいものである。

 

校舎端の階段の手すりを慣れた手つきでまたいで出来るだけ追っ手との距離を離す。すると廊下の先に下駄箱が見えてきたが、

 

 

「廊下は走るなと何回言えば分かるんだお前達は!」

「「「鉄人!?」」」

 

 

明久達の目の前に大柄な男が立ち塞がった。

趣味はトライアスロン、規律を乱す者には鉄拳制裁でお馴染みの西村宗一こと鉄人である。

 

噂ではとある超能力者(レベル5)と素手で互角にやりやったことがあるらしい。マジモンのバケモノである。

 

「鉄人と呼ぶな、西村先生と呼べ!貴様らはこれから補習室送りだ!昼休み中たっぷり指導してやろう」

 

 

補習室。

入れば「趣味が勉強、尊敬するのは二宮金次郎」と理想的な生徒に教育(洗脳)されるという文月高校で恐れられている教室の名。

 

 

 

「観念して補習室に来い!」

 

「「「逃げろおぉ!!!」」」

 

 

 

昨日今日で不良(スキルアウト)超能力者(レベル5)FFF団(ヤバイ宗教)に追われ、しまいには鉄人(補習教師)と鬼ごっこ。

 

 

明久は背後から追ってくる鉄人を尻目に全速力で走り出した。

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