私立英刻高校ヒーロー科   作:ネギ丸

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第2話:雄英入試②

雄英入試の実技試験が始まって約3分が経過した。今の俺の現状を簡単に説明すると、非常にまずい。

 

(くそっ!仮装ヴィランが見つからねえ!見つけても遠距離型の個性のやつらが横取りしやがる!!)

 

現在、俺の獲得ポイントは0ポイント。他の受験生は着々と仮装ヴィランを倒し、ポイントを獲得している。

 

(焦るな……。こういう時こそ平常心。まだ挽回のチャンスはあるはずだ)

 

俺は全力で走り、仮装ヴィランを探す。次見つけたら一気に懐に潜り込んでやる。

 

他の受験生が仮装ヴィランを仕留めている中を俺は駆け抜け、目標を探索する。

 

「見つけた!」

 

交差点の曲がり角を曲がると、そこには資料に書いてあった仮装ヴィランの姿があった。

 

(あれは2ポイントのヴィラン!よし、やってやるぞ!!)

 

俺は見つけた仮装ヴィランに狙いを定めると、右足で力一杯踏み込んだ。そして次の瞬間、俺は反発するようなものすごい力で地面を思い切り踏み蹴った。

 

「うおらっ!!」

 

俺はものすごいスピードで仮装ヴィランに接近すると、仮装ヴィランの腕のような部分を思い切り掴んだ。

 

「くらえ!!」

 

そして次の瞬間、掴まれた仮装ヴィランは鈍い金属音のような音を立てると、活動を停止した。

俺【織部 衝】の個性は『ショック吸収&放出』。体で受けた衝撃を吸収し、それを逆に放出もできる個性だ。普段俺は日常生活の中で微細な衝撃を吸収しながら過ごしている。歩いている時の足が地面につく衝撃やものに触れる時に生じる衝撃。今の仮装ヴィランへの移動と攻撃は蓄積したそれらの衝撃を放出して利用したものだ。

 

「まずは2ポイント!」

 

俺は仮装ヴィランが動かなくなったのを確認し、次の標的を探すため再び走り出した。

 

(なるべく遠距離攻撃の個性とは離れたほうがいいな。同時に獲物を見つけた場合こっちが不利だ)

 

俺の個性は触れたものに対して蓄積した衝撃を放つものだ。敵に触れるために接近する分、遠距離型の個性よりも一瞬遅れをとる。

 

(そのためにも、早く見つけて速く倒す!)

 

俺は周りに最善の注意を払いながらエリア内を駆け回った。

 

 

 

 

 

試験が始まってから約7分が経過した。ここまでくると受験生の間で獲得ポイント数に差が現れ始めた。

 

「よし、28ポイント!」

 

「14ポイント!やべえ、急がねえと!!」

 

残り時間もわずかとなり、獲得ポイント数が少ない受験生を中心に段々と他の受験生も焦り始めている。そして俺の今の獲得ポイントは……

 

「12ポイント!まずい、他の奴らとかなり差が出てる!!」

 

内心めちゃくちゃ焦りながら、俺は周りを入念に見渡しながら仮装ヴィランを探す。

 

(くそ、運が悪すぎた!遭遇したヴィラン全部遠距離持ちに取られちまうなんて!)

 

そう、俺はヴィランと遭遇しては横取りされ、また遭遇したかと思えば別のやつに横取りされるの繰り返しだったのだ。

そして、現在までで倒した仮装ヴィランの数は8体でポイントは12ポイントだ。

 

(なんとかして挽回しないと……。何かいい策はないのか……)

 

俺は頭をフル回転させて、大量得点を狙えるチャンスが無いかを考える。

 

(仮装ヴィランは派手な個性持ちの人たちに集まる性質がある。それを利用して、なるべく強い奴の近くに寄って襲ってきたヴィランを倒す形でいこう!)

 

作戦を決め強力な個性持ちを探そうと足を一歩前に出した瞬間、街全体が大きく揺れた。

 

「なんだぁ!?」

 

俺はその振動に驚き辺りを見渡すと、なんとも言えない恐怖を目の当たりにした。

 

「「「で、デカァァァ!!!」」」

 

0ポイントの巨大ギミック。説明の時にも言われていた破壊不能の巨大なロボがエリア内の建物を破壊しながらこちらに迫ってきている。

 

(こんなんシャレになんねーぞ!怪我人どころか死人も出るぞこれ!)

 

俺は完全に混乱し、反射的にそのギミックから遠ざかった。

 

(慌てるな、混乱するな。考えろ!あれから逃げながらポイントを獲得しないと。そんな余裕……)

 

あるはずがない。

俺は必死になって迫り来る巨大ギミックから全力を振り絞って逃げる。恐怖で何も考えられない。ただ頭の中であのギミックから逃げることしかできない。

 

(くそ、情けねえ!絶対ヒーローになりたいって思ったのに……!ちくしょう!!)

 

自分に対する情けなさと悔しさを胸に、俺は走り続けた。周りの奴らはどうなってるのかわからない。もう他の人のことを考えている余裕すらない。

 

「ハァッ……ハァ………」

 

俺はただ前だけを見て走り続ける。振り返ればまたあの恐怖が襲ってくる。

俺が全力で必死に走ってエリア内の大通りを抜けた瞬間、狭まった視界の隅に、足が瓦礫に挟まって動かなくなっている受験生ざ映った。

頭の中で一瞬、「助けなきゃ」という考えが巡った。しかし、その考えは簡単にかき消しされてしまった。

振り返るのが怖い。死への恐怖が俺のちっぽけな正義感を簡単に消し去った。

 

(ああ、俺はやっぱり凡人だったんだな)

 

『終了ーーーー!!!!』

 

試験終了の合図がマイクの馬鹿でかい声によって全受験生に伝えられた。

巨大ギミックも止まり、俺は思わず気が抜けてその場にへたれこむ。

織部 衝、合計獲得ポイント【12pt】。

心に大きな後悔を残して俺の雄英入学試験は終了した。

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