メカゴジラ大好きです。何よりも。ええ。
僕がそう、あのプラントに向かったのはいつ頃だっただろうか。
──2058年の夏。
2つの移民船がこの故郷を去り、あれから10年が経った夏だった。
45年のグレートウォールの時には僕は幼すぎて、戦線に出ることは無かった。
いや、出るだけの知能を持ってなかったからね。
当時3歳だったんだから、当然のことだ。
そして、僕は出会った。
5歳の時。
映画で見たんだ、”それ”を。
奴。怪獣の王であるゴジラを倒す、最後の砦。
収束中性子砲に、アブソリュート・ゼロ。
ハイパー3連メーサーがついていた時もあったらしい。
そして、極め付けの.........ハイパーランス。
これだけの装備を、兵器をたった一体の機械の怪獣に搭載していたって言うんだから、その凄さがわかるだろう。
一目惚れだったよ。
本物を、自分のこの目で、直接見たいと思った。
48年にそれは起動こそしなかったが、僕にはそれがまだ残っているように思えてならなかった。
いや、僕は何かに取り憑かれていたのかもしれないな。
僕は勉強した。
......この過酷な環境で勉強もクソもあるのか、と言われれば黙るしかないが、それでも出来るだけの努力はしたんだ。
僕が日本に残る中で、みんなは南アフリカ大陸に向かっていった。
寂しい、そう感じた事は一切なかったね。
僕には”それ”があった。
”それ”さえあれば、それで良かったんだよ。
逆に言えば、このいつ死ぬか分からないような環境で、娯楽......というか、気を休ませる......そうだな、『趣味』のようなものはそうそうなかった。
だから、15歳になった時に。
僕は、その勇姿を拝むために。
”メカゴジラ”に、会いに行くために。
富士山麓に、向かった。
...そうだね、うん。
確かにあれは信じられない光景だった。
山が円状に抉れ、その先にあったプラントは半壊していた。
幸い、メカゴジラの格納庫には掠っていた程度だったけどね。
意外にも、警備はいなかった。......そりゃそうだろうな。起動しなかった最後の希望、と称したただの鉄クズを護衛する奴なんて馬鹿げてるだろう。
そんなことをするくらいなら、僕は迷わず戦線に人を注ぎ込むさ。...僕は隠れていたから戦線に出たことは無いけどね。
僕は瓦礫を掻き分けて中に入った。
小規模で、本当にメカゴジラのためだけに作られた、って感じのプラントだったけど、それでも立派だったよ。
......そして、僕は見つけたんだ。
鉄製の扉をこじ開けて、その奥に入ると、それはあった。
「対ゴジラ超重質量ナノメタル製決戦兵器─────────メカゴジラ」
無意識のうちに、その名前を口にしていたよ。
怪獣の王の名前をもじり、対抗可能なたった一つの手段として建造された、体高50m、総重質量3万tの化け物。
しかも自律思考金属体──ナノメタルによって、修復、変形、増殖とあらゆる動作が可能......。
これほどまでに素晴らしいモノが、この世の中にあっただろうか?
いや、ないさ。
これこそが、人型種族の叡智の結晶なのさ。
唯一無二の怪獣兵器......ああ、ガイガンなんてものもあったけど、これはサイボーグじゃない。完全に機械でできた兵器だ。純ナノメタル製だからね。
作戦が実行される前は”機龍”とか、”機獣”とかいって愛称が付けられていたね。
僕はメカゴジラ、と呼んでいたけど。
どのくらい、見蕩れていたんだろうか。
メカゴジラの収容区画の天井は崩れていて、メカゴジラ自体にのしかかるように存在していた。
もちろん、メカゴジラがそこまで軟弱なわけがない。
メカゴジラは、立っていたんだ。起動しないまま。
多少背部のブレード部分が損傷していたが、起動してしまえばそんなものは修復できるような範囲だった。
僕は制御システムを起動するために、コントロールルームに向かった。
...生憎、そこは状態が良くなかった。
動かせそうな端末は、真ん中の一つだけ。
周りは全て瓦礫に押しつぶされていたよ。
......怖くなかったか?
そうだね、怖くなかった、と言えば嘘になるだろう。
でも、メカゴジラが居るんだぞ?
僕の愛したそれが、目の前にいる。
そして僕は、それを起動させるために動いているんだ。
何も怖いことはあるもんか。
最強の兵器が、僕の傍に居るんだから。
僕はひたすらにキーボードを叩いた。
途中でブロックの八割が機能することに気づいてからは早かったね。
え?そんな技術はどこで手に入れたのか?
言っただろう?「勉強をした」って。......説明が長くなるのであとは察してくれ。そういう事だよ。
僕は割れたガラス窓の先に見えるメカゴジラを動かすべく、ひたすらに没頭した。
何時間が経っていただろう。
僕は期待を込めて、エンターキーを押す。
もう指も疲れてしまっていて、震える右腕を左手で押さえながら。
触れるか触れないか、そんな位の感触だった。
いや、違うな。
触ったかどうかなんてどうでもよかったんだよ。
だって。
重々しい音を立てながら、メカゴジラは頭を紅く光らせたんだから。
短編なのであと1、2話で終わります。まあ短いもんです。