そんなに長くないですし簡単に読めると思いますけどね。
まあ面白い、と思っていただけたのであれば僥倖です。
ささやかなものではありますが。
ゴジラが、すぐ目の前に来ていた。
まるでプロレスを始めるかのようにプラントの一角をを引き裂き、メカゴジラに取ってかかった。
......こんなのはゴジラらしくなかった。
もっとやつは、冷徹に、冷ややかに、熱線を使って全てを薙ぎ払うだけだったのに。
こんなのは、僕が見た限りでは初めてだった。
まさか、メカゴジラ相手に怒りを覚えた?
自分が本気を出さざるを得ない相手だと、そう認識したのかもしれなかった。
ただ躙り潰すだけの存在から、本気で相手をするしかない存在。
その変化は、劇的だった。
防戦一方で押され気味のメカゴジラに、容赦なく連撃を突くゴジラ。
尻尾でゴジラを叩き、ゴジラに胸を引き裂かれる。
ブレードをゴジラに打ち込み、ゴジラに頭を噛みつかれる。
僕がいままで体験したことのなかったような怪獣プロレスが、目の前で繰り広げられていた。
恐怖?
そんなものはとうにどこかに消えている。
僕はある意味では、狂人なのかもしれなかった。
メカゴジラ、頑張れ。
「負けるな、メカゴジラ!」
それだけを、僕はひたすらに叫び続けていた。
この時だけは、年相応の言葉を発していたと思うよ。
初めて、そして最後の......。
それに呼応するかのようにメカゴジラは反撃を繰り出し、ゴジラの打撃を受け止める。
......しかし、それにも終わりは訪れる。
3度目の、閃光。
これまでとは違う、真っ赤な......ゴジラが東京を襲ってきたときのような、炎のような赤。
メカゴジラは絡みつくゴジラの手をなんとか払い、傷ついた身体からナノメタルを放出する。
周囲に新しく充満し始める粒子達が包むのはメカゴジラではなく、何故かこのコントロールルーム。
ああ、ダメだよ。
それじゃあ、メカゴジラが死んでしまうじゃないか。
どうして、僕なんか。
「メカゴジラ、何故────」
何故、僕を生かすの?
そう言いかけて、その声は轟音に掻き消される。
メカゴジラに降り注ぐ、エネルギーの槍。
体は砕け、突起は形を失い、下半身は機能することを許されない。
辛うじて、というより残った最後の力を振り絞って、僕の方を向く、機械のゴジラ。
が、その命は虚しく崩れ落ちた。
虚を掻くように、僕に少しでも届くように......”それ”は、確かに左手を伸ばして倒れた。
ゴジラは満足そうに天を仰ぎ咆哮を響かせると、プラントを後にしていく。
勝者の背中を見つめながら、僕は疑問を募らせる。
プラントは、崩れそうなコントロールルームを支える形で残っていた。
そう、メカゴジラはどうすればこのコントロールルームだけを残すことが出来るのか...それだけを考え、ナノメタル粒子を撒いたのだ。
なんで、僕なんかに。
僕さえ気にしなければ、あの攻撃を受けても耐えられただろうに。
どうして、どうして......!!
「.........っ!」
悔しくて、虚しくて、僕はデスクを殴る。
メカゴジラは、本当にこれで、こんなことで良かったのか...?
いつの間にかゴジラの去っていた外を眺めていた僕の視線が下に動く。
その時、何かが光っていることに気づいた。
パソコンが、起動している。
画面は砂嵐の状態だった。...メカゴジラが破壊されたんから当然だろう。
が、驚くことに徐々に砂嵐は解消され──────
文字が、現れた。
「ああ、そういうことか。ははっ」
僕はメカゴジラの優しさに、その”心”に出会えた、そんな気がした。
だって、そこには───
『SAYONARA...YOSHITO』
───────ギギギ...。
誰もいなくなった、たった一人......一機のプラント。
少年を守るように崩れ倒れた機械の怪獣は、沈んでいく意識の中で、ゴジラを呪うかのように─────
『......我ハ決シテ諦メヌ。何ガアロウトモ──────』
...だから言ったでしょう?
僕は東京SOSが好きなんですって。
これでわかって頂けたかと。
では、また機会がありましたら...。