ソードアート・オンライン・フェイトアンコール 作:にゃはっふー
ランサーカルナ対セイバー。
ランサーエリザベート、戦闘放棄。
戦闘続行、観測を続けます。
燃え上がるは愛の炎、向かってくるそれにキリトは戦慄する。
「安珍様、またですか……またなのですね」
さめさめと泣くように聞こえるが、彼女は炎を纏って素手で刃物を弾きながら迫る。
「ならばまた、またですね。貴方を殺して、また会うその日まで」
キリトのみにヘイトが集まり、それ以外は見向きもしない。
だが、
「タンクなにしてるの!! 前線維持ッ」
一人の戦乙女が吠えていた。
男たち全員が女怖いと認識する中で彼女たちは吠える。
「あなたにキリト君は渡さないっ」
「安珍様をたぶらかす女狐がっ」
二人の威圧に男性プレイヤーが怯える中、もう一つのフィールドで炎が激突し合った。
◇◆◇◆◇
「マスターっ」
【ああ】
セイバーの深紅の剣、原初の火アエストゥス・エストゥスがカルナの炎、アグニと激突した。
すでに地上は焼かれ、石を始め中庭が切り取られた舞台には大地以外なにも無い。全て燃え尽き、いま地面すら燃やす。
息をするだけで喉が焼かれる。それほどの熱量のぶつかり合いに、セイバーと自分を守るコードキャストを展開していたが汗が止まらない。
「なかなか突破できない………」
【相手はトップサーヴァント、その身体。彼の宝具《
「如何にも。この身、神々でさえ破壊不可能の光の鎧なり」
律儀に返すカルナだが皮肉としか思えない。この防具の所為で先ほどから致命傷を与えられず、また与えたところで傷一つないのだ。
そんな中で彼の言葉を聞き、
【なら突破すればいい】
「ほう……。面白い、我が鎧、突破できることができるのならやってみせろ。ただし」
その瞬間、光がメイトを貫いた。
肩を貫かれて血が流れる。痛みよりも先にその攻撃に驚愕する。あまりの速さにセイバーは反応するしかできなかった。
「真の英雄は目で殺す」
「この者」
セイバーがあまりの各上に戦慄する中、それでも彼は変わらない。
【………だからこそ、お前は俺に勝てない】
暗闇がより一層濃くなる中、三人は激突した。
◇◆◇◆◇
愛の炎を纏う清姫との戦いに手間取るプレイヤー。
彼らが手間取るのはパターンが分からない。
だが一人、ほんの数人だけ気づいていた。サーヴァント戦にパターンは無いのかもしれないことに気づきだす。
まるでそこにいるように戦う彼らに対して、キリトが一手にヘイトを集めていた。
「ああ愛おしい………」
必死に迫る彼女はキリトを見ていて見ていない。
彼女の見ているのは愛した男のみ。
姿形が全く違うのにそう思い込み、そうとしか考えずに動くことしかできない。
彼女の狂気は根元から狂っている。故に彼女の夢は終わらず、ただ盲目にそれだけしか考えなかった。
「恋しくて、悲しくて………」
見ているのは愛した、愛おしき男性。そして裏切った男。
「裏切られて悲しくて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くて憎くてッ」
クラインが刀で接近する、清姫の腕で止めた。
ガキンッと明らかに違う音が鳴り響き、両腕で必死に抑えるが、彼女は片腕で刀を受け止めていた。
「憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎憎―――」
刀が折れ、クラインを掴み投げ飛ばす。
後方が受け止める中、炎がキリトを捕らえた。
「だから殺します、常世の場所までこの清姫。ずっと一緒に………」
その姿は見て恋する少女の顔なのだろう。
だが見た者全てをゾッとさせるように、下半身は大蛇であり炎を背負っている。
そんな中キリトは静かに剣を握りしめ、
「………生憎と、俺には大切なものがあるからな」
その言葉に清姫の目は見開いた。
「アアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
キリトと炎が交差する。こちらの戦いも決着が近い。
◇◆◇◆◇
【………】
肩で息をする中でその場に立つ
そして、
【チェックメイトだ】
「なに?」
気が付くと双剣もまた闇に溶け込んでいて、それによる傷がカルナの身体にできている。
傷では無い陰り、暗闇が傷のように付着しているだけ。瞬間、それがカルナの身体に広がり出す。
「これは」
【分かるだろ?
「………なるほどな、光すら侵食するか」
その言葉を聞いた瞬間、光の鎧に陰りが生まれ暗闇に飲まれる中、セイバーが深紅の剣を構える。全てが闇に溶け込んだ瞬間、斬りかかるために。
「だが、惜しい」
【?】
その瞬間、彼は光の鎧を破棄した。
【!】
「神々の王の慈悲を知れ」
それは宝具解放、それに炎が光りに成り、それが危険と判断して全能力を使い侵食を始めた。
カルナが光の鎧を紛いなりにも突破されたと判断した瞬間、それを破棄して絶命の一撃を放つことにしたのだ。
躊躇もなく、無力化できるかと考えてしまうメイトの行動に対して、僅かでも可能であると判断したカルナはいともたやすくそれを捨て、次に移行した。
「奏者よっ」
【変わらない。これは俺が勝つか、カルナが勝つかの勝負だ】
「ならば全霊を以て汝を討たんッ」
炎は光、太陽のように燃え上がる。
フィールドどころか世界すら焼き尽くさんとする炎、それを飲み込もうとする黒。
地表のみ守るようにコードキャストを展開、空が焼き尽くされる光景にプレイヤーは絶句、全てが白に飲まれる。
空を染めた男の身体には、鎧を破棄することで死の傷はいくつかは剥がれているが残った闇が侵食する。それが余波だけで消え去り、彼は槍を構えた。
「インドラよ、括目しろ。絶命とは是、この一刺」
【来い、施しの英雄】
「灼き尽くせッ。
光が世界を支配した。
◇◆◇◆◇
悲鳴が聞こえる。
怒りが聞こえる。
悲しみが聞こえる。
妬みが聞こえる。
絶望が聞こえる。
願いが聞こえる。
希望が聞こえる。
それは、
【憎イ】
そう、
◇◆◇◆◇
悲鳴のような音が鳴り響く、硝子がこすれたような慟哭が聞こえる。
それは太陽が落ちてきたような熱量に十字の傷をつけた。
「これは」
炎を叩き斬り、プレイヤーたちを救う彼は、黒い剣を二本構える双剣の剣士。
【………セイバー】
その瞬間、深紅の剣を持つ彼女は走った。
「………見事だ」
そう満足そうに呟き、彼は斬り捨てられた。
◇◆◇◆◇
「邪魔するなあああああああ」
清姫もまた咆哮し、キリトへと迫る、
先の炎はまだ消えていない。炎の絶壁のように灼熱の壁となりいまだ燃えていた。
清姫はまるで共に死のうとするようにキリトを捕まえ、炎へと身を投げ出そうとする。
だが、
「させるかああああああああああああ」
クラインが盾を持って無理矢理タックルをかまし、その瞬間を細剣を持つ〝閃光〟が狙う。
放たれたソードスキルが叩きこまれ、炎の中に清姫だけが投げ込まれた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
彼女の慟哭だけは耳に残る中、彼らはサーヴァントに勝利した。
◇◆◇◆◇
「それじゃ、ちゃちゃっとここも直しましょうか」
リンがまた唐突に現れ、フィールドを直し始めた。
そんな中、メイトは倒れて眠りそうだ。
「眠りなさい。正直あなた、リソースを使い過ぎよ」
「町に帰るまでが攻略だ」
「まあ確かにな」
セイバーは剣を持ちながら、エリザベートを見て微かに聞く。
「それで、お主は本当に良いのか?」
「だーかーら、私自身こんな戦いに参加する意味がないのッ。まあただ一つ、やりたいことがあるだけ」
「それってなんだ?」
キリトがそう呟くと、
「コンサートっ♪」
そう彼女は言い、リンはすぐに自分だけ防壁を作り出した。
「あなたたちは幸運よっ♪ サーヴァント界きっての歌姫の歌を最前列で聞くのだから♪♪」
そして彼女は槍をマイクのように構え、
「―――――――――」
歌いだす。
全員が悲鳴を上げる中、平気な者が二名いた。
一人はセイバー、少し悔しそうに背後から現れた城のようなステージにぐぬぬとしている。一人はメイト、彼は平然と聞いている。
「――――――」
キリトがメイトに平気か聞くために近づいたが、聞こえないためメイトは首をかしげながら歌が終わるのを待つ。
不思議なことにHPゲージが減らなかった。
◇◆◇◆◇
「はい終わり、今回も階層クリアお疲れ様っ♪」
「ふう満足。これだけでここに召喚されたかいがあったってものよ。あのヘビ女がいる中で練習したかいがあったわ」
「だ、誰が聞いてたんだ………」
「カルナよ? 当たり前じゃない、彼奴しか観客いないんだもの」
そんな話を聞きながらセイバーも歌おうとしたためメイトは止めて、カルナのことで考え込む。彼の勝利は本当に奇跡だ。
「すでに弱ってたんじゃねえか………」
「クライン、それはどういう意味だ?」
「お前さんら以外に、あれに耐えられないってことだよっ」
そんなことを聞きながらアスナもぐったりする中で、経験値が山のように入る。
すでにリンが消えていて、今回はなにも話ができなかった。できる体調でもないが。
「………」
ボス部屋がただの通路に変わる中、ドロップ品を確認していると、キリトだけ嫌な顔をする。
「な、なあ俺のだけ変なんだ」
「どうした」
「これだ」
かなりレアアイテムのアクセサリーであり、指輪型。
高性能であり、これは装備するべきものなのだが名称が、
「エンゲージリングか。装備するのか」
「するわけないだろっ、俺にはアスナがいるんだから」
「ま、まあ怖いわよね」
「安心せよキリトよ。清姫の霊核は確実に燃え尽きた、本来なら防げようのない一撃、防げたのが奇跡の一撃で焼かれたのだからな」
「けど出てきそうだな」
「縁起でもないことを言わないでくれッ」
そんなことを話しながら、新たな〝上〟を見て静かに、
「また〝上〟に近づいた」
そう静かに呟いた。
◇◆◇◆◇
「………しかしまあ」
クラインは少しだけ辺りを見る。もう姿形の無いボス部屋の中でクラインは言う。
「あんな可愛い子にあれほど求められて、男冥利に尽きるもんだろうよ」
「クライン、それは当事者で無いから言えるんだ」
キリトは呆れながら、でも少しだけ悲しくなる。
「けど、シノン。安珍清姫伝説ってのは、清姫は嘘をつかれた物語なのか」
「そうね……、会う約束をしたのに恋した相手はそのまま逃げだして、彼を追っているうちに異形の怪物になった物語ね」
それを聞いたキリトは少しばかり考える。
「少なくてもあの子は好きな男の側にいたかっただけか……。そう思うとなんだか悲しいな」
理性を消してしまうほど盲目にまで恋に身を捧げたサーヴァント。
キリトたちはその事実に胸を締め付けられながら、その場を後にした………
◇◆◇◆◇
町に戻る中、セイバーが少しばかり元気過ぎる。
その様子を見ながら彼女に近づく。
「どうしたセイバー」
「どうしたとはなんだ? 余はいつも通りだ」
「嘘をつくな」
それを言われて少しばかり目を泳がせ、しゅんと落ち込むセイバー。
「奏者はそう言ったところは敏感だな。余は少し見謝った。カルナの宝具は、間違いなくトップレベルだ」
「ああ、リソースがほとんど無くなった。次があればきっと負けていた」
「それよ」
セイバーが静かに俺を指さす。
「これから先も彼の英雄のような者が現れる。ならばこそ万全の状態で挑むべきだ」
「万全? そんなものは当たり前だ。いつもそうだ」
「違う、余が言いたいのは」
「そんなことでお前の真名を知る気はない」
それにはっとなり驚くセイバー。
その顔を見ながら頭を撫でて告げる。
「お前が話したいときに話せ、俺がマスターである限り、それを待つ」
「奏者………」
「誰にも文句は言わせない。俺がお前のマスターでそれが最善なのだから」
「………すまぬ」
そう話し終えてエギルの店にたどり着く。
そこでお留守番をしていたユイがお迎えしてくれた。
「皆さんお帰りなさい」
「ただいま」
「ただいまユイちゃんっ♪」
「ユイ、今日はパパ、疲れたよ………」
ぐったりした顔のキリトにユイは微笑む中、ユイは何かに気づき、何かの包みを持ってキリトに近づく。
「パパ」
「ん、どうしたユイ?」
「はい、パパに渡し物があるとのことで、預かり物を渡したいと思います」
「へえ、なんだろう?」
全員が首をかしげる中、ユイから預かり物を受け取るキリト。
「ユイ、誰が持ってきたんだ?」
包みを受け取りながらキリトは尋ねるとユイははっきりと、
「はい、黒い着物を着た長い白い髪の女の人ですっ」
その瞬間、時間が止まった。
「………へ、へえ。他になにかあるかな?」
「はい。えっと………『ああももとめられるなんて、やはりあなたさまがあんちんさまなんですね』って言ってました」
「………」
俺は静かに即座にセイバーと共に部屋に帰る。
きっともう彼女との試合は終わっている。ならばきっと、もう戦う理由は無い。会うこともないだろう。
「待てメイトっ、どうすればいいんだっ。言っちゃ悪いが勝てる気がしない」
「敗者は先に進めないから問題ない」
「いやいままさに来てるぞっ」
クラインの指摘も聞きながら俺はユウキの元に帰る。
キリトの悲鳴が聞こえた気がするが気にせず、リソースの回復の為に俺は今日は誰が訪ねてきても無視して、静かに眠ろうと思った。
まだ先のある戦い。まだ終わらない日々のためにも………
カルナ、エリザベートにて疲労状態。宝具使用後セイバーに斬られ敗北。
清姫、SAOプレイヤーによってカルナ宝具の余波により撃退。
エリザベート、戦闘放棄。
データ処理を始めます。
「………人形め」
歯ぎしりし、それでもまだ二回。まだ始まったばかり。モニターを多く開き、データの解析へと移る。
まだ終わらない、そう………
「わたしは必ず」
そう呟き、作業を始めた。