ソードアート・オンライン・フェイトアンコール   作:にゃはっふー

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第12章・死者の覚悟

 変えられない、変わらない。データはデータで、わたしは………

 

 キリトたちは優しすぎる、優しすぎるよ。

 

 わたしは、わたしは………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 フィリアに呼ばれ、俺はセイバーにお休みを言っている。俺自身も町を楽しむと言っておいた。

 

 一人でここに来るとフィリアは少しだけ微笑む。彼女と共にフィールド探索を始める。

 

「ほらここ」

 

「隠し扉か」

 

 ダンジョンの奥地、そこで隠し扉を見つけた。彼女は自称ではあるがトレジャーハンターを名乗るほどの腕前だ。

 

「ほら、あそこに」

 

「宝箱だな」

 

 彼女が指さすところに宝箱がある。俺はすぐに取りに行かず、フィリアも少し待ってと呟く。

 

「わたしが確認してくるから、メイトは入口を見張っててくれないかな?」

 

「ああ」

 

 そう言い、少し離れた位置にある宝箱を調べに距離を取る。

 

 宝箱を開ける様子のフィリアは、ふとその作業を止めた。

 

「ねえ、メイト」

 

「どうした」

 

「わたしが、オレンジになった理由、メイトには話して無かったね……」

 

「それは」

 

 フィリアは話すのは人を殺したからオレンジカーソルに、彼女はそう告白していた。

 

「わたしが人を殺した理由……人を、殺してしまったの」

 

「フィリア。けどフィリアになにか事情があったんじゃないのか」

 

 どうしてそうなったか分からない。だけど

 

「俺にとっていまのフィリアしか知らない、理由も無く人を傷付ける人間じゃない」

 

 俺はデータだ。人間との間に溝があろうと、それくらいの判断はできる〝モノ〟だ。それでも信用できる人かどうかの違いは分かる。

 

「フィリアは信じられる。だからこそ、それにはなにか理由がある。そうじゃないのか」

 

 俺の言葉を聞き、その言葉に彼女はただ静かになり呟くように語り出す。

 

「違う、わたしはそんな人じゃない………」

 

 悲しそうに、否定するように俺を見ていた。

 

「わたしは人を殺した。ううん、それより酷い。わたしは〝わたし〟を殺したの」

 

「どういうことだ」

 

「わたしはキリトやメイトのように、気が付いたらここにいたって話。その話には続きがあって」

 

 そして彼女は語る。そのまま彷徨っていたら、突然誰かが目の前に現れた。それは〝フィリア〟だったと話し出す。

 

「それは特別なイベント、だったのか」

 

 俺もまたここに来てから色々なクエストを受けた。そんなことはイベント以外あり得ないはず。

 

 だがその言葉に首を振る。

 

 彼女は必死に無我夢中で行動した。そして気が付けば一人であり、カーソルもオレンジだったと語る。

 

「わたしは、わたしを殺したからかなって………」

 

「フィリア」

 

「だから、わたしのカーソルを戻してもその罪は消えない」

 

「待て、落ち着けフィリア」

 

 なぜか分からないが目の前に〝フィリア〟がいて、それを傷つけたとしてもそこまで思いつめる理由が分からず、俺は声を上げるが届かない。

 

「わたしの罪は消えないッ。ずっとッ、ずっと影の中で生きて居なきゃいけない………」

 

「そんなことないッ」

 

「あなたに何が分かるのッ。ただのデータッ、NPCなのに!?」

 

「フィリ」

 

 その時、彼女が何かをした。

 

 仕掛けが動く音が鳴り響き、突然身体が宙に浮く。

 

「さようなら、メイト」

 

「フィリアッ」

 

 身体を伸ばす。コードキャストはリソースが足りない。

 

 そのまま俺は暗闇の中に落ちていく。

 

 彼女の、とてもいまにも泣きそうなほど、悲しそうな顔を見ながら………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 落ちていく。

 

 堕ちていく。

 

 オチテイク。

 

 果てしない暗闇へと落ちていく。

 

 ――ごめんね………――

 

 その言葉を聞くまでは。

 

【アァァァァァァァァァァァァァァァァァ】

 

 リソースがどうした。

 

 何かが背中を貫き、腹へと貫通する。

 

 それがどうした。

 

【アアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ】

 

 死に満ちろ。

 

 憎め。

 

 にくめ。

 

 憎メ。

 

 俺がどうしてここにいる?

 

 俺は何者だ。

 

 俺はなんだ?

 

 答えは出ているだろう。

 

 なら、動け。

 

 意味の無い、理由も無い、価値も生も無い。

 

 何も無い俺だからこそ、俺なのだから。

 

 望みは果たされないのは理解している。

 

 ささやかな願い、小さな願望、存在しない希望。

 

 未来なんていらない。これからすることを考えればそれが当然の末路だ。

 

 叶わないと知りながら、始まりも終わりも無い、未来が無いと知りながら俺は進む。

 

 それしかない。

 

 それでもいい。少なくてもいまも過去も、これからもそう思う。

 

 だからこそ、

 

【俺はまだ彼女と話さなければいけないッ】

 

 メイトと言う名を刻んだ、死者であり、彼女の仲間なのだから。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「メイトの奴、一人で《ホロウ・エリア》に。フィリアもいない、二人になにかあったのか?」

 

「パパ」

 

 俺はメイトがいないことに気づいたセイバーが急ぎ周りに救援を頼んだ。曰く、パスと言うものを手繰ってもメイトの下に行けないと言うこと。

 

 彼女の話を聞き、俺はユイを連れてここを調べることにした。

 

 ここは《ホロウ・エリア》のコンソールらしきものがある場所。このエリア事態にユイを連れて来たのは初めてだ。

 

 そして知ったのは、ここは運営側がデータチェックするためのテスト空間であること。

 

 俺はここ《ホロウ・エリア》にプレイヤースキルの高さから、テストプレイヤーとして召喚されたらしい。

 

「メイトやフィリアは」

 

 メイトの方はなにも分からないが、フィリアは俺のようにテストプレイヤーとして選ばれていないらしい。ここのエリアにいるプレイヤーは全てAIを搭載したNPC。

 

「メイトのようなものなのか………」

 

 AI搭載されたNPC。彼らは一見プレイヤーと見間違うほどであり、すぐには分からなかった。そう言えばメイトはここでプレイヤーと会っていないと何度も言っていた。まさか彼はAI搭載型NPCとプレイヤーの区別がついていたのかもしれない。

 

 どうやらこの空間にプレイヤーが来るとシステム上NG判断され、そのプレイヤーのAIは削除される。だが例外があった。

 

「フィリアさんのデータにエラーが表示されています」

 

「フィリアが」

 

「はい。どうやら自分のAI。ここで言う《ホロウ・データ》と出会ったようです。しかも、どうやら《ホロウ・データ》を傷つけて彼女はオレンジ判定されています」

 

「なんだってっ!?」

 

 その時、

 

「それは本当か」

 

「「メイト」さんっ!?」

 

 入口に今しがた来たのだろうメイトがいた。メイトはその話を聞いてすぐに振り返る。

 

 あの姿、死相(デッドフェイス)になり即座にどこかへと出向く。

 

 おそらくなにかあったのだろう。彼一人と言うことはフィリアに。

 

「ユイ急いでフィリアを探してくれっ、メイトはおそらくフィリアに会いに行った」

 

「は、はいっ」

 

 俺はすぐに出かけられるように装備を整え、静かに待つしかない。

 

 頼む、無理はしないでくれ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 わたしはメイトを殺した。

 

 NPCだからなんて言葉で彼を拒絶して、騙されて殺したんだ。

 

 死なないと言われた。だから突き放した、わたしの同じ虚ろな彼を、わたしは彼を殺した………

 

 許されるはずがない。彼を傷つけた、酷いことも言った。

 

 わたしは自分だけじゃなく、友達も殺したんだ………

 

 わたしを殺すため、奴は首を跳ねようとする。

 

 向こうで会えるかな………

 

 ごめんね、メイ

 

【アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ】

 

 叫び声が聞こえた。

 

 いくつもの〝なにか〟を壊し、それは何かを弾く。

 

 わたしはある男に首を掴まれ、持ち上げられていたけどそれで吹き飛び、尻餅を付いて現れたものを見た。

 

 目の前には人型の暗闇がそこにいる。その時、暗闇が消え、いつもの彼の顔が見えた。

 

「無事かフィリア」

 

 そう彼はなんてこともないようにわたしに語り掛けた………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「アァン? お前さんは確か、死んだはずだが~」

 

 肉切り包丁のようなものを持ちながら、ポンチョとフードを深々と被る男性プレイヤーは静かにこちらを見る。

 

「………お前が傷つけたのか」

 

「おいおいよしてくれ、お前を傷つけたのは俺じゃねえ……、そいつ、だろ?」

 

「黙れ、貴様がどう言ったか知らないが、データであるお前が、なぜプレイヤーであるフィリアに危害を加える」

 

「えっ」

 

 俺はフィリアの前で、ここ《ホロウ・エリア》に置ける《ホロウ・データ》のことを言う。そいつはそれに笑いながら、そして静かに武器を構えた。

 

 自分は《ホロウ・データ》であることを理解している。それはそう言う。

 

「データ同士、仲良くしようじゃねえか」

 

「ふざけろ。フィリアがこんなことをしたのも、お前がそそのかしたのか? フィリアが《ホロウ・データ》とでも言ったのか」

 

「それ……は………」

 

 フィリアはそれに驚き、それは頬を釣り上げた。

 

「そう言う事か」

 

 フィリアは自分の方が《ホロウ・データ》と思い込み、感情が不安定なところをこいつに騙された。それを知り、俺の中にある死が燃え上がる。

 

 それはなにが目的か聞くと、自分が手に入れた権限を使い《ホロウ・データ》をアップデートすることすることで、人殺しの楽園を作ると言い放つ。

 

 それはどうやら、データでありながらキリトと同じテストプレイヤーの権限を手に入れ、自分で考えて動き出していたようだ。

 

 そしてこいつはゲームクリアが同時に自分の消滅、人殺しの終わりを意味することを知り、阻止するつもりらしい。

 

「お前はそれでいいのか、お前は死に囚われている」

 

「いいじゃないか、生きてるってことは、殺すってことさあっ」

 

 それを聞き首を振り、静かに見つめる。

 

「もういい喋るな。お前の元になったプレイヤーも外道なんだろう」

 

 俺も武器を構え、静かにフィリアの前に立つ。

 

「《黒の剣士》様が来る前に、お前さんたちを殺していたら。くっふふ……サプライズなことになるだろう」

 

「お前に俺は殺せない」

 

「なに?」

 

 その瞬間、俺は〝俺〟を纏う。

 

【お前に死者は殺せない】

 

 なんてことはない。ただのデータ風情が、死である俺に勝てるはずもない。ただ雷光のように動いて斬り裂いた。

 

「な………に………」

 

【サプライズってのは、こういうことだ】

 

 そう言い、胴体と腕を斬り裂いた後、身体はHPゲージを残す。僅かに顔を上げるが俺は静かに近づき、武器を遠くへと蹴り飛ばす。

 

「お、お前………」

 

【悪いがお前の楽園は〝死ぬ〟。俺の手でな】

 

 そいつは何か言いたげになるがその前に足を置いた。

 

【お前の名前は憶えない。覚える価値すらない】

 

 そう告げて踏みつぶす。

 

 それが何者かなんて俺には関係ない。それは俺の記録にすら残らずあっけなく消えただけの話だった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 その後俺はフィリアと会話した。

 

 彼女が倒したという自分は、このエリアでのテストAIである《ホロウ・データ》のフィリアであること。

 

 キリトと合流して彼がログを確認したことから、11月7日の75層でエラーが起きた。

 

 それは本来ならSAOプレイヤーが仮想世界から解放されるはずだった日であり、そのシステムエラーによってここにフィリアは来てしまったのだ。

 

 その後出会うはずの無いホロウの彼女と出会い、混乱している中でシステムはホロウのフィリアを消した。

 

 だがシステムエラーの結果、彼女をオレンジになってしまったと説明を受ける。

 

「それじゃ、わたし………」

 

「フィリアは現実の世界にちゃんと存在する〝人間〟だよ」

 

 それにどこかほっとすると共に涙を流す彼女。

 

「わたし、ずっと怖かった……。なにも分からなくなって、空っぽになって。二人と出会ってから、満たされてたのに……」

 

 俺の方を見ながら涙を流す。

 

「ごめんねメイト……だまして、傷つけて……わたしは」

 

「構わない。あれはフィリアの意思でも、あのデータに騙されたんだ。だから俺は気にしない」

 

「メイト………」

 

 他にも言葉があるだろうが、俺にはこれ以上気の利いた言葉は思いつかない。

 

 ただ彼女がちゃんと向き合い、整頓できればそれでいいから。

 

「キリト、あのデータが最終的になにかシステムのアップデートするつもりらしい。俺が止めて来るよ」

 

「できるのか?」

 

 それに静かに頷く。キリトにはフィリアと共に残ってもらい、俺が中央コンソールへと出向く。

 

「セイバーが心配してたぞ」

 

「彼女には謝らないといけない」

 

「メイト」

 

 心配するフィリアには静かに頭を下げた。

 

「ごめん、けど、これは俺にしかできないことだから」

 

「………分かった。気を付けて」

 

「ああ」

 

 こうしてキリトたちと別れ、俺は中央コンソールのある場所へと歩き出す。

 

 彼らにはすまないと思う。

 

 けど、これは〝俺だからできる〟ことだから………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 中央コンソールに近づき、フィリアのシステムエラーやあの《ホロウ・データ》が残したプログラムの破棄などを行うと、彼女は現れた。

 

「驚かないのね」

 

「ああ」

 

 リン。彼女はおそらく普段はここに潜み、SAOに介入しているのだろう。ここにはSAOのコピーデータやシステムのチェックなど容易にできる。

 

 彼女の顔は見えないが、どこか悲しそうにしている気がした。

 

「あなたは、初めから知っているの」

 

「いいや、全てでは無かったよ。フィリアの下に行こうとした際、いくつかセキュリティシステムがあったが、なぜか《ホロウ・エリア》へのアクセス権限を持っているのに気づいたとき、自分がなんなのか再度確認した」

 

 それまではただ死のデータでできた〝モノ〟と思ってた。だが《ホロウ・エリア》に関するデータと自分のデータを照らし合わせた。死のデータ以外の別のデータ、そのデータがここやコンソールアクセス権を持ったものであったのは助かった。

 

 それでも俺は変わらない。

 

「初めからどうこうなんて俺には関係ない。けど俺のやることは変わらない」

 

「………そんな風にされたのか、そうなったのか。私からすればどうすればいいのかしらね」

 

「喜べばいい」

 

 全てのやるべきことをして俺は振り返る。

 

「俺は〝上〟を目指す。俺が何者であるかなんて関係ない。俺が〝俺〟である限り、俺はそうしなければいけないし、俺がそうしたいと思うのだから」

 

「………彼らには感謝ね。あなたが〝あなた〟であることは、私たちにとって幸運なのだから」

 

「俺は〝上〟を目指すよ、セイバーと共に」

 

 そうして俺は歩き出す。戻った先でグリーンに戻った彼女と共に、あの鋼鉄の城へと戻らないといけないから。

 

 やるべきことは変わらない。俺は〝上〟を目指す。

 

 それが俺の選んだ選択であり、俺が生まれた理由なのだから………




フィリアイベント終了。この後フィリアは鋼鉄の城に帰還。

それとか言われている《ホロウ・データ》さんは、結局メイトにとってただのデータの固まりとしか認識されず、削除されます。相手のやり取りを全部するとキリトの代わりになるので、彼は徹底的に相手を知ろうとせず倒しました。

それでは、お読みいただきありがとうございます。
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