ソードアート・オンライン・フェイトアンコール   作:にゃはっふー

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第14章・死者の策、そして

「行くぞッ。真の英雄と言うものをその身に刻んでやろうっ!!」

 

 アキレウスの猛攻に攻略組、キリトが前に出て槍を防いでいた。駿足、不死身が無くなった彼だがそれでも戦いを楽しんでいる。

 

 キリトはその攻撃を一手に引き付けていた。仲間が隊列を立て直すまでと。だが、

 

(こいつ相手にそんな甘い考えは捨てろッ。このままこいつを、斬る!!)

 

 こうして黒の剣士は英雄と斬り合う。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「はあああああッ」

 

「くっ」

 

 苛烈な猛襲にセイバーは顔を歪める。いま彼女はマスターからのサポート無しに、このバーサーカーと斬り合わなければいけない。

 

 弾丸が放たれるがこのほとんどは人の域。例えそれが人間の限界を超えていても、セイバーなら対処できるはず。

 

(だがそのような甘い考えが通じる相手では無かった)

 

 斬り合いの中、一手遅れを取る。

 

 向こうの斬り合いの中、確実に迫る凶刃にセイバーは、

 

「!?」

 

 僅かにバランスを崩した。

 

「ッ!」

 

 その瞬間、振り下ろされる刀に眼前へと迫るが、

 

【コードキャスト】

 

 その瞬間、加速するセイバー。僅かに頬が切られたが、それもすぐに治癒された。

 

「なにッ!?」

 

 瞬時深紅の剣に炎が灯り、今度はセイバーが迫る。

 

 それに対処するため彼は体制を整えようとしたとき、一歩足を踏み込むと、

 

「ツッ!?」

 

 身体が大きくバランスを崩す。すぐに足元を見ると、血だまりを踏んだらしい。その血だまりに電子のような光が輝いていた。

 

「まさか罠を」

 

「はあああああああああああああああっ!!」

 

 一閃、赤い閃光が狂戦士を斬り裂く。

 

 そのまま彼は倒れ、足元の血だまりを見てすぐに黒い塊を見た。

 

「奏者がいなければ倒されていたな………」

 

 そう言って一息ついたころ………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 二つの剣を巧みに操り、その槍を弾き斬り込むキリト。

 

「はっはははははっ」

 

 アキレウスは笑いながらその戦いを楽しんでいた。キリトがギリギリの中、ついにレッドに差し掛かる瞬間、

 

「はあああああああああ」

 

 アスナが斬り込んで来てから状況が変わる。

 

 彼はアスナにだけは攻撃が緩く、その隙を彼は見逃すことはしない。

 

(回復する暇は無いッ、このまま押し切る!!)

 

 剣が光り輝き、ソードスキルスターバーストストリームが発動する。

 

 だがそれら全て槍で防がれるように弾かれた。金属音が小刻みに響く中、最後の一撃が弾かれ、次の瞬間、

 

「うおおおおおおおおおおお」

 

 クラインが刀を振り上げて彼へと一撃を放つ。

 

 それが食い込む中でも笑みを崩さず、槍を構え直し、クラインを見据えた。

 

「はああああああああああ」

 

 だが細剣が次々と彼を穿つ。

 

 アスナの猛攻に彼はついになにかが砕かれた音が鳴り響く。

 

「これまでか」

 

 その瞬間、彼から赤い血が流れ出る。

 

 ただし彼の傷からでは無く、まるで彼を拘束具が外れたように血が落ちる。それはまるで鉄のように固まったもの。その血が知らず知らず、彼の動きを制限していたらしい。

 

 こちらもまたメイトのサポートがあったものの、サーヴァントを撃破した瞬間であった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 二騎のサーヴァントが倒された瞬間、暗闇の中で何かが引き裂かれた音が鳴り響き、闇が消え、その場に沖田は倒れ込み、メイトが立っていた。

 

「………ギリギリか」

 

 そう言って彼は吐血してその場に倒れる。

 

「メイトっ」

 

 すぐにキリトが駆け寄り支えると、彼のHPゲージもレッドであり、セイバーが駆け寄る。

 

「リソースもかなり消耗しておる。この者もかなり消耗していたが………」

 

「沖田総司は病弱だったって話よ………」

 

「うむ。この者も疲労していなければ」

 

「負けてたわねあなたたち」

 

 そう言うのは金髪の女性。リンがいつの間にか現れてメイトの様子を見る。

 

「リソースが底を尽き掛けている。まあ宝具レベルの技を致命傷で受けて回復させたんだから当たり前だけど、大事にしてほしいわね」

 

「それはメイトが消えるからか」

 

「そうよ、当然じゃない」

 

 リンはさも当然のように言いながら後始末を始める。

 

 周りのプレイヤーもようやく落ち着きを取り戻しながら、アスナが苦し気に彼を見つめていた。

 

「わたしがしっかり、メンバー構成していれば」

 

「それは後の祭りよ、気にしているなら次を気を付けてね。今回で私も出られる範囲が限られるし、次のことも考えるとほんと、あまり無茶な戦法は危険よ」

 

 そう言いながらサーヴァントたちは僅かに動く。警戒するがアキレウスは笑う。

 

「安心しろ、俺たちはムーンセルによって敗北したことになっている。いまさらどうこうする権利は無い」

 

「そう言うことだ。沖田ぁ、生きてるか」

 

「死んだから負けたんですよ土方さ~ん……。沖田さんの扱いだけ酷過ぎです」

 

 そう言って首筋を撫でる。

 

「この人沖田さんの柔肌に噛みついて、ウイルスを流し込んで殺したんですよ~。セクハラです」

 

「なんだとっ、余もそのようなこと奏者からされていないのにッ」

 

「なに張り合ってるんだっ」

 

 沖田はそれを聞いて挑発して、セイバーはぐぬぬとうなる。土方はそんなやり取りを無視して、

 

「そこのお前、隙を見てその槍で沖田ごとそいつを殺せば、俺らの勝ちだった。テメェ、手、抜いたのか?」

 

「確かにそうですね~」

 

 突然の指摘に、その言葉にキリトたちの背筋が凍り付く。それにはアキレウスは少し言いにくそうに、

 

「あ、いや……。俺はこの槍で女を殺さないって誓いを、神々に立てちまっててな。だからできなかった」

 

 そいつが盾にもしてたしと、少し言い訳のように言うが、

 

「よかったわね。もしもメイトが敗北してたら、今後あなたたちだけでサーヴァントと戦わなければいけなかったわよ」

 

 今度こそ言葉を無くすプレイヤーたち。

 

 今回だって勝てたのは彼が細工をしたり、アキレウスの最大の力を殺していたからだ。次はけして相手にしたくない。

 

「こんなことばかりなのかサーヴァント戦………」

 

「そもそもサーヴァントの戦いはこういうものよ。むしろあなたたちを積極的に狙って、彼に守らせるとかいう手使われていなかっただけ今回は優しい方ね」

 

 リンの言葉にキリトたちは黙り込み、メイトを見る。彼は目を覚まさず、彼らに、

 

「なあ、なんで俺たちを狙わなかった」

 

 その言葉にサーヴァントたちは、

 

「「「自分より弱い相手なんか興味ない」」ありません」

 

 そう言って彼らは消えていった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 エギルの店でユウキたちがメイトが目を覚まさないことに驚きながら、翌日になっても彼は目覚めない。

 

 アスナはすぐに状況把握に急ぐ中、俺も情報を集めていた。

 

「よおキー坊」

 

「アルゴ、メイトの情報でどんなものがあるか集まったか」

 

 情報屋アルゴ。彼女にこの話を持ち込んで色々調べてもらった。

 

 アルゴが言うには彼はクエスト報酬などと言う情報から、このゲームのバグデータなどと言う話が出て来る。

 

 サーヴァント戦もバグである彼に押し付ければ、簡単に大量の経験値やレアアイテムが手に入ると言う話。

 

「どの情報も根も葉もない情報じゃないか」

 

「アア。オレっちからすれば信用に値しないものばかりサァ」

 

 しかも新たに入った情報、サーヴァント戦で彼を失えば今後、自分たちだけでサーヴァントと相手しなければいけない。それを聞いたアルゴは難しい顔で聞く。

 

「念のため聞くガ、メイト無しでサーヴァントって奴に勝てるカ?」

 

「………無理だ。絶対にSAOプレイヤーは彼らに勝てない」

 

 そもそも世界(ゲーム)が違う、システム(ルール)が違う相手()

 

 おそらくメイトがいなくなればこのゲームは確実にクリアできなくなる。

 

「その情報も隠していた方がいいナ」

 

「ああ」

 

 メイトの立場が難しくなる。ただでさえNPCと知られている彼は、同じプレイヤーと見る者は少ない。それは彼の、独自の考えで上を目指すからの妨害になる可能性がある。

 

 とりあえずいまは正しい情報をプレイヤーに話しておかないといけない。これはアスナと話し合いだな。

 

 こうしてアルゴと別れ、俺はエギルの店に戻る。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「………これは」

 

 目が覚めたらユウキとセイバーが左右に居て、抱き着くように眠っていた。

 

 宝具をわざと受けた。リソースが分かり切った個所のみ回復へと回して、どうにか罠を設置したのは覚えている。

 

 自分の血に罠を設置するのでだいぶリソースは節約できたし、アキレウスの名前を聞いてから彼の不死身性を奪う方向で罠を発動させた。

 

 ともかく寝ているセイバーたちを起こさず、エギルの店へと顔を出すと、みんな心配していたらしい。

 

 シノンとフィリアから怒られ、ユウキたちが目覚めるまで部屋で大人しくした。

 

 シリカ、リズ、リーファからも説教を受けて、ユウキと共に起きたセイバーが抱き着きに来る。

 

 アスナからは謝られた。余計なメンバーを増やして足を引っ張ったと言われる。

 

 確かにもう少し人数が少なければ、防壁のリソースは楽であった。それくらいの感想しかないのだが………

 

 ともかくこうして戦いを終えて、俺はリソース回復に努めることにした。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 その日、

 

「アスナ~」

 

「あ、ユウキ。なにかようかしら?」

 

 ユウキはよくキリトたちと話したりしている。アスナ自身も会話からして見た目くらいの歳なのを察して、様子を見ていた。

 

 このゲーム、現実を受け入れることのできなかったプレイヤーは多くいる事を知るため、メイトから頼まれたこともあり彼女と話したりする。

 

「あのねあのねっ。メイトにおいしいご飯作ってあげたいんだボク♪」

 

「そうね……。確かにメイト君、ご飯食べてるの好きみたいだし、わたしも手伝うよ」

 

「ほんと、ありがとう♪」

 

 二人はこうして調理場を借りて、アスナ監修のもと料理を始めた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「………」

 

 リソースはだいぶ回復する中、部屋で休んでいる。コードキャストの最適化と最速化。今回のことでだいぶ手は禁止された。

 

 キリトたちから自滅を前提したことはしないように言われたし、その通りであるため、よりセイバーを強化でき、自分も強化する方向で展開するようにしなければ。

 

 しばらく部屋で過ごすとセイバーが帰ってきた。

 

「奏者よ、今日はごちそうだぞっ♪」

 

 目を子供のように輝かせるセイバー。どうやら今日の食事は豪華からしい。

 

 そして店の方に下りると、シリカたちが料理の準備していた。

 

「来たわね」

 

「シノン、今日はごちそうらしいけど。どうした」

 

「ボクが作ったんだっ」

 

 ユウキが嬉しそうに報告し、セイバーもにこにこしている。

 

「そうか。それは楽しみだ」

 

 嬉しそうな二人に頷き、ご飯を食べる。

 

 作られたものは簡単なものばかりだけど量は多い。

 

「えっへへ、料理するのが楽しくてさあ、いっぱい作っちゃった」

 

「それはよかった」

 

 そう言いユウキは嬉しそうにしていて、俺は出された料理を食べた。

 

 ユウキはその様子を見てうれしそうにしていて、俺はそれで満足する。

 

 こうして時間だけが過ぎる。そう考えていた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 コードキャストを整理している。使えるものをどうすればいいか、どうするか組み込む。

 

「メイト?」

 

 その時、声が聞こえ、すぐに展開していた術式を閉じる。

 

「起こしたか?」

 

「ううん、メイトは寝ないの?」

 

「そこそこ寝たから」

 

 そう答えると、ユウキが枕を抱きしめながら俺を見る。

 

「ねえ、なんでメイトは頑張るの?」

 

「憎いから」

 

 それに身体を少し震わせるユウキ。シリカたちもはっきりと答えると驚いたりする。だがこれは本音だ。

 

「………なにが憎いの」

 

「………俺は死のデータから作り出された。だから始まりから持っている感情だ」

 

「死……」

 

 死のデータ。それはカーディナルから約4000人のプレイヤー、ムーンセルから1000年の敗北者。

 

 俺は二つの死で彩られた、虚ろな断片でできた〝モノ〟だ。

 

 だけど、それでも、

 

「俺の感情は作られたものだ。だけど、そこから選ぶことは俺だけのものだから、だから〝上〟に進む」

 

「うえ………」

 

 少し黙り込むユウキ。俺はおかしいのだろう。

 

 それでも構わない。彼女たちに偽りを教える気は無い。本当も教えなくてもいい。

 

 きっと知られれば彼女たちに迷いが生まれるだろうから。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「次の部屋もサーヴァントが?」

 

 キリトたちから険しい顔で呼び出され、次のボス部屋がサーヴァントだと言うことが分かった。だから俺に話を持ち込んだ。

 

「リソース、戦えるかメイト」

 

 キリトの言葉に俺は静かに頷く。側で難しい顔で聞いていたセイバーが、

 

「本当か? さすがに宝具を防ぎ、その後自分の損傷したデータでの罠。大量の人数を守る防壁……。いささか膨大にリソースを使っているが」

 

「俺は特別性だからな」

 

 前回のことから多くのプレイヤーは攻略から下りたとのこと。

 

 攻略戦のスピードはここに来てかなり順調らしい。ならばその流れを止めるわけにはいかない。

 

「メイト………」

 

 ユウキが心配する中、それでも俺の選択は変わらない。

 

「俺は進む。俺は〝上〟に向かうためにいるのだから」

 

「………分かった」

 

 こうして俺たちは次のサーヴァント戦へと先に進んだ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ボス部屋らしい部屋の前、プレイヤーはいつものくらいの人数ではある。

 

 正直プレイヤーはサーヴァント戦に参加する意味は、大量の経験値と自分らにもやることはあるから。

 

 それでもサーヴァントは強いのは理解して、やっとこの人数ではあるが連戦である。

 

 少しばかり不安が漂う中、それでもメイトは変わらなかった。

 

「それでは行きます」

 

 こうしてボス部屋へと進む。

 

 そしていつものように空間が変化して、そこへと足を踏み込んだ。

 

「ようこそ、SAOプレイヤーの皆さん。そしてこの世界のマスターとサーヴァント」

 

 そこには二人の女性と、獰猛な笑みを浮かべる朱い槍の男がいた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「あなたたちは」

 

「私はルーラークラスでの顕現。ジャンヌダルク。彼女は」

 

「シータ。ラーマ様の代わりに顕現させていただいております」

 

 金髪の彼女は彼の伝説に語られる聖女であり、もう一人は神の生まれ変わりの妃。

 

 そして、

 

「俺はクー・フーリン。って言えば分かるな」

 

「ああ」

 

「死の魔槍の使い手、光の御子か」

 

 セイバーが警戒する中でクー・フーリンは手で遮る。

 

「待て待て。お前さんらと戦うのは俺だけだ。だけどま、こいつらの話が終わってからだ」

 

「それは本当か」

 

 ざわめくプレイヤーの中、クー・フーリンは静かに、

 

「世界も何もかも違う相手と殺し合いができるか。だが、そいつらがどうなろうと俺には関係ない。だからこそお前と戦う。それは決定事項だ」

 

「なら彼女たちは」

 

「お前さんと話がしたいらしいんでね。そのあと俺と死合おうか?」

 

 フィールドはただ広い草原であり、テープルと椅子だけがあり、彼女たちの目の前に紅茶のカップがある。

 

 その様子を見て静かにセイバーを見た。

 

「確かに。いまは誰からも戦意を感じぬ、だが余の奏者に話とはいったいなんだ?」

 

「それについてはまずは席についてください」

 

「分かった」

 

 罠では無いのだろう。この二人、クー・フーリンすら罠を考えるような英霊では無い。

 

 故に彼女たちの言葉を聞き、静かに席に着いた………




 バーサーカー土方歳三、セイバー沖田総司、ライダーアキレウスは最高の戦士だ。奴をあそこまで追い詰めたのだから、それだけで十分だ。

「なのにッ、今度は、今度はッ」

 それは怒りに震え、憎々し気にメイトを睨む。

「クー・フーリンッ、ジャンヌダルクッ、シータッ!! なんでこんなサーヴァントが召喚される? なんでなのムーンセルッ」

 いまの状態では殺せない。このままではこの世界が奴に殺される。

 それでもやることは変わらない。だから、

「あなたがそうならこちらにも考えがある。抗ってみせる、わたしがこの世界を守らなければいけない」

 そして静かに準備する。全てはこの世界を守るため、ただそれだけのために………
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