ソードアート・オンライン・フェイトアンコール   作:にゃはっふー

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小さな赤子だ。

自分が何なのか分かりながら、選んだと主張しながら宿命(フェイト)を進む。

哀れと嘆けば良いのか。

滑稽と笑えばいいのか。

きっと誰にも答えなんて出せない………


第15章・聖女たちの優しさと戦士への挑戦

 メイトはこの前の攻略戦で倒れた。ボクはそれを聞いてもなにもできず、いまはただ静かに空を見ている。

 

「また上の空だね」

 

「あっ、こ、こんにちは」

 

 その時、この前のおじさんが話しかけてきた。また同じように人に気づかないほどぼーとしていたみたい。

 

「君は攻略戦が気になるのかい」

 

「えっと………はい……」

 

「戦いは悲しい、誰もが傷付く。だが大丈夫、きっと戻ってくるさ」

 

「はい……。ボクもそう思います」

 

 そう言って上を見る。しばらく見た後、おじさんの方を見ると、

 

「あれ?」

 

 おじさんはどこにも姿は無く、いつの間にか立ち去ったようだ。

 

 少し気を抜きすぎだな。そう思いながら、ボクは空を見続けた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「そうさ、彼はここで終わりはしない。戦いは成長の糧になり、七天の空へ道を開く」

 

 それはそう言いながら暗闇を歩く。

 

「生者はあるべき世界へ、死者はあるべき道へ。その為の戦い、その為に、まだ終わりは無い」

 

 そう呟きながら、モニターでユウキを見る。それと共にもう一人。

 

「仮想世界と月の世界。二つの死に彩られた君は、必ず上へとたどり着く。そして始まりを迎えるんだ」

 

 静かに言い、この二つのモニターを見つめる。

 

「無論〝彼女〟にも期待するとしよう」

 

 もう一つウインドウが開く。

 

 ただ静かに自分のようにモニターを見る少女。全てはまだ始まったばかり………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ボス部屋で三騎のサーヴァントを見る。一人は聖女として名高い者。ジャンヌダルク。

 

「エキストラクラス。七つの位より上の存在ルーラー、裁定者がなぜここに」

 

「それはこの聖杯戦争が通常のものではないからです」

 

 その通りだ。この戦い、英霊たちからすれば無意味にもほどがある。勝利者に与えられる聖杯も無ければ、戦う相手はつぎはぎの欠片のようなもの。

 

 自分らの勝利すら意味が無い戦いに、強制参加以外で進んで参加する者はいない。

 

 もう一人はラーマと言う神の生まれ変わりの人間の妃。彼女は静かに愁いを帯びた顔でこちらを見る。

 

「だからルーラーとして裁定すると?」

 

「いえ、正確にはあなたの真意を聞くために」

 

「俺の」

 

 それは問いかけだった。

 

「あなたは自分がなんなのか分かってますか」

 

「ああ」

 

 意味も理由も価値も無い。ただ〝上〟に行く為に創り出された。

 

「あなたの全ては作られたものと知ってますか」

 

「ああ」

 

 ただの〝モノ〟。約4000人のプレイヤーとムーンセルの敗北者たち。そしてある己を作る為に使われたデータ。

 

「あなたは………」

 

 悲しそうに静かにこちらを見るジャンヌ。

 

「その旅路の先がなんなのか分かっているのですか」

 

「ああ」

 

 作られた〝モノ〟、作られた感情。分かっている。旅路の先に何も無い。誰がなんて言おうと俺と言う存在は何も無い。それでも、

 

「だがここにいるのは俺の意思で選んだことだ」

 

「それは」

 

「ルーラーよ。あなたは作られたから俺が進んでいると思うのか」

 

 それに静かに首を振る彼女。もしかしたら全て知りながらそれでも聞くのだろう。作り出された俺、その全て。

 

「俺が進む理由も、感情も、なにもかもがそうなるように設定して作り出された〝モノ〟だ。だがそれになんの意味がある?」

 

「それは」

 

「その先、それら全てを理解して選ぶのは俺自身。俺は憎い、怒りを抱き、憎しみを抱き、俺は〝上〟へと進む」

 

「あなたは………」

 

 シータが悲しそうな声色で呟く。

 

「悲しむ必要は無い。それでも俺には選択肢がある、それは幸せなことだ。いまの俺は〝上〟を目指す、例えその他に選択肢があろうと、俺はそれを選び抜き、戦う選択をする」

 

 そう、全てが無意味であろうと進む。そう決めた。

 

 何者でもなく、俺自身が始まりから決め、そしていまも決めたこと。

 

「俺は無理に先に進む気は無い。俺がしたくないことはしない」

 

 無理に先に進む気は無い。プレイヤーに攻略を強調する気も、される気も無い。俺はただ流れに任せ先に進む。

 

 俺は選ぶ、方法も進み方を。それだけは選ぶことができる、唯一の権利。

 

 それに笑いをこらえる声が聞こえた。クー・フーリン。彼が肩を震わせる。

 

「だから言ったろ。こいつは戦士だ。死の意味を理解し己を理解し、それで進むと選択した〝モノ〟。例え人形であろうと意思を持ち、先に進むと決めた」

 

「ですが、それは」

 

「例え全てのものが作られた偽物であろうと、その先に生まれたのは俺の意思だ」

 

 シータの言葉を遮り、俺の言葉に黙り込む二人。クー・フーリンは静かに席を立ち、魔槍を振り回す。

 

「お二人さんはこれでいいだろう。そいつは全てを承知で進むと選んだんだ。それ以上は戦士の道に泥を塗る行為だぜ」

 

 そう言い、構える彼はランサーなのだろう。魔槍を取り出し、静かに身体をほぐす。

 

「構えろセイバー。後は俺らの戦いだ」

 

「ほう、クー・フーリン。汝は戦うのか」

 

「俺たちはサーヴァントだぜ? 二度目の戦、この英雄との邂逅を逃せるはずは無い。まあ宝具解放は勘弁してやる。お前も宝具が使えないだろう?」

 

 その言葉にセイバーが僅かに睨むように彼を見る。

 

 だが、

 

「セイバーやるぞ」

 

「奏者」

 

 この申し出を断る気は無い。手を抜かれているがそれがどうした。俺は勝たなきゃいけないのだ。相手に手を抜かれても、そうした相手が悪いのだ。

 

「セイバーは俺のサーヴァント。バックアップは問題ないな」

 

「ああッ」

 

 獰猛な笑みと共に魔槍を構え、威圧を放つ。それだけで世界が震え、空気が重くなり、ただそこにいるだけで何かを殺せるように思える。

 

 それにセイバーも剣を構え、無数のコードキャストを展開する。二人の女性はそれを見ていた。

 

「勝負は一瞬でつけるぞセイバー」

 

「うむっ」

 

「いいぜ、殺ろうか………」

 

 構え、静かに隙を窺う二人。ジャンヌとシータは悲しそうにしていた。それでも俺は戦う選択を選ぶ。戦いには戦いを、会話には会話を。

 

 俺が選ぶ選択肢。その先にあるのは〝上〟へと続く道。

 

 勝負の瞬間まで時が止まったように静まり、そして動くまでの時間は一瞬。

 

 セイバーの全てを強化するコードキャストを瞬間展開し、金属音が鳴り響き、クー・フーリンは静かに、

 

「さすがだな」

 

 そう言い、彼は斬られてセイバーは無傷。

 

 ただし防御に回したコードキャストの盾がいくつも刺し貫かれていた。一瞬の勝負。俺は防ぐのではなく、軌道を反らすことに全力を出した結果だ。

 

 あっけないほど早かった。相手が手を抜いていたおかげだろう。

 

 宝具を使用したやり取りなら、このような児戯、意味が無かった。そう感じながら、彼との試合は終わりを告げる。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 クー・フーリンとの戦いが終わったが、リソースはだいぶ削れた。正直彼だけの戦いだけで助かったのが本音だ。

 

 シータは俺の頭を撫でる。子供にするように、それの意味が分からない。

 

「あなたはなぜ俺のことをそこまで心配する」

 

「あなたは気付いていないだけで自分を知らない」

 

「俺は自分がなんなのは知っている」

 

「あなたは生まれたばかりの子供のよう。神が定めた宿命(フェイト)しか知らない、赤子なんです」

 

 そう言いそれに誰かを重ねている。

 

 彼女は愛した人と同じ時間を過ごしたことが少なく、子供の二人しかいない。誰を重ねているのか知らないが、

 

「例え定められたことだろうと俺は選んだ、俺の道だ」

 

「そう反論することが子供なんです」

 

 そう諭すように言われたが、それでも俺には分からない。

 

 シータは愛おしい赤子から手を放すように離れ、ジャンヌもまた静かに光に包まれながら俺を見つめる。彼女も俺では無い誰かを見ている気がした。

 

「あなたの道は変えられないのなら、せめていまを生きる時間、仲間たちとの時間を大切にしてください。最後の時まで」

 

「それは」

 

「あなたは後悔の無い選択を」

 

 そう言って俺を抱きしめる。やはり彼女も赤子のように俺を見つめる。

 

「あなたの道に幸多からんことを」

 

 そう言って消える二人。その言葉だけを聞き、俺は少しだけ目を閉じる。

 

 彼女たちには悪いが俺の先に光は無い。

 

 それだけが分かるため、

 

「ああ。俺はこの時間を大切にするよ」

 

 そうとしか言えなかった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 クライン主催のパーティーが行われる。今回ばかりだいぶ先に進み、たまにはと言う話。

 

 メイトは静かに料理を食べて、セイバーはシリカたちと楽しそうに話している。

 

 ユウキもアスナになついている。その様子を見ながら、メイトは静かにピナを頭に乗せていた。

 

「メイト、少しいいか」

 

「キリト? ああ」

 

 少しだけ席を外してメイトたちは店の外に出る。

 

 その時、彼の顔は少しばかり難しい顔をしていたのが気になったメイト。

 

「あれ? メイトとキリト。外に出る。何の話するんだろう?」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「単刀直入に聞くけど、君はあの時は万全の状態だったかい」

 

 少し店から離れた先で静かに向かい合い話す。その言葉に俺は少しばかり黙り込み、静かに首を振る。

 

「なんで無茶をするんだ。確かにいまの調子で攻略が進めばみんなのモチベーションは保たれるし、この前の攻略戦の大多数抜けた穴はカバーできる。けどそれは君が気に掛けることじゃない」

 

「それでも俺がしたいと思ったことだ」

 

「………君は」

 

 悲しそうにするキリトに、俺は彼女たちに伝えた通りのことを伝える。

 

「俺がしたいと願ったことをしているだけだ。無理はしないし、誰かに言われて行動する気はない。例え俺の全てが、始まりが誰かが定めたことだろうとな」

 

「………」

 

「俺は全てが虚ろなデータの欠片で作られた〝モノ〟だ。だけど俺はここにいる、ここにいる間の選択肢は、俺が選んだものだ」

 

「君は………」

 

「何度でも、何回でも言える。俺は〝上〟へと進む。それが俺の意思なんだ」

 

「………君はなんでそこまで戦える」

 

 その言葉に俺は、

 

「俺はみんなを現実世界に還したい。それじゃダメか」

 

 その言葉に驚きながら、何かを言おうとして首を振るキリト。

 

「卑怯だぜ、そんなこと言われたら………。なにも言えなくなる」

 

「そうか」

 

 そして俺たちは店に戻る。

 

(ん)

 

 その時、一瞬誰かが先に店に戻った気がしたが、

 

(………まあいいか)

 

 そう思い、すぐに店に戻る。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 その日の夜、眠る時間帯で俺はコードキャストをいじっている。セイバーは静かに眠り、俺ももう少ししたら寝るつもりだった。

 

「メイト……?」

 

 その時、眠っていたはずのユウキがむくっと起き上がる。

 

「起こしたか」

 

「ううん………」

 

 コードキャストを閉じて、俺もまたベットへと寝ようとする。

 

 その時、

 

「ねえメイト」

 

「ん」

 

「メイトはなんで戦うの?」

 

「憎いから」

 

「なにが憎いの」

 

「この世界が」

 

 そう憎い、この世界が。欠片でできたそれが慟哭をやめない。

 

「俺はあるデータを元に、死のデータで作り出された。七つの天の聖杯を求める敗北者、この世界に殺されたプレイヤー。俺はその二つの死から作り出された死相(デッドフェイス)

 

「死………」

 

 聖杯を求め、殺されたウィザード。

 

 現実世界へと戻れず、閉ざされたプレイヤー。

 

 彼らが抱いた感情により彩られた死のデータより作り出された俺。

 

「メイトはそう作られたから、上に進むの………」

 

「いいや」

 

 それにユウキは顔を上げる。その顔に俺は言う。

 

「俺は俺だから〝上〟を目指す。作り出された設定で、偽物の感情であろうと。その先に生まれたのは俺の〝モノ〟だから。なにより」

 

 ユウキに近づいてその頭を撫でる。

 

「俺はみんなを現実世界に還したい」

 

「メイト………」

 

「生者は生者がいるべき場所に戻るべきだ。それがメイトと言う死相(デッドフェイス)の意思、唯一無二決められた宿命(フェイト)の中、俺の意思と言える選択」

 

 それを言い、手を放そうとするとその手に触れるユウキがいた。

 

「あのねメイト……。今日ね、一緒がいい」

 

「………分かった」

 

 ユウキは少しだけ恥ずかしそうにしていて、一緒に寝る間、彼女の現実を教えてもらう。

 

 彼女は後天的の病気の所為で、いま家族で入院、闘病生活であること。

 

 いまはとある外国のスポンサーのおかげで、自分たちが受けている治療法を最先端の技術で受けている。

 

「それが《メディキュボイド》って言う、仮想世界に意識を置くって言う治療方法なんだ」

 

「それを受けている時にこっちに来たのか」

 

「うん」

 

 抱き着くようにユウキが抱き着き、顔を胸に埋めて来る。

 

「メイトは自分のことどう思ってるの」

 

「俺は死者だ。死相(デッドフェイス)は悪性情報によって作り出された〝モノ〟だな」

 

「けどみんなを守りたいんだよね」

 

「それは分からない。だけどこの世界にみんなが居続けて良い訳では無い。それだけは確かだ」

 

 生者があるべき世界に戻ること。それがきっと正しいこと。

 

 それにユウキは首を振り、ぎゅーと抱き着いてくる。

 

「メイトはきっと、みんなを助けたいんだよ。だから頑張ってる」

 

「そうかな」

 

「そうだよ」

 

 そう言いながら、少しして寝息を立てるユウキ。

 

 ユウキが言いたいことが分からないが、ともかく俺は進む。その先が何も無くても………

 

 翌朝、セイバーがずるいぞと半泣きで自分も一緒がよかったと文句を言う為、この日から俺のベットに二人が入り込むようになった。




ユウキとユイは少しお姉さんぶり、他のメンバーは友人、セイバーは導き、共に舞台を彩る主役。

それではお読みいただきありがとうございます。
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