ソードアート・オンライン・フェイトアンコール 作:にゃはっふー
悲しいストーリーにしおりを挟む。
ほらこうすれば♪
いつまでもいつまでも続く、素敵な素敵な物語っ♪♪
ボス攻略戦をし、新たな階層を開放したキリト。
「よし、また一歩前進だな」
多くの攻略プレイヤーが歓声を上げ、全員が新たな層へと足を踏み込む。
アクティベートするため、その階層に上がった攻略組が見た景色は、
「これは」
不思議な層に男性プレイヤーは戸惑い、女性プレイヤーは頬を緩ます。
西洋風の建物で可愛らしい作り、どこかのテーマパークのような建物。
だが、
「………静かすぎないか?」
キリトがそう呟くと、エギルなど攻略に参加したプレイヤーたちも首をかしげた。
とりあえずアクティベートして一度戻る。
そこから全ては始まった。
◇◆◇◆◇
それは新たな階層を開放した次の日、エギルの店まで下りて背伸びをした。
「よし、新たな階層の探索を始めないとな」
「キリト」
俺が新しいフィールドに行こうとすると、セイバーを連れたメイトが話しかけてきた。
「ああメイト、君も探索に出るか?」
新しい町を見るのも大事だからな。そう気楽に話しかけた。
彼は変わらず、ああと頷き、俺たちを初めとしたプレイヤーたちと共に新しい階層を調べに出向いた。
「………」
「? どうしたメイト」
彼が唐突に上を見た。
彼が上にこだわる。それがそう作られたからと言う言葉で片付ければいいのだろうが、俺はそれで終わるとは思えない。彼は静かに首を振る。
「なんでもない」
そう呟き、俺たちは新たな町へと転移する。
◇◆◇◆◇
「っと、さすがに今回はプレイヤーが多く来ているな」
そう言って辺りを見渡すと多くのプレイヤーが町を見て回る。
攻略組でなくても、町程度なら誰でも見て回れるからなと納得し、俺も歩き出そうとすると、
「キリト君っ」
慌てた様子で見知った顔、アスナたちが現れた。
「アスナ、みんなどうした」
「それが、この町変なの」
「変? いったいなにが」
「NPCが一人もいないの」
それに俺は驚く。少し町を見てみたが、店らしい建物や宿屋らしいものがある。それにどんな場所でも町である限り、NPCはいるものだ。
俺はその話を聞き、クラインたちを見る。
「建物も結構変でよお。扉にまた小さな扉が何個もついてたり、ツリーハウスのような場所も変な場所にあったりしたぜ」
「建物の中に庭があったりもしたよ」
「後は中央に大きなテーブルが、椅子もずらーーーといっぱいありました」
「きゅう」
リーファやシリカからもそんな話を聞き、俺は首をかしげた。そこまで手の込んだ建物なら、NPCがいても不思議じゃない。
その中でフィリアも、
「それだけじゃないんだキリト」
「それだけじゃない?」
「迷宮区、エネミーが出るフィールドも見当たらない」
「なっ………」
そんなバカなことがあるか。町の他の迷宮区、ボス部屋やエネミーがいなければゲームとして成立しない。
「いまみんなであっちこっち調べてるんだけど、誰一人、NPCにも会ってない」
「どういうことだ? ともかく手分けしてさが……メイト?」
その時、気が付くとメイトがいない。セイバーもん?と辺りを見渡していた。
「セイバー、メイトは」
「案ずるなキリトよ、この階層にはいる。少しばかり探して来る」
そう言って飛び立とうとするセイバーはすぐにやめた。
その場で剣を出し、剣先を向こう側に向ける。
「そこにおる者たち、出て来いッ」
その視線の先を言われ、周りのプレイヤーですら驚きながら振り向く。
いつの間にか、明らかにこの世界のプレイヤーでもNPCでもない彼女たちがいた。
「始めまして、それとも
そう言って静かにこちらを見るのは、ライオンの耳と尻尾を持つ女性と、鬼のような角を持つ女性が二人。こちらを見ていた………
◇◆◇◆◇
「あれ、メイト」
「ユウキ」
俺はユウキと出会う。彼女はこの町の様子を面白がりながら見て回っていたようだ。
「セイバーがいないけど、どこに行くの」
「少しね。遠くにいかないから安心してくれ」
「うん分かったっ。それじゃあ」
「ああ」
俺は真っ直ぐ町はずれへと歩いていく。
しばらくすると大きなティーカップがいくつもあり、なにかが白いシーツをかぶってもぞもぞ動いていた。
「なにしているんだい」
俺がそう話しかけると、びくっと動くの止めてシーツの隙間から、アメジストのような瞳が向けられた。
「あなた、あなたは『ありす』が見えるの?」
そう言ってぱっとシーツを投げて、可愛らしい少女がティーカップから飛び出した。
少しばかり跳び上がり過ぎている。そう思い、両手を広げてキャッチする。
「わーいっ、ちゃんと、ありすのこと見えてるのね。ありすに触れられるのね♪」
「ああ」
白いフリルのワンピースを着込む小さな少女。青いリボンで三つ編みにしていて、アメジストのような瞳の少女。
彼女は嬉しそうに俺の腕を掴んで、張り付きながらその場で何度も跳び上がる。これが
◇◆◇◆◇
「サーヴァントっ、なんで!?」
俺たちは目を疑う。ボス部屋でもないのに、サーヴァントがここにいるのはおかしい。いや、この階層事態がおかしい。
だがここでサーヴァント戦はまずい。攻略組ですら足がすくむ相手を、攻略組でもないプレイヤーがいるいま戦うのはまずい。
「安心してください。巴たちはあなたたちと戦う気はありません」
「なん………」
そして彼女は静かに手を見せる。
彼女たちはなにも持っていない。武器らしいものすらなく、彼女たちは無防備であった。
「ここではなんですから、私たちが寝床にしている建物まで案内します。こちらへ」
「………」
セイバーはしばらく考え込むが剣をしまい、後を追う。
アスナとも視線を合わせ静かに頷き、歩き出した。
シノンやシリカ、ともかくメンバー全員が話を聞くために後を追うことにし、しばらくして歩くと城のようなそんな場所に来る。
町の中を見てみたがよく分からない。子供の想像したオブジェクトや、テーマパークのようなものばかりが町にある。ただしNPCは誰一人いない。
町として機能していない町で彼女たちがいる。
「ここがボス部屋だって言うの? この階層全体が?」
「かもしれない。彼女たちは戦わないって言ったけど、サーヴァントは三騎いる。もう一人はどこだ?」
「分からぬ。ともかく後を追おう」
しばらくして城の中に入ると巨大な花畑であり、そこに小さなお茶会が開ける場所があった。
その側の木にはブランコが揺れていて、お茶会のテーブルには一冊の本がしおりを挟み、置かれている。
「まずはお茶を、日本茶でしか私は淹れられませんがえっと」
「あっ、わたしが淹れましょうか?」
アスナがついそんなことを言って、鬼の彼女はすいませんとカップの用意をする。
側でケーキを人数分切り始めるもう一人。訳が分からない中、席に座った。
「まずはお気づきでしょうが、この階層はすでにボス部屋。我々サーヴァントがいる部屋として機能しています」
「それしかないのか、この街並み全部、ただのオブジェクトなのか?」
「はい、そうなってしまった階層です」
「汝らの真名はなんと言う」
セイバーの問いかけに鬼の彼女は静かに呟く。
「我が真名は巴、巴御前。彼女は真名、アタランテ。狩猟の女神アルテミスの加護を持つ者」
それに俺たちは驚く。
セイバーだけがお茶にも手を付けず、ただ険しい顔でずっと二人を見ていた。
「真名まで話して、貴公らの目的はなんだ」
「戦いに意味が無い。だから吾々は戦わないだけだセイバーよ」
そう言ってアタランテは静かに目を細めた。
「この階層を突破することは不可能だ」
「ほう、どういうことだ。汝らが戦わないと言うことは戦いを放棄、棄権した扱いになり、自動的に余たちの勝利として処理されるはずだ。ならば」
「はい、我々の中にあなたたちを先に進ませないため、戦う、この先に進ませないと言う選択をしたサーヴァントがいます」
巴御前がそう呟き、つまり一人が戦うことを選択していれば俺たちは前に進めない。それが彼女たち、サーヴァントのルールなのだろう。
なら、
「最後の一人はどこにいる。どこでなにしてるんだ」
それを聞くと巴御前はなにも言わなくなり、アタランテが呟く。
「彼の英霊の名前は
「なん、だと」
セイバーだけが驚愕し、俺たちは分からず、シノンへと視線を向けた。彼女も分からないから首を振る。
「セイバー、そのナーサリー・ライムってなんだ」
「………童話の英霊よ」
険しい顔のまま、彼女が語る。
「やり直し? それって」
「うむ。自分に不都合な事例が起きた場合、彼の英霊は時間を巻き戻し、それを無かったことにする。事実上無敵の宝具だ」
「はあ、時間を巻き戻すって………なあ」
クラインの言葉に俺も頷く。
時間を巻き戻すなんて不可能だ。そんなことできるはずがない。
「それでも、もしかしたらと言う顔をしているぞ。
アタランテがそう呟いた。
全員が顔を上げて彼女を見た。俺は静かに、
「どういう意味だ」
「
そう彼女は呟き、紅茶を一口、飲んだ。
「ああ、あなたの淹れた紅茶は、何度目だろうとうまいな」
「ですね………」
彼女たちのやり取りに俺たちはただ、戦慄するしかできない………
◇◆◇◆◇
「ねえねえ、あれ買ってあれ買って♪」
「ああ」
ありすを連れて俺は下の階層で買い物をしていた。彼女にとって目に映る物が全て輝いて見えるのだろう。好きな物を買い、楽しんでいる。
「この後は何がしたい?」
「えっとねええっとねえ♪」
楽しそうの少女と付き合い動き続ける。鬼ごっこ、かくれんぼ、おままごと、本の読み聞かせにただの買い物。
彼女の言葉を肯定しながら、俺は静かに彼女と共に町を歩く。
「これ付けてっ♪♪」
可愛らしいフリルのついたピンクのリボンを買ってあげながら、チョコレートも買ったりする。
「ああ甘いわ甘いわ♪ だけどほんのりにがいの、チョコレートって不思議だわ♪♪」
「ああ」
そう言いながら彼女と時間を過ごす。
「ああ楽しいわ楽しいわ♪」
「よかった」
「ええ楽しい♪ おいしいもの、楽しいもの、素敵なものがいっぱいだわ♪♪」
「そうだね」
危険の無い世界を巡る。それは素敵なことなんだろう。元の場所も戻り、俺は彼女を膝に乗せてブランコを漕いでいた。
彼女はずっと笑顔のまま、時間を過ごす。
「素敵なあなた、素敵な時間♪ 毎日がきらきらな時間」
「………」
ブランコを漕ぎながら歌う少女。
「童話?」
「マザーグースって言うのよ」
「楽しい?」
「マザーグースはねえ、本当はとっても怖いのよ。童話もそう、悲しいもの、怖いものでできているの」
楽しそうな少女は嬉しそうに俺に話している。話をして楽しむ少女。
俺はただ彼女と楽しくお話しした。
◇◆◇◆◇
「童話の英霊ってあり得るんですか」
「あり得るぞ」
セイバーと共に町の中を探索する。結局この情報は混乱するだけであり、誰にも話さずに探索が続く。
階層の様々な場所を調べ回ってみるがメイトの姿も見当たらず、三騎目のサーヴァントも見当たらかった。
「セイバー」
「どうしたキリトよ」
俺はあえて彼女に聞く。
「この前の戦い、三騎目のサーヴァントはどうやって倒した?」
「………あれは友の助けがあって、初めて戦うことができた」
「助けがあって?」
その顔は険しい顔であり、顔を歪めながら話す。
「このままなら、余たちはけして彼の英霊と戦っても勝てることも負けることも無い」
「勝つことも負けることも………」
俺はその言葉に戦術的には勝てるが、それを覆すことができる力が相手にあると言うこと。
もしもそれをどうにかしないと、見つけたところでなにもできないと言うことだ。
「どうにかできないのか」
「………」
セイバーはなにも答えることはせず、ただ険しい顔のまま。なぜかメイトとは出会えないままだった。
◇◆◇◆◇
楽しい時間は刻々と過ぎていき、もうすぐ終わりが近づく。
彼女が夕焼けが近づくにつれて笑顔が沈む。
「………さよならの時間だわ」
そう言ってブランコから飛び降りて、俺の前に小さく立ち尽くす。
「ここから見えるお空は偽物なのね」
「ああ」
俺はそう答える。
「………ねえ、お兄さん」
「なんだい」
「お兄さんは………どこに行きたいの?」
その問いかけに、俺は変わらない。
「俺は〝上〟に行く、行かなきゃいけない」
そう答えた。彼女は泣きそうになる。
沈んだ顔、買ってあげたリボンを握りしめ、三つ編みの髪が揺れた。
「どうして、上に行きたいの………」
「そうしたいから」
「どうして、ありすと遊んでくれるの」
「そうしたいから」
「………どうして」
顔を上げ、彼女は静かに、
「ありすを殺さないの?」
彼女のその問いかけにはすぐに答えられる。
「そうしたくないから」
彼女は何も答えない。いつしか歯車の音が聞こえ、針の音が聞こえて来た。
「時間だわ」
「そうだね」
「………」
近づく時間、終わりの時。彼女は………
「お兄さん」
「なんだい」
泣きそうな顔を上げて静かに、
「ありすと遊んでくれて、ありがとう」
そう寂しそうに俺に告げた………
◇◆◇◆◇
なぜ俺は彼女を殺さない。目的は〝上〟に進むこと。ならば戦う以外に選択肢は無い。
それしか無いのは理解している。
それでも、
「俺はいまのやり方を変えたくない」
それに黒いドレスの少女は何も言わない。
「繰り返すだけだわ、けして〝ありす〟の夢は終わらない」
「それでも変えられない」
「………おかしな人」
「
「なあに」
悲しそうな黒の少女に俺は髪に触れる。
「ぁ………」
リボンをほどき、新しく髪を編む。
彼女はなにも言わず三つ編みになる中、彼女と共に買ったそれをつけた。
「………上手ね」
「ああ。彼女に何度もやってあげたから」
そう言い彼女を見つめる。彼女は静かに、
「それじゃあね、アリス」
「………またね、素敵なあなた」
絵本を閉じた………
素敵なあなた、ありすと遊ぶ、素敵なあなた。
悲しいあなた、夢見る世界で夢を見ない、夢見ることができない悲しい人。
あなたはどうして茨でできた道しか歩かないの? どうして真っ暗闇を見続けるの?
夢見る
優しいあなた、あなたはどうして
どうして、こんなに悲しい気持ちなの?
夢は続く、悲しい現実とお別れよ。
だから………
あなたも幸せな、夢を見て………