ソードアート・オンライン・フェイトアンコール 作:にゃはっふー
セイバーと共に少しずつ階層を上がる中、今日はユイと共にお留守番だ。もうすぐ100層へと近づく。
「とはいえ、リソースの回復もあるからな」
情報を集めながら色々調べてみると、どうやら〝神隠し〟とかいう行方不明プレイヤーがいると言う話を聞く。
念のため《ホロウ・エリア》で調べてみようかと、キリトと相談しようとしたとき、
「!」
地震のような出来事が起きて、体制を崩さないようにしていた。
「いまのは」
「奏者地震だぞっ!」
お風呂に入っていた、セイバーとなぜかユイがタオルを巻いて出て来て、色々言いたいことがあるがいまは置いておいて、
「ユイ、この世界に地震が起きる。ということはあり得るのか」
「いえ、そんなはずは………。なにか、他に要因があると」
「攻略に出向いているキリトたちや、探索しているユウキたちが心配だな」
「ああ、念のため見に行こう。セイバー」
「うむ」
服を着たセイバーと共に攻略組に会うために動くと、無事キリトたちがそこにいて、様子を見に行く。
「キリト」
「メイトか、そっちは無事か」
それに頷きながら、今回のボス攻略戦について詳しく話を聞くと、
「ストレアが参加したのか」
「ああ。けど、いつもの頭痛が酷くなってな。その後、すぐに別れたんだけど………」
「ストレアは一人だから、心配だな。余たちの方も見かけたら共に行動するようにしおこう」
「ああ頼む。メイトも気を付けてくれ、もうすぐ100層。なにが起きるか分からない」
「ああ」
だがストレアの異変について少しばかり気にはなる。
元よりこの世界はすでに異質を取り込んでいるんだ。どうなるか分からない。
できることは限られている。できないことの方が多いのだろう。
それでも進まなければいけない。それが俺がここにいる理由なのだから………
◇◆◇◆◇
「ここ最近、ストレアさんを見かけませんね」
シリカがそう呟く。ここ最近彼女と出会うことはなく、みんな心配して話し合う。
キリトが思い出したことで『クリアしたら会えなくなる』と彼女が告げたらしい。
「それって、現実に戻ると会えなくなるってことかしら」
「言葉通りなら。それと『この世界を守らなきゃならない』とも言っていた」
「どういう意味だ?」
ともかく話は纏わらず、ソロで経験値稼ぎしているからだと言う話で話し合いを終えて、またパーティーしたりしたいと願い、彼女の帰りを待つことになる。
そんな日の夜のこと、
「アスナ、いま問題ないか」
『メイト君? いいわよ。いまみんなやキリト君もいるから』
アスナからの返事を受けてから、俺は彼女とユイの部屋に入る。
部屋にはユイを含めた女性メンバーとキリトがいて、なにか話し合っていたところ。
「邪魔したか?」
「ううん、ただの女の子で集まって話してただけ」
「その通りだ奏者、それでキリトも交えていたところだ」
セイバーとユウキも嬉しそうにそこにいて、それを見て頷く。
「そうか。俺の用事はセイバーたちがどこに行ったか聞こうとしただけだから。キリトは」
「いまから買い出しに行かされるところだ」
「なら俺も」
行こうかと話をしようとしたとき、そう言い終える前に急に周りが暗くなった。
「? 停電か?」
急に真っ暗になり、辺りがちゃんと見えない。となればしばらく動かない方がいいか。そう考えていると、ザザザッと言う音が鳴り響く。
「雑音?」
「どうしたの?」
ユウキが側で腕に張り付いている。一瞬世界にノイズが走り、なにかが起きた気がした。気のせいか、腕に妙に柔らかいなにかが触れている気がする。
「あっ、点いた。もうなんだったんだろうね」
「あんな完璧に真っ暗だったってことは、なんらかのプログラムに障害があって、光源処理が行われなくなってたのかも」
そうキリトが言い、アスナたちがほっとする。
ユウキもほっとしている中で、俺はあることに気づく。
「みんなどうした?」
「どうしたって………」
その時、キリトたちも異変に気づく。全員がバスタオルを巻いた姿になっていた。俺とセイバーを除く全員がそんな姿になっている。
大騒ぎをした後、この状態は装備を外している状態であることから、装備状態へと戻すためにウインドウを開く。だが全員が装備画面になんら変化は無いらしい。
「キリト君メイト君見ちゃだめええええええ」
「メイトっ! そのコート渡しなさいっ!!」
「ああっ、リズさんずるいですっ!」
「にゃーーーーっ!!?」
そんな混乱が続く中、下手なことはせず待つことしかできない。とりあえず部屋の中にいることになる。
俺は気にしないがキリトは目が泳ぎ、俺の反応が気に食わないのか、シノンとフィリアからの視線が痛い。ユウキは少しだけ頬を赤くしてアスナの方に移動した。
そんな中、もうバスタオル姿だと気になる為、シリカとユイがお風呂に入る。せんべいを食べながらセイバーが、
「キリト、奏者よ。少し良いか」
「どうしたセイバー」
「今回の件で少しな。この事態、いささか納得できぬ」
「それはゲームのエラーだな?」
「うむ。この世界は現在、カーディナルとムーンセルの二つが管理している。そうなると今回のようなバグは起こるはずがない」
「けど現に起きてるじゃない」
「だから、これは自然に起きたものではなく、人為的なものの可能性がある。もしくばバグを処理することより、優先されることがあるということだ」
セイバーの言葉にキリトたちはセイバーを見る。
俺はセイバーが言いたいことが理解できる。このような事態をムーンセルが放置することはまずありえない。そう俺を構成するデータが間違いなく保証していた。
「どういうことだセイバー」
「カーディナルは分からぬが、ムーンセルがこのようなミスはしない、絶対だ」
「なら、この現象はいったい………」
考え込む中、シリカたちの方が風呂から出る。
どうやらこの装備の不具合は装備を付けなおせば直ることで、すぐさま全員が行動した。
おかしなことばかりが続く、いったいこの世界になにが起きているんだ………
◇◆◇◆◇
セイバーの言うことは一理ある。普通ならこんなことあり得ない。キリトたち攻略組が動く中、俺たちは色々調べ回っていた。
ムーンセルの管理が関わる中、こんなことが起きると言う事は、それ以上に優先することが起きていたくらいか。
そう考え込み。中央コンソールで《ホロウ・エリア》から調べていると、
「ん?」
「どうした奏者」
「ストレアからメッセージだ」
「!?」
どうやら助けを求めるメッセージのようであり、急ぎセイバーと共に駆けだす。
みんなに連絡する時間も惜しい。セイバーと共に加速し、急ぎ迷宮区へと進む。
「ここから先はリソースを温存する。急ぐぞセイバー」
「ああ、リズに剣を鍛えてもらって助かったな」
二人でエネミーを切り払う中で、ついにストレアを見つけた。
「ストレアっ!」
そう言って彼女がいるフロアへと近づいた。ストレアがいるフロアに入ると、一瞬だがノイズが過る。
「ストレア?」
「待て、様子がおかしい」
セイバーと共にその場に止まった次の瞬間、防壁が生み出された。
「っ!?」
「コードキャストの、ウィザードの防壁だとっ!?」
防壁は何重にも張られ、ストレアは無表情でこちらを見る。
「ストレア?」
「あなたには死んでもらう。この世界を守るために」
そう言った時、彼女は
空間転移が始まり、別の空間へと転移させらた。
◇◆◇◆◇
「ここは………」
空の色がおかしい。ノイズ画面のようであり、砕かれていたりしている。
大地は荒野が広がり、なにもない、そう思った瞬間、
「奏者っ!」
その時、回転音が鳴り響き大地が砕かれ、即座に飛んで避けた。
大地は吹き飛び、その先を目で追うと黒いデータに侵食されたサーヴァントがいる。彼はドリルのような螺旋の剣を地面に刺している。
「奴は」
「奴だけでない、他にもいるぞ!?」
黒白の夫婦剣を持つ赤い外套、大柄の武将、黒い霧を纏う鎧騎士。
他にも侵食された英霊たちが次々と現れ、武器を構えている。全員がバーサーカーとして現界した、狂化の英霊たち。
「バーサーカーしかいない、いやバーサーカーにされた英霊しかいないのかっ!?」
「まずいぞ奏者、この数はいくら余たちでも。まずはこの空間からの脱出せねば」
「分かっているっ!」
すぐに地面に手を触れてこの空間の解析を始める。気づいたことは、ここの時間の変化だ。
「まずいな………」
この空間と元々いた空間、SAO内に戻るために記録をたどるが、時間のズレを感じる。
この空間とSAO内の時間の流れが違う。おそらくいまキリトたちか自分たちが、数倍の速さで動いている。
「バカな、このような空間を創り出すだと!? くっ」
セイバーの言葉を遮るようにバーサーカーたちが流れ込む。
二人してその場から離れ、令呪を構える。
「セイバー、令呪を使う。お前だけでもこの空間から脱出してくれ」
「しかし奏者!?」
「ここはいまだSAOと言うゲームの中だ。令呪、ムーンセルのルール内なら、令呪を用いればお前をキリトの下に転移させることは可能だ」
「それはそうだが」
そうなる場合、俺だけでこのサーヴァントの群れを相手にしなければいけない。だがこのままではセイバーを失う可能性が高い。
ならばセイバーをキリトたちの下に転移させて、その記録を辿って脱出ルートを創り出す方が確実だ。
「俺はここで死なない。死者は死なない、なにより〝上〟に進む。頼む、俺を信じてストレアのことをキリトたちに伝えに行ってくれ」
赤雷を操る騎士の攻撃を避けながら、セイバーの顔を見た。
顔は歪みながらも、冷静に考えている。
ここからの脱出もそうだが、なにより、ストレアのことをキリトたちにも連絡したい。この情報は確かに届けないといけない気がする。
その天秤の中でセイバーは俺を見た。
「………分かった。余たちが助けるまで、果てるなよ奏者っ!」
「『令呪を以て命ずるッ! セイバー、キリトの下に馳せ参じろ』ッ!」
その瞬間、令呪を以て転移を始める。
彼女が消えたのを見届ける。これでもかなりきつい賭けだ。
「いくらムーンセルのルールでも、この空間内とSAO内の時間に差があれば、転移にかなりのロスがあるだろう。そこまで俺が持つしかないか」
ストレアの様子、それにコードキャスト。コードキャストはストレアが使用したわけでは無い。つまり、
「裏にウィザードがいる? 誰が、何者だ」
そう呟く中、セイバーを送ったものの、最低一日くらい、もしかしたらもっと時間がかかる可能性がある。
それでも早くストレアのことをキリトに伝えないといけない。令呪が無駄になるだろうとも、僅かにも連絡手段があるのなら使っておいたほうがいい。バーサーカーたちが向かってくる。中には明らかにバーサーカーに堕ちるはずもない英霊もいた。
「セイバークラスを始め、バーサーカーに収まらないサーヴァントも無理矢理そうしたか」
そう呟く中、死を纏い、静かに構える。
【悪いが、ここが果てる場所ではないからな。全員ここで蹴散らす。来い、堕ちた英霊たちよ】
咆哮が鳴り響き、無数の攻撃、宝具の攻撃が降り注ぐ中、駆け出す。
【ストレアを救うためにも、むしろこいつらを蹴散らすッ!】
そう決意して俺は、狂化された英霊たちと激突した。
「メドゥーサ狂化完了転移。シュヴァリエ・デオン狂化完了転移………」
数々の英霊を狂化して、あの空間へと転移させる。ここらで限界か。
「ストレア、時間設定を変更しなさい。あの空間内の時間を減速。その間にSAOプレイヤーたちを処理する」
「はい………」
ウインドウを操作してストレアが作業する様を見ながら、それは静かに見つめる。
「この世界を救う為、必ず、必ず勝つ………」
「………」
それは静かにロープを握りしめながら、ウインドウに映るSAOの内部を見つめる。
全てはこの世界を救う為、そう呟きながら………