ソードアート・オンライン・フェイトアンコール 作:にゃはっふー
SAOサーヴァント攻略戦、始まります。
攻略組は混乱していた。
ステージが一転したボス部屋。姿が見えない狙撃手に人型のボスエネミー。
矢や銃と言う攻撃。それがあったことにも驚きながら一気に瓦解し出す。
解毒アイテムが受け付けない毒に弱り出したところ、唐突にその毒を解毒して戦いだす《二刀流》の剣士。
彼らは混乱して、彼を知るプレイヤーも困惑していた。
「メイトっ!?」
彼はカトラス使いと斬り合い、後ろの金髪のマスカット銃からの狙撃を避けながら太刀打ちしていた。
まるで彼らだけ世界が違うように………
◇◆◇◆◇
メイトは対応しつつ、彼女たちの真名を看破しようとしていた。
「どうしてマスターが僕らサーヴァントと打ち合えるんだっ」
「こうなれば、メアリーっ」
その言葉を聞いた瞬間、彼女たちの動きは変わる。
カトラスの攻撃が終わる絶妙のタイミングでマスカット銃が放たれ、二つの剣を交差させて斬り払うが、
(これは)
タイミング良くカトラス使いへと剣を振り下ろす、あまりに絶妙なタイミング。
まるで吸い込まれるように剣がカトラス使いを捕らえている。だが彼女は余裕だった。
その瞬間、虚空から彼女の手にもう一つ刃物が出現してすぐさま剣を弾く。
弾かれたまますぐに地面を踏み、強めた瞬間、
「!?」
ガクンと船が傾いた。
バランスが別妙なタイミングで崩され、銃口が目の前に現れる。
(カトラス使いを注目した時に接近されたか)
冷静にそう分析しながら金髪の彼女は微笑む。
「シュートっ」
乾いた銃声が響き渡るがコードキャストを全開で身体強化に回す。
接近する銃弾を見つめながら、身体を無理矢理動かす。
ギリギリのラインを見極めながら、飛来する弾丸を避けた。頬をかすめ避け切ると、周りの動きを思考して見渡した。
(この強化も長続きはしない、カトラス使いは)
視界に入る彼女はすでに攻撃体制で迫っていた。
彼女の攻撃をどう防ぐか思考しようとしたとき、
「うおおおおおおおおおおおッ」
キリトが横に割り込み、その剣撃を防いだ。
その瞬間全ての攻撃動作が終わり、全員が距離を取る。
だがメイトだけ膝を付き、頬に一閃の傷口が開き、血が流れた。
「あら? なかなか倒れませんね」
「うん、君も邪魔しないでほしいな」
二人で一騎のサーヴァントたちはそう呟きながらもう一人の剣士を見る。キリトはどうにか割り込めたとニヤリと笑う。
「生憎と、ここにはあんたらを倒しに来たんだ」
キリトはそう言いながら構える中、ライダーたちは顔を見合わせてキリトを見た。
「君はロビンフットの言葉が理解できないのかい? 僕らは
「わたくしたちはサーヴァント、本来サーヴァントにはサーヴァントですわよ」
「やっぱりか、どういうことだ」
「なにがだい?」
「なんで《アインクラッド》で、そんなことが起きているッ」
キリトは吠えるように叫び構えを解かない。
彼女たちは隙だらけに見えて隙が無い。そう彼は感じ取っていた。
「「そんなの知らない」ですわ」
そう彼女たちは告げた。
「理不尽なのは分かるけど、僕ら海賊だから」
「ええそうですわメアリー。わたくしたちは奪うことを生業とした」
「『アン&メアリー』か」
そうメイトが口をした瞬間、二人の顔つきが変わる。
「………やはり貴方を先に殺るべきでしたわね」
「アンって、アン・ボニーとメアリー・リードっ!?」
後から来たシノンたちが現れ、アスナはバラバラになった隊列を整えたところだった。
「あら博学な人がいるようですわね」
「シノのん知ってるのっ!?」
「二人組の女海賊よっ、どうして、なにがどうなって」
その時、別の所で何かが落ちた来た。
それはセイバーであり、血を流しながら傷付けたその矢を身体から引き抜く。
「まだ終わりませんの?」
「いっや~無茶言わさんなって。向こうはセイバーでこっちは真名バレのアーチャーだぜ?」
虚空から現れたロビンフットたちは先ほどから戦っていた。
真名が割れたサーヴァントでも英霊。そう簡単に攻略を許してはくれない。
セイバー事態、どうにか見えない敵に対抗してくれていた。
「それにほら」
セイバーが矢を引き抜くと共に傷口が消えて、服すら回復する。それにアンとメアリーは信じられない様子でマスターとサーヴァントを交互に見る。
「まさか、わたくしたちと戦いながらセイバーのサポートをっ!?」
「俺の宝具、
不浄を起爆させ死に至らせる宝具。その隙すら与えないスピードでの治癒。それを聞き彼女たちは厄介な敵が誰なのか、はっきりした。
「やはりマスターを先に殺すべきですわね」
難しい顔でマスターであるメイトを見るが、それに盾を構えて隊列が整ったプレイヤーたちが立ちふさがる。
「あら?」
「全員銃撃による遠距離攻撃警戒っ、並びカトラス使いメアリーに対して、侮らず黒の剣士を筆頭にサポートッ。ロビンフットへの攻撃は彼女に任せなさい!!」
アスナの号令のもと、ギルド《風林火山》が前に出たことで他のプレイヤーは指示に従う。
アンとメアリーは少し驚きながら、ロビンフットはセイバーを嫌そうに見る。向こうもすでに剣を構えていた。
「これで手は足りるな」
「おいおい、
ロビンフットは不思議な単語を口にして、キリトたちが怪訝な顔をしたが、
「なにを抜かすかッ、この世界に聖杯は存在せぬッ。我らの戦い、この者らの戦いと無関係ッ。真の英傑ならばその道を彼の者たちに譲り渡せ!!」
セイバーの咆哮に向こうが顔を歪めた。
向こうはそれを肯定も否定もせず、武器を構える。
「それでも海賊だからね、負けるわけにはいかないよ」
「そういうことですわ」
「ま、そういうこと。サーヴァントとして召喚された以上、上に行くために戦うしかないのさ。意味は無くってもな」
そう言い構える中で、ロビンフットは籠手に仕込まれた弓を構える。
姿は消さず、今度は不浄の起爆を優先して戦うようだ。
それを察しして、コードキャストをより最速化させるメイト。その様子にもう驚かず、セイバーを見据えるロビンフット。
「悪いがマスターであるそいつを殺せばこっちの勝ちはゆるぎない」
「させると思いますか?」
「もう毒はねえんだっ、ここから巻き返しだッ」
「勇ましい殿方です。ですが」
クラインの叫びに、アンは褒めながら目を細め、
「チェックメイトだよ」
その瞬間、無数の弾丸が
「………なに」
体勢を立て直したプレイヤー、セイバー、撃たれたメイト自身が驚き、メイトは振り返る。
「俺ら
その後ろで顔に大きな傷を持った女性は、拳銃を回しながらホルダーに仕舞う。
「悲しいね………こうもあっけないと」
「メイトおおおおおおおおおおおおおお」
◇◆◇◆◇
痛い。
視界に入るのは赤一色。
貫通した傷口から出血し、痛みが身体を駆け巡る。
痛い、そうこれが、痛み。
戦わなければいけないのに動かない。だがそれでも、俺は〝上〟に行くために、俺は戦わないといけない、動き続けなければいけない。
なぜ〝上〟を目指すか、それは意味が無い。理由は無いようなもの。
理解している。理解してようが、知っていようが、分かっていようが変わらない。
それでも………
「俺は〝上〟に行かなきゃいけないんだ】
瞬間、世界は暗闇に閉ざされた。
◇◆◇◆◇
全員が一瞬にして変わり果てた彼に目を見開く。
全身が黒に染まり、眼光は赤い光でできていた。
本能、と言えばいいのだろう。
あれは良く無いモノだと彼らは感じ取る。
「
そう新たに現れた海賊の女性が呟き、銃を構えた瞬間、電光が走る。
すぐに構えたが自分で無かった。
メアリーが格闘術、相手の懐に踏み込むと共に肘を叩きこみ、後ろまで吹き飛ばすと共に地面に激突した瞬間、
「ッ!?」
メアリーが見た瞬間、胸に激突が走ったと思った時にそれが見えた。
それは地面に激突するメアリーに剣を突き刺し、足でより深くねじ込む存在の姿。
「がっ」
アンはそれに膝を付いて、ロビンフットはすぐに距離を取る。
無数の毒矢を放った。それは避けず全て刺さり、口から血を大量に吐き出す。
「
「奏者っ」
「
放たれたその矢が刺さると共に、爆発するように血を吹きだしながら大樹が成長する。
「悪いな、そいつは起爆剤に点火させる能力よっ。防御不可能、これで終わりだ」
そう言い、不浄をため込んだ身体を栄養に大樹が成長する。
無数のコードキャストが彼の周りを囲むように展開されていた。
【………】
目を見開き、展開するコードキャストを増やす。
「なっ………」
言葉を失う。無数のコードキャストは高度であり、彼のHPゲージは左右、増えたり減ったりを繰り返し、大樹は黒い影に飲まれ潰える。
「まさか、
その瞬間、雷光のように迸り、ロビンフットを貫く。
「がっ………、お、おたく……」
拳が彼にめり込み、再度力を込めてねじ込み、その肉体を貫いた。
引き抜くと共に崩れ落ちる身体を蹴り飛ばし、彼から暗闇が消える。
プレイヤーか異質な光景に目を疑う。
出血エフェクトは存在するが、
メイトを含め、彼らがまるでそこにいるようだった。
ゲームの出血はそんな演出ではない。なのに彼らは本当に傷付き、そして死ぬように倒れる。
「………
キリトがそう呟くと、彼は何事もなかったかのように最後の一騎を見た。
「ハッ、これはいいね! 最後の最後で面白いッ!!」
そう言って彼女は両手に銃を構える。その瞬間、背後の空間が水面のように揺らぐ。彼女の背後から無数の海賊船が現れた。
「宝具かっ」
セイバーがそう忌々しげにつぶやき、それに女は笑う。
「アタシの名前を憶えておきなっ、テメロッソ・エル・ドラゴ! 太陽を落とした女ってなっ!!」
「フランシス・ドレイク船長」
そう顔に大きな傷を持つ女海賊は口元を釣り上げる。それと共に全て砲門がプレイヤーたちへと向けられた。
プレイヤーたちは明らかに次元の違う砲撃を前に青ざめていく。
「こんなの、防げない………」
「セイバー」
だが一人だけ動じず、コードキャストの壁を複数生成した。
「宝具発動後、ドレイク船長を討てセイバー」
「防がるのかっ!?」
「防がなきゃ倒せない」
巨大なコードキャストの壁はプレイヤー全員を守るように展開された。ドレイク船長はそれに、
「いいねいいねっ! 戦いならそうこなくちゃねえっ!!」
そう言い現れた船に乗り込み、海賊の旗を掲げる。
「なら防ぎ切りなッ」
「来るぞ」
「ツッ、腹をくくるしかないッ」
キリトの言葉にプレイヤーは息をのむ。
「
無数の光弾が一斉に放たれそれが激突する。
全員がビームかよっと叫びたいが、それ以上の轟音にかき消された。
悲鳴が聞こえる、叫び声が響く。
それでも光は消えず、受け止めるコードキャストの壁はいくつもヒビができあがる。
ヒビが入る中、それでも彼はコードキャストの演算をやめず、例え一つ砕かれても最後の一つが防げばそれでいいとしか考えていない。
光の嵐の中、嵐が潰える時間はすぐに来る。
数分間程度だがプレイヤーたちは死を覚悟した。
それでも彼らの目の前にあるのは、
「へえ、やるじゃないか」
ヒビが入った最後のコードキャストの防壁とニヤリと笑う女海賊。
「でえええええええええええッ」
そして咆哮を放ち斬り込む、赤の剣士だった。
◇◆◇◆◇
炎を纏う赤い剣に斬られた彼女を見て、彼はようやくその場に倒れ込む。
「リソース切れだ」
そう呟きながら仰向けに倒れて、セイバーは静かに近づく。
「うむっ、大儀であるぞ奏者っ♪」
嬉しそうに微笑むセイバー、プレイヤーたちは呆然となっていた。
あまりに違う物事に皆、どうすればいいか分からない。
そんな中、
「お疲れ様っ」
そう言って彼女が現れた。
「リンっ、お主、どうしてここに」
「後始末よ、後始末。ここの階層が攻略されたんだから、私たちのルールをSAOの世界に適応させないといけないのよ」
「? どういうことだ」
唯一すぐに我に返ったキリトが、彼女に話しかけた。
突然現れたことよりも、先ほどからの光景、血を流す死体でもある彼らに、困惑しているだけでは進めないと彼が全プレイヤーの代わりに聞きだそうとする。
「簡単よ、だっていまのSAO。この世界ソードアート・オンラインは、いまはバグとエラーでできた仮想世界なのだから」
「………は?」
キリトがそう呟きながら、彼女は静かにたたずみながら、
「それじゃ、やっと貴方たちと話し合えるくらいになったから、説明してあげなくちゃね。彼のことを含め、今現在の貴方たちプレイヤーの現状を」
話せるところまでね。彼女はそう微笑みかけながら作業を始めた。
アーチャーロビンフット、ライダーアン・ボニー&メアリー・リード、ライダーフランシス・ドレイク。ログイン。
勝者マスターメイト並びセイバー。並びSAOプレイヤー確認。
お読みいただきありがとうございます。