ソードアート・オンライン・フェイトアンコール   作:にゃはっふー

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ロビンフット並びアン&メアリーはマスターが倒し、ドレイクは宝具使用後の隙をセイバーが討つ。

それは静かに画面を見つめる。

ただ静かに、機械的に画面を睨む。

引き続き観測を続行………


第5章・SAOプレイヤーへの説明

 全員や後から来たシノンとシリカも話を聞き、やっと落ち着き始めたところで彼女を見る。

 

 ツインテールで髪は金色と碧眼であり、いまはウインドウを開き操作していた。

 

 ボスエネミーは消えていないため警戒もしているのだが、

 

「ああ、彼らはすでに判定で敗者になってるから無害よ。もう宝具も使えないしね」

 

「風穴空いてるがな………」

 

 ロビンフットがそう言いながら、全員が落ち着いたところで、画面から目を外さずに彼女はプレイヤーへと問いかけた。

 

「とりあえず代表決まったかしら? 正直手が足りないから、数人だけにしてね」

 

 キリトの他に《血盟騎士団》のアスナと、数名のプレイヤー。

 

 クラインもいる中、他のプレイヤーは聞く耳を立てていた。

 

「それじゃまず、君は何者だ」

 

「わたしはリンよ。あなたたちSAOプレイヤーとは違う、世界(ゲーム)の、ゲームマスターかしら? まあそんなところ」

 

世界(ゲーム)が違うってのはどういう意味だ」

 

「言葉通りよ、システムもルールも何もかも違う仕組み。ソードアート・オンラインとは違う世界の理、それがいまこのゲーム《ソードアート・オンライン》に混じってしまった」

 

 それに全員が驚くが、それを聞きながら代表のクラインたちは共に推測する。

 

「どういうこった?」

 

「別のゲームのシステムとこの世界、SAOが混じったってことだろ?」

 

 そんな話を静かに聞くリンとセイバー。一人だけただぼーとしているメイト。

 

 キリトは考え込みながらリンに聞く。

 

「どうして混ざってしまったんだ」

 

「それはね、いまは言えないわ。ごめんなさい」

 

「どうして言えないんだ」

 

「エラーとバグが下手をするとより溜まってしまう。いま現在SAOは、未知のバクと矛盾によって、正規の状態を維持できてないの」

 

「それって、わたしたちがこの世界から出られないことと関係があるの!?」

 

 アスナの言葉に周りがざわめく。

 

 このゲームは本来75層、ヒースクリフこと茅場晶彦を倒したことで解放されるはずだった。

 

 だがいまだこの仮想世界に閉じ込められたまま。それに、

 

「それにはYES、あなたたちは本来75層でラスボスを倒し、解放されるはずだった」

 

 それに全員が驚愕し、だけどとリンは付け加える。

 

「だけど、この辺りは言えないの。ほんとごめんなさい」

 

 すまなそうな顔で言うリン、これ以上深く聞けない雰囲気だ。

 

 キリトはそれを感じながら、ならと、

 

「話せるところを話してくれないか」

 

「そうね、あなたには権利はあるわ。ラスボスを倒したプレイヤーさん」

 

 そうリンが作業を一度止めてから、静かにキリトたちを見る。

 

 モニターらしきものがソリットビジョンで現れ、彼女は説明し出す。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「本来このゲームは、ゲームクリアと同時にデータを消去するようにプログラムが組まれていた。ところがあることを切っ掛けに、ゲームクリアが無かったことにされたの」

 

「ゲームクリアが無かったこと、ラスボスが倒されていないことにされたのか」

 

「ええ、その結果バグやエラーが大量に噴出して、この世界の基盤とも言えるシステム《カーディナルシステム》がダメージを受けた」

 

「カーディナルに?」

 

「そのダメージはわたしたちのシステム。七つの天へと目指すシステム〝聖杯戦争〟を、ルール的にも取り込んでしまったの。ほんと、偶然とは言えどうしてこうも混ざったのか、運が悪いのか良いのか分からないわ」

 

「せいはいせんそう? それがメイトたちのシステムか」

 

 キリトの言葉にリンはそれ以上はなにも言わず、静かに説明する。

 

 聖杯戦争は七回戦行われるバトルトーナメント。

 

 英霊を七つのクラスのどれか一つから呼び、マスターとサーヴァントが行う殺し合い。

 

「殺し合いって」

 

「ただの設定だろ? んなSAOじゃねえんだからよお」

 

 クラインの言葉にアスナはそう納得し、リンは何も言わない。

 

 そして七つの戦いを勝ち上がったマスターは聖杯を手に入れて、なんでも願いを叶えられる。そう言うシステムだ。

 

「聖杯……、アーサー王伝説とかで出て来るものかしら」

 

 シノンの言葉にもあえてリンはそれ以上言わず、変わりに別のことを言う。

 

「ただね、この戦いはある男によってルールを壊された」

 

「ルールが?」

 

「まあこの辺りはあなたたちには無関係ね、とりあえず壊されたことだけを理解して」

 

 壊されたルールでシステム、聖杯戦争はバグとエラーをため込んだ。それは異常なほど。

 

「本来エラーとバグは浄化されるはずのものだけど、この聖杯戦争もまたSAOのようにエラーとバグが溜まっていった」

 

「SAOのようなエラーとバグ?」

 

 キリトが僅かに反応したが、リンが続けた言葉にかき消された。

 

 同じエラーとバグを抱えたシステム同士がその瞬間、一つに成ってしまったと………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「正確にはバグとエラーが修正され始めた世界と、同じバグとエラーを抱えたこの世界がリンクしてしまった。75層で全てが終わるのに、あることが切っ掛けでこの世界は続行された。そのうえ聖杯戦争のルールまで混じってしまった。混じったことに関しては偶然の偶然、最悪の奇跡ね」

 

 彼女はそう言いながら、二つのシステムを画面にした。

 

「ここで二つのメインシステムが矛盾を抱えてしまった。本来ゲームをクリアしているSAOは、プレイヤーをログアウトさせて《アインクラッド》崩壊プログラムを発動させるはずが、その全てをキャンセルさせられた。本来クリアがすでに決まっているのに、理不尽にもキャンセルさせられ、継続しなければいけなかった」

 

 一方の聖杯戦争では、バグとエラーを処理しだしていた瞬間だった。

 

 カーディナルと聖杯戦争のメインプログラム《ムーンセル・オートマトン》が、この矛盾により、多大なバグとエラーを引き起こした。

 

 片やゲームクリアされ、プレイヤーをログアウトさせて、ゲームを消すプログラムの実行。

 

 片やゲーム続行に及ぶ、ゲームの再構築。

 

 この二つの矛盾をムーンセルとカーディナルはいまだ行っている。

 

「結果、二つのシステムが混ざり、SAOと言うゲームの世界に聖杯戦争のルールが適応されてしまった」

 

「これがこの層のボス部屋ってわけか」

 

「そう、聖杯戦争参加者からすれば優勝賞品の無い、無意味な戦いよ」

 

 優勝賞品が無いゲーム。クレームも良いところだが、そもそもシステムが違い過ぎる。

 

「そう、システムが違い過ぎている。このままではゲームがクリアできないと、二つのメインプログラムはこの事実に対して、対策をしなければいけなくなった」

 

「なぜ?」

 

「カーディナルもムーンセルも、平等であり公正でなければいけない。カーディナルの設計者がカーディナルに付けた絶対条件、システムよ」

 

 それは確かにとキリトは思う。この世界はフェアネスを貫いている。唯一の例外は《ユニークスキル》くらいか。

 

 それも茅場が言うにはラスボス用のスキルらしい。つまり、

 

「俺たちSAOプレイヤーが、聖杯戦争のゲーム攻略するための処置がされなければいけない」

 

「だけど、SAOプレイヤーは決して他のデータを付け加えられないようにプログラムされている。数値をいじるのはもちろん、不正プログラムを一切合切許さないわ」

 

 それに全員がざわめく。当たり前だ、それじゃ、

 

「それじゃ聖杯戦争に、この戦いに俺たちが勝てる要素が無いぞ」

 

 最後の砲撃を見て、いままでのSAOでは勝てないのは誰でも理解できる。

 

 なのに運営側がそれを許さないのはあまりに不公平だ。

 

「そう、だからカーディナルとムーンセルはこの問題をクリアする為、あることをした」

 

「あること?」

 

 

 

「マスター能力を所持したSAOプレイヤーを作り出せばいいと判断し、実行した」

 

 

 

 その瞬間、俺たちは振り返る。

 

 マスターと言う称号を持つプレイヤーは一人いる。だからこそ、

 

「それは」

 

「そう彼はNPC、正確にはプレイヤーとして作り出されたSAOプレイヤーよ」

 

 そう言ってリンはメイトを、俺たちは見つめた………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「メイト君が、NPCっ!?」

 

「おいあんたっ、いくら冗談でも酷過ぎだぞっ」

 

 アスナとクラインが各々反応するが、彼女はすぐに作業に戻る。

 

「仕方ないのよ、すでにログインしているSAOプレイヤーをマスターにすればよかったんだけど、あなたたちに余計なデータは全て不正プログラムとして判断されてしまう。この世界は徹底的に公正さを貫いている。特別な誰かは、ラスボス用のスキル《エクストラスキル》所有者のみよ」

 

「それは、ビーターやベーターは」

 

 それはある別のプレイヤーが口にした。

 

 黒の剣士キリトは不正したプレイヤーであると言う噂は確かにあるが、

 

「プログラムを不正に操作した人間はこの世界にログインできないわよ、誰一人。ゲームマスター権利を持ったヒースクリフですら、ラスボスと運営者としての機能のみで、その他に付け加えたりできない、けしてね」

 

 それに全員がざわめくが、キリトの仲間たちはすでに知っている。彼が不正なぞしない人間だということを。

 

「まあその所為で、あなたたちSAOプレイヤーに聖杯戦争のシステムを搭載することはできなかった。すでに搭載された誰かをSAOプレイヤーにするしか無かった」

 

「それがメイト君なんですか」

 

「ええ、彼はプログラムでできたモノよ」

 

 リンがアスナの言葉を肯定し、キリトたちは黙り込む。

 

 だが、

 

「そんなことはどうでもいい」

 

 メイトがここで初めて口を開いた。

 

「どうでもいい、どうでもいいって君は」

 

「俺がなんであるかなんてどうでもいい」

 

 キリトの言葉を遮りリンを見る。リンは静かに彼を見ながら、

 

「俺は〝上〟に行けるのか」

 

「ええ、その為に作り出されたのだから」

 

「ならいいさ」

 

「いいの? それは作り出されたあなたの最終目標よ」

 

「それでも俺の意思だ」

 

 それに彼女はため息をつき、セイバーを見る。セイバーはその答えに満足そうにしていた。

 

「あなたもまた難儀なマスターに呼ばれたわね」

 

「構わんっ。例え作り出された意思であろうと、己が意思として胸を張れればそれは奏者の物ッ。余はこの者と共に上を目指すぞリン」

 

 その答えを聞き、彼女は作業を終わらして彼らを見た。

 

「それじゃそろそろ。公正さを決めるためとはいえ、わたしの存在もここじゃバグなのよね。あまり長居できないの」

 

「それじゃ最後に」

 

「なにかしら?」

 

「なんでメイトに《二刀流》があるんだ」

 

 キリトの問いかけにあ~と呟きながら、静かに目を泳がせる。

 

 これも引っかかるらしく、すぐに首を振った。

 

「分かった、聞かないよ」

 

「ごめんなさいね。あと言えるのは、彼が使うのはシステムが違うから、別のステータス画面があるの。回復方法は分かるわよね」

 

「食事、睡眠でリソースを回復させる」

 

「よろしい」

 

 その会話を聞いていたとき、コルクを抜く音が鳴り響く。

 

 振り返るとドレイク船長は酒瓶を開けて、ごくごくと最後の酒を飲んでいた。

 

「変わった男だね、自分がプログラムとか言われてるのに動じないなんて」

 

「そんなの俺には関係ない」

 

「そうかい」

 

 瓶を持ちながら静かに見つめる。

 

「お前さん、なんで上に上がるんだい?」

 

「憎いから」

 

 それもまた動じずメイトは続けた。

 

「例え意味もないことだろうと、この憎しみは俺の物。そして俺がいる理由がなんであろうと俺である限り抱くもの。なら、俺は〝上〟を目指す」

 

「憎しみで上に上がるね、まあいいけどね」

 

 そう言って瓶をアンへと投げ渡す。彼女はメアリーが倒されたとき、二人で一人のサーヴァントであるため戦闘不能にされた。

 

 ごくごくと飲みながら、

 

「船長すいませんね。まあ、わたくしたちもサーヴァントだからって理由で、この戦いをしてましたし、同じですわね」

 

 そう言ってメアリーに瓶を投げ渡し、彼女も飲む。

 

「だね、聖杯もなにもない戦いだけど、まあ楽しかったよ」

 

 酒を飲み終えてその様子を見ていたロビンフットは苦笑し、光が身体を包みだす。

 

「この先もまあ頑張れや。サーヴァントは三騎、どの階層がどういじられているか分からねえが、気配ぐらいは分かるからよ」

 

「それじゃあね」

 

「今度はちゃんとした戦いで」

 

「それじゃ、がんばんなよ」

 

 そうして光の粒子となり消えるサーヴァントと共に景色が暗転し、ただの道になる。

 

「これでこの階層は」

 

 その瞬間、ここにいたプレイヤー全員に経験値なり、ドロップ品が入ってくる。

 

「うおっ、こんなに経験値は入るのかよっ」

 

「アイテムもレアドロップ、これは」

 

「まあ、明らかなレベルミスだからな、けどやっぱり多いな」

 

 そう呟きながらリンも退散しようとしたとき、

 

「あっ、待って」

 

「ん、まだなにかあるのかしら? 正直ここをSAOに戻したから、わたしそろそろ退散しないといけないんだけど」

 

 アスナがリンを引き留め、最後に、

 

「メイトくんのあの黒いものはなに?」

 

死相(デッドフェイス)、そういうものとしかいまは言えないわ。それじゃ」

 

 そう言って空間に穴が開き、そこから彼女は消えた。

 

 死相(デッドフェイス)と言う言葉に首をかしげる中、そんな会話をしながらメイトは真上を見ていた。

 

「そうだ、俺は〝上〟に行く」

 

 そう静かに呟いた………




サーヴァント第一回戦勝利。

メイトの正体を知るキリトたち。メイトは気にせず、ただ先に進む。

それではお読みいただきありがとうございます。
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